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ページID:107298更新日:2023年1月9日
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近年、我が国において、ワインはパーティや記念日、結婚式などのあらたまった席だけでなく、日常の食卓でも楽しまれるようになってきました。日本で飲まれるワインは輸入品だけではなく、日本各地で生産されています。
当記事では、「日本ワイン」の基礎知識から始まり、日本におけるワインの歴史にも触れながら、ワイン製造に用いられる代表的なブドウ品種、特に山梨県で生産されている甲州ワインの特徴や、山梨県産ワインの高品質化に向けた取り組みについても紹介していきます。
「日本ワイン」とは、日本国内で栽培されたブドウのみを原料として、日本国内で生産されたワインです。現在日本では、特に山梨県を代表的な産地とする‘甲州’を初めとして、‘マスカット・ベーリーA’、近年ではヨーロッパ系の品種である‘カベルネ・ソーヴィニヨン’、‘メルロー’、‘シャルドネ’など多彩なブドウ品種が、醸造用ブドウとして栽培されています。
日本の代表的なワイン産地は、山梨県の他、長野県、北海道および山形県の4大産地で説明されることが多いですが、近年は大阪府や熊本県など、各地で盛んに栽培が行われるようになってきています。山梨県は日本のワイン発祥の地でもあり、全国一の日本ワイン生産県として、古くから先駆的な役割を担ってきました。
日本ワインは総じて繊細な風味や味わいをもつことから、寿司やすき焼きなどに代表される和食との相性がよい点が特徴です。品質の高い日本ワインは、海外のワインコンクールなどでも受賞するようになってきており、世界的に高い評価につながっています。
今日の日本ワインの生産は、甲府の僧侶山田宥教と日本酒造の詫間憲久によって始まりました。その後、明治10年には甲府城跡に「山梨県立葡萄酒醸造所」が完成し、明治11年のパリ万博で、甲州ワインは名誉賞状を受賞しています。
時を同じくして、日本産ワイン製造の夢を持つ土屋龍憲と高野正誠の二人の若者が政府の後押しを受け、フランスへ渡りました。フランスではぶどうの栽培法や醸造技術を学び、帰国後、ワインの生産に取り組み始めます。そして明治12年、甲州ぶどうを原料としたワインを完成させ、地域産業として大きな一歩を踏み出しました。
その後、大正にかけては、日本各地に多くのブドウ畑、ワイナリーが誕生しています。明治18年には、現在のルミエール、明治23年には長野県桔梗が原に巴印葡萄酒、明治23年には、現在のまるき葡萄酒、明治25年には、現在のメルシャンにつながる宮崎醸造所、明治26年には、川上善兵衛が新潟県上越に岩の原葡萄園(ワイナリー)、明治34年には神谷傳兵衛が牛久醸造所を創業しています。
「日本ワイン」と「国内製造ワイン(日本ワイン以外の国内製造ワイン)」の違いをご存じでしょうか?どちらも日本国内でつくられるワインですが、その原料が大きく異なります。
日本ワインの原料は日本で栽培されたブドウのみです。一方で国内製造ワインとは、海外から濃縮果汁やバルクワインを輸入した後に、それらを原料に製造されたワインを含んだものを指します。
かつては海外原料を用いて製造されたワインも、日本国内でつくられれば「国産ワイン」として区別なく販売されていました。しかし、ワインについての新しい表示基準(←あるいは表示ルール)が2018年に制定され、海外原料を含む場合は「国内製造ワイン(日本ワイン以外の国内製造ワイン)」という名称になり、「日本ワイン」と明確に区別されるようになりました。
ワイン法はラベル表示の規定を厳格化するなど、日本ワインと国内製造ワインの違いを明確にした法律です。
ワイン法では、ぶどう栽培と醸造をした地域が同一のワインに対して、地域名を入れることが認められています。例えば、勝沼で収穫されたブドウを85%以上使用し勝沼で醸造されたワイン以外には「勝沼ワイン」という名称をつけることができません。
ただし、他の地域で栽培したブドウを勝沼で醸造すれば「勝沼醸造ワイン」、勝沼で栽培したブドウを別の地域で醸造すれば「勝沼産ブドウ使用」と名乗ることは可能です。
日本ワインの代表的な品種は、白ワイン用の「甲州」と赤ワイン用の「マスカット・ベーリーA」です。ほかにもメルロ、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィンヨン、ナイアガラ、コンコード、デラウエアなど、多彩な品種があります。
