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アップル、アタリ、コモドールといった海外レトロPCゲームについて。【推薦】 レトロコンピュータを扱った傑作マンガ「WAVE」が電子書籍で復刊→しかく このブログについて→しかく
車レビュー.biz

2013年06月

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1983年に発表された「ダイノ・エッグス」(Dino Eggs)というアクションゲームがあります。アーケードの「スペース・パニック」に始まるとされる、いわゆるプラットフォーム・ゲームで、アップルII版がオリジナルですが、コモドール64とIBM-PCにも移植版が存在します。

この作品が、オリジナル版の作者によって30年ぶりにリメイクされ、「ダイノ・エッグス・リバース」(Dino Eggs Rebirth)というタイトルで、PCとX-Box版で出ることになりました。

ゲームとしては、主人公はタイムトラベラーとして恐竜時代にタイムスリップしてきたという設定で、さまざまな敵の攻撃をかいくぐりながら、恐竜のタマゴを集めるというものです。

敵として時々大きな足が空から降ってきて、プレイヤーキャラクタを踏み潰そうとするのですが、これがゲームの大きな特徴になっていました。この足は恐竜の母親という設定で、いわばタマゴの生みの親が、わが子を取り戻そうとして攻撃してくるわけです。

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ゲームとしてはなかなかよく出来ており、この手の作品はアップルIIにはあまりないこともあって、貴重なものではありました。

それにしても、この作品がリメイクされると知った時は、いささか意外な気がしました。というのも、知名度ということでは、この「ダイノ・エッグス」は、いささか微妙なところにあるためです。同じ作者には「クライシス・マウンテン」という作品もあり、こちらは日本でも紹介されていたため、まだ知られているかもしれません。

とはいえ、改めて調べてみると、本国アメリカではそれなりに人気があったようで、2011年には本作のファンがX-Boxに移植した「ダイノ・レッグス」(Dino Leggs)という作品が出たほか、いろいろと第三者による勝手移植が存在しています。今回のリメイクにあたっても、そういう下地があったからこそ実現したのでしょう。

ちなみに作者はデイビッド・シュレーダーという人で、80年代前半にアップルIIで「クライシス・マウンテン」「ダイノ・エッグス」などの作品を出した後にゲーム製作から離れ、現在はオレゴンでウェブ制作の仕事をされているそうです。

今回のリメイクにあたっては、シュレーダー氏はデザインを主に担当され、プログラミングは別の人が担当されたそうですが、そのプログラマも原作のファンなのだとか。まさしく理想的な組み合わせで制作されたリメイク版は、今年の夏に発表される予定とのことです。

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(シュレーダー氏による、リメイク版の宣伝映像。作者本人のほか、リメイク版のプログラマも登場しています)

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「ウルフェンシュタイン3D」といえば、最初期のFPSとして有名ですが、その元になったのが、1981年に発売されたゲーム「キャッスル・ウルフェンシュタイン」です。対応機種はアップルIIとコモドール64で、当時はまだめずらしかった探索型のアクションゲームであり、また最初期のサンプリング音声を取り入れたゲームでもあります。

ゲームとしては単純で、第二次世界大戦のヨーロッパを舞台に、プレイヤーは連合国の兵士となって、ドイツ軍が占領した城に乗り込み、あちこちの部屋を渡り歩いては、ナチスの戦略計画書を盗み出し、城を脱出すればクリア、というものです。

ピストルと10発の弾丸を持っており、これが唯一の武器になりますが、何も敵に出くわすたびに発砲する必要はありません。あちこちに敵兵がうろうろしていますが、銃を向ければ相手は降参します。そうして相手の身体をさぐることで、持ち物を奪うこともできます。

また、あちこちに物入れの箱があり、そこからドイツ軍の制服(これを着込むことで敵の目をごまかすことができます)、手榴弾、防弾チョッキなど役立つアイテムが手に入ります。お酒まであり、これを飲むと酔っ払ってしまいます。

この作品、アクションゲームとしてもなかなかの出来なのですが、何といっても凄いのが、敵がしゃべるという点でした。どうやらサンプリング音声を使っているらしいのですが、当時は「アップルがドイツ語をしゃべる!」と話題になったものです。

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実際、かなり大きい音量で再生されることもあって、これが実に効果的でした。

作者はサイラス・ワーナーというプログラマで、たまたま町でウィリアムズのアーケードゲーム「ロボトロン2084」を見かけたのがきっかけで、この作品を作ったのだそうです。(とはいえ、両作品で似ているところといえば、敵に囲まれた状況で闘う、ということくらいしかないのですが)

このゲーム、かなりの好評だったようで、3年後には同じくワーナーによる続編「ビヨンド・キャッスル・ウルフェンシュタイン」が発表されています。これも傑作でしたが、残念ながらワーナーにとってはこれが最後のゲームとなりました。

なお、近々「ウルフェンシュタイン」が映画化されるそうですが、予告篇には「ウルフェンシュタイン3D」は登場したものの、「キャッスル・ウルフェンシュタイン」は出てきませんでした。単に知らなかったのか、それとも8ビット時代の画面は映画のスクリーンでは厳しいからという判断なのでしょうか。いずれにしても残念なことではあります。

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(こちらは予告篇ではなく、映画の制作を知らせるニュース映像で、「キャッスル・ウルフェンシュタイン」もきちんと登場します)
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[画像:c64-1541-drive_w_manual]
コモドール64といえば、史上もっとも売れたPCとして有名です。その理由として主に挙げられるのが、徹底した低価格と販路拡大というふたつの戦略でした。

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2013年06月27日17:01
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[画像:panorama-lake]

アクセスありがとうございます。

このブログは主に海外のレトロPCゲームを対象としています。時期としては70年代末から90年代初頭、8ビット機の登場から初期の16ビット機までとなります。

日本では、海外レトロゲームへの関心はけして低くはないものの、インターネットでの情報はほとんどがアーケードやコンソール(ゲーム専用機)に関するものであり、PCゲームが話題になる機会はまだまだ乏しいのが現状です。

海外においてもレトロPCのユーザーは数多く存在しており、ハードウェア、ソフトウェアの開発はもちろん、書籍の刊行や、イベントも開催されています。

日本ではかつて、1980年代前半のほんの数年間ではありますが、海外のPCゲーム、とりわけアップルII向けのソフトウェアが雑誌で頻繁に紹介された時期がありました。

それだけ海外のゲームが注目されていたわけですが、やむを得ないこととはいえ、実際に紹介され、しかるべき評価を受けたのは全体のごく一部でしかありません。また同時代的に評価された作品にも、今からするとまた違った見方が出来るものもあります。

