透明酸化物電極(以下、「透明電極」)を有する透明有機デバイスにおいて、透明電極の結晶化が性能向上に有利とする従来の予想を覆し、透明電極の結晶化を阻害することで、性能が大幅に向上することを見出した。軽量、フレキシブルな次世代の電子デバイスである有機デバイスは、透明電極と組み合わせることで有機デバイス全体の透明化が可能となり、その応用が大きく広がる。しかしながら、透明電極を組み込んだ有機デバイスは、良好な性能が得られないことが実用化の障害となっていた。これまで、デバイス性能を向上させる観点からは、透明電極の結晶化度が高いほどその電気伝導性が向上するため、性能向上に有利と予測されていた。今回、1)透明電極の結晶化によって生じる応力が、デバイス内の層界面(具体的には透明電極の下に形成された電荷注入層と有機薄膜の界面)にナノメートルオーダーのわずかなギャップを発生させること、並びに、2)透明電極の結晶化を意図的に阻害してギャップの形成を抑制することにより、デバイス性能が大幅に向上することを見出した。これは透明電極の結晶化が性能向上に有利とする従来の予測を覆すものである。この知見により、窓のように透明性が要求される場所へも、高性能な有機デバイスを搭載できるようになり、有機デバイスの用途が大きく広がる。
エレクトロニクス・製造領域の最近の研究成果の概要図