人とうまく分かり合えなくて寂しい。そういう経験は、何十年も生きていれば誰にでもあるだろう。それに立ち向かうにはいくつかの方法がある。その孤独な風景を誰かと共有することが、その一つに挙げられる。 言葉は誰かと繋がるためにあるが同時に、言葉を使えば使う ...

目を瞑ると自分の鼓動がやけに大きく聞こえた。 ピーという音がします。その間、このボタンを右手で持って押してください。最後の方はわさわさっとノイズがします。ノイズの音の間ではなくピーという音の間だけ押してください、と女性の助手のような方に言われ、小屋 ...

駅の階段を上ると、誰もが空を見上げていた。皆既月食に向けてスマホや、本格的なカメラを向けていたり、あるいは、何も持たずにただ空を見上げた。いつもはただ皆歩いて通り過ぎていくだけの道に少しの間人々が滞留し、目を輝かせて、月が食い破られた金魚のヒレのよ ...

私はまだ30代だけれど、それでも幼い頃から「男なら泣くな」とか「男だろ」とか性別にかこつけて怒られた記憶がある。当時からそういう言い方は直感的におかしいと思っていた。両親にそういう言葉を使われることはあまりなかったと思うが、世の中的にはまだまだそういう ...

祭りの季節だった。買い物のために新宿に行くと沢山の店が出ていて、花園神社で酉の市をやっていた。バスの窓からは、通りにたくさんのテントが置かれているのが見えた。店の人たちは一様にイカつい風貌で、私は恐る恐る見て回った。私は昔から祭りのこの感じが苦 ...