2025年1月
S-ROOMからSound Studioへ
2025年1月31日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース
こんばんわ。伊藤彰教です。
1999年に設立されたメディア学部では、2001年から演習室「S-ROOM」を設置し、ディジタルメディアのための音楽・音響を学べる演習室として運用してきました。今年度の9月より、2001年以来の大幅アップデートを敢行し、名前が「Sound Studio」にリニューアルされました。これに伴い、20年以上継続してきたWindows環境から、いよいよMacOS環境へと大幅リニューアルを行いました。
アプリケーションも新規導入し、音楽スタジオやポストプロダクションなどのプロが使う「ProTools」が使えるようになりました。この秋から初めて導入したアプリケーションですが、産業界の標準ツールを使えるということで、熱心に練習に励む学生さんがこれまで以上に増えたのが印象的です。
新アプリとしては、楽器音の音色を制作したり、エフェクターを開発できるツール「Reaktor」を導入し、今学期に初めて本格的な演習を行いました。アナログシンセサイザーの操作感でビジュアル・プログラミングできるツールによる演習は、教員であるわたしも学生さんも初めての経験でしたが、すでに実施しているハードウェアのアナログシンセの操作練習のあとなので、スムースに取り組んでいる姿はたいへんに頼もしかったです。以下は、学生さんが練習として組んだシステムの一例です。
Sound Studioでは伊藤謙一郎先生が担当されるメディア専門演習の他、わたくしが担当するプロジェクト演習が開講されています。多くの学生さんがにぎやかに参加してくれています。
リニューアルはいまも進行中であり、2025年度以降も少しずつ新しい道具・アプリがが追加され、演習で学べる内容も時代に合わせて徐々に変容を遂げる予定です。在校生はもちろんのこと、こうした分野に興味がある高校生のみなさんも、ぜひ楽しみにしていてください。卒業生のみなさんは、紅華祭など大学においでになる際に、ぜひ新しくなったS-ROOM...もとい、Sound Studioに遊びに来てくださいね。
学生・若手のためのAESジャパンフォーラム2024参加記
2025年1月29日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース
こんにちは。伊藤彰教です。
昨年度2023年は、東京工科大学にて開催された「学生・若手のためのAESジャパンフォーラム」ですが、今年度のフォーラムは2024年11月に、東京藝術大学千住キャンパスにて行われました。
今年度もメディア学部生の有志が学生主体の運営委員会に参加する他、伊藤彰教研究室『exSDプロジェクト』からは、2組3名の学生さんが、音響に関する研究発表を行いました。
山地阿世流さん・鈴木開斗さん『ステレオ化された楽器音源の立体音響配置の変化による印象比較』
三浦海響さん『インタラクティブメディアにおけるAudio Listererの位置調整に向けたテストアプリケーションの開発』
研究発表でもメディア学部生が活躍してくれましたが、運営スタッフとしても、専門的な機器の操作スタッフとして責任の一旦を担うようになりました。
(東京藝術大学の音響デモ機材を操作するメディア学部生岩堀さん)
AES (Audio Engineering Society)は、世界的な音響エンジニアリングの業界・学術団体です。日本支部は国際的にみてもにも活動が盛んな支部のひとつであり、音響制作に興味のあるメディア学部生はこうした活動に参加しやすい環境が整えられています。
在校生はもちろんのこと、この分野を目指す中高生のみなさんも、メディア学部のプロジェクト演習<Audio Engineering><サウンドデザイン>、そしてexSDプロジェクトに参加してもらえるとうれしいです。サウンドの新しい地平を切り拓く多くのプロフェッショナルや、志を同じくする他校の同世代の人たちといち早く仲間になれることと思います。
Forumaesyouth24
(来年はどの教育機関で開催されるか楽しみです)
サウンドデザインの研究書
