2012年06月04日
電話SPAM到来
研究室の電話がなった。
「コチラ、保険代理店で保険のご説明をさせていただいております・・・(2分ほど一方的にしゃべる)」
「あの〜、どちらにおかけですか?」
「申し訳ございません、電話番号を並べ替えまして、順次かけております。そのため、法人様や事務所様にかかってしまうこともあるのですね。」
「はぁ、かかっております。」
「申し訳ございません。」
「では。ガチャ」
昔研究室は、内線でしかつながらなかったが、いつのころからかダイレクトインとなり、上記のような現象が生じることとなった。
電話をかける係のセールスマン(ウーマン)は仕事でやっているのだし、あまりいじめては可哀想な気がするが、それにしてもこうした電話番号にランダムにかけまくる方式でのセールスというのは違法ではないのか?
初期の迷惑メール(SPAM)がこういうやり方をしていて、またこれをやりやすい一定の法則で割り振ったメールアドレスを持つニフティなどが標的となっていたが、これを違法として差し止める裁判例も存在する。
→浦和地決平成11年3月9日判タ1023号272頁(ただし欠席による仮処分決定ではある)
この被保全権利は一種の営業権である。
また携帯メールスパムに送信禁止を決定した例もある。
→横浜地決平成13年10月29日判時1765号18頁
こちらの被保全権利は一種の所有権である。
いずれも、プロバイダに対する権利侵害で、プロバイダが差止請求権を主張して認められている。
これに対して実際に標的とされた名宛人ユーザーに対する権利侵害は、少なくとも日本では前例がない。
法律上はどうか?
迷惑メールに関しては、オプトイン規制が敷かれているので、電話番号ランダム発信かどうかにかかわらず、不招請広告行為自体が原則禁止されている。→特商法12条の3
加えて特定電子メール適正化法では、ランダムにメールアドレスを生成して迷惑メールを送りつける行為も禁止している。ただし、禁止の対象となる架空電子メールアドレスの定義には、現に利用者がいないメールアドレスであることというのがついてるので、これは受信者が迷惑を被った瞬間に該当しなくなる不思議な規定である。
(架空電子メールアドレスによる送信の禁止) 第六条 送信者は、自己又は他人の営業のために多数の電子メールの送信をする目的で、架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信をしてはならない。
ともあれ、電子メールについてはこのような規定と裁判例があるのだが、電話勧誘については存在しない。せいぜい、電話勧誘販売について規定した特商法22条の、主務省令で定める禁止行為として、以下のような規定がある。この1号を適用できないかが問題となるくらいであろう。
(電話勧誘販売における禁止行為) 第二十三条 法第二十二条第三号 の経済産業省令で定める行為は、次の各号に掲げるものとする。一 電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の締結について迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘をし、又は電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除について迷惑を覚えさせるような仕方でこれを妨げること。
(二号以下略)
アトランダムに電話をかけまくる方法は、「迷惑を覚えさせるような仕方」にまさに該当するではないかと言いたいところだが、そもそも迷惑なのは仕事中やくつろぎ中の不招請電話勧誘そのものであって、その電話番号の探知が名簿屋から買った名簿に基づくのか、それとも適当な番号に掛けているのかは、電話を受ける側としてはどちらでもよさそうな気がする。
ただ、法的には、名簿屋から買った名簿を使うというのが個人情報保護法的にどうなのか、問題となりそうなのに対して、アトランダム電話かけまくり行為は規制が及ばないという点である。
このあたりに、アトランダム電話かけまくり方式を法的に制限すべき(有り体に言えば禁止すべき)と主張する論理が出てきそうである。
ただし、スパムメールのランダム送信は、やればやるほど1件あたりのコストが低下するという点が規制の根拠だとすれば、電話勧誘行為は当てはまらない。ワン切りのように機械化された大量行為ならともかく(これは既に直罰方式で規制されている→有線電気通信法13条の2)、今日私が受けた電話のように人手による場合は、かければかけるだけコストが積み重なるので、規制しなくても、そう社会問題化するほど流行するわけではないからだ。
あ、ということは、上記のようにこの電話番号がオフィスであることをわざわざ教えてあげるのは、ランダムに掛けている事業者の電話番号データベースを、より精密なものにして、低コストで勧誘ができるものにしてあげているということにもなるではないか。
やはり次からは、何も言わずに切る方がよさそうだ。
2012年06月04日 生活雑感 | 固定リンク
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コメント
俺の営業電話と同じだ。
投稿: 青木きわむ | 2012年06月04日 13:56
私は、電話がかかってきて、送受器を取っても一言もしゃべりません。
かかってくる電話の99.99%以上は「もしもし」と言うだけで、自己の氏名・所属の名称などは名乗らず、また私の苗字などをたずねる事などありません。
数年前までは、電話がかかってきたら一言「はい」と言っていましたが、そのころから電話を受けても「もしもし」だけ言う相手には一言も応答せず、もしもしが5回繰り返されたら送受器を戻して電話を切ります。
相手が本当に私に用事があってかけてきたのなら、話せるようになるまで電話をかけ続けるでしょうし、応答しないで電話を切ることを何度か繰り返すうちに、相手も気がついて「こちらは何々ですが、井上さんですか」と言う事になって、初めて私は声を出し通話します。
単なる宣伝・売り込み電話なら2度とかけてはきません。
家族・親戚・湯人・知人などには私の電話受けのやり方をあらかじめ知らせておきますし、家族親戚・親しい友・知人なら声を聞いただけでわかりますから、なんら問題は起きません。
こういうやり方で、迷惑電話に悩まされる事が殆どなくなりました。
ちなみに、このやり方を始めてから数年間に何百回以上も電話を受けましたが、最初から自己の所属とか氏名を名乗ったのはたった「1名」だけ。後は例外なくもしもしだけでした。そして、本当に用事があってかけてきた場合は何回かのかけ直しでようやっと所属・氏名などを名乗る状態で、電話の作法は全くなっちゃあいません。
なお、私のこのやり方を実行すれば「振り込め詐欺」などに引っかかる人は激減するでしょう。
投稿: 井上信三 | 2012年06月15日 19:04
投稿: ピちゃん | 2012年06月19日 20:02