デジタル上映の画質
2019年10月 5日 (土) 投稿者: メディア技術コース
先日映画館で、古い日本映画を観てきました。1970年代の「仁義なき戦い」という非情なやくざモノシリーズ、全5作一挙上映という1日がかりの上映です。フィルム上映なので久しぶりに汚れた映写フィルムの質感というのを感じて鑑賞することになりました。
近年の映画館はすっかりデジタル上映に移行しているので、〝今時の若い人〟は、フィルム上映なんてあまり経験ないかもしれません。
デジタルに移行する以前の上映素材はフィルムなので、映画館で上映を何回も行うと傷や汚れがどんどん増えていきます。画面に縦すじがついたり、細かい黒い点が着いたりするのでフィルムがどのくらいの映画館を巡ってきたかという履歴にもなっていました。画面に縦筋が入ることを「雨が降る」と言っていたものです。
近年、映画のデジタル化が進んで、オンデマンドで昔の映画を鑑賞したり、デジタル上映の映画館でキレイな画面を見ることができますが、映画館でのデジタル上映自体は、そんなに大昔からの話ではなく、2000年代になってからの普及です。導入の最初のころは「あそこの映画館はデジタルだからきれい」という噂で映画館に赴いたこともあります。
さて、デジタル上映の画質の話をしておきましょう。2019年現在では映画館では、いわゆる2K〜4K上映が主流になってきています。
×ばつ縦480ピクセル・インターレース(480i)×ばつ縦1080ピクセルになるので、ほぼ縦横倍以上の画素の密度になります。
劇場での上映規格Digital Cinema Initiatives(DCI)の仕様だと、2K(横幅が2000だから)×ばつ1080(ほぼブルーレイと同等ですね)=200万画素、近年はやりの4K(横幅が4000に近いから)×ばつ2160の画素密度になります(830万画素)。ただし、いわゆる劇場上映の2Kを、ブルーレイディスクと比べると、画像圧縮の方式の違い、色の諧調再現度の違いなどから、上映用のDCP(デジタルシネマパッケージ)の形式の方が画質が良いことになります。(劇場で扱われるDCP形式では35mmフィルムのように動画を1フレームごとに分解した静止画をJPEG2000形式で保有しており、それを展開してスクリーンに投影しています。)
表 方式と画素数の対応
ところで、フィルム上映とデジタル上映どちらがきれいでしょうか?
通常映画上映に使用される35mmフィルムの解像度には諸説ありますが、1000万画素以上に匹敵するとも言われます。また、明るさの階調の分解レベルがフィルムの方が勝っていますので、きれいなプリントであればフィルム上映に分がありそうです。ただ、フィルムの劣化を考慮すると徐々にデジタルの方が優位になります。
もっとも、画質の善し悪しの見分けが、はっきりつくかどうかはまた別問題で、ある程度以上画像が細かく写されてしまえば、適切な距離離れた鑑賞では観客には見分けがつきません。例えば6mの幅のスクリーンがあるとして、2K映像だと6m÷2048≒約3mmなので、3mmの描画点がスクリーン上にできることになります。視力1.0の人は5m離れて1.5mm程度の幅が見えるので、スクリーンの横幅の2倍の距離から見るとして12m離れて鑑賞すれば、ギリギリ粒子が見えないレベルになるでしょう。つまり、これ以上画像を細かく表示しても、観客には見えないことになります。これが4K以上にまで画質が上がると、視力2.0の人にも描画粒子が見えないことになりそうです。
しかし、昔はVHSのぼけぼけした録画画像でもけっこう満足していたんですけどね。
(以上 文責:「視聴覚情報処理の基礎」担当 永田)
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