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ページID:107405更新日:2023年1月18日
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新しい医療機器や薬を開発する際に行われる臨床試験には、身体に問題を抱える患者だけでなく一般人が参加することもあります。試験を実施する目的によって対象者は変わり、また承認者も異なることが特徴です。
当記事では、臨床試験について概要から治験・臨床研究との違い、試験の必要性、流れまでを解説します。臨床試験は3つのステップを経て認証に至ります。臨床試験が必要な医療機器についても紹介するので、臨床試験の必要性や安全性などについて詳しく知りたい方は、ぜひご一読ください。
臨床試験とは、医療機器や薬などの治療方法における有効性・安全性を評価するために、人を対象として行う試験のことです。
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「臨床試験のQ&A:基礎知識」
医療機器は、下記のように開発から届出などの手続き・審査までを経た上で、市場で販売されます。届出・認証・承認の申請を行う前、開発の最終段階で行われる試験が「臨床試験」です。
(1)開発 | シーズ探索→非臨床試験→臨床試験 |
---|---|
(2)届出・認証・承認 | 医療機器のクラスに応じた手続き・審査 |
(3)販売 | 審査を通過後に市場で販売 |
出典:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「初めての医療機器開発(初級編)〜審査のしくみ〜」
臨床試験によって医療機器や薬の有効性・安全性が確認できると開発は終了し、届出・認証・承認のステップへと進みます。
臨床試験と混同されやすい言葉として「治験」や「臨床研究」が挙げられます。
治験とは、開発している医療機器や薬の製造販売について、厚生労働大臣からの承認を得るために行う臨床試験の一種です。臨床試験は医療機器や薬の有効性・安全性を評価する試験であるのに対し、治験は製造販売の承認を明確な目的として行う点に違いがあります。
臨床研究とは、病気の原因解明や診断方法・治療方法の改善、患者の生活の質の向上を目的として行う、人を対象とした医学系研究全体を指す言葉です。臨床試験や治験も人を対象とした医学系研究であるため、臨床研究の一部に含まれます。
厚生労働省では、臨床研究について次のように記載しています。
臨床研究は、医薬品・医療機器等の開発候補物質が実用化可能かといった開発の探索的研究手段として、重要なものです。また、同種同効薬同士の有効性に関する比較研究や、手術と抗がん剤の組み合わせとの関係で最も効果的な医薬品投与時期の研究など、様々な診療ガイドライン等の検討を行う場面においても臨床研究が実施されています。
引用:厚生労働省「臨床研究法について」
引用日2023年1月17日
「臨床研究」の中でも、医療機器や薬の有効性・安全性を評価することを目的として行う試験が臨床試験です。
臨床試験の中でも、医療機器や薬の製造販売について承認を得ることを目的とした試験を「治験」と呼びます。
開発した医療機器や薬を市場で販売する際は、人体に対して安全に使えるか、有効であるかを確かめなければなりません。医療機器や薬の人体に対する安全性・有効性を確かめるためには、臨床試験が必要です。
臨床試験より前の研究段階である「非臨床試験」においても、開発段階にある医療機器や薬の安全性・有効性にかかわる情報は収集できます。しかし、非臨床試験は人を対象としていない試験であるため、開発中の製品が人体に対して本当に安全か、どの程度有効かまでは確認できません。
臨床試験で人を対象とした試験を行うことで、はじめて人体に対する安全性・有効性の正しい評価ができるようになります。
出典:日本臨床薬理学会「新薬開発と臨床試験はなぜ必要なの?」
臨床試験には第1相・第2相・第3相の3つのステップがあります。各ステップで行う試験の内容は以下の通りです。
第1相臨床試験
第1相臨床試験は、「安全性の確認」を主な目的とする試験です。少数の健康状態が良好な成人を対象者として、医療機器や薬の安全性、薬の吸収・分布・代謝・排泄を確認する試験を行います。
第1相臨床試験では人体への安全性が未確認であるため、参加募集の条件では妊娠の可能性がある女性を避けて、健康な男性に限定することがほとんどです。ただし、女性向けの薬を試験する場合は健康な女性を、強い毒性のある抗がん剤を試験する場合は患者を参加者として募集します。
第2相臨床試験
2相臨床試験は、「安全な用法や用量の確認」と「第3相臨床試験で用いる用法・用量の検討」を主な目的とする試験です。少数の患者から同意と協力を得て、医療機器や薬の治療効果が得られる用法・用量などを調査します。
第2相臨床試験では患者を参加者とするため、最初は低用量での試験から始め、徐々に投与量や投与期間の設定を増やす漸増法を用いる点が特徴です。
医療関係者・患者に試験の詳細情報を開示せず、被験薬とプラセボで比較試験を行う二重盲検法も、第2相臨床試験で広く採用されています。
第3相臨床試験
3相臨床試験は、「治療効果の確認・証明」を主な目的とする試験です。第2相臨床試験で得られた用法・用量の数値をもとに、多数の患者を対象者として、治療効果の科学的根拠となるデータが得られるかを確認します。
第3相臨床試験は開発の最終段階であり、試験後は届出・認証・承認から販売へと進むことが期待されるため、市販後に近い条件で試験を行う点が特徴です。
試験方法としては第2相臨床試験で用いた二重盲検法や、標準治療との比較試験が選択され、有効性・安全性について試験データの積み重ねを行います。
医療機器とは、疾病の診断・治療・予防に使用したり、身体の構造・機能に影響を与えることを目的とする機械器具のことです。
医療機器や薬についての法律である薬機法では、医療機器を下記の通りに定義しています。
4 この法律で「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。
引用:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
引用日2022年12月20日
医療機器は国際分類がされており、人体に及ぼすリスクが小さいクラスIから、リスクが大きいクラスIVまでの4種類が存在します。各クラスの詳細は下表の通りです。
クラスI | |
---|---|
クラスの説明 | 不具合が生じた場合でもリスクが極めて低いと考えられるもの |
医療機器の具体例 |
|
臨床試験後の手続 | 届出 |
クラスII | |
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クラスの説明 | 不具合が生じた場合でもリスクが比較的低いと考えられるもの |
医療機器の具体例 |
|
臨床試験後の手続 | 第三者機関による認証 |
クラスIII | |
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クラスの説明 | 不具合が生じた場合にリスクが比較的高いと考えられるもの |
医療機器の具体例 |
|
臨床試験後の手続 | 厚生労働大臣による承認(一部は第三者機関による認証) |
クラスIV | |
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クラスの説明 | 人体への侵襲性が高く、不具合が生じた場合は生命の危険に直結するおそれがあるもの |
医療機器の具体例 |
|
臨床試験後の手続 | 厚生労働大臣による承認 |
出典:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「医療機器治験の試験デザインの現状と課題」
医療機器の臨床試験は、届出・認証・承認を経て新たな医療技術を確立するために必要となる試験です。
臨床試験とは、医療機器や薬の治療方法における有効性・安全性を評価するために行われる試験です。臨床試験には3つのステップがあり、段階と試験内容によって試験を受けられる人は変わります。
臨床試験が必要とされる医療機器には国際分類があり、人体に及ぼすリスクの程度でクラスはI〜IVの4つに分けられます。クラスによって手続きの方法や承認者が変わり、最もリスクが大きいクラスIVは厚生労働大臣が必要です。医療機器の臨床試験は、新たな医療技術を確立するために重要な試験と言えます。