また、日本における外国PCということでは、アップルIIの存在があまりにも圧倒的であったために、それ以外の機種はいささか見過ごされてきたところがありました。これが後々に至るまで、日本と外国のレトロPCゲームにおける大きな意識の差を作ってしまったように思います。

それというのも、ことゲームにおいては、欧米ではアタリ800とコモドール64が中心であり、アップルIIは一部のジャンルにのみ強かったというのが実情なのです。しかし日本では、海外のPCゲームといえば、「アップルのゲーム」と考えられてしまいがちで、このことが大きなギャップを作ってしまいました。(もちろん、アップルIIのゲームに名作が多かったことは確固たる事実ですが)

つまり、いくら優れた作品であっても、アタリやコモドールでしか動かないソフトは、なかなか取り上げられなかったのです。

たとえば、「MULE」は多人数ゲームの傑作としてゲーム史に残る古典的作品ですが、日本で広く知られるようになったのは、後になって国産機に移植されて以降のことでした。

このブログでは、あくまでもゲーム中心ではありますが、そのような地理的、時間的なズレをできるかぎり補うような情報を提供し、あわせて海外の動向もお伝えしてきたいと思っています。

主に扱うのは海外、特にアメリカの8ビットPC向けゲームですが、状況に応じて16ビットPCやアーケード、ゲーム専用機なども対象にしていきます。


なお、管理人へのご連絡は次のアドレスまでお願いします。

traktだいやまーくlivedoor.com

(だいやまーくを半角のアットマークに変えてください)


また、今後の予定として、電子書籍の刊行を考えています。具体的な内容としては、このブログと直接重なるものではありませんが、海外レトロゲームに関するものです。

このブログに出てくるような話題に関心のある方なら、きっと興味を持っていただけるものになると思います。

これについては、準備が整い次第、改めて告知します。よろしくお願いいたします。

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現在、スティーブ・ジョブズの伝記映画がふたつ制作されています。ひとつは日本でもベストセラーになった、ウォルター・アイザックソンによる伝記の映画版ですが、それに先行するかたちで、あの伝記とは無関係の、ジョブズの生涯をテーマにした別の映画が作られています。

この映画、タイトルを「jOBS」といい、今年の8月に全米で公開される予定で、つい最近になって予告編がYouTubeに登場しました。

実はこの映画、本来は今年4月には公開される予定だったのですが、延期になっていました。理由は明らかにされていませんが、ある出来事が関係していることは間違いなさそうです。

というのも、この映画、今年の1月に1分ほどの抜粋映像が公表されたのですが、これがかなりの悪評を受けたのです。とりわけ指摘されたのが、アップルの創業者であるふたりの描写が事実に即していないということでした。


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(最初に公表された抜粋映像)

なにしろスティーブ・ウォズニアック自身が、間違いだらけだと指摘したほか、当時を知る人々や、コンピュータ史の専門家などが、こぞって批判したのです。

この映画を疑問視したのは、識者や事情通だけでなく、一般の映画ファンも同じでした。サンダンス映画祭で先行上映されたのですが、冷ややかな反応しか得られなかったのです。また、Rotten Tomatoesという人気の映画投票サイトでも肯定的だったのは全体の4割ほどと、あまり芳しくない評価が下されています。

結局、製作者側は当初予定していた4月公開を遅らせることにしました。その理由は不明ですが、このままではまずいと判断したのかもしれません。

公開延期を経て、今回の予告篇登場となったわけですが、それを見たウォズニアックは、前回よりはいくらかましになったものの、大きな問題があいかわらず残っているのではないか、とGizmodoの記事でコメントしています。


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(映画「jOBS」予告篇)

ウォズニアックが指摘しているのは、ジョブズの描写が事実と大きくかけ離れているという点です。抜粋映像や予告篇を見るかぎり、この映画はジョブズを、適切な主張をしていたのに周囲に理解されなかった人物のように描くつもりらしいが、それは正しくない。実際のジョブズは、80年代のアップルが犯した失敗の多くに中心人物として関わっていたのだから、というわけです。

これは確かにその通りで、アップルIIIやLISAなどの失敗は、やはりジョブズの責任というべきでしょう。そして、その間のアップルを支えていたのは、ウォズが設計したアップルIIの売り上げだったわけで、ウォズが不満を抱くのも無理はありません。また、ジョブズ自身は新製品に熱心に取り組む一方で、アップルIIを冷遇していたという事実もあります。

一方で、結局は一般向けの映画なのだから、事実と食い違いがあっても仕方がないという立場もあります。それは確かに一理ある話で、物語を分かりやすく見せるためには、多少の改変はやむを得ないかもしれません。たとえば、映画「ソーシャル・ネットワーク」もかなり脚色された部分が多いといいます。

いずれにしても、スティーブ・ジョブズの伝記映画なら、少々内容に難があっても、今のタイミングで公開すれば確実にヒットすることでしょう。ウォルター・アイザックソンの公認伝記に基づく映画は、ソニー・ピクチャーズ製作で進行中ですが、完成はかなり後になると見られています。それを考えると、「jOBS」の公開をあえて遅らせたのは正解かもしれません。

Wozniak on Jobs's Biopic: "Young Steve Wasn't a Saint"- Gizmodo

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#映画
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日本において、過去のゲームの保管は、今のところ民間の取り組みが主となっていますが、これはゲーム先進国のアメリカでも同様のようです。つまり、公的機関としてのゲームの保存に関する取り組みは、ようやく始まったばかりの段階なのです。そのことは、アメリカ最大の図書館である、国会図書館も例外ではありません。
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すこし前になりますが、2007年のニューヨーク・タイムズ紙に、公的機関によるゲームの保存に関する記事がありましたので、ここでご紹介したいと思います。学術機関がゲームを保管するにあたり、作品選定のたたき台になるようにと、歴史に残るゲームの名作を識者のチームで選定したという話題です。

話の発端は、1998年へと遡ります。この年に、スタンフォード大学の科学技術史コレクションの世話人であったヘンリー・ローウッド氏が、ゲームを所蔵対象に加えることを決めました。

