ゲームと学び

2023年9月15日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

コンテンツコースの特任准教授の安原です。

モチベーションの話を少し続けます。例えば、ある親が子供に対して「成績が上がったらゲーム機を買ってあげる」という約束をした場合、ゲーム機を手に入れたら子供は勉強を止めてしまうかもしれません。子供にとって「目的」はゲーム機で、勉強は面倒な「手段」になります。このようなケースは外的報酬と呼ばれるものです。一般的に皆さんが想像する理想的なモチベーションの発揮のさせ方は、勉強の過程に興味深い発見があったり、自ら好奇心を持ってより深く知りたい、という気持ちを沸き上がらせたりする内的報酬に結び付けることです。長年の受験制度の弊害は、偏差値の高い大学に入ることが「目的」となって勉強が「手段」となってしまいがちなところだと考えています。大学に入ったら勉強をしなくなってしまっては折角の高等教育も本末転倒です。

自分はビデオゲーム制作を学習モチベーションを起こす一つの方策として提案し続けています。ゲーム制作では、「数学」はとても大切です。特に三角関数、ベクトルを理解していないと、キャラクターを操作して好きな方向に弾を撃つことができません。ゲームを作ることは高校生以上の教育で得る数学、語学、プログラム、美術、建築、音楽、歴史、社会文化、文学・・などすべての経験と知識を横断して構築する学際的な総合芸術だと考えています。受験のための勉強に終わらせない「勉強」のヒントがここにあると考えています。ゲームを作るために数学を勉強しよう、歴史や語学を受験のための暗記ではなく、ヒトの営みとしてイメージして深堀してみよう!という自分の「作品制作」に学びを生かす、というモチベーションにつなげると、大学へ行くために学ぶという「目的」が生まれます。ゲームを作るために大学に来た学生が、その過程でもっと興味の惹かれる分野に出会うことも稀ではありません。なぜなら、ヒトは自然に学んでいくからです。「活動」のモチベーションは、そのように自分がこれ以上は上手くなれない、単純作業でこれ以上学ぶ必要がない、と感じた時に失われやすいものです。ヒトは学ぶとこで成長してしまうので、ものごとに飽きるのです。モチベーションを維持し続けるためには「活動」の「変化」が必要です。それに合わせて自分も新しい動きや操作を学ぶ必要が出てきます。ゲームデザインはヒトが常に学び続けられるような工夫をゲームに施します。外的報酬ではなく内的報酬に点火するのもまた「ご褒美」を使うのですが、それは「経験」と結びつけることが大切だ、というお話をまた次の機会に書きたいと思います。

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