2008年10月7日 日本地質学会 理事会
秋風が心地好い季節になりました。会員の皆様も調査や実習等で野外に出られる機会も多いことと思います。ベテランの皆様は、今更と思われるかもしれませんが、あらためて国立・国定公園や史跡・名勝・天然記念物、あるいは一般的な露頭における調査上の注意を喚起させて頂きます。地質学会員が模範となって、節度ある行動を示していただければ幸いです。
■しかく 国立・国定公園、並びに自治体の条例で保護が指定されている地域等で調査 する場合は、事前の許可が必要です。まず、調査を行う地域がどのような保 護地区を含んでいるか、事前に確認しておきましょう。特別保護区などの範 囲は、自治体や環境省等のHPで確認できる場合が多いですし、必要な手続 きもオンラインで申請できますので、必ず手続きをしてから現地に入るようにしましょう。
<国立公園における届出・申請>(環境省のサイト)
■しかく 史跡・名勝・天然記念物においては、文化庁や地元自治体などへの必要な手続きなしには露頭をハンマーでたたいて岩石試料を採取するなどの破壊を伴う調査はもちろん、転石の採取もできません。やむを得ず研究上必要な場合は許可申請の手続きを行い、必要最低限の採取に留めることが重要です。許可を得ておくことによって、その成果を公表することも可能になります(その際には謝辞に許可のことを触れておくとよいでしょう)。
■しかく 世界遺産については、世界遺産保護条約によって保護・保全が定められていますので、国の保護計画の不備が認められた場合は登録が抹消されることもあります。高い保全意識を持って慎重に行動する必要があります。
これらの地域の巡検の際にはハンマーを持ち歩かないなど「李下に冠を正さず」といった節度ある態度を心がけましょう。
法的な保護が為されていない貴重な露頭においても、同様に露頭の保護を心がけたいものです。不必要なサンプルの採取、削剥はもちろん慎み、あらかじめ地権者や地元自治体への連絡などを行っておくことにより、トラブルを未然に防げます。コア抜きは坑が大変目立ち、また半永久的に残りますので、場所をよく選ぶよう心がけることが大切です。また、露頭面にペイントやマーカーで記号等を派手に書き込む行為も、その後きれいに消していくようなマナーが必要です。
このほか些細なことのようですが、地元の方々と良好な関係を保つということは、思いのほか重要なことです。貴重な露頭が、将来はジオパークの中の有力なジオサイトになるかもしれません。
地球を愛する者として、社会から地質調査の有用性や公益性が認められ、末永く地質調査を行える環境作りには、上記のような調査に当たっての心がけが必須ですので、地球科学分野の研究者の全員の協力でこれを進めましょう。
フィールド調査を行う前に,調査地域が国立・国定公園、並びに自治体の条例で保護が指定されていないかチェックしましょう.ここに国立・国定公園そして天然記念物のリスト,また国立・国定公園内で調査するための申請・許可の電子窓口のリンクを挙げてあります(2008.5/8現在).
国立・国定公園内での調査には,事前の申請・許可が必要です.申請および許可に必要な日数は調査区域によります.早めに準備しましょう.
■しかく 国立公園における届出・申請(環境省のサイト)
■しかく 各県の調査の場合は? 土地利用の申請・許可は各県により届け出手順が異なる場合があります.各県庁担当課等へお問い合わせください.
■しかく 法令リンク
文化庁HPより各県別にピックアップした天然記念物(地質鉱物)を表として以下に示してあります.(リスト作成 奥平敬元:大阪公大)