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2025年8月 5日 (火)

最低賃金決定における公労使三者構成と「政」

昨日、長引いていた中央最低賃金審議会の目安決定がようやく決着したようですが、その最後の局面では、新聞報道によると「政治」の介入があったようです。

赤沢氏の「尋常じゃなかった」介入 最低賃金「6.0%」の舞台裏

6.0%という数字は、ある人物によって一蹴され、漂流しかかっていた。
「6.0%ちょうどなんてないだろう。全然ダメだ。もう一声。これは政治判断なんだ」
最低賃金の目安を決める厚生労働省の審議会が今年4回目の審議を終えた翌日、7月30日だった。ひそかに永田町の中央合同庁舎8号館を訪れた厚労省幹部を前に、「賃金向上担当相」を兼務する赤沢亮正経済再生相が言い放った。・・・

最低賃金の目安は、労使の代表と公益代表の有識者で構成する中央審議会が毎年決める仕組みだ。赤沢氏に決定権はない。だが、公益代表をサポートする立場から労使の調整に入っていた厚労省側が示した内々の「6.0%」に赤沢氏は「6%台前半」など上積みを求めて突き返した。・・・

一方、こうした政権側の露骨な動きを察知した使用者側は収まらない。中小企業への悪影響を懸念する使用者側には内々に「6.4%」という数字が提示されたが「話にならない」と反発して、拒否する一幕もあった。

審議会が15年ぶりの6回目に突入した今月1日、赤沢氏は経済団体の幹部と面会し、高い水準の引き上げに理解を求めた。審議会とは別に、閣僚が直接的に協議することは異例だ。労働側のある関係者は「政府がやるなら審議会はいらない。勝手にやってくれ」と怒りを隠さず、厚労幹部は「審議会が壊れてしまう」と頭を抱えた。・・・

赤沢氏、水面下で大幅増を要求 最低賃金巡り終盤に介入、禍根も

最低賃金の25年度改定では議論の終盤になって、赤沢亮正賃金向上担当相が水面下で大幅な引き上げを繰り返し求めたとされる。経営者と労働者の代表らが改定額の目安を決めるため、中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会で詰めの議論をしていた最中だった。政府内では「前代未聞の政治介入」「禍根を残しかねない」との批判の声が出ている。

労働政策における三者構成原則は、諸外国では「政労使」ですが、日本では政府(労働行政)は黒子になって、公益委員というのを表に立てて公労使三者構成と称しています。

政府は最賃の水準について何を聞かれても「公労使がお決めになること」と第三者を装うというのが今までの美風であったのですが、今回、労働行政ではない政府の首脳が、かなり露骨に最賃引き上げ幅拡大に動いたようで、これは実はなかなか結構深刻な事態になってしまったのではないか、という気がします。

昨年、地方最賃レベルで、後藤田徳島県知事の露骨な介入騒ぎがあり、すでに今回の事態は予告されていたとも言えますが、中央レベルでこうなってみると、改めて三者構成原則とは何だったのか、という話になってきそうです。

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コメント

おまけに「政治」の側が本来は使用者側に立つはずの「保守」政党ですからねえ。
いや、「自由」「民主」党だから、「リベラル」「デモクラシー」党なので「左派」「革新」「進歩」の側に立つはずの政党の名前だから本来あるべき姿になっただけ、と言う事でしょうか(^^;

もし「政治」の側が「立憲民主党」「国民民主党」「れいわ新選組」政権で同じ事やったら政権党の名称が戦前の「保守」政党に近い党名と「元号」「幕府の公安機関の名前」と言う「保守反動」的な党名にもかかわらず「左派」「革新」「進歩」的な政策を打ち出す、と言うこれまたややこしい事に。

実は日本は政治においてはいまだに前近代的な社会なのである、とも言えそうですね(^^;

投稿: balthazar | 2025年8月 5日 (火) 21時31分

もちろん「左派」「革新」「進歩」を名乗る側が「保守」「保守反動」的な政党名を名乗るのは「社会党」「社会民主党」「民主社会党」が政権に就くことが出来ないばかりか、却って解体消滅の道を辿ったから仕方ない、と言う言い訳は出来ますけどね。

でもここまでかつて敵視していた側に阿るような党名を名乗るのはなあ(^^;
プライドの欠片もないと言うか。

都市化が進み、国民の多数が農村出身でなく、都市労働者の二世が多数を占めるようになった現代の日本は遅ればせながら近代社会の歩みを始めたとも言えるので、もしかしたら「左派」「革新」「進歩」の側もふさわしい党名を名乗る時代が訪れつつあるのかもしれないですが。

投稿: balthazar | 2025年8月 5日 (火) 22時03分

Liberalというのは、「社会主義者(及びキリスト教保守主義者)でない」というのが(アメリカ以外での)第一義なので、hamachan先生が過去に言及されているように、経済保守政党がリベラル・デモクラティック・パーティを名乗るのは世界的にみると不思議ではない、ような気がします。

「公」労使は、公(≒労働行政)が他の「政」から口出しされるのを防ぐといった側面があったと思うのですが、政が労働者寄りの政策を掲げて介入してくるというのはあまり例がなかったように思えるので、労使及び「公」が対応に苦慮しているように感じます。個人的にはこれだけ「賃上げ」が政策アジェンダになってしまったら、今後も含めて「政」がある程度介入してくるのは不可避ではないかと思えるのですが、どうなんでしょう。

投稿: もんぶらん | 2025年8月 6日 (水) 10時18分

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