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僕は自転車通勤をしている。毎日行く場所が違うのだが、今日は距離の長い日で、片道15キロぐらい(勝手に遠回りしている)である。

丸子橋から多摩川の土手を走って、国道15号に出るのだが、数百メートル走ったところで、バイクを対象にした検問をしていた。止まれというので止まると「失礼しました、行っていいですよ」と言われた。ちょうど暗くなる時間だったので、ライトが自転車についていないと思ったらしい。実際は付いていたので、なにごともなくスルーというわけだ。

と、ここまではよかった。そこには数人の警官が立っており、さっきの僕を止めた人とは別の警官が「自転車は歩道を走りなさい!」という。僕は大声で、「自転車は車道を走るもんだろ!」と言って立ち去ろうとした。

だが、目的地はすぐ目の前だ。どっちにしても歩道に入らなきゃいけない。ここで歩道に入ったら、負け(何がだ?)である。ここは一つ、警官相手に説教たれてやれと思って、自転車を押してさっきの警官の元にもどり、

「道交法では、自転車は車道を走ることになってますよね。僕はライトもつけているし、テールランプもつけている。信号だって守っている。一つも違反していないのに何で怒られなきゃいけないんですか?」

と詰め寄った。警官は、

「ここは幹線道路で危険なので、歩道を走るように指導しているのです。この歩道は自転車通行可なので、歩道をゆっくり走ってください」という。

「そりゃおかしいでしょ。だったら危険なのは自動車の方で、自動車を指導するべきでしょう。だいたい、自転車通行可の歩道があっても自転車は車道を走ることになっているはずですよ。歩道だって、僕が自転車で走れば、今度は歩行者が危険にさらされるわけですよね」と反論した。

このあとも問答はつづいたのだが、警察のいいぶんをまとめてみると、つぎのようなことである。

1.幹線道路は危険なので、自転車には歩道を走るように指導している。
幹線道路が危険なのは十分承知している。僕だってできることなら走りたくない。だが、指導すべきはスピードを出しすぎている自動車ではないか。「歩道は歩行者優先」という警視庁の看板は見たことがあるが「車道は自転車優先」と書いた看板は見たことがない。

2.「指導」は拘束力を持たない。
法律にないのだから当たり前だ。だが、警官の「自転車は歩道を走りなさい!」という言葉が拘束力を持たないとは誰も思わないだろう。

3.結局、自転車は車道を走っていい。
「いい」じゃなくて、「走れ」と言わせたかったのだが、言わなかった。この歩道には「自転車通行可」とあるが、この「可」は命令の可ではなく、可能の可である。つまり、「自転車はこの歩道を走ってもいい」という意味なのだ。逆にいえば、自転車は車道を走らなくてはいけないのである。

時々、法律が間違っているなどとタワけたことをいうドライバーがいる。ならば、道交法が施行されて何十年も経つのに改正されないのはなぜか。答えは簡単で、自転車が車両だということは自明のことだからである。

問題は道路のつくりにある。国道15号は歩道も含めて、かなり広いにもかかわらず、自転車の走る場所がほとんどないのだ。これは行政の責任である。しかし、車道は自動車のものだと思っているドライバーの意識にも問題がある。これを指導するのは警察の仕事だろう。だが、その警察は自動車に有利な指導しかしないようだ。

警察の立場になってみれば、自転車を歩道に追いやれば、重大な交通事故も減るし、猛スピードで走る自動車を指導するよりも簡単だ。だが、その結果、どこから人が出てくるかわからない歩道で自転車は安心して走れなくなり、なによりも、歩行者が危険にさらされる。喜ぶのは自動車のドライバーだけ。こんなアホな話があるだろうか。

法律上、正しいことをしているのだから、何人たりとも車道で自転車に乗る僕を罰することはできない。しかし、この国では正しいことをしていても、警官に怒られるのである。
(追記) (追記ここまで)
タグ :
#警察
#道路行政
#道路交通法

コメント

コメント一覧 (8)

    • 1. 長々
    • 2006年10月20日 08:24
    • ご愁傷様です。
      警察官が「怒った」のは不必要な感情によりあなたを不快にさせたという点で不適当であったと私も思います。怒らずに指導し続けられる人ばかりだとよいのですが...