ローウッド氏自身は、わりと気軽に決めたことだったのですが、それからのわずか数年で、ゲームはとるにたらないものから、国会図書館が真剣に所蔵を考えるほどのものに変わってしまいました。

そして2007年、サンフランシスコで開催されたゲーム開発者会議(GDA)で、ローウッド氏が発表したのが「ゲームの聖典」(game canon)でした。これは、その前年にスタンフォードを初めとする複数の大学が、ゲームの所蔵に関して国会図書館に提出したリストが元になっています。そのリストは、文化的、歴史的に重要と思われるゲームソフトやゲーム関連機器をまとめたものでした。そうしたものをきちんとした形で保管しなければならない、というわけです。

この「ゲームの聖典」は、いわば「全時代におけるゲームの古典」をリストにしたもので、選出にあたっては、専門家からなるチームが担当しました。ローウッド氏のほか、ゲーム作家のスティーブ・メレツキーにウォーレン・スペクター、ゲーム研究者のマッテオ・ビッタンティ、ゲーム・ジャーナリストのクリストファー・グラント、といった面々です。

選ばれた作品は次の通りです。

Spacewar! (1962)
Star Raiders (1979)
Zork (1980)
Tetris (1985)
SimCity (1989)
Super Mario Bros. 3 (1990)
Civilization I/II (1991)
Doom (1993)
Warcraft series (1994-)
Sensible World of Soccer (1994)

このリストの特徴として、特定のジャンルを切り開いた作品を中心にしている点があります。たとえば、Spacewar!は世界初のアクション・ゲームであり、マルチプレイヤー・ゲームでもあります。初期のWarcraftは、リアルタイムによる戦略ゲームの先駆けであり、Zorkも初めて一般に普及したアドベンチャー・ゲームでした。

SimCityはゴッドゲーム(神の視点ゲーム)というジャンルの形成に大きな役割を果たしています。またSuper Mario Bros. 3は、非単線的なゲームプレイをいち早く実現したことが評価につながったとのことです。

正直いって、このリストを初めて見た時には、脈絡のない印象を受けたのですが、「特定のジャンルを切り開いた作品」という基準で選んだと知り、考えを改めた覚えがあります。個人的にはアタリ800の傑作「スター・レイダース」が入っているのを嬉しく思いました。

なお、この動きを受けて米国会図書館はゲームの収集に着手し、2012年9月現在で3000点のゲームを所蔵しているそうです。

いずれにしても、アメリカではずいぶん前から公的機関がゲームの保存に取り組んでいるわけで、日本にも同様の動きを期待したいところです。

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(審査にあたった人々。左からスティーブ・メレツキー、クリストファー・グラント、ウォーレン・スペクター、ヘンリー・ローウッド、マッテオ・ビッタンティ)

Is That Just Some Game? No, It's a Cultural Artifact - New York Times
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以前、オークションでアップル1の価格が暴騰していることに触れましたが、また新たな個体が今月末にクリスティーズの競売に掛けられることが決まりました。

予想される落札額は30万〜50万ドルとのことですが、先月、ドイツのオークションでの落札額は54万ドル(諸経費を含めると67万ドル)でしたので、それを踏まえての予想なのでしょう。

今回出品されたアップル1の持ち主は、テッド・ペリーさんという70歳のアメリカ人。このアップル1をペリーさんは1979年か1980年に物々交換、つまり無料で入手しました。当時のペリーさんは学校で心理学を教えており、生徒の指導に使うつもりで手に入れたそうです。その後はダンボール箱に入れ、自宅に置きっぱなしにしていました。

出品にあたっては、クリスティーズ側が依頼した専門家がペリーさんの家を訪問し、アップル1の電源を入れてみたところ、ぶじに動作したとのこと。ペリーさんのアップル1は木製のケースに備え付けられ、キーボードやモニタ、(データレコーダーを接続するための)オーディオ端子などが増設されているものの、マザーボードはオリジナルのままです。

アップル1は200台が製造され、現在残っているのは50台ほど。うち完動品である確認が取れているのは10台ほどです。もっとも、あえて動作させないオーナーも多いので、実際はこれより多い可能性もありますが。

それにしても、今の値段は明らかに異常で、そのことを指摘する声もあちこちに見られます。

AP電の記事では、コロンビア大学のスティーブン・A・エドワード教授(情報科学)が、このところのオークションでのアップル1の落札額について「6ケタという額自体にショックを受けている。あきらかに異常な相場」とコメントしています。

また、ここまでの高値となると、偽造品の出現も予想されます。もちろん専門家であれば見分けられるはずですし、その辺の対策はオークション業者もきちんとしているはずですが。

オークションの締め切りは7月9日で、値段が確定するのはそれ以降となります。果たして今回も、これまでのような値段が付くのでしょうか。

One of the first Apple computers could fetch 500,000ドル or more at auction - FOX News
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ダンスゲームといえば、今はアーケードが主流になりましたが、その源流は80年代半ばのPCゲームにあるようです。

そのひとつが、1984年にクリエイティブという会社から発売されたコモドール64向けのゲーム「ブレイク・ストリート」です。

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ブレイクダンスの決まり技をジョイスティック操作でなぞるというもので、プレイヤーキャラクタには時間と体力が設定されており、その2つに注意しながらさまざまなダンスをこなしていくことになります。マイナーな作品ですが、8ビットPCのダンスゲームとしては根強い人気があります。

音楽は1曲だけ、決まり技のバリエーションもさほど多いわけでもなく、ボリュームという点ではいささか物足りないものがあるのですが、ダンス自体は大きなグラフィックで巧みに再現されています。

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また曲もなかなかの出来で、スクラッチを思わせる効果音を組み入れるなど、細かな工夫がなされています。

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当時は映像の入手も簡単ではなかったでしょうから、よくここまで再現できたものだと思ったのですが、どうやらダンスチームの協力を得ていたようです。本物のダンサーに踊ってもらい、それを元にしたということでしょう。道理でよく出来ているはずです。

ゲーム性に乏しいこともあり、1人プレイだと早々に飽きてしまいますが、誰かと一緒に遊ぶにはいいかもしれません。

一方、ブレイクダンスを扱ったゲームは他にもありました。たとえば、同じ84年にエピクス社が「ブレイクダンス」という、そのものずばりのタイトルの作品を出しています。

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ご覧の通り、画面は「ブレイク・ストリート」に比べるとイマイチな感じがしますが、ゲーム自体も物足りないものでした。