2025年1月27日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース
こんにちは。伊藤彰教です。
音楽創作でも音響工学でもない音の研究は、分野名が確定しておらずイメージが湧きにくいかもしれませんが、そのような分野を一手に引き受けるのが<サウンドデザイン>の世界です。この秋、日本では画期的な<創作面を中心としたサウンドデザインの研究>を紹介する書籍が出版されました。
英語の書籍であれば、サウンドデザインの研究書は多数出版されており、映画をはじめととした映像コンテンツのサウンドデザイン、ゲームを中心としたインタラクティブ・メディアのサウンドデザインなどの研究の状況を俯瞰することができますが、日本国内でのサウンドデザインに関わる研究が、日本語で出版されるのは非常に珍しいそうです。
この書籍を中心になってとりまとめられたのは、本学デザイン学部教授の松村先生なのですが、ありがたいことに、メディア学部教員であるわたくしも著者の1名として関わらせていただき、国際的なサウンドデザイン研究を日本語で紹介する章を担当する機会を得ることができました。
出版社のご尽力もあり、ディジタルミュージックの分野で非常に著名な藤本健さんのWebメディアに取材もしていただきました。こちらのWebサイトは、音楽音響機器やソフトウエアに興味のある方なら、一度はお世話になったかと思います。
東京工科大学は学部の垣根を超えて先端的・創造的分野に取り組んでいますが、それがこうした形で結実したのは非常にうれしく、ありがたいことです。こうした活動をきっかけに、音の世界に興味を持っていただける社会人や次世代を担う若い人たちが少しでも増えたら...とねがってやみません。
吉岡研究室から6名が学生発表会に参加
2025年1月24日 (金) 投稿者: メディア社会コース
大学コンソーシアム八王子主催の学生発表会に、吉岡研から6名が参加しました。そして、2名が優秀賞を受賞しました。
では、研究テーマごとに分かりやすく解説します。
◯東久保 一輝
研究テーマ「聴覚障害児を対象としたオノマトペ学習のためのデジタル教材開発」
日本語は外国語と比較してオノマトペを多く使う言語です。オノマトペの中には音を元にした表現も多くあり、聴覚障害児にとってそれらの言葉の意味を理解するのが難しい場合があります。そこで、本研究ではアプリを使い、動画による教材でオノマトペを覚える手法を提案します。聴覚障害児の療育を行なっている言語聴覚士の方々にもご意見を伺いながら、教材開発を進めています。
本研究では、私が開発した言葉を楽しく覚えるアプリ「Vocagraphy」を使っています。
▶︎Vocagraphy
https://blw.jp/
◯飯泉 春香【優秀賞】
研究テーマ「聴覚障害児の保護者を対象とした情報提供手法の検討」
聴覚障害児を持つ保護者は、専門的な情報をインターネットで調べる必要があります。例えば、医療・福祉・補聴器・特別支援学校・助成金といったキーワードがあげられます。先天性の聴覚障害児は1000人に1人いると言われており、しかも障害の種類も多様で、自分に必要な情報がインターネット上にあるとは限りません。そこで、本研究ではChatGPTに聴覚障害児に関する情報を学習させ、チャットで質問をした時に正しい情報を提示するかを検証しました。結論としては、ChatGPTに正しい情報を学習させた場合でも、回答が100%正しいという訳ではありません。今後は、別の生成AIについても研究対象とすることが望まれます。
◯岩館 結名
研究テーマ「聴覚障害者が音楽イベントに参加する際の課題及び実態の調査と提言 」
聴覚障害者の中には、補聴器や人工内耳を装用して音楽イベントを楽しむ人々がいます。2024年4月より障害者差別解消法の改正法が施行されたことにより、民間企業を含めた全ての場所で合理的配慮が求められています。一方で、音楽イベントにおいては、聴覚障害者が聞こえる人と同じように楽しめる環境は整っていません。本研究では、聞こえに関わらず音楽イベントを楽しむことができることを目標に、アンケート調査の実施準備としてフォームの設問設定について作成と検証をしました。アンケートは、来年度以降に実施する予定です。
◯梶原 翔【優秀賞】
研究テーマ「アニメーションと振動デバイスによる英語発音手法の提案 」
