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2025年8月26日 (火)

『高橋俊介オーラル・ヒストリー』

Ta 例によって労働史オーラルヒストリーのシリーズを梅崎、南雲、島西トリオからお送りいただきました.今回は『高橋俊介オーラル・ヒストリー』です。

高橋俊介さんという方は、私は『成果主義』等の本でしか存じ上げなかったのですが、なかなか面白い経歴なんですね。東大で航空工学を学んだ後なぜか国鉄(JRの前の公共企業体時代)に入り、動労との労使交渉の薄暗い裏舞台とかも垣間見て、プリンストンに留学して、国鉄を辞めちゃった。辞めるときに、当時の秘書課長の井出さん(国鉄改革三羽がらすの一人で後にJR西日本社長)が激怒したエピソードが紹介されてます。「会社を途中で辞めるヤツなんて許せない」と。これってちょうど、三羽がらすで国鉄改革の陰謀をめぐらしていた頃ですね。

その後マッキンゼーで大前研一に鍛えられ、パリバを経て、ワイアットカンパニーで人材マネジメントのコンサルとして名を上げていきます。この頃から本をたくさん出していますね。

私はどちらかというと、成果主義の鼓吹者みたいな感じで見てましたが、本人が後から振り返って曰く:

・・・でも、人事部長がぼそっと言うんですよ。「結局、50代とかの給料を抑えるのにどうしても必要なんですよね」と。本当のことを言うと、団塊の世代の50代の給料を抑えるために成果主義をやろうとしたけど、成果主義という言葉は手垢がついてしまったと。今度は、バブル入社世代が50代になってくる。どうやってやろうかといったら、要は「ジョブ型、いただき」ということなんですよ。成果主義と同じことの繰り返し。そうすると、またジョブ型も手垢がつくかも知れない。・・・

いやまあ、人事コンサル界隈の流行の実相はまさにそうだったのだろうとは思いますが、ジョブ型にそういう間違った手垢がついてしまうのは、まことにつらい話ではありますが。

ちなみに、アメリカの本当のジョブ型(ブルーカラーの労働組合版ではなく、ホワイトカラーのヘイシステム)に対しても、それが公民権法への対応として作られたものだという冷静な目で見てます。このあたり、きちんと分析している学者があんまりいないので、実は貴重な話です。

・・・64年に新公民権法ができて70年代に入って、AT&TとかGMとか名だたる大企業が、それこそ黒人女性とかいろんな人から「昇進で差別を受けた」といって訴えられた。そのときに負けているときの賠償金が、数億ドルといってましたから、当時でいう数億ドルですから、金額もすごい。あと、社会的にも問題だと。

だから、当時はいかにして、インカンベント(在職者)を人として見てない、というのが担保できないと、裁判で負ける気がします。だから、ヘイというのはすごいよかったのは、職務記述書があったら、ああいうのはアナリストがポイントを付けるでしょ。だから、インカンベントを見てない。だから、それを証明できると。だから、人の評価なんて危なくてできないと。・・・

だから、職務給=成果主義・実力主義という幻想があるんですけど、職務給ががっちりいったのは、やっぱり人の評価をしないというね。職務でしか評価しないというのが当時、ニーズがあったという、それを緻密にやっていく。でも、実際のところは・・・・・・だけど、たてまえとしては、裁判になったときに非常に安全だというのがそこにはあったんだろうと。

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