曲は複数用意され、決め技のバリエーションもそれなりに揃えてあり、モードも5つあるなど、ボリュームの面では「ブレイク・ストリート」を上回っているのですが、どうにも物足りない感じがつきまとっています。特に曲が面白くないのが残念です。

「ブレイク・ストリート」にあって「ブレイクダンス」にないものといえば、全体的な雰囲気でしょうか。「ブレイクダンス」もよく調べて作ってあるのですが、「分かってる感じ」では「ブレイク・ストリート」の方が上、という印象があります。

それにしても、このような作品を見せられると、改めてゲームのアイデアというものは80年代に一通り出尽くしてしまっていたんだなと思わされます。

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1984年ドイツで放送されたブレイクダンスの実演。当時すでにヨーロッパにもブレイクダンスが広がっていたのが実感できます。
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「ホット・ホイールズ」という名前のゲームはいくつかありますが、ここで取り上げるのは1985年にエピクス社から発売された、コモドール64向けの作品です。他の作品はすべて、いわゆるカーレースものなのですが、本作はそういうものとはまったく違います。というより、ゲームとして考えてはいけないのかもしれません。

ゲームを開始すると、まず車種を選択します。次に工場で、部品の組立てや、車体の塗装を行います。そうして車が完成すると、ようやく公道に出るのですが、そこから出来ることは、駐車場に車を入れたり、ガソリンスタンドで給油したり、機械で洗車したりと、街を移動しながら、いわゆる「車に関わる作業」をやっていきます。以後、その繰り返しです。

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つまり、このゲームには目的がないのです。スコア表示もないのですが、むしろそれが自然かもしれません。そもそも何かを競う要素がないのですから。

ただし、細かく見ると、ゲーム的な部分が皆無というわけでもありません。

途中で消防署に立ち寄ると、なぜか消防車を操縦できるようになります。そのまま街を流していると、やがて火災を起こしたビルの前を通りがかります。いきおい、消火作業にあたることになりますが、この時には、プレイヤーは火が出ているところを狙って鎮火する操作を行います。こういう細かな部分はいくつかありますが、ゲーム的な要素といえばその程度なのです。

ただただ自動車を動かしては、それらしい作業を繰り返すというこの作品は、ゲームというより、車のごっこ遊びに近いものと考えるべきなのでしょう。車のミニチュアで遊ぶようなことを、コンピュータの画面で行っているわけで、つまりは幼児向けのプログラムということになります。本作には、おもちゃ会社のマテルもクレジットされていますが、企画自体がマテルによるものだったのかもしれません。

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一方で、大人の目で見ても、面白く思えるところもあります。たとえば、昔の外車ってこうだったな、という描写があったりするのです。(まあ、日本人限定ですが)

たとえばオイル交換をするところですが、ジャッキで持ち上げられた車体から、オイルが盛大に漏れています。

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(このプレイ動画では、7分あたりでオイル交換が始まります)

アメ車といえばオイル漏れというくらいで、以前はアメリカの駐車場などオイルだまりがあちこちにあるのが普通でした。このあたり、アメリカ人は実に無頓着で、オイルが漏れるのは当たり前という感覚があったわけです。もっとも、事故につながる可能性もあるので、あんまり軽々しく考えるのもどうかと思いますが。

これがたとえば日本なら、立体駐車場でオイル漏れなど起こしたら相当な顰蹙ものでしょう。(ただし、ここ20年ほどでアメ車でもオイル漏れの問題はかなり改善されたと聞きます)

それにしても、本作のようなものは説明に困ります。環境ソフトウェアと違って、プレイヤーが常に操作しなければならないため、ただ何の気なしに接することも出来ません。やはり「幼児向けのごっこ遊び」ソフトウェアというべきものでしょう。

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正直いって、本作は大人が遊ぶにはあまりにも退屈ですが、幼児向けと考えれば、よく出来ているのではないでしょうか。またコモドール64ならではのサウンドも素晴らしい出来になっています。

このところ、堅い内容のものが続いていたので、気楽なものをということで本作を取り上げてみました。
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ティモシー・リアリーは、なにかと毀誉褒貶のある人物ですが、数々の功績を残したことは確かです。そのひとつとして、心理学の知名度を向上させたことがあります。話術にすぐれた彼は、講演やテレビ出演にも積極的でしたが、そういう活動を通じて、精神分析という世界を世間に知らしめたのは大きいといえるでしょう。

そのリアリーは、生涯に一作だけコンピュータ・ソフトウェアを制作しています。それが1985年にエレクトロニック・アーツより発売された「マインド・ミラー」です。

パッケージの惹句には、「パーティ・ゲームであり、ロールプレイング・ゲームであり、社交シミュレーションである」とあります。基本的には、人格診断と、それに基づく人間関係を分析し、その結果を図とともに示すプログラム、と説明できるでしょう。

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いわばゲームの要素を取り入れた、一種の性格診断プログラムなのですが、性格診断はもともとリアリーの専門でもあるため、リアリー自身も相当に入れ込んで作ったようです。結果として、けして単なる名義貸しではなく、じつに興味深いものに仕上がり、今に至るまで根強い支持を得る作品となりました。

分析する対象は、自分自身のほかにも、誰でも選べるようになっています。たとえば、身近な気になる人でもいいし、レーガンやゴルバチョフのような有名人でも良いそうです。つまり、そういう人たちと自分自身の相性を診断することもできるわけです。

リアリーは若い頃に、人格を類型化するツールとして個人間の分析図を考案したことがあり、自身の博士論文もそれに関するものでした。この分析法は高く評価され、アメリカでは広く使われています。そして「マインド・ミラー」とは、リアリー自身によれば、その博士論文をゲーム化したものなのだそうです。

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「マインド・ミラー」では、対象とする人間の性格を診断し、図式化することで、具体的な評価まで下してしまいます。こう書くと、さしさわりのある内容のようですが、実際にはそのようなことはなく、ユーモラスな要素も含むなど、気軽に接することのできるプログラムです。

そして2010年には、かつてオリジナル版「マインド・ミラー」のプログラミングを手がけた人々が再び集まり、リアリーの構想に基づく、アップデート版を完成させました。これは現在、Facebookアプリとしてプレイできるようになっています。

