「おもしろい・たのしい」を設計する

2024年12月18日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

特任准教授の安原です。

前回の記事で触れた、自分がリサーチをしている「インタラクティブコンテンツデザイン」というテーマは、ヒトとデジタルメディアとのより良いコミュニケーションを実現するための工学です。

ヒトとデジタル機器とのインターフェイスの設計やコミュニケーション手法の設計はとても広大な分野に及ぶ学際的な領域の研究です。

フォルクスワーゲン社が手掛けた「The Fun Theory」というヒトに楽しいと感じさせるインタラクティブな装置や仕掛けを用いて、ヒトの生活行動をそうとは意識させずに変えてしまう、という取り組みがあります。

上りのエスカレータばかりが混雑している地下鉄の出口階段に、ピアノの鍵盤を模したパネルボードを各段に敷き、ヒトが乗ったときに音が鳴るようにしたところ、多くのヒトが、エスカレータではなく、音が出る階段を楽しみながら上るようになった実例や、空き缶やゴミのポイ捨ての多い公園に、ゴミを投げ込むとヒューンと深くまでゴミが落下する音を出す仕掛けを加えた「底なしのゴミ箱」を設置したところ、その不思議なゴミ箱の音を聞いて確かめ、楽しむために、通りがかりのヒトがポイ捨てされた缶を拾ってそのゴミ箱に投げ込む「ゴミ捨て」が促進されて、公園がきれいになった実験などが有名です。

そのように、ヒトは行ったアクションに対してフィードバックを返されることで、過去の経験からこれが何であるのかという記憶を思い返します。

ピアノに似た階段だけどこんなに大きなピアノはない、ゴミ箱だけどそんなに深くはないはずだ、という自分の経験とのズレが、新しい体験をフックとして、ヒトの感情を揺さぶり、興味と楽しさ、そして学びが生じます。

これも、インタラクティブな装置だからこそ実現した、ヒトの生活に潤いを与えるインタラクティブコンテンツデザインの良い実践例だと思います。

ー安原

是非よろしければ「The Fun Theory」をネットで検索して動画ビデオを御覧ください。

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