赤ワイン用の代表的な品種であるマスカット・ベーリーAは、アメリカ系のラブラスカ種とヨーロッパ系のヴィニフェラ種を交配した品種です。控えめな渋みと、チェリーやベリーといった甘い果実の香りと味わいが特徴です。
山梨県は、日本におけるワイン生誕の地です。
現在、山梨県には90社以上のワイナリーがあり、甲州ワインをはじめとする多彩なワインが生産されています。日本ワインの生産量が国内全体の3割を占める山梨県は、名実ともに全国一のワイン産地です。
参考リンク:日本のワイン生誕の地
甲州ワインとは、甲州ぶどうを原料とする白ワインを指します。甲州ワインは辛口が主流で、フレッシュな味わいや和の柑橘系の香りが特徴です。
白ワインを醸造する際、発酵した直後にタンクや樽の底に沈殿した酵母などの澱を取り除く「澱引き(おりびき)」をすることが一般的です。対して、辛口の甲州ワインには発酵を終えたワインを数か月間、澱の上で寝かせる「シュール・リー」という醸造方法を採用しているワインもあります。
シュール・リーを採用するメリットは、酵母由来の豊かな風味がワインに加わる点であり、甲州ワインも厚みや深みのある味わいが個性となっています。
山梨県内の各ワイナリーが、それぞれ工夫をこらして、こだわりのワインを製造してきました。すっきりとした辛口の甲州ワイン以外にも、従来から中甘口・甘口の優しい甘みを特徴としたワインも製造されています。近年では、グレープフルーツなどの柑橘香を呈するもの、樽の風味を取り入れた重厚なもの、発泡性を付与したスパークリングワイン、オレンジ色が特徴の醸しワイン、栽培されるブドウ圃場の違いを訴求したワインなどのバリエーションに富んだワインが生産されています。
参考リンク:なるほど!甲州ワイン
甲州ワインに使われている甲州ぶどうは、長い歴史を持つ日本固有品種です。原産地は明確ではないものの、起源は南コーカサス地域にあり、東西交易などを通して時間をかけて中国に伝わり、東アジア品種と自然交配をして、日本に伝わったと考えられています。
山梨県における甲州ぶどうの栽培面積は約400ヘクタールに及び、全国1位の広さを誇ります。ブドウの栽培には降雨量が少なく乾燥した地域であることも重要です。日照時間の長い山梨県の気候は、ブドウ栽培を盛んにした要因の一つと言えます。
甲州ぶどうは紫がかったぶどうですが、果汁は白く、この果汁のみを使って白ワインに仕上げています。
ぶどう栽培者やワイナリーのさまざまな試みや努力が、甲州ぶどうや甲州ワインの魅力を高めています。
参考リンク:甲州ぶどうとは
日本ワインが国内外で高い評価を受けている昨今、山梨県は県産ワインのさらなる品質向上に向けたさまざまな取り組みを行っています。
まず、2003年から毎年開催している「日本ワインコンクール」は、取り組みの大きな柱の1つです。2009年にはKOJ(Koshu of Japan)を設立し、甲州ワインを世界に広げるプロモーションも継続しています。
2013年に国税庁からワインにおける地理的表示(GI)「山梨」の指定を受けたことで、山梨県産ワインの品質や評価は主に生産地に由来すると認定されました。ワインで地理的表示の指定を受けたのは全国初であり、山梨県産ワインが高品質であることの証ともいえます。
地理的表示がついたワインは海外ではテーブルワインよりも価値が高く、山梨県産ワインのブランド力向上にもつながっています。
また、山梨県は2019年に山梨「ワイン県」宣言を行い、先人の功績をたたえるとともに山梨県産ワインのさらなる発展を誓っています。
参考リンク:山梨「ワイン県」でおいしい相性、見つけよう
参考リンク:「ワイン県宣言」について
参考リンク:「ワイン県やまなし」の美酒・美食
日本のワインの歴史は明治時代から始まり、今日に至るまで全国各地でさまざまな種類のワインが造られています。日本のワインの歴史に触れて、ぜひ日本のワインをもっと好きになっていただければ幸いです。
山梨県は日本のワイン生誕の地としても知られており、全国で初めてワインの地理表示(GI)の指定を受けています。山梨県内では、90を超えるワイナリーで個性豊かなさまざまなタイプのワインが造られています。ぜひワイナリーに足を運んでみて、テロワールを感じていただき、自分好みの山梨県産ワインを見つけてみましょう。