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森田正光さん 羽生九段の封じ手 十中八九「5八同成銀」の状況で...「どんな急変を仕込んだのか」

[ 2023年1月10日 05:29 ]

第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第1局第2日 ( 2023年1月9日 静岡県掛川市 掛川城二の丸茶室 )

スポニチ本紙8日付け紙面の藤井王将、羽生九段と同じ場所でポーズをとる気象予報士の森田正光氏(撮影・河野 光希)
Photo By スポニチ

熱烈な将棋ファンでお天気キャスターの森田正光さん(72)が、"推し棋士"の羽生九段が藤井王将に挑戦する第72期ALSOK杯王将戦を現地で生観戦。本紙に気象予報士ならではの視点で観戦記を寄せた。

藤井王将と羽生九段の世紀の対決は「現代最強の棋士」と「現代最高の棋士」の戦い。開幕前日の対局場検分から堪能させていただきました。

気象予報士の立場から2人の天才を育んだ環境について調べてみました。藤井王将は愛知県瀬戸市、羽生九段は東京都八王子市で育ちました。両市の年間降雨量は前者が1644ミリ(瀬戸市のデータがないため隣の岐阜県多治見市)、後者が1643ミリ。最高気温は39・7度(瀬戸市消防署調べ)、後者は39・3度。両市はともに内陸部に位置し、数値はほぼ同じです。好きな天気についても両者とも「雪が降ると気持ちが高揚する」と回答。意外な共通点に驚きました。

盤上を天気図に見立てて面白いと感じたのは封じ手でした。羽生九段は十中八九「5八同成銀」という状況で101分間長考して封じました。気象予報界には「実況にだまされるな」という言葉があります。通常、目前の天気は時速30キロくらいの速度で変化していきますが、夏場などにはこの常識が覆され、快晴だった天気が急変する場合があります。

「十中八九の手には十中八九の手が返ってくることが多い。羽生先生の側からするとその次の一手が広いということなのでしょう。それをひと晩じっくり考えられるという点では封じた側にもメリットがあります」

立会を務めた久保利明九段のこんな解説をじかに聞きながら羽生九段がこの封じ手にどんな急変を仕込んだのか。そんな幸せな想像を楽しみながら掛川対局を観戦しました。

終局後、両対局者が向かった大盤解説会場は国の重要文化財でもある大日本報徳社。そこにある二宮尊徳像が手にしている書物には「一家仁」で始まる「大学」の一節が刻まれています。「仁」の文字は羽生九段が今シリーズの記念扇子に揮毫(きごう)するため選んだ一字です。4年ほど前からAIを活用して復活を遂げた羽生九段がAIが苦手とする思いやりの心「仁」をなぜ選んだのか。その答えを推理しながら第2局以降も楽しみたいと思います。


◇森田 正光(もりた・まさみつ)1950年(昭25)4月3日生まれ、愛知県出身の72歳。日本気象協会を経てウェザーマップを設立。TBS「Nスタ」の月、火曜日を担当。現在、最年長お天気キャスター。将棋歴は60年。アマチュア三段。将棋ペンクラブ選考委員。最近は将棋で負けるのが嫌なので「観(み)る将」に徹している。王将戦7番勝負では心ひそかに羽生九段を応援している。

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