目次
この医薬品・医療機器等安全性情報は, 厚生労働省において収集された副作用等の情報をもとに, 医薬品・医療機器等のより安全な使用に役立てていただくために, 医療関係者に対して情報提供されるものです。
厚生労働省医薬食品局
No. | 医薬品等 | 対策 | 情報の概要 |
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1 | 平成17年度のインフルエンザワクチンによる副作用の報告等について | 平成17年度のインフルエンザワクチンによる副作用の報告状況及び安全対策をまとめたので紹介する。 | |
2 | 塩酸アミオダロン他(5件) | 使用上の注意の改訂について(その179) | |
3 | 市販直後調査対象品目 | 平成18年9月1日現在, 市販直後調査の対象品目一覧を紹介する。 |
(緊):緊急安全性情報の配布 (使):使用上の注意の改訂 (症):症例の紹介
厚生労働大臣への副作用等報告は, 医療関係者の業務です。
医師, 歯科医師, 薬剤師等の医療関係者は, 医薬品や医療機器による副作用, 感染症, 不具合を知ったときは, 直接又は当該医薬品等の製造販売業者を通じて厚生労働大臣へ報告してください。なお, 薬種商販売業や配置販売業の従事者も医療関係者として, 副作用等につき, 報告することが求められています。
平成17年度のインフルエンザワクチンによる副作用の報告等について
(1)はじめに
インフルエンザワクチンの副反応の報告等については, 平成15年度分より医薬品・医療用具等安全性情報No.205, 医薬品・医療機器等安全性情報No.217により紹介してきたところである。今般, 平成17年度のインフルエンザワクチンによる副作用の報告状況及び安全対策をまとめたので紹介する。
(2)平成17年度のインフルエンザワクチンによる副作用の報告状況
平成17年度のインフルエンザワクチンの推定出荷本数は, 約1,932万本であった。また, 医薬品との因果関係が不明なものを含め製造販売業者等からインフルエンザワクチン接種によるものとして薬事法第77条の4の2第1項に基づき報告された副作用は, 102症例, 139件であった。
数多く報告された副作用報告は, 肝機能障害等14件, 発疹等11件, ショック・アナフィラキシー様症状10件, 発熱10件, 注射部位の紅斑・腫脹等9件, 痙攣7件, ギラン・バレー症候群4件などであった。
インフルエンザワクチンによる副作用の報告状況について, 年齢・転帰毎の報告件数を表1 に示す。
なお, 死亡の症例及び後遺症の症例については, 感染症, ウイルスの専門家からなるインフルエンザワクチン等について評価する検討会(以下, 「ワクチン副反応検討会」)における検討結果を, 死亡の症例においては表2 に, 後遺症の症例においては表3 に示す。
また, 薬事法に基づく副作用報告とは別に, 平成6年の予防接種法の改正に伴い実施されている予防接種後副反応報告制度があり, 当該制度による平成17年度のインフルエンザワクチンによる副反応報告件数(因果関係の不確かな報告を含む)についても, 参考として表4 に示す。予防接種後副反応報告制度は, 予防接種実施要領に基づき予防接種法による定期接種として予防接種した被接種者の健康状況の変化について情報を収集し広く国民に提供すること等を目的としたものである。当該制度によるインフルエンザワクチンの副反応の報告対象は, 定期接種対象者であり, 薬事法に基づく副作用等報告の報告対象者とは異なる。
表1 平成17年度のインフルエンザワクチンによる副作用の報告状況
表2 平成17年度のインフルエンザワクチン接種における死亡の症例
副作用名:肝不全(急性肝不全)
既往歴・合併症:特になし
インフルエンザワクチン接種。
その後, 発熱, 嘔吐, 嘔気, 摂食困難を繰り返し, 急性肝不全を出現。
接種71日後, 入院。エコーで肝脾腫, 胆石, 胆嚢炎を認め, 胸水, 腹水が増加。
接種130日後, 死亡。 インフルエンザワクチン接種から肝不全発現時の臨床症状, 臨床検査値等の詳細な情報がないことから, インフルエンザワクチン接種との因果関係は評価できない。
副作用名:脳炎
既往歴・合併症:慢性腎不全, 多発性脳梗塞(接種16日前に発症), 気管支喘息, 傾眠
インフルエンザワクチン接種。
接種1日後, 発熱, 眼瞼発赤, そう痒感出現。
接種2日後, 嘔吐, 喘鳴, 首の周囲より不随意運動が出現。頭部MRI所見で, 右小脳に線状, 側脳室周辺・後頭葉にも小さな梗塞像あり。