今は小学校でも英語の授業が行われており、ネイティブスピーカーの先生が指導することもあります。聴覚障害児は英語の発音を正しく聞き取れないことがあるため、正確に発音することも困難な場合があります。本研究では、英単語の発音記号から「ネイティブ・カタカナ(造語)」に変換し、それを読むことで、実際の発音に近いサウンドになるかを検証しました。検証には、リアルタイム字幕アプリを使い、英語発話者として正しく認識されるかを分析しました。実験結果から、文字数が多い英単語の場合は、「ネイティブ・カタカナ」から プロソディー(アクセント、イントネーション、音の長さなど)を読み取ることが難しいため、英語として正しく認識されない場合があります。カタカナのフォント・色・大きさなどを工夫することで、発音を正しく視覚的に表現する改良が求められています。
◯迫屋 光華
研究テーマ「聴覚障害児の保護者によるSNSの活用 ~テキストマイニングによるブログ分析~ 」
聴覚障害児を持つ保護者は、ブログで情報交換をすることが知られています。インターネットで検索すると、ブログへのリンクが上位に表示されることからも、情報源といて利用されていることが分かります。本研究では、これらのブログの内容や、コメント欄に書かれたやり取りを分析し、保護者同士が情報源としてブログを選択する理由を明らかにしました。特に、人工内耳に関する情報がインターネット上には少なく、皆さんが困っているようで、実体験を元にブログに情報をまとめる人が一定数いることが分かりました。
◯渡部 日和
研究テーマ「聴覚障害児の保護者を対象としたクローズドコミュニティの研究 」
聴覚障害児を持つ保護者が情報交換をする場として、LINEオープンチャットがあります。いくつかのチャットが存在しますが、コミュニティの構成メンバーによって、そのやりとりに差があります。本研究では、3つのチャットを対象にやり取りを分析し、構成メンバーや質問の内容などによって、どのような傾向があるのかを明らかにしました。聴覚障害児は少ないため、通常の子育てとは違い、情報が少ないことが保護者を困らせています。そんな中で、LINEオープンチャットのように、匿名で気軽に質問ができる場は、保護者の不安を解消するために必要なコミュニティとなっているのでしょう。
発表した皆さん、お疲れ様でした。
メディア学部 吉岡 英樹
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略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「サイレント・コミュニケーション」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。
子どもから大人まで大盛況!「サイエンスアゴラ2024」に出展。
2025年1月22日 (水) 投稿者: メディア社会コース
サイエンスアゴラ2024に出展し、600名以上が体験コンテンツに参加
2024年10月26日(土)・27日(日)にお台場テレコムセンターにて、科学技術振興機構が主催する科学と社会をつなぐイベント「サイエンスアゴラ2024」にサイレント・コミュニケーションを出展しました。前述した株式会社ゼネラルパートナーズと共同開発した体験コンテンツの他にも、家族連れで楽しめる体験コンテンツも展示しました。
昨年に続き2回目の出展となりましたが、今年はブースの広さを2倍にしたところ、昨年の3倍以上となる600名を超える人々が長蛇の列を作り体験に参加しました。参加者は小学生から大人までと幅広く、楽しくジェスチャーや手話を一緒に表現したり、聞こえにくさを真剣に体験したり、聴覚障害への理解が深まった様子が伺えました。
●くろまる出展の詳細はプレスリリースをご参照ください。
プレスリリース:メディア学部の吉岡研究室がサイエンスアゴラ2024に出展
https://www.teu.ac.jp/press/2024.html?id=204
●くろまる2024年10月から12月にかけてのサイレント・コミュニケーションに関する取り組みをまとめました
吉岡英樹メディア学部講師が子どもから大人までを対象に聴覚障害理解のワークショップ「サイレント・コミュニケーション」を実施拡大
