約10年ぶりに読んでみて気づいたこと/村上春樹『風の歌を聴け』(講談社文庫、1982) 2024年07月17日 19:00 昔は本の本扉に読み終わった日付を付ける習慣があった。いつの間にかその習慣は無くなったが、学生時代や、仕事を始めてからもしばらくの間は、読み終わった日付、時には場所を書いたりしていた。 私が持っている講談社文庫版の『風の歌を聴け』の本扉には、書名 ...
流刑地にて/松下隆志『ロシア文学の怪物たち』(書肆侃侃房、2024年) 2024年07月15日 10:01 子供の熱が下がらない。この三連休、断続的に悩まされている。頓服の解熱剤を飲んで、少し熱が下がったと安心して、またしばらくするとぐったりしている。ふだん元気であちこち転げ回っているのに、クッションや私たちの体に頭をもたせてくる。笑顔も少なく、元気がない ...
おじさんなんだかわからない/pha『パーティが終わって、中年が始まる』(幻冬舎、2024年) 2024年07月08日 23:11 「コミュ障」という嘲笑的な表現は好きじゃないけれど、最近、自分が人とのコミュニケーションが苦手だなと思うことが多い。たぶん昔から苦手なのだろうが、若い頃は、それを気合いでカバーして、周りとコミュニケーションをとるように頑張っていた。なんとか真っ当な ...
離陸 2024年06月22日 16:40 一瞬、時が止まったようで変だなと思った。さっきまで私の肩に寄りかかっていた子供がゆらゆらと揺れながら、満面の笑みでこちらを見ていた。夕刻の一瞬の出来事だった。彼が地面に足をつけて私から手を離して、つまり初めて立ち上がった瞬間だった。私は思わずおお!っ ...
できないこと/柴崎友香『あらゆることは今起こる』(医学書院、2024年) 2024年06月10日 21:18 うがい薬の青色が洗面ボウルの中に薄く滲む。何度うがいをしたかわからない。子供の手足口病の看病をしている間に、私も感染してしまった。スマホのアプリにはひっきりなしに感染症のお知らせが届く。2歳児クラスで溶連菌、手足口病。0歳児クラスで手足口病。毎日私に ...
曖昧な記憶の私と水道橋 2024年06月01日 22:42 2024年6月1日(土) 以前から、水道橋という街をうまく認識できなかった。まず名前がお茶ノ水と微妙に似ている。お茶の水大学がお茶ノ水にないという認識上のハードルもあるが、まあそれは今はいいとする。お茶ノ水と水道橋は距離的にも微妙に近く、かつ私はあまりその二つの ...
幸いは内にある 2024年05月30日 18:00 2024年5月30日(木) ・内幸町という素敵な名前の、あまり馴染みのない町にある高層ビルで、朝から仕事関係のシンポジウムに出席。参加者はみなバリバリのスーツの雰囲気だったので(経団連とか)、スーツで来て良かった。こういう街でパリッと働く人生もあったのだろうか無か ...
鳥の声、人の声 2024年05月25日 21:31 鳥の声が聴こえて目が覚める。この辺りは住宅地だが鳥が多い。ベランダにスズメなどが来て鳴くと、その声が一層大きく聴こえる。少しずつその声が増えていき、鳥の声と、近所の子供の声が混ざり合う。目をつぶって、それらに耳を傾けると、一人で生きている気がしない。 ...
置き去りにできないものすべて/永野『僕はロックなんか聴いてきた』(2021年、リットーミュージック)『オルタナティブ』(2023年、リットーミュージック) 2024年05月17日 18:00 私は、かつて90年代の末にロックと出会った。1998年とか1999年とか、その辺りだったと思う。必ずしも当時の最新のものを聴いていたわけではないが、レンタルビデオ屋の冊子などに書いてあるオススメバンドなどの解説を見て、それらを聴いてみたり、雑誌『ロッキングオン ...
参拝と乾杯 2024年05月11日 22:12 NHK「鶴瓶の家族で乾杯」を楽しく観た。高橋一生が葉山に行った回だ。鶴瓶も高橋一生も、とても人懐っこく、行く先々で人に愛される。私はこの番組がとても好きだ。いかにもNHKらしい、家族全員で観ても誰も傷付かず、日本の地方を称揚し、最大公約数的に魅力を伝える作り ...