2014年06月16日
class actionの和解例に思う日本法の欠陥
日経新聞の上記記事によれば、アメリカで車の部品販売についてカルテル行為を行っていた矢崎総業が、消費者から起こされていたクラスアクションで、和解に応じることとしたとのことである。
既に反トラスト法(独禁法)違反で米司法省に罰金4億7000万ドルを支払うことで合意しているとのことであり、やったことは争いようがないところなのであろう。
さて、クラスアクションで和解ということになると、クラス構成員の賠償請求権を定める内容の和解となり、クラス構成員の同意と裁判所の認可が必要になる。
「現地の自動車購入者や販売業者らが「(価格拘束によって)高価格の自動車を購入させられた」として、カルテルにかかわったメーカーに損害賠償を求めている。」ということなので、日本の自動車購入者には影響がないもののようであり、グーグル・ブックサーチの時のような騒ぎが日本で起きることもなさそうだ。
それにしても、カルテル行為で高値に貼り付ける独占禁止法違反事件を日本で起こしても、企業というのは高い価格で売りつけたという点について何ら賠償責任を負わなくて良い、あるいは少なくとも実効的な賠償責任追及制度がないということについて、これを日本法の欠陥であるとは考えないのであろうか?
昨年末に成立した日本版クラスアクション、消費者裁判手続特例法は、とにかく適用範囲が狭められており、独禁法違反事件も個人情報漏洩事件も有価証券報告書虚偽記載事件も、対象外である。
濫訴防止というのが金看板であり、事業者側の手続保障も理由としてあげられるが、カルテル行為をして取引先消費者から広く不当な利益を挙げた企業から、その利益を吐き出させることを濫訴と呼ぶのであろうか?
矢崎総業がアメリカで訴えられたのは濫訴か?
要するに濫訴防止に名を借りた不当収益の返還逃れを、日本法、日本の立法者は許しているのである。
2014年06月16日 消費者問題 | 固定リンク
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