https://www.teu.ac.jp/information/2024.html?id=272
メディア学部 吉岡 英樹
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略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「サイレント・コミュニケーション」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。
障害の有無に関わらず、共に仕事ができる社会の実現に向けて
2025年1月20日 (月) 投稿者: メディア社会コース
「障害者雇用」をご存知でしょうか。その名の通り、障害のある人々を企業などが雇用することです。この「障害者雇用」の考え方は先進国では変わりつつあります。
例えば、IT企業のマイクロソフトは、障害者を雇用することで、企業の利益がアップすると考えています。なぜなら、障害のある人々と一緒に働くことで、商品やサービスの不便な点について気づくことが出来るからです。多様な人々の意見を取り入れることで、結果として障害の有無に関わらず、多くの人にとってより便利な商品やサービスを開発することが可能になります。
日本でも、大企業などは障害者雇用を積極的に行なっていますが、雇用人数だけが注目されており、「一緒に働く」という観点に欠けている企業が多いのが実情です。
企業と障害者雇用促進を目的とした体験型コンテンツを開発しワークショップを実施
10月16日に、障害者の就労移行支援に取り組んでいる株式会社ゼネラルパートナーズが運営するatGPジョブトレ大手町にて、障害者の支援スタッフの方々を対象にワークショップを実施しました。20名の方々が参加し、5つのグループに分かれて開発した体験コンテンツを視聴し、聴覚障害者が職場で困っていることなどについてディスカッションしました。
世の中にはさまざまな聞こえの方がいます。コミュニケーション手段を工夫して、誰もが働きやすい環境を整えることが必要です。今後は、実際に聴覚障害者の方を雇用している企業に出張し、サイレント・コミュニケーションを実施する計画を検討しています。
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●くろまるワークショップの詳細は、atGPジョブトレのブログをご参照ください。
参考記事:東京工科大学と障害者雇用促進のためのコンテンツ開発で連携!
https://info.atgp.jp/jobtra-blog/article002-19
●くろまるサイレント・コミュニケーションの詳細はプロジェクトHPをご参照ください。
サイレント・コミュニケーション 公式サイト
https://www.silentcommunication.jp/
メディア学部 吉岡 英樹
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略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「サイレント・コミュニケーション」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。
2024年度 修士1年生中間発表会
2025年1月17日 (金) 投稿者: メディア技術コース
少し前になってしまいましたが、1月11日、修士1年生の中間発表会を実施いたしました。この発表会は、修士課程2年間のちょうど中間地点における研究成果を発表する場であり、一貫早期プログラムの学生にとっては半年間の成果を披露する貴重な機会です。26名の修士1年生がそれぞれの研究テーマについてポスター発表を行い、大学院担当の教員や学部の学生も参加して、大いに盛り上がりました。
研究の進捗を確認する重要なステップ
