おもしろメディア学 第49話 うるさいのに静か??
2014年10月29日 (水) 投稿者: メディア技術コース
みなさん、こんにちは。
みなさんは、「しずかさや 岩にしみいる 蝉の声」という松尾芭蕉の俳句をご存じでしょう。「山寺」の通称で知られる山形県の立石寺で詠まれた句ですね。情景は目に浮かびます。山があり、森があり、そして蝉が鳴いている。蝉の声はみなさん良く知ってますよね。アブラゼミのように大音響で鳴くセミでなくても、それなりに大きな声で鳴きます。さて、ここでもう一度句をよく見てみましょう。「ん?」と思った人もいることと思います。そう、この句は「しずかさや」で始まってます。「蝉が鳴いてるのにしずかなんですか〜?」と思いませんか?
それでは、みなさん、ちょっと実験をしてみましょう。音が聞こえないように、両手で耳を塞いでみたください。音は外耳道を通って鼓膜に届きます。鼓膜が振動し、耳小骨と呼ばれる小さい3つの骨を経由して内耳に入り、そこで聴覚神経を刺激して音が聞こえるわけです。耳介に手を当てて外耳道を塞げば、音は入ってきません。さて、静かになりましたか?何もしないときよりも、かえってゴーという感じの音が聞こえませんか?寝る前に、布団を被ってみてください。耳に入る音はかなり遮断されます。静かですか?何か「サー」という感じの音が聞こえませんか?音の実験では、無響室と呼ばれる壁が音をすべて吸収してくれる部屋を使います。この部屋は何の音もしないはずですね?ところが、その部屋に入ると、決して静かではありません。何か、「サー」という音が聞こえます。変ですね?
うるさいくらい蝉が鳴いていても「静か」。音が耳に入らなにのに「うるさい」。一体どうなっているのでしょう?
「しずかさや 岩にしみいる 蝉の声」の情景を分析してみましょう。辺りは、蝉の声以外は何も聞こえない。松尾芭蕉は偉大ですね。静かだから蝉の声だけが「岩にしみいる」ように聞こえる。辺りの状況を実にうまく表現していますね。私はこんな体験をしたことがあります。静かな山道を歩いているとき、遠くで牛が「モー」と鳴く声が聞こえました。その時初めて、「そうか、牛の声以外は何も音がしないんだ。」と気づいたのです。日常生活には種々の音があふれています。しかし、その場所はほんとに音がないのです。しばらく立ち止まって耳をすまし、何も音がしない静けさにひたりました。それから後は楽しい散歩でした。聞こえるのは自分の靴で落ち葉が「カサコソ」いう音だけ。「あー、静かだ。」と深く感じたのです。
このような、対比はとても重要です。画面一面黒の「夜」という絵はないでしょう。夜の表現には、月や星、街路灯、家の窓の明かりなどが描かれていることが多いですよね。明りがあってはじめて暗さが表現できるのでしょう。
相川 清明
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