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ページID:107698更新日:2023年1月29日
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グリーン水素とは、水を風力・水力・太陽光などの再生可能エネルギーで電気分解し生成された水素のことです。利用時と製造過程の両方で二酸化炭素の排出がなく、脱炭素の取り組みを促進するエネルギーとして注目されています。一方で、まだ聞きなれない・どのような場面で利用されているかイメージしづらいという方もいるでしょう。
この記事では、グリーン水素についての基礎情報から、普及に向けた取り組み、問題点、将来性までを詳しく解説します。
グリーン水素とは、再生可能エネルギーを利用して作られた水素です。風力や水力、太陽光など再生可能エネルギー由来の電力を用いて水を電気分解し、水素と酸素に還元します。製造過程で二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが排出されないため、環境に悪影響を与えず生産できます。
水素は製造方法の違いによって、色分けした名称が付けられています。グリーン水素以外には下記の種類があり、水素製造方法によって環境に与える影響が異なります。
カーボンニュートラルという観点では、グレー水素は製造工程で二酸化炭素の排出を伴うため、完全なクリーンエネルギーとは言えません。一方、ブルー水素はグリーン水素と同じく、二酸化炭素の排出のない水素です。しかし、処理した二酸化炭素が大気へ漏れることなく貯留し続けなければならない、という課題も残されています。
グリーン水素は、利用時と製造過程の両方で二酸化炭素の排出がなく、脱炭素の取り組みを促進する優れたエネルギーとして注目されています。
水素は利用する際に二酸化炭素が出ないクリーンエネルギーです。しかし、グレー水素のように製造過程で二酸化炭素を排出する水素では、二酸化炭素排出ゼロを目指すカーボンニュートラルに対応できません。
その点、グリーン水素は水素生成時も二酸化炭素を出さないため、大気の二酸化炭素を増やすことなく活用できます。太陽光や風力発電の余剰電力を水素に変えておけば、貯蔵・運搬も可能です。世界がカーボンニュートラル社会実現へ動く中で、グリーン水素は時代に即したエネルギーと言えます。
グリーン水素の実用化に向けて、国内外でさまざまなエネルギー政策が行われています。日本では、2017年に世界初の「水素基本戦略」を策定し、水素社会実現に向けた戦略が練られています。2020年には「グリーン成長戦略」を掲げ、2030年までにはグリーン水素とブルー水素の供給量を年間42万トン以上にするという目標が設定されました。
出典:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」
すでに、国内でもグリーン水素製造施設が建設されています。本県では、甲府市内の米倉山で製造したグリーン水素を、県内の工場等へ輸送し、ボイラーや燃料電池で利用するなど、サプライチェーンの構築に向けた社会実証が始まっています。
また、福島県浪江町では、「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」において、低コストなグリーン水素の製造技術をめざした実証運用がおこなわれています。
海外に目を向けると、ドイツの「国家水素戦略」の採択、2020年7月に欧州委員会が発表した「欧州の気候中立に向けた水素戦略」など、水素エネルギー推進の取り組みは多くの国で活発です。今後も世界規模で、水素エネルギー設備やグリーン水素の技術開発が進んでいくでしょう。
二酸化炭素を排出せず、理想的なエネルギーとも言えるグリーン水素には、コスト面での壁があります。
まず、水素そのものが化石燃料に比べてコストがかかります。さらに、再生可能エネルギーによる発電自体のコストが高いため、グリーン水素は他の種類の水素より高価です。例えば、ブルー水素の水素製造コストは1kgあたり1〜2ドルなのに対し、グリーン水素は3〜8ドルという差があります。
またグリーン水素は一般的な認知度が低く、すべての人にとって身近なエネルギー源とは言えません。しかし、コストや認知度などの問題点は、技術力の進歩とともにクリアしていくことが期待できるでしょう。例えば、2015年から2020年の間に、グリーン水素は40%のコストダウンに成功しています。国際エネルギー機関(IEA)の報告書では、2030年頃には1.3〜3.5ドルまでコスト削減できると予想されています。
今後、技術革新によってさらなる低コスト化が実現すれば、グリーン水素市場も拡大し、一般家庭での水素を使った製品や水素ステーションの普及も進むでしょう。
出典:国際エネルギー機関(IEA)「Global Hydrogen Review 2021-7項目」
グリーン水素はカーボンニュートラルを成し遂げる上で、大きな可能性を秘めた存在です。環境に無害というメリットに加え、車や飛行機、船舶などの動力としても利用できます。
また、自動車の二酸化炭素排出量をなくす取り組みは、世界的に広まってきています。日本でも2035年までに新車販売を電動車100%にするという目標が掲げられています。燃料電池自動車なら、二酸化炭素を排出しない自動車としてのニーズに応えられるでしょう。
再生可能エネルギーのデメリットをカバーする点でも、グリーン水素の活躍が期待できます。太陽光や風力、水力発電など、天候や時間帯に発電量が左右される発電設備は、供給の不安定さがデメリットです。しかし余剰電力を水素に変え、蓄えておけば、供給が不足した際の代替エネルギーとなります。グリーン水素は、再生可能エネルギーに伴う電力供給の不安定さを補う鍵となるでしょう。
山梨県では、次世代エネルギーとしてグリーン水素に注目し、実用化に向けてさまざまな研究開発を行っています。
その1つが「やまなし・ハイドロジェン・エネルギー・ソサエティ(H2-YES)」です。山梨県と8つの企業(※(注記))が共同でグリーン水素によるエネルギー需要転換と水素製造技術の開発を推進するプロジェクトを展開しています。
※(注記)東レ株式会社、東京電力ホールディングス株式会社・東京電力エナジーパートナー株式会社、日立造船株式会社、シーメンス・エナジー株式会社、株式会社加地テック、三浦工業株式会社、ニチコン株式会社
出典:山梨県「グリーンイノベーション基金事業における大規模P2Gシステムの導入先について」/
2022年6月には、東京電力エナジーパートナーとの「電力の需給バランス調整に関する実証実験」の開始を発表しました。グリーン水素製造装置を使い、太陽光発電の出力制御や余剰電力の有効活用に取り組んでいます。
また、福島県とは「水素を活用した地域におけるグリーントランスフォーメーションの先進モデル構築に向けた基本合意書」を締結し、低炭素社会へ向けて連携しています。東京都との「グリーン水素の活用促進に関する基本合意書」も、相互にグリーン水素利用と技術促進を行う取り組みの1つです。
多岐に及ぶ取り組みを通し、さまざまな方面から水素エネルギー活用を推し進め、山梨県の豊かな自然環境の保全を目指しています。
再生可能エネルギーを使って生成されるグリーン水素は、二酸化炭素の排出がないことから、脱炭素社会実現を推進するエネルギーとして注目されています。グリーン水素の実用化に向けた取り組みは国内外で盛んに行われている状況です。
山梨県でも民間企業と提携して「やまなし・ハイドロジェン・エネルギー・ソサエティ(H2-YES)」などのプロジェクトを展開しています。今後も、山梨県の豊かな自然環境を保全・利用し、グリーン水素の研究開発や普及推進に取り組んでまいります。