接種13日後, 白血球増加, CRP上昇のため, 抗菌剤, 非ピリン系感冒剤等による治療開始。
接種15日後, MRI及び脳波により脳炎と診断し, ステロイドによる治療開始。
接種51日後, 死亡。 本所見では, 脳炎と診断した根拠としては乏しく, 接種前に発症した多発性脳梗塞の増悪によると考えられるため, インフルエンザワクチン接種との因果関係は認められない。
副作用名:心筋炎(急性心筋炎)
既往歴・合併症:アトピー性皮膚炎, 貧血, ペースメーカー調律
2回目のインフルエンザワクチン接種。その後, 38.8°Cの発熱。
接種1日後, 近医Aを受診し, 感冒の診断を受け, 総合感冒剤, 抗生物質, 抗炎症剤等による治療開始。
接種2日後, 解熱するも全身倦怠感強く, 胸痛が出現し, 近医B受診。
自立歩行も困難で, 低血圧, 心機能低下を認める。その後, 心原性ショックを疑いC病院へ転院。完全房室ブロックに対し心室ペーシングを開始したが, 心室細動出現。
接種3日後, 死亡。 症状発現は2回目の接種後12時間以内であり, 時間的な経過からは, 因果関係を否定しきれないが, 急性心筋炎の原因検討に必要な臨床検査値, 剖検結果等の情報が得られなかったため, 総合的な評価としては, インフルエンザワクチン接種との因果関係が評価できない。
(参考)平成18年度に報告された平成17年度のインフルエンザワクチン接種における死亡の症例
副作用名:突然死
既往歴・合併症:高血圧
インフルエンザワクチン接種。接種時36.8°Cであり, 患者の状態所見に異常なし。
その後も, 家族の話によると, 特に患者に変化なし。
接種6日後, 家族が浴場で倒れている患者を発見。病院に搬送されたが, 死亡。 既往歴や死亡に至った状況等の詳細情報が得られておらず, 情報不足のため, インフルエンザワクチン接種との因果関係が評価できない。
副作用名:肺水腫, 肺炎
既往歴・合併症:高血圧
インフルエンザワクチン接種。(接種日等不明)
急に苦しみ出したとのことで, 救急外来来院。意識レベル低下, 不隠あり。
著明な低酸素血症と高炭酸ガス血症, アシドーシスの状態。胸部聴診にて湿性ラ音聴取。胸部X線写真上, 両肺透過性低下あり。白血球数の増加, CRPの上昇。人工呼吸管理開始, アシドーシス是正するも, 来院1時間後に心肺停止。
心臓マッサージ等により一旦心拍再開するも, 再度心肺停止。その後, 死亡。 接種から発症までの詳細情報が得られておらず, 情報不足のため, インフルエンザワクチン接種との因果関係は評価できない。
表3 平成17年度のインフルエンザワクチン接種における後遺症の症例
副作用名:脳症(急性脳症)
既往歴・合併症:熱性痙攣
今回の接種の前年もインフルエンザワクチンを2回接種したが, 副反応等の異常なし。
インフルエンザワクチン接種。
接種3時間後, 痙攣発作, 発熱が出現。救急隊により病院搬送。抗痙攣剤, 浸透圧利尿剤, 抗生物質等による治療開始。痙攣は消失するも意識は回復せず, 髄液検査を実施。(細胞数2/3, 細菌培養陰性, ウイルス分離陰性)
接種1日後から, 低体温療法, 大量免疫グロブリン療法開始。
接種48日後, 寝たきりで筋緊張強く, 視線は合わない状態が継続。経管栄養, リハビリテーションを継続。 熱性痙攣の既往歴はあるが, ワクチン接種3時間後に発熱と痙攣を発症し, その後, 脳症となっているため, インフルエンザワクチン接種との因果関係が否定できない。
副作用名:注射部位瘢痕
既往歴・合併症:特になし
3年前よりインフルエンザワクチン接種時に接種部位局所の発赤, 腫脹を認め, 毎年抗ヒスタミン剤内服。
1回目のインフルエンザワクチン接種。
接種5〜6時間後, 前年と同様に一過性の発熱と局所反応が出現。
2回目のインフルエンザワクチン接種。
接種5〜6時間後, 39°C超の高熱と局所の腫脹が出現。
接種4日後, 解熱するも, 局所に5.5×4.0cmの硬結が残存し, 中央2.0×1.5cmは潰瘍化。
接種9日後, 局所中央部が瘢痕化。 3年前から毎年接種部位の発赤, 腫脹等があるため, インフルエンザワクチン接種との因果関係が認められる。
副作用名:ギラン・バレー症候群
既往歴・合併症:逆流性食道炎, 高血圧
インフルエンザワクチン接種。
接種27日後, 両足底のじんじん感が出現。
接種30日後, 近医入院。(髄液検査, ほぼ正常)
接種32日後, 意識清明, 構音障害なし。ラセーグ徴候陽性, 腱反射消失。寝たきり状態であり, 急性の多発根神経炎の所見等により, ギラン・バレー症候群と診断。
接種33日後, 球麻痺出現。スルホ化人免疫グロブリンGにて治療開始。
