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ページID:107240更新日:2022年12月28日
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目次
燃料電池とは、水素を燃料にして空気中の酸素と電気化学反応を起こし、その際に発生する電気を活用する装置を指します。水素・燃料電池関連産業は、今後大幅な市場規模の拡大が期待されており、国内外から注目されている分野です。
山梨県では、水素・燃料電池関連の研究開発拠点などが集積している優位性を生かし、成長の見込まれる水素・燃料電池関連産業の本県への集積を目指して取り組みを行っています。
水素・燃料電池関連産業の振興に向けた4つの柱(4I)
Innovation(イノベーション) | 山梨大学の技術シーズなどを活用した燃料電池スタックなどの開発を行う |
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Incubation(インキュベーション) | 燃料電池を活用した新たなアプリケーションの事業化を行う |
Integration(インテグレーション) | 燃料電池自動車・家庭用燃料電池などへの部品供給網を確立する |
Invitation(インヴィテーション) | 企業・研究機関などを誘致し産業基盤を強化する |
水素・燃料電池関連産業の振興と合わせ、山梨県では水素エネルギーの利用拡大やCO2フリー水素サプライチェーン構築を目指しています。
ここでは、燃料電池からつくられる電気などの水素エネルギーについて、導入する意義を「エネルギーセキュリティの向上」「省エネルギーの推進」「環境負荷の低減」「産業の振興」の4つの観点から紹介します。
エネルギーセキュリティとはエネルギーの安定保障を指す言葉です。水素は、多様な一次エネルギー源から様々な方法で製造でき、未利用エネルギーや再生可能エネルギーからも製造可能である点も注目されています。地政学的リスクの低い地域からの調達や再生エネルギーの活用によるエネルギー自給率の向上などに貢献することが期待されています。また水素は、気体・液体・固体(合金などに吸蔵)とさまざまな形態での貯蔵や輸送が可能です。
製造方法が多岐にわたり、長期間の貯蔵も可能な水素は、災害時などの非常用電源としても利用可能です。水素の利活用を拡大することにより、エネルギーセキュリティの向上に大きく貢献することが期待されています。
燃料電池は、水素と酸素の電気化学反応によって電気エネルギーを直接取り出すため、従来の発電システムに比べ、高い発電効率が得られます。例えば、火力発電は燃料を燃やした熱で水から蒸気をつくり、この蒸気を発電機につながった巨大なタービンに勢いよくぶつけて回すことで電気をつくっているため、発電効率は30〜53%程度です。一方で直接電気エネルギーを取り出す燃料電池では、発電効率が35〜60%と比較的高くなります。
また、火力発電などで発電所から送電する場合、送電ロスが起きます。しかし、燃料電池の場合は各家庭などの現場で発電するため、発生するエネルギーをそのまま活用でき、送電ロスを防ぐことが可能です。
さらに、火力発電では廃熱となってしまう発電時に生じる熱を利用することにより、高い総合エネルギー効率を得ることができます。燃料電池の利活用が進めば、大幅な省エネルギー化を実現できると考えられます。
水素は発電などに利用する際にCO2を排出しないため、地球温暖化対策の切り札として期待されています。
さらに、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを使って水素を製造すれば、CO2の排出を大幅削減できる他、CO2フリーのエネルギー源として水素を活用することができます。
水素エネルギーの利用拡大期にあたる現在は、水素を製造する過程でCO2が排出されることがあります。しかし、化石燃料から水素を製造する過程で発生するCO2を回収して貯留したり利用したりする「CCS」や「CCUS」技術と組み合わせることでCO2の排出量を削減することが可能となるほか、高いエネルギー効率を有する燃料電池技術を活用することにより、環境負荷の低減に大きく貢献できると考えられています。
水素・燃料電池関連の分野は、地球環境保全に加え、産業振興の観点でも今後の成長が期待されています。2018年の日本における燃料電池分野の特許出願件数は、世界1位となっており、2位以下の欧米をはじめとする各国と比べ5倍以上であるなど、この分野では我が国は高い競争力があると言えます。
社会的なニーズが高まる一方で、技術的・コスト的な課題の解決策が求められており、水素・燃料電池関連分野にはさまざまなビジネスチャンスが存在します。
山梨県ではCO2フリー水素の利活用を目指し、再生可能エネルギー電力から水素を製造し、貯蔵・利用するP2G(Power to Gas)システムの開発に取り組んでいます。P2Gはカーボンニュートラル社会の実現に向けた、再生可能エネルギーの利用拡大や、温室効果ガス削減への貢献が期待されているシステムです。
「やまなしモデルP2Gシステム」は、東レが開発した世界最高率の電解質膜を用いた「固体高分子(PEM)形水電解装置」により水素を製造するシステムです。太陽光や風力発電などといった再生可能エネルギーの変動する電力への高い追従性を有し、電解する原料が純水であり取扱いが容易なこと、また小型でシステム構成がシンプルといった特徴から、工場等の水素需要家のオンサイトへのP2Gシステムの導入や大量生産による価格低廉化などに期待されます。
以下では、やまなしモデルP2Gシステムに関連する取り組みについて解説します。
[画像:国内初のP2G事業会社「やまなしハイドロジェンカンパニー」の設立]
山梨県は、東レ、東京電力HDと共に、2022年2月に国内初のP2G事業会社「やまなしハイドロジェンカンパニー(YHC)」を設立しました。YHCでは「水素等の製造、供給、販売並びにエネルギーサービスに係る事業」「水素等の製造、貯蔵、輸送に係る技術開発並びに実証事業」「水素等の利用の普及、拡大に係る事業」などに取り組んでいます。
「環境と調和した持続可能な社会の実現を目指し、山梨県とサントリーホールディングスは、「やまなしモデルP2Gシステム」により、サントリー天然水南アルプス白州工場及びサントリー白州蒸溜所の脱炭素化とともに、周辺地域等での水素を活用する社会実証を通じて、連携して取り組むことを2022年9月に合意しました。
国内屈指の自動車レースである「スーパー耐久シリーズ」の2022年シリーズの全レース戦において、トヨタ自動車の水素エンジンカローラの燃料の一部として、米倉山のP2Gシステムで製造した水素を提供しました。今後も各分野において連携を広め、世界規模でのCO2フリー水素のサプライチェーンの構築を目指します。
2019年度から、山梨県とドイツ西部のノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州との間で、水素・燃料電池関連企業を中心に交流が始まりました。
また、YHCとスズキ株式会社が提案した「インドの工場における効率的な熱運用を実現するための水素技術等実証要件適合性調査(インド・ハリヤナ州)」が採択を受けました。
さらに、東レ株式会社、丸紅株式会社およびシーメンス・エナジー株式会社と共に、「再エネ拡大地域における寒冷都市型エネルギー利用の脱炭素化を実現するための、P2Gシステム導入に向けた実証研究(英国スコットランド・グラスゴー市)/実証要件適合性等調査」を開始しています。
山梨県では、研究開発拠点などが集積している優位性を生かし、水素・燃料電池関連産業への企業の進出を支援しています。また、県内外の企業と提携してやまなしモデルP2Gシステムを開発し、国内だけでなく国外への展開も進めている状況です。今後も山梨県では、カーボンニュートラル推進のトップランナーとなり、国内外をリードしていけるようさまざまな取り組みを行います。