      ただ、たしか警察官の指導は法律に優先したと思います。
      スピード違反の現行犯を止めるなど、職務上必要と認められる場合には「駐車禁止区域であっても路肩に止めさせる」権限があります。
      今回も組織的に指導していたのですから強制する権限は認められたと思います。

      もっとも、私の記憶違いでなかったとしても、法律に優先する権限あることをあなたに説明できず、上司の命令である事を理由に貴方に強制しようとした警察官の態度がだらしないという結論には、アホな話である事には弁護の余地が無いのですが...
      ご愁傷様でした
    • 2. ホシナ
    • 2006年10月20日 15:35
    • 日本で歩道を自転車が走っているのをアレックス・モールトン博士が見て「クレイジーだ」と言ったそうですが、現実問題としては、自転車が走りやすい車道などというのはほとんどない。危険だからどうしても歩道を走る。時には原チャリまで歩道を走る、のは論外として、とは言えその歩道も自転車用にはできていない。(関係ないけど車椅子ですら走らせにくい。)
      いっそのこと、狭い車道でも無理やり白線を引いて、自転車専用レーンを作っちゃったらどうだろう? 精神的にもスピード出しにくくなるし・・・。
    • 3. 負け犬のシンガポールの友人
    • 2006年10月20日 17:20
    • シンガポールなんかムチ打ちの刑だから(男子のみ)、よろしく。
    • 4. 中川@やたナビ
    • 2006年10月20日 19:58
    • >たしか警察官の指導は法律に優先したと思います

      なるほど、知りませんでした。
      しかし、この場合その指導はどこまで有効になるんでしょう。
      スピード違反の現行犯なら、止めて切符を切ったらそれで終わりですよね。
      僕はどこまで歩道を走らなきゃいけないんでしょうか。
      幹線道路はすべてだったら、それはもはや指導ではないと思います。
      極端にいうと、国家権力による権利の侵害だといっていいでしょう。
      僕が不快に思ったのは、警官の口調ではありません。
      本来、自転車は車道を走らなきゃいけないのに、歩道を走らなきゃいけないようなことを言ったからです。
      「歩道を走ったほうが安全だよ」なら僕も文句は言わなかったでしょう。
    • 5. 中川@やたナビ
    • 2006年10月20日 20:05
    • >アレックス・モールトン博士が見て「クレイジーだ」と言ったそう
      また、すごい話をご存知で。
      アレックス・モールトンに乗った博士もそう言いましたよ。
      世界的にみて、自転車が歩道を走る国はどのぐらいあるんだろう。

      >関係ないけど車椅子ですら走らせにくい。
      関係大有りだと思います。
      自転車の暴走を防ぐためには、多少の段差があった方がいいのかもしれません。
      でもそのせいで、交通最弱者の車椅子が走りにくくなるのはどう考えてもおかしいです。

      >狭い車道でも無理やり白線を引いて
      車道は自転車優先なんだから、そうあるべきですよね。
      やむを得ない場合のみ自動車は自転車レーンにはみ出せる。
      日本人は遵法意識が高いので、それが一番効果があると思います。
    • 6. 中川@やたナビ
    • 2006年10月20日 20:08
    • >シンガポールなんかムチ打ちの刑だから(男子のみ)、よろしく。
      法律に違反していなくてもですか?
      違反していれば、ムチ打たれてもしょうがないでしょう。

      ところで、女子は何の刑なんでしょう。
      違反者を打つんですか?違反者を打つんですか?違反者を打つんですか?
    • 7. 負け犬のシンガポールの友人
    • 2006年10月23日 14:41
    • もちろん違反者だけだよ。
      でも新しい法律がどんどん出来るから、気をつけないといけない。
      男子のムチ打ちに当たる女子の刑は、たぶんないと思うな。
    • 8. 中川@やたナビ
    • 2006年10月24日 03:58
    • >でも新しい法律がどんどん出来るから、気をつけないといけない。

      あー、それは困るね。
      マーライオンの悪口言うと100タタキとかね。
      突然言われても困っちゃうよなー。
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