ある意味、プログラムの内容を考えると、SNSこそ「マインド・ミラー」にふさわしい場なのかもしれません。

www.mindmirror.com
「マインド・ミラー」公式サイト。ここからFacebook版にもアクセスできます。

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(「マインド・ミラー」の発表当時に、宣伝の一環としてテレビ出演したティモシー・リアリー)

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(21世紀版「マインド・ミラー」の制作に関わった人々が登場する広報ビデオ)
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いわゆる専門職の間では、PCは早くから関心が持たれていたようで、80年初頭のソフトウェア産業の形成期にも、業務用はもちろん、一般向けのゲームソフトにも専門的な知識を使った作品がありました。80年代も半ばになると、PCゲームもかなり発達し、質量ともに本格的なものが出てくるようになります。ここで紹介する「オルター・エゴ」もそのひとつです。

「オルター・エゴ」は1986年にアクティビジョンからアップルII、コモドール64、MS-DOS向けに発売されたシミュレーションゲームです。誕生から死まで、「人の一生」を扱うという壮大なスケールと、専門の心理学者がデザインしたということで話題になりました。男性版と女性版があり、それぞれ別パッケージで発売されています。

具体的にどう進めるのかというと、PCが出す質問にひたすら答えていくというものなのですが、やってみれば分かる通り、とにかく膨大なテキスト量で、作者の苦労が偲ばれる出来でした。何でも数百人に聞き取ったデータを元にしているのだそうです。

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ゲーム自体は、まだ胎内にいる未出生児の状態ら始まるのですが、この時から「いつ外に出てくるのか」という質問を浴びせられます。ここで「出る」を選択しないでおくと、PCがなるべく早く出ることをすすめる返答を出してきます。

この「外に出る」質問は4、5回ほど引き伸ばせるのですが、最終的にはむりやり出産ということになります。また強制的に外に出された場合、PCから「こういう決断は早くするものです」という指摘を受けます。

このゲームの特徴は、単に人の一生をなぞるだけでなく、節目となるタイミングで「こうするべき」というアドバイスを出すところでしょう。いわば、人生相談のかたまりのような要素があるのです。

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ゲームとしては、ファミコンの「ロー・オブ・ザ・ウェスト」のように、プレイヤーは選択式の対応を選び、PC側の回答を楽しむ、というものなのですが、テーマが「人生」だけに、いろいろ考えさせられるものがあります。全体的なトーンとしては、けっこうユーモラスな感じなのですが、それはプレイヤーが深刻に受け止めないようにするための配慮なのではないか、という気もします。

また成長していくうちに、当然のことながら、いろいろとあからさまな描写もあるのですが、これは未成年者がプレイする場合はスキップするよう設定できます。

当時は「説教が多い」という反応もあったそうで、それも無理のないところかと思います。特に10代の子供ならそう感じるのはむしろ自然でしょう。ですが、いい年の大人になってプレイしてみると、何かと複雑な気分になります。なにしろ、人生は選択の連続であり、あの時こうしておけばよかったという感情は、歳を重ねるごとに強くなっていきますから。

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このゲーム、発売当時はけっこう話題にもなり、評判も良かったようです。大ヒットとまではいかなかったものの、作者はこれで家と車を買ったそうですから、売行きもけして悪いというほどではなかったのでしょう。(もっとも、女性版は、当時は女性のゲーマーが少なかったせいかあまり売れず、今では稀少品だそうです)

このゲーム、現在はウェブでプレイすることができます(無料ですが、ゲームの途中からユーザー登録が必要になります)。また、2009年にはiOSアンドロイドにも移植されており、そちらも好評なようです。

ゲーム自体は、ただ質問に答えるだけですので、難易度も関係ありません。個人的には、(「シム・ピープル」などとは違って)自分からいろいろと行動する必要がないだけ、すんなり始めることができました(ただし、それなりに時間のかかるゲームではありますが)。今プレイしてみても、なかなかに面白いものです。ありえない人生を体験できる、という意味では、これほど「シミュレーション」的なゲームもないでしょう。一度遊んでみてはいかがでしょうか。

http://youtu.be/J_MnUrPpGBY
(ゲームのプレイ動画です。直接埋め込みが禁止に設定されているため、リンクを設置しておきます)

APPSTORE: Alter Ego 4ドル.99

Alter Ego - www.playalterego.com
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2009年と少し前になるのですが、PC WORLD誌のサイトにアップルIIの名作ゲームを紹介する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

選択の基準としては「後に登場するゲームに影響を与えた作品」ということですが、誰でも知っている名作から比較的マイナーなものまで、バランス良く選んであるため、とりあえずアップルのゲームをやってみたいという場合に参考になるのではないでしょうか。

Archon
チェスをモチーフにした対戦ゲームで、アクションとストラテジーの要素をうまく組み合わせた傑作です。オリジナルからはかなり遅れましたが、日本でも移植されて人気を呼びました。

Beyond Castle Wolfenstein
名作Castle Wolfensteinの続編です。エージェントとしてナチスの根拠地である城に侵入するというアクションゲームで、前作と同様に、アップルIIがドイツ語を喋るという、当時としては驚異的な技術を駆使していました。ゲームとしても実にスリリングな名作です。

The Bilestoad
トップビューの対戦ゲームです。未来の闘技場で、騎士が斧で斬り合うというものでしたが、どことなく不穏な雰囲気があり、描写が問題視された作品でもありました。

Chivalry
西欧の騎士道をテーマにした作品です。一連のミニゲームをクリアして、お姫さまを救出するというもので、美しいグラフィックが特徴でした。元記事では本作が「マリオ・パーティ」を思わせると説明しています。

Hacker
アクティビジョンから出た作品で、ネットワークを通じてどこかのコンピュータに侵入するという、風変わりなアドベンチャーゲームです。当時はようやくハッカーという存在が一般にも認知されつつあった頃でした。

Karateka, Prince of Persia
いずれもジョーダン・メックナーの名作です。既にファミコンがあった日本とは違い、アメリカの場合、「カラテカ」のようなゲームが家庭でプレイできるのは相当なインパクトがあったことでしょう。ことアクションゲームに関しては、後続のアタリやコモドールにすっかり差をつけられていたアップルIIですが、この2作に関してはアップルIIがオリジナルでした。

