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ページID:107555更新日:2023年1月22日
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全国の小学校では、子供の発達や学びをつなぐために、「スタートカリキュラム」が実施されています。
当記事では、スタートカリキュラムの概要やメリット、編成方法、山梨県におけるスタートカリキュラムの取り組みについて解説します。小学校入学前の子供のいる方はぜひ参考にしてください。
文部科学省では、スタートカリキュラムのことを下記のように示しています。
小学校へ入学した子供が、幼稚園・保育所・認定こども園などの遊びや生活を通した学びと育ちを基礎として、主体的に自己を発揮し、新しい学校生活を創り出していくためのカリキュラムです。
引用:文部科学省 国立教育政策研究所 教育課程研究センター「スタートカリキュラムの編成の仕方・進め方が分かるスタートカリキュラム スタートブック」
幼稚園や保育園などでは、遊びを通し学びに注力した幼児教育が行われています。体を使った遊びを通して過ごすことが当たり前だった子供たちにとって、小学校へ入学した途端、集団で国語や算数といった科目の授業を受けることは戸惑いの一つとなり、大きな負担となるでしょう。
そのためには、幼稚園・保育園等と小学校で連携が欠かせません。
これまで、幼児期の教育と小学校教育との円滑な接続を目的としたカリキュラム編成の工夫として、スタートカリキュラムが示されてきましたが、平成29年3月に改訂された小学校学習指導要領では、全国の小学校においてスタートカリキュラムの実施が推進されるようになりました。
小学校教育は幼児期の学びの上にあり、幼児期と学童期の接続を見通した教育を組み立てる必要があります。「ゼロからのスタート」ではなく、幼児期における学びを生かしたカリキュラムが、スタートカリキュラムの最大の実践ポイントです。
ここからは、スタートカリキュラム導入のメリットを3つ紹介します。
スタートカリキュラムの最大のメリットが、子供に安心感が生まれるという点です。
スタートカリキュラムでは、幼児期に慣れ親しんだ教育活動を取り入れながら、小学校における学習環境づくりが行われます。小学校での基本的な学習環境を学んだり、子供同士でコミュニケーションを図ったりすることで、学校への安心感と、喜びや楽しさも感じられるでしょう。
子供の学校への安心感は、学校環境への適応だけでなく、小1プロブレムの予防にもつながります。
出典:文部科学省 国立教育政策研究所 教育課程研究センター「スタートカリキュラムの編成の仕方・進め方が分かるスタートカリキュラム スタートブック」
子供は、幼稚園や保育園において遊びを中心とした学びでさまざまな経験をします。スタートカリキュラムでは、幼児期における経験を活かした活動や学習内容に取り組むことが基本です。
幼児期の学習経験を小学校の学習につなげることで、子どもの自己肯定感が高まります。先生やほかの子供に学習の姿を褒められれば、さらに自信も得られるでしょう。自信は、モチベーションの向上・よりよい成長にも大きくつながります。
出典:文部科学省 国立教育政策研究所 教育課程研究センター「スタートカリキュラムの編成の仕方・進め方が分かるスタートカリキュラム スタートブック」
スタートカリキュラムは、生活科を中心としたカリキュラムが編成されます。
幼児期は、遊びを通して学びの自立・生活の自立・精神の自立につながる学習経験をします。学びの自立・生活の自立・精神の自立の3つの自立を基盤としてスタートカリキュラムを実施することで、子供は自分で考え、判断し、行動することを繰り返し、自立に向けて歩んでいきます。
スタートカリキュラムによるさらなる自立に向けた歩みは、6年間にわたる小学校生活の土台となるでしょう。
出典:文部科学省 国立教育政策研究所 教育課程研究センター「スタートカリキュラムの編成の仕方・進め方が分かるスタートカリキュラム スタートブック」
スタートカリキュラムでは、保育園や幼稚園と小学校の接続を中心としたカリキュラムの編成が重要です。スタートカリキュラムの編成における基本的な考え方は、下記の通りとなっています。
出典:文部科学省 国立教育政策研究所 教育課程研究センター「スタートカリキュラムの編成の仕方・進め方が分かるスタートカリキュラム スタートブック」
入学当時の子供は、学び・発達において個人差があります。「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を参考に、それぞれの幼児期の経験や教育を踏まえたきめ細かな指導は、スタートカリキュラムにおける重要な考え方です。子供が自らの願いを実現できるような活動を進めたり、子供が安心して学校生活を送れるような学習環境を整えたりすることも欠かせません。
スタートカリキュラムをデザインする際には、次のような手順で進めることが考えられます。
出典:文部科学省 国立教育政策研究所 教育課程研究センター「スタートカリキュラムの編成の仕方・進め方が分かるスタートカリキュラム スタートブック」
出典:国立教育政策研究所「発達や学びをつなぐスタートカリキュラム」
山梨県では、子供たちが小学校に入学して安心して学校生活に馴染めるよう、山梨県の公式サイトにてスタートカリキュラムの提案を行っています。
以下では、山梨県が行うスタートカリキュラムの取り組みについて、「1日の流れ」「遊び」をそれぞれ紹介します。
山梨県の公式サイトには、小学校入学直後の子供たちが、学校生活における1日の流れに適応できるようなスタートカリキュラム案が掲載されています。入学直後からゴールデンウィーク明けまでの期間において、3つのカリキュラムに分ける案を掲載しています。
小学校に入学した直後、まだ不安や心配を抱える子供たちに向けて、学校は楽しい場所であることを伝えるカリキュラムの案。
小学校入学から1〜2週間後、学校での環境に少し慣れはじめ、いよいよ給食がはじまった子供たちに向けて、小学校での学習環境や校内環境をより把握してもらえるようなカリキュラムの案。
学校生活に適応しはじめ、校内での行動範囲も広がってきた子供たちに向けて、国語科や算数科といった授業・勉強を楽しんでもらうようなカリキュラムの案。
山梨県の公式サイトでは、入学後の遊びに関する実践例も3つ紹介しています。
入学したてで緊張している子供たちに向けて、体と心をほぐすための例。子供が親しみやすい楽曲や、覚えやすい踊りを用いて行う。
出典:山梨県「リズム体操」
入学して新たに出会った友だちとまだ交流できていない子供たちに向けて、幼稚園や保育園でしていた遊びをいくつか紹介しています。知っている遊びをすることで、安心感が生まれます。
出典:山梨県「手遊び」
小学校に入学して1か月ほどが立ち、いよいよ国語科の学習が始まる頃に授業の導入などでできる、文字や言葉を使ったゲームを紹介しています。
出典:山梨県「文字遊び」
スタートカリキュラムは、上記のような事例により進められます。例に挙げたカリキュラム内容・期間はあくまで一例であり、実際は、各学校や各地域で子供の発達状況や実態などに合わせて目標を設定したり、カリキュラムを多くの先生方の目で見直して修正したりしています。そのために、幼稚園、保育所等と小学校の先生方が連携、共有していくことが必要で、幼保小の架け橋プログラムが今後大切になってきます。
スタートカリキュラムとは、幼児期と学童期の接続を見通した教育を目的に実施されるもので、カリキュラムの充実が求められています。
スタートカリキュラム編成においては、基本の考え方・実践ポイントを押さえる必要があります。スタートカリキュラムのメリットを享受するには、子供の実態に合わせてカリキュラムを編成することが大切です。