接種46日後, 症状やや改善し, 介助で自立保持可となる。
接種50日後, リハビリ継続目的で, 転院。 ワクチン接種後1ヵ月以内の発症であり, 他に神経疾患を発症する原因もないため, インフルエンザワクチン接種との因果関係が否定できない。
副作用名:白質脳脊髄炎(急性散在性脳脊髄炎)
既往歴・合併症:特になし
インフルエンザワクチン接種。
接種7日後, 発熱(37.4°C)等の風邪症状が出現。更にその後, 両下肢筋力低下, 排尿困難等が認められた。
接種12日後, 排尿困難のため, 近医A受診。
接種15日後, 歩行不能のためB病院受診, 入院。両下肢筋力低下, 両下肢感覚低下, 膀胱直腸障害あり。胸椎MRIで胸椎-胸髄に高信号を認め, 髄液細胞数も増加していたため, ADEMと診断し, ステロイドパルス施行。
接種65日後, 症状に回復傾向は認められたが, 膀胱障害, 両下肢の筋力低下, 感覚障害は残存。 ワクチン接種1週間後から風邪症状が出現し, 接種2週間後まで頃に神経症状が出現し認められ, 急性散在性脳脊髄炎と診断されており, 他に神経症状を来す原因も見当たらないことから, インフルエンザワクチン接種との因果関係は否定できない。
表4 平成17年度インフルエンザワクチンにおける副反応報告(因果関係の有無にかかわらない報告)
(3)インフルエンザワクチンの安全対策
ワクチン副反応検討会の検討により, 新たな安全対策を講じる必要があるとされた副作用等はなかった。使用上の注意の改訂について(その179)
前号(医薬品・医療機器等安全性情報 No.227)以降に改訂を指導した医薬品の使用上の注意について, 改訂内容, 主な該当販売名, 参考文献等をお知らせいたします。
塩酸アミオダロン
(重大な副作用)] 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH):抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)があらわれることがあるので, 低浸透圧血症を伴う低ナトリウム血症, 尿中ナトリウム排泄量の増加, 痙攣, 意識障害等の症状があらわれた場合には投与を中止し, 水分摂取の制限等適切な処置を行うこと。
シロドシン
(重大な副作用)] 失神・意識喪失:血圧低下に伴う一過性の意識喪失等があらわれることがあるので, 観察を十分に行い, 異常が認められた場合には, 投与を中止し適切な処置を行うこと。
メシル酸カモスタット
(重大な副作用)] 高カリウム血症:重篤な高カリウム血症があらわれることがあるので, 血清電解質検査を行うなど観察を十分に行い, 異常が認められた場合には投与を中止し, 適切な処置を行うこと。
テリスロマイシン
(重大な副作用)] 肝炎, 肝機能障害, 黄疸:肝炎, AST(GOT), ALT(GPT), Al-Pの著しい上昇等を伴う肝機能障害, 黄疸があらわれることがあるので, 観察を十分に行い, 異常が認められた場合には投与を中止し, 適切な処置を行うこと。
QT延長:QT延長があらわれることがあるので, 観察を十分に行い, 異常が認められた場合には投与を中止し, 適切な処置を行うこと。
イトラコナゾール
(重大な副作用)] 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群), 中毒性表皮壊死症(Lyell症候群), 剥脱性皮膚炎:皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群), 中毒性表皮壊死症(Lyell症候群), 剥脱性皮膚炎(紅皮症)があらわれることがあるので, 観察を十分に行い, 異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
アナフィラキシー様症状:アナフィラキシー様症状があらわれることがあるので, 観察を十分に行い, チアノーゼ, 冷汗, 血圧低下, 呼吸困難, 胸内苦悶等があらわれた場合には投与を中止し, 適切な処置を行うこと。
ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン
市販直後調査の対象品目一覧
注)効能追加等における対象
お知らせ
医薬品・医療機器等安全性情報は, 医薬品医療機器情報提供ホームページ(https://www.pmda.go.jp/)又は厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)からも入手可能です。