修士課程は短く濃密な期間であるため、1年目の終わりにしっかりと研究の進捗状況を確認することは非常に重要です。今回の発表会では、学生たちがここまでの研究成果を整理し、残り1年間の研究計画を見据えた内容を発表しました。一貫早期プログラムの学生にとっても、この半年間で得た知見や課題を振り返る良い機会となったようです。発表の形式はポスター発表ですが、ただ結果を報告するだけでなく、今後の展望や解決すべき課題についてもしっかり説明されていました。教員からの鋭い質問やアドバイスも多く飛び交い、学生たちにとっても刺激的な時間だったのではないでしょうか。発表されたテーマは多岐にわたり、メディアサイエンスならではの幅広い分野がカバーされていました。センサーやインタラクティブ技術を使ったプロジェクト、AIやデータ解析を活用した研究など、各学生が独自の視点で取り組んでいることが伝わりました。特に印象的だったのは、観覧者との対話が活発に行われていた点です。学部の学生たちも積極的に質問しており、「自分たちが将来研究するテーマ」をイメージする良い機会になったのではないかと思います。
発表会場の様子
懇親会と表彰
発表終了後には、同会場で懇親会(慰労会?)を行いました。発表を終えてほっとした表情を見せる学生たちが多く、和やかな雰囲気の中で交流が行われました。また、発表時に教員や参加学生による投票を行っており、懇親会内で「優秀発表賞3名」と「学生投票賞1名」を表彰しました。表彰された学生たちにとって、これは大きな励みになるはずです。また、受賞しなかった学生にとっても、他者の評価を得られた経験はモチベーションアップにつながるでしょう。これを糧に、今後の研究活動にもさらに力を入れていってほしいと思います。今回の発表会を通じて、学生たちは自身の研究を客観的に見つめ直すことができたと思います。また、教員や学部生からのフィードバックを受けたことで、新たな気づきや改善点も見つかったことでしょう。これからの1年間で、さらに研究を深化させ、最終発表会に向けて準備を進めていってほしいと思います。
優秀発表賞の賞状授与
次回は修士2年生の中間発表会となります。こちらはスライドによるプレゼンテーション形式で、緊張感がより増す場面になるかと思いますが、それぞれの研究の発展を楽しみに待ちたいと思います。
太田
卒業論文の提出
2025年1月15日 (水) 投稿者: メディア技術コース
みなさん、こんにちは。
2024年度のメディア学部卒業論文の提出締切は明日2025年1月16日です。私の研究室では2024年の12月から論文作成を始めていましたが、年内はまだ、書けない章を抱えている学生が多く、評価実験を並行している学生もいてなかなか大変でした。年末年始は大学も閉まってしまい、各自が自宅等で論文に取り組む必要があります。そのため論文をどう仕上げるかの「宿題」を出して休みに入ったのですが、1月7日に年明け最初のミーティングを行って確認してみると、予想より進んでいる学生とそうでない学生にはっきり分かれていました。その後の一週間の間に修士課程1年生の中間発表会や学会発表の申込、原稿提出などもあり、卒論指導も行う、まだ授業もある、と近年では私の研究室にとって最も忙しい一週間でした。
それでも、毎年のことなのですが提出直前の10日間くらいで学生の皆さんは底力を見せてくれます。自分がそれまで進めてきたことを整理して文章化していく中で、それまで以上に自分の研究に対する理解が深まるのだと思います。それまでになかった図表などが増えグッっと内容が濃くなります(もう少し早くそこに至ってほしい!)。あとは提出が間に合うか。公式な締切時刻の前に、研究室内部の締切時刻を設けて余裕を持たせてはいるのですが、なぜかギリギリになってしまう学生が出てきます。明日はドキドキしないで済むといいのですが。
(メディア学部 寺澤卓也)
学部長密着動画が続々公開!
2025年1月13日 (月) 投稿者: メディア技術コース
メディア学部の大淵です。
先日、メディア学部長の密着動画を紹介させていただきましたが、その後、続編が次々とアップされています。
メディア学部の動画もなかなかの出来だと思っていたのですが、他学部もとても興味深い内容になっています。各学部に共通して言えるのは、学生も教員も、面白いと思えることに熱中しているときが一番輝いているということです。
もうすぐ入試の時期ですが、本学の多くの入試(A日程,B日程,共通テスト利用など)では追加費用なしで複数の学部を受けることが可能です。最終的にどの学部に入学するか迷ったときは、こんな動画も参考にしていただければと思います。
追記:工学部も追加されました!
