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2008年02月09日

キスよりもせつなく 唯川恵

キスよりもせつなく (集英社文庫)


久々の唯川恵さんの作品です。いつもテーマがOL・恋愛・結婚・不倫etcといって完全に女性向きなのですが、なぜか結構好きな作品が多いです。今回は、ちょっと古い作品なのですが、特に一章を読み終えたときには、「・・・ベタすぎでしょー、あれー、ちょっとがっかり」って感じでした。けど、読み終えたときには、もうすっかり面白い作品に変ってました。

一章の内容が、主人公「知可子」がレンタルビデオ店で取ろうと思ったビデオを横からいきなり取られて、「徹」という男に出会う!というベタさ。そして、そのあと、見栄のために、勝手に恋人にしてしまう。さらに、後日、仕事先で再会!その働く姿をただただ目で追ってた・・・っておい!物語としてありきたりすぎやろ!

これで「知可子」と「徹」と「昔の男」でいろいろあって、前者二人が付き合いました、チャンチャンと終わっていたら、僕はもう残念な気分になっていたんだけども、そうではない。ここからが、さすが「唯川恵」さんって感じで、もう面白い!!一気に最後まで読んでしまった。

失恋の脱出方法がわからないときに
終わった恋の整理の方法は、いつだってたくさんの小説や女性雑誌が教えてくれたはずだった。なのに結局は、ただじっと沼の底で身体を丸めるように、傷がふさがるのを待っている・・・。(p.17)
とあるように、結局難しいんだよね。方法がわかってても、実際そうできるかは、別問題だったり。やっぱり、新しい恋をして調子に乗って前の恋を蹴っ飛ばしてしまうのが一番なんだろうね。

僕は、aikoの歌詞を借りて、「調子に乗って」といったが、作品中ではこう書いてあったりもする。
恋はまるでこのテーブルの上にある美しい蝋燭(ろうそく)のようだと思った。いったん火が点くと、その美しい色も姿も溶かして燃え続ける。・・・中略・・・それでも火が点いてしまえば、燃え上がるしかないのだ。(p.171)
あなたの恋の蝋燭に火はともっていますか?

最後に唯川恵さんの作品を読んだら、ハッピーエンディングじゃなくても、前向きになれたりするんだけども、今回の作品のメッセージ的なものを俺がピックアップするならここです。
人生は選択で過ぎてゆく。欲しいものを手にする時は、必ず何かを捨てなければならない。捨てることを躊躇して、両方をいっぱいにしてしまったら、いつかその重さに耐えかねて、前に進むことができなくなる。捨てる勇気があれば、こんなに身軽に、彼女たちのように、"今"に立ちつくすことなく、自分の道を歩き始められるだ。(p.274)


こういった細かい点を押さえつつ、後半にある、話のメインである、「零子と彩子」「ネルソンと和恵」といった、この人たちの行動と考えを追うと、もうほんと考えさせられます。



恋して人は強くなる。

create1192 at 18:43│Comments(0)TrackBack(0)│ [フレーム] │本(小説一般)

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