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第一歩はハイリスク・ノーリターンの親善試合 クロスボーダーラグビーの理想と現実の乖離は埋まるのか

[ 2024年2月5日 08:00 ]

埼玉のロビー ディーンズ監督
Photo By スポニチ

結果で言葉に重みを持たせ、会見で一石を投じた。2月3、4日、初めて開催されたラグビーの国際交流試合「クロスボーダーラグビー2024」。旧トップリーグ、リーグワンを合わせて最多の6度優勝している埼玉のロビー・ディーンズ監督は、大会のあり方に異議を唱えた。

将来的にはクラブ世界一決定戦のような国際大会化を目指す「クロス――」だが、リーグワン初年度から開催するという当初の構想から2年遅れで始まった今回は、公式戦を一旦中断し、昨季の4強だけが非公式の親善試合を行う形式。相手は主力不在とは言え、王国ニュージーランドの強豪クラブでケガのリスクが伴う。言わばハイリスク・ノーリターンの試合を義務化された形だった。

埼玉がチーフスに38―14で完勝した4日の試合前、飯島均ゼネラルマネジャー語ったところによれば、看板に中身が伴わない以上、ディーンズ監督は「こんな試合はやめよう。リスクしかない」と強く反対していたという。実際、昨年11月下旬に開催の正式発表がなされる以前、リーグ加盟23チームの代表者による会議で、埼玉だけが唯一反対したとも明かした。2週間前の三重戦後の会見では、主力選手は休ませることをにおわせたのは、他でもない指揮官自身だった。

しかし、ふたを開けてみれば日本代表勢はもちろん、他国代表歴のあるカテゴリーCの3人を惜しげもなく先発起用。鼻出血のために一時交代したWTBコロインベテは、治療を終えると再びピッチに戻した。この試合の上限となる28人をメンバー登録していたが、大勢が決した後半30分までは、通常の23人の中だけでやりくり。モチベーションが上がりづらい状況で真剣勝負して勝ったからこそ、ニュージーランド出身の名将の言葉は重みを増す。

実際に諸問題をクリアし、理想とする大会を実現するのは容易ではない。ディーンズ監督は5、6月に同一シーズンの上位勢同士の対戦、あるいはプレーオフの一体開催を提案。ラグビーマーケットが縮小傾向にあるニュージーランド、オーストラリアを救えるのは経済規模も大きい日本との見立ても示したが、日本ラグビー界が発展し続けるのか、衰退するのかは未知数。全面的に同意できる考えではない。

6〜11月の5カ月間に、正式発表されているだけで7試合が予定されている日本代表活動との兼ね合いも大きな問題となる。夏季のパシフィックネーションズ杯で4試合、秋の欧州遠征で2試合程度が追加される見通しで、その上で来季はリーグワン1部のレギュラーシーズンが18試合に増えるため、開幕時期の前倒しは確実。ディーンズ監督が言うところの「選手にリスペクトがない」状況が深刻度を増す中で、「クロス――」が入り込む余地はあるのだろうか。

リーグワンの東海林一専務理事は3日、来年以降の開催について「具体的な取り決めはない」と話しており、事実上の白紙状態であることを明かしている。10日に2試合を残す今回の初開催が、0を1にする大きな第一歩となったことは間違いない。

1を0に逆戻りさせないため、埼玉の選手たちの文字通り体を張った訴えを無駄にしないためにも、早急に「ウィン、ウィン、ウィン」な落としどころを見出したい。(記者コラム・阿部 令)

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