「殺人狂時代(チャップリン)」におけるセントラルクエスチョン
2025年1月10日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん、こんにちは。メディア学部の兼松です。
(今日の記事は、チャップリンの映画「殺人狂時代」のネタバレを含みます)
今期の私の授業の最後数回分はチャップリンの映画について紹介、解説しました。
チャップリンは映画の歴史・発展を語る上で重要な人物の1人ですが、映像などに興味がある割合が多いメディア学部の学生でも、想像以上に「見たことがある」と答える学生が少ないです。
たしかに、最近の映画などと比べると、CGなども使われていませんし、派手さはありません。
しかし、ある意味シンプルだからこそ、学べることはたくさんあります。当然ですね。でなければ、名作として後世に語り継がれたりはしません
チャップリンはその生涯で数多くの作品を残しましたが、色々な意味で話題になりやすいのは晩年に作られた「独裁者」や「殺人狂時代」でしょうか。特に殺人狂時代は公開当時、今風に言えば大炎上した作品です。
これは冷戦の時代だったということも多いに影響しますし、作品だけでなく、当時チャップリン本人にかけられていた様々な疑惑の影響も無視できません。
これらの疑惑が真実だったのかどうかについて言及するつもりはありませんが、戦争を知らない世代である今の我々日本人がみると、むしろ純粋に作品を楽しめるのではないかとも思います。
さて、先日の記事では、悲劇やバッドエンドの作品に13フェイズや「満足」が適用しづらいという話をしました。
この殺人狂時代も、単純なハッピーエンドではありません。
実在の殺人鬼・犯罪者を主人公のモデルにした作品ですが、最終的には逮捕され、処刑されてしまいます(処刑されるシーン自体は映されませんが)。したがって、メインストーリーとしては純粋なハッピーエンドではありません。
また、実在の事件をもとにしているため、セントラルクエスチョンとしても、例えば「主人公は完全犯罪を成し遂げられるのか?」といった類のものではありえません。
既存作品のセントラルクエスチョンや「満足」を抽出する場合、ハッピーエンドの作品でも基本的には「どういうオチなのか」ということがキーになります。オチが最終的な作品の印象に大きく影響するため、それまでの話というのは、基本的に綺麗におとすために積み上げられているはずです。これはバッドエンドや悲劇でも基本的に変わらないはずです。
殺人狂時代においてチャップリンが視聴者に最も伝えたかったテーマは何かと言われれば、やはり大炎上した大きなポイントのひとつでもある最後の判決のシーンや処刑を待つシーンでのセリフではないかと思います。
このチャップリンのメッセージは、殺人狂時代の物語の中では「犯罪者が最後に犯行の動機を明かす」という行動として描かれています。だからこそ、バッドエンド(正確に言えばアンハッピーエンド)として、しっかり機能しています。
こういった視点でみると、それまでの「犯行を重ねるシーン」も少し見方が変わってくるのではないでしょうか?
ぜひ、こういった視点でも殺人狂時代を見直してみてください。きっと物語構造を掴むきっかけになると思います。
(文責:兼松祥央)
物語構造における「満足」
2025年1月 8日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん、こんにちは。メディア学部の兼松です。
私が普段授業で解説しているシナリオ執筆手法は、私の学部生時代の指導教員である金子満先生が本学で開発した、段階的執筆手法です。
この手法には13フェイズと呼ばれる、いわゆる「箱書き」の一種を用いた工程があります。
これは、様々な既存作品のストーリーから導き出した、簡単に言えば「よくある話の構造・展開」を、ストーリー制作の際のテンプレートのようにしたものです。
厳密に言えば、よくある話が書けるだけということではなく、「頭の中にある物語に関する様々なアイディアを、他人に伝わりやすい物語に落とし込むためのガイドライン」だと私は捉えています。
映画の中では様々な事件やイベントが起こりますが、他人に伝わりやすい・理解しやすい物語に仕上げるためには、これらのイベントを無秩序に並べていくだけでは当然だめです。
ですので、13フェイズでは、「日常」「異変」からはじまり、「糸口」「対決」「勝利」「満足」のように、物語の展開の中で果たすべき「機能とその順番」がガイドラインとして設定されているわけです。
しかし、これも完璧なものではありません。実際、演習などで学生が物語制作にチャレンジすると、うまくいかない学生がいます。
うまくいかない学生によくある共通点のひとつに、「悲劇やバッドエンド」の作品を書こうとした場合があげられます。
13フェイズの元になっている分析ではハリウッド映画によくあるハッピーエンドの作品が対象になっていたことも事実です。
実際、13フェイズの機能名を見てみると、最後のフェイズの名前は「満足」です。一応13フェイズには動的なストーリーの場合の機能名と、静的なストーリーの機能名が用意されていますが、いずれにしても悲劇やバッドエンドには一見適用しづらい名前がついています。
では、悲劇には「満足」という機能は必要ないのでしょうか?