Lode Runner
プラットフォーム型アクションゲームの古典です。アクションとパズルの要素がうまく組み合っていて、ゲームとしてよく出来ているのはもちろんですが、キャラクタのなめらかな動きや、面クリア時の演出など、細かな配慮がなされているのにも感心させられます。発売元のブローダーバンドは、こういう細かいところを的確に仕上げることで定評のある会社でした。

One On One - Larry Bird vs. Dr. J
バスケットボールのゴール前でのボールの取り合いをゲーム化した、エレクトロニック・アーツ初期の傑作です。EAのスポーツ路線は本作から始まりました。

Oregon Trail, Where in the World is Carmen Sandiego?
教育ゲーム初期の名作です。いずれも日本では知名度ゼロの作品ですが、アメリカではよく知られており、特に前者は有名で、いまだにフェースブックなどで遊ばれています。

Rescue Raiders
横スクロールでヘリコプターが主役のアクションゲームというと、まるっきり「チョップリフター」であり、画面を見ても影響下にあるのは明らかなのですが、単なるクローンではありません。有名な作品ではありませんが、「チョップリフター」のさまざまな要素を拡大した感じで、今プレイしてもかなり面白い傑作です。

Sun Dog -- The Frozen Legacy
アクションの要素も備えた、一種の宇宙交易ゲームですが、当時としてはめずらしいオープンエンド型のゲームでした。冒険の途中で敵の攻撃を受けて自船が破損すると、船の配線を自分で修復しなければならないなど、戦闘や商取引のほかにも、さまざまな要素が取り入れられています。

Taipan
これも交易を扱ったゲームです。商品をあちこちの港に運び、利益を得ることを競うものですが、場合によっては詐欺に近い行為が出来るため、そこに面白さがあるのだとか。

Wasteland
戦争によって荒廃した、架空の現代世界を舞台に展開されるRPGです。今でこそありふれた設定ですが、当時としては実に目新しいものでした。このゲームの作者は、最近になってリメイクの構想を明らかにするとともに、資金公募サイトのキックスターターでキャンペーンを実施、みごと予定額を達成させています。

そのほか、「ウィザードリイ」「ウルティマ」の2作も挙げられていますが、説明は不要でしょう。それにしてもなかなかに面白い選択で、感心させられました。一部の作品については、機会があればまた改めて取り上げてみたいと思います。

Classic Apple II Games That Inspired Today's Greats - PC World
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1985年、アメリカのSSIというゲーム会社から、アップルIIとアタリ800、コモドール64向けに「シックスガン・シュートアウト」という作品が発表されました。これは西部の撃ち合いを題材にしたシミュレーション・ゲームです。

アメリカの西部開拓時代を扱ったゲームはあまり多くはありません。アクションならタイトーの「ワイルドウエスタン」など色々ありますが、それ以外のジャンルとなると、日本でもファミコンへの移植で有名な「ロウ・オブ・ザ・ウエスト」くらいでしょうか。

そういう意味で、なかなかにめずらしいものではあるのですが、具体的に何がシミュレートされているのかというと、ガンマン同士の近接での撃ち合いなのです。プレイヤーが扱うのは数人のチームになります。通常、たとえば軍事シミュレーションであれば部隊などの単位を扱うのが普通ですから、その意味でも異色の作品といえます。

ゲームには10編のシナリオが付属しており、歴史上の事件(「OK牧場の決斗」)から、映画を元にしたもの(「リオ・ブラボー」「荒野の七人」)まで、さまざまなシチュエーションを選ぶことができます。

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ガンマンは18種類の武器を選択できます。ピストル、ライフル、ショットガンのほか、斧のような刃物や、柵などの障害物を吹き飛ばすことができるダイナマイトも使えます。

この作品の最大の魅力は、プレイヤーがガンマンを作成できることでしょう。自作のキャラクタを付属のシナリオで活躍させられるわけです。もちろんガンマンの能力値も自由に設定できます。

それにしても、近距離での銃撃戦をシミュレーション・ゲームにするという発想にはちょっと驚いてしまいます。ごく短時間で展開されるはずの撃ち合いに、ターン式で時間をかけて取り組むというのも、シュールというか、なかなかに不思議な体験です。まあ、当時のPCの性能ではそうするより方法はなかったとも思いますが。

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発売元のSSIは社名をストラテジック・シミュレーションズ・インコーポレイテッドといい、80年代初めに創業され、元々は伝統的な戦争もののシミュレーション・ゲームを中心にしていた会社でした。良作、傑作を多く出しており、80年代前半のPC向けシミュレーションで名作とされるものの大半がSSIの製品です。

異分野を扱うことにも積極的で、本作もそのひとつですが、スポーツやビジネスなど、多彩な分野をシミュレーション・ゲームにしていました。たとえばSSIの野球シミュレーションは、選手のデータを入力して試合させるというもので、実に地味な作品でしたが、これがかなり的確だったらしく、通受けするゲームとして知られていました。

もっともSSIが本当に成功を収めたのは、80年代後半にD&Dのコンピュータ版を出してからで、日本でも移植版のあった「プール・オブ・レイディアンス」を筆頭に、RPGのヒット作を連発していました。おかげで本来のメインであったシミュレーション部門がかすんでしまったような印象もありましたが。ただし、会社としては残念ながら90年代に活動を停止しています。

この「シックスガン・シュートアウト」も、シミュレーション・ゲームの本筋からは外れるものではありましたが、その風変わりなところが印象的だったようで、SSIの作品としてはわりと言及されることが多いように思います。もっともそれも、あくまで本作がゲームとしてよく出来ている、ということが前提であり、ただ目新しいだけのものなら、単なる変り種とされるだけに終わっていたことでしょう。

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「ダラス」というアメリカの連続TVドラマがあります。テキサスの富豪の人間模様を扱ったドラマなのですが、これが大変な人気を呼び、1978年の放映開始以来、10年以上続くという記録的な長寿番組になりました。

この番組、1984年にはアドベンチャー・ゲームになっています。発売元はデータソフトというゲーム会社で、アクションを中心にしていたものの、RPGなどでも秀作を残しています。作品を見る限りでは、わりと技術力のある会社のようでしたが、残念ながら80年代半ばには消えてしまいました。

