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【内田雅也の追球】接戦、無死一塁の「打て」 阪神5割復帰の白星呼んだ勝負師・岡田監督の勘

[ 2024年4月19日 08:00 ]

セ・リーグ 阪神2―1巨人 ( 2024年4月18日 甲子園 )

<神・巨>8回、近本は左前打を放つ(投手・菅野)(撮影・須田 麻祐子)
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阪神の同点、サヨナラを生んだのは接戦の終盤、無死一塁での「打て」だとみている。1点ビハインドの終盤でも、同点の延長でも、送りバントを使わずに強攻策で打たせ、勝利に導いた。

0―1の8回裏、無死一塁で、俊足で併殺打も少ない近本光司。初球から果敢に打ちに出て、追い込まれながら三遊間突破の左前打を放った。1死後、森下翔太の左前同点打につながった。

1―1同点の延長10回裏、先頭・中野拓夢が左前打で出て無死一塁、打席は森下だった。岡田彰布は勝利監督インタビューで「打て」を決断した心境を明かした。「中野出たところで、森下ずっと良かったので......そうですね、まあ、なんて言うか......バントをさせるような選手じゃないんで、森下にかけました」

森下は期待に応え、二遊間をゴロで抜く中前打を放ち、中野は三塁を奪った。無死一、三塁から二進(二盗に守備的無関心)、申告敬遠で無死満塁とし、佐藤輝が一塁左をゴロで抜いて、サヨナラ勝ちを決めたわけだ。

統計学者・鳥越規央が2011年に著した、その名も『9回裏無死1塁でバントはするな』(祥伝社新書)で、プロ野球で接戦、終盤での無死一塁でバントさせる監督、それをセオリーと認める解説者がいかに多いかを指摘している。1点ビハインドの後攻チームが無死一塁からバントで1死二塁とし<勝利確率を約4%も下げている>とのデータを紹介している。

岡田は自ら「マイナス思考」と認め、堅実な作戦を好むとされる。だがバントを「手堅い作戦」と妄信してはいない。相手に「アウトをやる」意味を考える。2軍監督時代、1軍監督の野村克也が「岡田はバントが嫌いなのか」とぼやいたそうだが、ただ状況に応じ、柔軟に作戦を使い分けているだけだった。

打線は依然低調で、10試合連続2点以下は1959、2012年と並ぶ球団ワーストの状態だ。通常、貧打を補うために機動力や小技に頼るところを「打て」で局面を打開したのである。

優勝した昨年も「当然バント」という場面で盗塁や「打て」を決断し、勝利をものにしてきた。

「修羅場での直感は論理を超える」とチェス世界王者、ガルリ・カスパロフの『決定力を鍛える』(NHK出版)にある。勝負師の勘がさえた采配が5割復帰の白星を呼んでいた。 =敬称略=(編集委員)

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