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2020年09月30日

民訴教材:父を定める訴え

父を定める訴えの実例が、今年の5月に出ている。

千葉家裁松戸支部判決令和2年5月14日WLJ、LEX/DB

事案は、日本人女性Aが、婚姻関係にあったナイジェリア人のBと離婚後、同じくナイジェリア人のCと婚姻して、Bとの離婚後245日後にDを出産したというもので、父子関係の推定が問題となった。

コモンローの原則によれば,子が懐胎した時点又は子が出生した時点において母親が婚姻しているときは,その母親の夫が子の父親として推定される。また,ナイジェリアの裁判例においても,有効な婚姻期間中に出生した子は自動的に嫡出子と推定するとの判断手法が判示されている。

ということでDの父はCと推定されるが、他方でAの本国法である日本法によれば、離婚後300日以内に出生した子の父は前婚の夫と推定されるので、Dの父はBとも推定される。

こうした推定の重複があるときに、解決するのが父を定める訴え(民法773条)である。

(父を定めることを目的とする訴え)
第七百七十三条 第七百三十三条第一項の規定に違反して再婚をした女が出産した場合において、前条の規定によりその子の父を定めることができないときは、裁判所が、これを定める。
Temis2_20200930111701 本来この条文は、再婚禁止期間を守らないで子を出生したときに生じる可能性のある推定の重複を解決するためのものだが、外国法と日本法の違いから推定が重複した今回のケースにも類推適用された。
ちなみにこの訴えは、前婚の夫Bを被告として、後婚の夫Cが原告となって自分がDの父であることを定めてほしいという請求となっているが、元々は親子関係確認か何かだったのではあるまいか。それで裁判所の見解で民法773条の類推適用ができるということになって訴えを変更したのではあるまいか?
親子関係確認訴訟は人訴で職権探知主義の世界ではあるが、他方で父を定める訴えは形式的形成訴訟で処分権主義も制限されるとされている。ただし同じ形式的形成訴訟の境界確定訴訟と違ってめったに無いこともあり、どういう特殊性があるべきかは議論が殆どないのだが、いずれにしても人訴43条に原告適格と被告適格が法定されている。今回の当事者は今の配偶者が元の配偶者を被告として訴えるというわけで、まさに同条2項1号のケースである。
なお、判例集の記載によると、原告は東日本入国管理センター収容中という住所表記であり、被告はそれがない。収容中でも訴えを起こせるのは、現実問題として困難もあるだろうから、やはり母親が出生届の受理を拒まれて困って、相談した弁護士さんが、親子関係確認の訴えを起こすために収容中のCに原告となってもらったというところなのではないかなぁと推測する。

2020年09月30日 法と女性, 裁判例 | 固定リンク
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