熱を帯びた現状批判の書/竹下節子『キリスト教は「宗教」ではない』(中公新書ラクレ) 2017年11月26日 18:05 キリスト教について書かれた書籍は多い。聖職者や信者によって書かれたものはもちろん多いが、ここのところ、キリスト教について社会学者が書いたものや、挑発的で煽動するような調子で書かれたものも見かける。この本も、タイトルだけを見ると、挑発的な類いのものかと ...
哀しい空のような映画/『マンチェスター・バイ・ザ・シー』ケイシー・アフレック 2017年11月19日 23:23 この映画を観たいと思っていたら、偶然今日早稲田松竹でやっていたので、楽しみに行ってきた。 ボストンで働く便利屋リーのもとに一本の電話が来て、兄の死を知らせる。葬儀を取り仕切るために地元マンチェスター・バイ・ザ・シーに帰ると、兄の遺言で甥の後見人にな ...
信用できないという豊かさ/滝口悠生『高架線』(講談社) 2017年11月12日 21:29 数年前から同世代の、そして同時代の作家として一番気になっている作家のひとりが滝口悠生である。それは例えば彼が描く東京の街や登場人物たちが、馴染みがあるように感じられるからということもあるけれど、それに加えて、彼が小説の「語り」に対してとても意識的で ...
「歩く」という革命――『ウォ―クス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット著(左右社) 2017年11月03日 22:35 いつかこういう本を書いてみたいと思う。古今東西の文献を漁って一つの広がりのあるテーマについて書く。それでいて、自分自身の経験に基づいている。論文のような堅実さと、エッセイのような柔らかさがある。レベッカ・ソルニットはそういう書き手だ。意図的にその二 ...