そんなことはありません。
次回はこの辺りについて書こうと思っています。
(文責:兼松祥央)
物語制作におけるセントラルクエスチョン
2025年1月 6日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース
あけましておめでとうございます。メディア学部の兼松です。
年は変わったばかりですが、メディア学部のスケジュールとしては、今週が多くの授業の最終回の週です。
昨年度やそのもっと前と比べると、今年度は様々な授業を担当しました。私は主要な研究テーマの1つが「物語の構造」ですので、様々な授業でこの物語の構造を例に出して説明することがあります。
年末年始に振り返ってみると、物語の構造の中でも、セントラルクエスチョンとオチの作り方に力を入れて解説したなぁと感じました。
セントラルクエスチョンは物語を作る上で軸となる重要な要素なので、授業をする中で正しく掴んで欲しいという思いがあるのはもちろんですが、様々な学生の研究相談を受ける中で、セントラルクエスチョンという概念への理解が少ないから、(シナリオやそれに関する)研究や分析の軸もぶれていて、うまく説明できないと感じたからでもあります。
セントラルクエスチョンとは、簡単に言えば、「物語を読み進めていく中で、常に読者・視聴者に作品側から投げかけ続ける問い」のことです。
例えば王道的なミステリー・刑事物・探偵ものの場合、シンプルに言えば「主人公は事件を解決できるのか?」がセントラルクエスチョンになります。
作品によって起きる事件も違いますし、派生的に起きるイベントの種類も数も違います。これらの作品は、最初に事件が起きて、主人公が捜査し、犯人っぽい人を特定したけどそれはフェイクで、それでも頑張って努力を重ね、最終的に事件が解決するというのがよくある構造です。
これは、物語序盤、発端である第一幕から第二幕展開へ移行する際に「事件を解決できるのか?」という問いを投げかけてそこに没入するからこそ、途中途中で挟まる様々なトリックやミスリードに一喜一憂しながら、視聴者はワクワクしながら最後まで物語を読む気になるのです
言われてみれば、当たり前のことですよね?そんなに大々的に言うようなことでもありません。
ただ、いざ自分で物語を書こうとすると、結構難しいです。シナリオを書く授業でも、これがうまく実現できない学生が多いです。既存作品を分析する際も同じですね。その作品のセントラルクエスチョンがなんなのか、なかなか掴めません。さらに言えば、確実にセントラルクエスチョンを抽出できる手法や技術も存在しないというのが現状です。
この辺りが、センスや経験・暗黙的なノウハウを中心に作られてきたコンテンツ制作を体系化する際の難しさでもありますね。
(文責:兼松祥央)
ゲスト講義のご紹介3I&S BBDOの松井亘平さん(メディア学部 藤崎実)
2025年1月 3日 (金) 投稿者: メディア社会コース
メディア学部の藤崎実です。
「メディア特別講義I」では私の担当回に広告業界からのゲストをお招きしています。
そして2024年11月1日は、株式会社I&S BBDOのExecutive Creative Directorの松井亘平さんにゲスト講義にお越しいただきました!