本作の対応機種はアップルII、アタリ800、コモドール64、TRS80で、オープニングではちゃんと番組のテーマ曲まで演奏してくれます。プレイ動画がアップロードされていますので、いろいろな機種で聞き比べもできますが、音はなかなかアップルも健闘しているものの、画面としてはやはりコモドールの方がいい雰囲気を出しています。TV版のオープニングと一緒に挙げておきましょう。

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肝心の内容なのですが、ごく平凡なグラフィック・アドベンチャーです。難易度もわりとやさしい感じで、初心者向けといえるでしょう。ストーリーも、キャラクター以外は原作と無関係ですので、予備知識がなくともプレイできます。一応いくつかの評価サイトを見たのですが、わりと好評のようでした。

実はこのゲーム、なかなか貴重な存在なのです。なにしろ、80年代に限っていえば、TVドラマのゲーム化自体がまだまだめずらしいことでした。しかもアドベンチャー・ゲームになった例といえば、それこそ「プリズナー」か「銀河ヒッチハイク・ガイド」くらいしかありません。

ちなみにこの「ダラス」、日本ではまったくの不評で、1981年に大々的な宣伝と共に放映が始まったのですが、1年ほどで打ち切られてしまいました。作中の人間関係が複雑で、気楽に見られるようなものでもなかったので、仕方なかったのかもしれません。
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Eamon-splashscreen

「EAMON」(イーモン、と発音するようです)というコンピュータRPGがあります。1980年にアップルIIで発表され、今なお遊ばれているという、大変に息の長いゲームです。

この作品には他にない特徴がありました。非商用であること、もうひとつは、モジュラー構造になっていて、ユーザーが自由にシナリオを作成できることでした。このふたつの要素によって、「EAMON」は今に至るまで現役の存在になっているのです。

1980年といえば「ウィザードリイ」も「ウルティマ」も、まだ存在しておらず、コンピュータRPG自体がほとんど知られていない時期です。そうした時代にあって、「EAMON」は実に革新的な作品でした。

プレイ画面を見ると、「EAMON」は、通常のRPGというより、テキストアドベンチャーのように見えますが、人によってはアドベンチャーゲームに分類するくらい、アドベンチャー的な要素の強いゲームです。

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ただし、ゲームはあくまで、シナリオとは独立したプレイヤーキャラクタを中心に進行します。キャラクタには属性や能力度の設定もあり、そのような自分のキャラクタを管理しつつ、ゲーム世界を冒険するという点では、紛れもないRPGでしょう。

ゲームは基本的にテキストのみで進行します。また、主な舞台となるのはダンジョン、または建物の中で、シナリオにもよりますが、基本的に屋外での冒険は城の周辺程度です。

マスターディスクには初心者向けのシナリオが付属しており、これでゲームの基本的な要素を覚えてから、有志が独自につくったシナリオに進むようになっています。

シナリオ作成は、メインプログラムに組み込まれているシナリオ作成機能によって行います。ファンタシーやミステリのオリジナル作品から、人気映画のゲーム化まで、現在までに250ほどのシナリオが流通しています。

作者はドナルド・ブラウンというプログラマで、彼は趣味で「EAMON」を作ってから、その成功を受けて「ソードスラスト」という機能拡張版を商用ソフトウェアとして売り出したのですが、そちらの方は残念ながら思うような成果は得られませんでした。彼はすでに「EAMON」プロジェクトから離れており、現在は有志がそれを引き継いでいます。

「EAMON」は世界中にプレイヤーが存在し、今なお遊ばれていますが、すべての管理はユーザー自身が行っており、いわゆる通常のソフトウェア会社はいっさい関わっていません。配布についても、かつては郵便でディスクを送っていましたが、パソコン通信を経て、現在はインターネット経由で入手することができます。

その意味において、「EAMON」はユーザーによって作られ、ユーザーによって維持されるひとつのコミュニティを形成したことになります。そしてそれは、今なおインターネットで存続しているのです。そのようなゲームが他にないわけではありませんが、それでも「EAMON」が最古のものであるのは間違いないでしょう。その意味で「EAMON」はまさしく、独自の地位を築いたゲームなのです。

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[画像:forbidden_forest_box]

コモドール64の特徴といえば、何といっても音楽機能でしょう。8ビットのゲームPCとしてはアタリ800も優れていましたが、こと音楽に関しては後続のコモドールにはかないませんでした。その印象的なサウンドは今なお根強い人気をもち、C64の音色をあえて使うミュージシャンも少なくありません。

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「プリンス・オブ・ペルシャ」は1989年に発売されたアップルII版がオリジナルです。そして、メジャーな8ビットPC向けのバージョンは公式にはこれが最後でした。YouTubeを見ると、さまざまな機種向けのものがありますが、すべてユーザー側が自作した、いわゆる未許諾の勝手移植です。

ただし、その中でもコモドール64向けのものは相当な完成度で、公式の移植といわれても違和感がないほどの仕上がりになっています。ですが、実はこのコモドール版も、あるユーザーが長年の努力のすえに完成させたものなのです。

幸いにも、作者自身が詳細な日誌をブログという形で公開しているので、実際の作業をたどることができますが、それを見ても、苦難の連続だったようで、苦労が偲ばれます。

そもそも、どうしてこのような難業に取り組んだのか不思議なところですが、作者自身は、ただプログラミングの腕試しをしたかったのが動機だと語っています。コモドールのプログラミング自体からも15年以上遠ざかっていたのが、ある時レトロコンピュータ関係のイベントに参加し、その熱気にあおられる形で、自分でも何かやらなければと発奮したのだとか。そのための目標を探していて、行き当たったのが「プリンス・オブ・ペルシャ」の移植という取り組みだったわけです。

作者はまず、既存の「プリンス・オブ・ペルシャ」を解析するプロジェクトを調査しました。その過程で、さまざまなオープンソース型のプロジェクトがあることを知ったわけですが、大きかったのは、MS-DOS版から抽出したグラフィック・データを入手できたことでした。これを元に、コモドールに合うよう加工すれば、少なくともグラフィックの問題は解決できます。

とはいえ、プログラム本体は自分で何とかするしかありません。移植といっても、オリジナルであるアップルII版のソースコードを手に入れるのは不可能ですから、プログラム自体を逆アセンブルして、解析するわけです。逆アセンブルは、それ自体が実に大変な作業です。ウィキぺディアのエントリから引用すると、

