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2024年08月09日

下北沢X物語(4999)―自身の戦争の原点は長崎原爆―

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(一)先だって新聞記者に「きむらさんは長崎原爆で目覚めたと作品に書いていますが......」と聞かれた。「そうです。長崎原爆資料館を見学したのは中2の時です。自身が出会った最大の衝撃でした。人生も見通せずにうだうだと怠惰な日を送っていました。そんなときに長崎原爆に遭遇しました。思春期というのは死ぬのが怖い。館で観たのは死体の山、黒焦げの人体、爆風で吹き飛んだ市街、どれをとってもショックでした。後日、感想なるもの書けと言われたときに生まれて初めて懸命に書いたのです。外尾という女の先生が、私が書いた文章をガリ版に刷ってみなに配ってくれました。人に認められた初めての経験です。広島原爆のことを書いたり、戦争のことを書いたりするようになりましたが、長崎原爆は自身の原点ですね......」

原爆の破壊力はすさまじい、広島の証言集を読んでいてイメージが鮮明に浮かんできたのは、「広島の市街が吹き飛んでしまって、沖合に似島が見えました。強烈なショックでした」と。原爆取材で訪れたときに島へ渡った。山頂から市街が見渡せた。この一面があらかた吹き飛ばされたのだと実感できた。

原爆は使ってはならない兵器だ、被災した広島電鉄家政女学校の人から話を聞いた。「紙屋町で切符を販売していた仲間が行方不明になって探しましたけど見つかりません」原爆は爆心地では人間も溶かしてしまうと。心を持った人間をあっけなく蒸発させてしまう。跡形も無くこの世から人を消してしまう。究極の非人道兵器だ。

長谷川信は「きけわたつみのこえ」で「敵対しあう民族は各々その滅亡まで戦を止めることはない」と述べる。実際にウクライナがそうであり、ガザも同じだ。

(二)
長崎の鐘
今朝の新聞(朝日新聞)では「核開発問われる科学者」では、「止められない技術の暴走」を論じている。この中で「フランスの社会学者ジャック・エリュー」の説に言及している。

技術はひとたび始動すると勝手に増大し、抵抗は困難になる。

人間は良識は持ちはする。しかし、勝手に増大した技術の暴走は、人間は止められないと。これは原爆だけではない。とくに我々は登り出した山を危険だからと行って途中で止めることはい。非合理性をもっている。あの太平洋戦争もそうだ、始めたからには責任を持つ、などという情緒論が暴走する。終戦末期敗退を重ねながらも最後まで徹底抗戦と叫んだ。「一億総玉砕」というフレーズが思い出される。

現今の技術でもそうだ、典型的なのは原発だ。核燃サイクルは破綻している。にもかかわらず原発に頼ろうとしている。

今朝の新聞はトップに「南海トラフ巨大地震注意」という見出しで巨大地震の可能性を報じている。日本は地震国である、三つのプレートが重なっていて地盤そのものが脆弱である。原発はそもそも不向きな国家だ。なのにこれを集中立地させている。またぞろ安全神話が復活し、炉は60年以上持つとか言う。危険極まりない。

リニアだってそうだ。こんな地盤脆弱な国家に地下に穴蔵を掘ってリニアを通そうとしている。現に地下水の漏水問題が浮上してきて工事が止まってもいる。
大阪万博、辺野古埋め立て、始めたら継続する。この国は登り始めた山登りをやめることがない。「根性で登り切るんだ!」などという言葉が聞こえてくる。

「アメちゃんが上陸してきたら竹槍がなくても、敵の金玉を蹴り上げればいいんだ」
むちゃくちゃなことを言っていた。

(三)
五輪報道一色のさなか、7月28日の日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)では、米側が新たな司令部設置を表明した。これによって軍事の日米一体化はさらに加速する。「私のところは平和憲法があるから核使用に関しては考えたい」などとは言えない、これまでの日本側の従属的態度を見ると言いもしないだろう。指揮権の独立性には疑問符がつく。そうするといわゆる「核の傘」依存も一層に強化される。地政学的に言うと、打たれたら打ち返すという場合、アメリカ本国よりも先に日本が被害を受ける。核戦争が身近に感じられるようになった。

日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)という。しかし果たして日米は対等でありうるか大きな疑問である。

追記
去年、8月9日、―長崎にチンチン電車の鐘が鳴る:朗読台本公開―を出した。当初、やってみようという動きがあった。思うに、題が自作「広島にチンチン電車の鐘が鳴る」と同じである。名前からすると長崎原爆の固有性を欠く。

それで題を変えた。「長崎に一番電車が走った」だ。
この間、朗読の日に女優の蒔村三枝子さんが「広島にチンチン電車の鐘が鳴る」を朗読した、彼女十数年一人芝居を行ってきたが再演の計画を考えているという。

長崎に一番電車が走った」は、朗読台本は公開している。機会があったら使ってほしい。



rail777 at 17:58│Comments(0)││学術&芸術 | 都市文化

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