VR酔いをなくせるか(NICOGRAPH研究発表)
2018年11月22日 (木) 投稿者: メディア技術コース
先日、芸術科学会主催のNICOGRAPH2018(福岡)で、大学院メディアサイエンス専攻修士2年の加藤木健太君が、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)ユーザーの頭部回転の予測に関する口頭発表をしました。
VRでおなじみのHMDは、頭部の回転を検知して表示映像を反応させます。例えば顔が右を向いたらHMD内の画像は左に移動させた表示をしないといけません。
この反応時間をゼロにすることは通常できません。センサーで検知する時間やPCへの情報転送の時間がわずかですがかかります。表示処理にも少しは時間がかかります。これらの合計だけ表示システムの反応は遅れてしまいます。
ユーザーから見ると、頭の動きと目に入る動きがごくわずかの時間だけずれる結果になります。これが続くとだんだん気持ち悪くなる、いわゆるVR酔いが起きます。
特に、頭部が静止している状態から動き始めるときは、予測も難しく、ずれも目立ちます。このときのずれを小さくするために、可能ならばゼロにするために、頭部の動き始めをその直前に検知しよう、という大胆な試みが加藤木君の今回の発表です。
予測のために利用したのが視線の動きです。仮説として「頭部が動き始めるほんの少し前に視線が動くのでは?」ということを想定し、本当にそうなるか実験してみたのです。実験のために、視線測定装置も備えたHMDを使いました。
すると、7割以上の確率で、特有の視線の動きが予兆として見られたのです。さらに驚いたことに、予兆となる視線動きを調べると、そのすぐあとに頭部がどの向きに動き始めるかも高い確率で予測できました。
学会で発表すると、会場からの質問で有益な示唆が得られます。今回の発表では、「頭部の動きが起こらない場合でも同じような視線の予兆の動きが誤検出され、結果的に予測を間違えることもあるのでは?」という質問が出ました。まったくおっしゃる通りで、このことは今後の研究課題として実験する必要があります。
そのほかにも、今回の実験はまだまだ粗削りなため、さらに研究を進める必要があります。また、仮に頭部回転予測ができたとして、実際の表示システムに適用できて効果があるかどうかも検証が必要です。
参考文献:
加藤木健太, 王旭, 柿本正憲, HMDでの頭部回転遅れ補償のためのマイクロサッカード検出, 芸術科学会, NICOGRAPH 2018, 福岡, 2018年11月4日
メディア学部 柿本正憲
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