ご講演タイトルは、「課題解決のためのアイデアとストーリー」です。
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クライアントの課題を解決するために広告会社ができること、その課題解決にはクリエイティビティが大切だということを、これまでに手がけた数多くの具体例を取り上げてご講演いただきました。
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現代の広告は、その姿がなかなか学生からはわかりずらいものですが、広告の有意義な活動について、学生の理解促進ができました。
現在の広告会社に求められる様々なスキルに関して、最新の事例をもとにお話いただくことができ、多くの学生にとって有意義な授業となりました。
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「広告のもつ影響力」についてリアルにイメージすることができたようで、
履修生からも多くの質問が寄せられて、大変活気のある良い授業になりました。
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松井亘平さん、お忙しいところ、大変貴重なご講演、ありがとうございました!
(メディア学部 藤崎実)
ゲスト講義のご紹介2アジャイルメディア・ネットワークの吉永竜馬さん(メディア学部 藤崎実)
2025年1月 1日 (水) 投稿者: メディア社会コース
メディア学部の藤崎実です。
「メディア特別講義I」では、私の担当回に広告業界からのゲストをお招きしています。
そして2024年11月22日は、アジャイルメディア・ネットワーク 株式会社の吉永竜馬さん(アンバサダーマーケティング事業部 部長)にゲスト講義にお越しいただきました!
ご講演タイトルは、「ファンと一緒に行うマーケティング」です。
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アジャイルメディア・ネットワーク株式会社(略称:AMN)は、「ファンマーケティング」「アンバサダーマーケティング」のリーディングカンパニーです。
AMN では、SNSで自身の「好き」や「〇〇愛」を発信するような、熱量高いファンを「アンバサダー」と定義し、
彼らのビジネス貢献を可視化するツール「アンバサダープラットフォーム®」を独自開発し、
ファンの組織化・活性化を支援する「アンバサダープログラム®」を提供しています。
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今までのマスメディアに頼る広告ではなく、ファンの熱量を活用した、
ファンと企業のいわばパートナーシップの活動は、新しい可能性を生み出しています。
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当日は、多くの最新事例をもとにお話いただくことができました。
なかなかそうしたリアルなマーケティングに触れることがない学生にとって興味深い、とても有意義な授業となりました。
学生からの多くの質問にも丁寧に答えてくださり、吉永さんには感謝が尽きません。
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吉永竜馬さん、お忙しいところ、大変貴重なご講演、ありがとうございました!
(メディア学部 藤崎実)
AI時代のメディア学部にご期待ください
2025年1月 1日 (水) 投稿者: メディア技術コース
あけましておめでとうございます。
2024年は、戦争や経済などでいろいろと暗いニュースが多い年でしたが、そんな中で前向きになれるニュースとして、ノーベル賞をAI研究が席巻したということがありました。物理学賞を受賞したホップフィールド氏とヒントン氏は、物理モデルに基づくAIの学習アルゴリズムを生み出しました。化学賞を受賞したハサビス氏とジャンパー氏、ベイカー氏は、AIを使ったタンパク質の設計方法を生み出しました。
AI研究の中核となるのは情報科学と呼ばれる学問ですが、ノーベル賞に情報科学賞はありません。ですから、AI研究者がノーベル賞を受賞することは無いと思われてきたのですが、物理や化学の分野でもAI技術が欠かせないものになったことによって、ノーベル賞の受賞につながったのではないかと思います。
メディア学部が扱う分野でも、AIを使ったメディア研究の重要性が増してきています。動画生成AIの「Sora」や、声質変換AIの「RVC」など、メディアコンテンツを一瞬で自動生成してくれるソフトも次々登場しています。だったらメディア学部で学ぶことはもう無いのかというと、全然そんなことはありません。むしろ、こうした最新AI技術を使いこなすことで何ができるのか、学ぶべきことは益々増えてきています。
2025年のメディア学部は、AI時代に合わせて更に変わっていきます。皆さまどうぞご期待ください。
メディア学部長 大淵康成
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