秘匿されている、紛失したなどの理由によりソースコードが入手できないプログラムの動作を知りたい場合、プログラムの機械語を人間が直接理解することは困難であるため、より人間に理解しやすいニーモニックに変換して解析の手助けとするために逆アセンブラを利用する。

人間に理解しやすいといっても、それはあくまでも機械語と比べて、という意味である。逆アセンブル結果からプログラムの内部動作を知り元のソースコードを推定するまでの作業は一種の暗号解読のような困難な作業であり、非常に高度な技能を持つ技術者が膨大な手間と労力をかけて初めて達成されるものである。

こうまで書かれるほどの作業なのですから、確かに腕試しにはうってつけでしょう。

幸いにも、「プリンス・オブ・ペルシャ」の作者、ジョーダン・メックナーは、自身のサイトでソースコードに関する情報を公開していました。完全なソースコードではないものの、これは大きな手がかりでした。しかもそれはオリジナル版のソースであり、つまり(アップルIIのCPUである)6502で動作するものでした。これもまたありがたいことでした。コモドール64のCPUは6510という、6502の派生品であり、両者はほぼ同じものだったからです。これがたとえば、MS-DOS版のソースだったとしたら、さして参考にはならなかったでしょう。

しかしアップルII版「プリンス・オブ・ペルシャ」のデータ量は、128Kに及ぶ(8ビット機としては)巨大なものです。その中身はコードとデータが混在しており、ひとまずはそのすべてを仕分けなければなりません。それ自体が気の遠くなる作業ではありましたが、作者はひとまず着手することにしました。

作業に使用したツールはVirtual IIというマックOS用のアップルIIエミュレータでした。実際にゲームを動かしつつ、プログラムの挙動をメモリ・インスペクタで監視し、内部の細かい変化を探っていくわけです。

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また、取得したデータは6502の逆アセンブラで解析します。アップルII版のコードとMS-DOS版のexeファイルを照合し、一致する点を探したりもしました。とにかく、手がかりになりそうなものは片っ端から試してみたのです。

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それでも作業を地道に進め、ようやくプロトタイプが出来上がった頃に、もうひとつ難題が持ち上がりました。コモドール64関連の掲示板で、別のグループが「プリンス・オブ・ペルシャ」の移植プロジェクトを始めたことを知ったのです。先方はまださほど作業は進んでいないようでしたが、このまま放置しておけば、自分がすでにクリアした課題をまた新たに取り組むことになるわけで、これは単純に考えて労力のムダにしかなりません。作者は悩んだすえ、自分が以前から同じ作業に着手していることを公表します。反発されるのではと心配もしましたが、幸いにもそのようなことはなく、むしろ励ましの言葉を受けるほどでした。

むしろ、問題は作者の側にありました。この時点で、作業開始から半年が経過していましたが、もはや作業を続ける根気がなくなっていたのです。他に興味の対象が出来てしまったことと、解析作業に行き詰まっていたのがその原因でした。結局、作者は移植プロジェクトを中断することにしました。いずれ再開するつもりはあったものの、実際に作業に復帰するまで、1年半もの歳月を要したのです。

再開のきっかけとなったのは、コモドール64のROMカートリッジを使う方法を思いついたことでした。巨大なグラフィックデータをROMに移せば、それだけRAMの容量に余裕ができることになります。この思いつきによって、移植プロジェクトは大きく前進することになりました。

そうして一旦ブレイクスルーを達成させたものの、いよいよ作業に終わりが見えてくると、またもやモチベーションを保つのに苦心することになります。ロジック面での課題を解決し、残った作業の大半が単純作業だったのも飽きがきた一因でした。作者はこの問題を、ToDoリストを作り、ひとつずつ課題をつぶすことで乗り越えます。

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(C64用に最適化された画像。このような画像にも細かい修正がなされていました)

こうして2011年夏、ついにコモドール64版が完成しました。途中の中断があったとはいえ、構想から3年近い歳月を経て、ようやく目標が達成されたのです。これはまさしく快挙であり、世界中のコモドールユーザーに驚きをもって迎えられました。

「プリンス・オブ・ペルシャ」の作者であるジョーダン・メックナーも、この移植版の完成度に驚き、この偉業を褒め称えるとともに、いささか移植版の作者に対して複雑な心境を見せてもいました。それももっともなことで、オリジナルのソースコードをすべて公開していれば、そもそも解析などする必要もなく、移植にかかる労力の大半が解消されていたはずだからです。(なお、後にメックナー氏はソースコードを公開しています)

いずれにしても、音楽やグラフィック面でさまざまな人の助けがあったとはいえ、プログラミングにおいてはほぼ独力でなしとげた移植であり、改めて海外のレトロコンピュータ界の奥深さを感じさせられた出来事でした。

Prince of Persia C64 - Development Blog - Part One - Why the hell would anyone want to do that?
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apple2_front

先日、イーベイに初期生産分のアップルIIが出品され、2万3千ドルほどで落札されました。日本円にしておよそ230万円です。予想価格は(米ドルで)4ケタは超えないだろうと見られていましたので、従来の相場を2倍以上も上回ったことになります。

今回出品されたのは、製造番号047のアップルIIでした。外見上の特徴としては、通常は本体の横にある通気孔が当時はまだ開けられていないことが挙げられます。また電源も交換されておらず、049という製造番号がケースに手書きされているそうです。

apple2_back
(本体背面。電源にトグルスイッチが使われています)

とはいえ、まったく当時のままというわけでもありません。整数BASICのROMがAppleSoft BASICのROMに交換されています。一応は使用されていたことがうかがえます。

それにしても、たしかに稀少品とはいえ、この値段には驚きました。ビッドの履歴を見ると、ずっと4ケタ内で推移していたのが、期限の直前になって1万ドル、2万ドルと高騰していったのが分かります。

このところ、アップルIの現存機が立て続けに競売にかけられ、意外な高値で落札されていきましたが、その影響がアップルIIにも及んでいるのかもしれません。

Apple ][ computer one of the first 100, low serial number, Works, with extras - ebay
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Questron_ssi_cover_art

PCで遊べるRPGというジャンルは、1980年ごろにリチャード・ギャリオットの第1作である「アカラベス」や、メインフレームから移植された「テンプル・オブ・アプシャイ」などから始まりましたが、大きく伸びるきっかけになったのは、81年に「ウィザードリイ」と「ウルティマ」が登場したことでした。

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