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2018年7月31日 (火)
第36先端技術交流会の報告
今回の先端技術交流会は第2回医療MEMS研究会と兼ねて、「生体モニタリングの最前線」をテーマとして、オムロン株式会社 技術専門職の中嶋宏様からは「デジタルヘルスケア-ICTを活用した健康管理」と題して、そして、東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 教授の三林浩二先生からは「次世代ヒトIoTを見据えた非侵襲&無拘束バイオ計測」と題してご講演をいただきました。
講演の様子
最初の中嶋氏からは、超高齢化社会に向けた生活習慣病予防に向けた、健康管理についておご講演をいただきました。心臓病の発症リスクは「肥満(高BMI)」「高血圧」「高血糖」、「高脂血症」の危険因子があり、この因子を2つもつ人は全く持たない人に比べて10倍、3つ以上もつ人は30倍を超えるとのことで、生活習慣予防に向けた取り組みが重要であることを示しておられました。
血圧は絶えず変動しているので、病院で測定するのではなく、家庭血圧が高血圧治療には必須となってきています。本当は24時間知らずしらずに測定できると良いのですが、血圧測定には現状カフを用いるもの以外は難しいようです。
また、事例紹介として、内臓脂肪測定装置を紹介いただきました。内臓脂肪の測定には正確性の観点では、X線CTやMRIがありますが、これらの測定は大掛かりで高額になる等の課題があります。そこで、腹部全体のインピーダンス情報、腹部表層部のインピーダンス、および腹部形状によって、内臓脂肪を計測するBIA(Bioelectrical impedance analysis)法を紹介いただきました。
次に、生活習慣病の改善に向けて、運動・食事・休養(睡眠)のバランスが重要であることを説明され、特に朝は体重が軽く、夜は体重が重くなることを利用し、朝と晩に体重を測定する朝晩ダイエットについて説明されました。実際に朝晩の体重測定をしっかりと行っている人の方が、体重減少率が高い結果を紹介いただきました。
最後に、生体モニタリングとして、センサに期待することは、「非侵襲、無拘束、そして無意識に計測ができるようになること」とのことであり、三林先生の研究内容がまさにこの取り組みであり、今後のQOLの改善につながると感じました。
オムロン 中嶋様
東京医科歯科大学の三林先生からは非侵襲、無拘束のバイオ計測について最新の取組みをご紹介いただきました。血糖は食事の前後などでダイナミックに変化するのでリアルタイムで測定したいニーズがあります。従来は指から穿刺して採血する自己血糖評価(4回/日)が主でしたが、4回測定しても血糖値の大きな変化は測れないという課題があります。
最近ABOTのLIBREという血糖値センサが発売され、センサを2週間つけたままで生活できるものであり、実際にこれを装着した糖尿病患者は手放せない状況にあるとのことです。これは、血糖の変化をリアルタイムでとることの重要性が認識されてきたことの表れと言えます。しかしながら、これは侵襲タイプであり、測定精度も10~20%の誤差があることが課題であり、三林先生のところでは、非侵襲で測定するために、体腔で装着するセンサの開発を進めておられます。
最初にコンタクトレンズ型のセンサの開発についてご紹介をいただきました。涙の糖の濃度は血液中の糖の濃度と相関があります。実際に兎の目にコンタクトレンズを装着して、ブドウ糖を投与した際の実際の血液の糖と涙の糖の濃度の動的な変化をとらえていました。
次に、マウスガード型のセンサの紹介をいただきました。唾液は夾雑物が多く、唾液中の糖の濃度も低く難しいところはありますが、糖だけを測定できることに成功されていました。歯列矯正をマウスピースで行う市場は今後広がり、その時は小さな歯科医院で3Dプリンタを用いて作成できるようになるとのことです。口腔でのセンシング加速度、ジャイロ、GPS、バイオセンサ等様々なセンサを取り付けられることから、単に糖濃度などのバイオセンサだけでなく、口の動きのセンシングなど応用がいろいろと考えられるとのことです。
最後にガスによる糖尿病の検知について紹介をいただきました。アセトンは呼気の中にかなりの量(1ppm)があり、このアセトンは脂質代謝ででてくるとのことです。糖尿病患者は糖代謝ではなく脂質代謝になり、アセトンが多くでるためです。アセトンをたんぱく質(2級アルコール脱水素酵素)を介して光(NHSHという蛍光物質)で見ることによって、呼気だけで糖尿病患者をスクリーニングできるとのことです。 また、皮膚からでるガスについても最近の取り組みについて紹介をいただきました。皮膚ガスの出所は皮膚表面の菌、汗、皮膚の下にある血管からくる揮発性成分の3つに分けられます。これを選択的に測定できれば呼気と同じようにモニタリングすることができるというものです。皮膚ガスは血液や呼気の濃度より低いが相関があるとのことです。実際にエタノールを摂取した際の皮膚ガスの濃度をリアルタイムでみることができることを示しておられました。
三林先生のご講演をお聞きして、血糖値をはじめ生体情報を非侵襲・無拘束で常時センシングできる社会も近いのではないかと感じました。
東京医科歯科大学 三林先生
また、講演会後の懇親会では、ご講演いただいた先生方を囲んで、ヘルスケアの話題を中心に遅くまで意見交換に盛り上がっていました。
意見交換会の様子
2018年7月31日 (火) 講習会・先端技術交流会, SSN研究会 | 固定リンク
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2018年7月26日 (木)
【平成30年7月の経済報告】
本項は、マイクロマシン/MEMS分野を取り巻く経済・政策動向のトピックを、いろいろな観点からとらえて発信しています。
今回は平成30年7月の経済報告をお届けします。
業務の参考として頂ければ幸いです。
内容は、以下のPDFをご参照下さい。
2018年7月13日 (金)
The Sixth Japan-US NDT Symposium 出張報告
7/8〜12にかけて米国ハワイ州ホノルルのハワイコンベンションセンター(図1)にて開催されたThe Sixth Japan-US NDT Symposiumに参加した。4年に1度開催されている日米の非破壊検査協会の交流シンポジウムであり、今回は日本側の主催であった。参加者は日米両国からを中心に100名ほどで、2セッションパラレルで進められ、非破壊検査技術全般についての講演があった。同シンポジウムにて、口頭発表によるRIMSの成果アピール、および講演聴講による非破壊検査技術の市場可能性の調査を行った。
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図1 シンポジウム会場(ハワイコンベンションセンター)
セッションの内訳を筆者がまとめたものを表1に示す。基調講演などを含めて全部で85件の講演があった。セッションのテーマから見ると、社会インフラに関するものが28件と最も多く、更に社会インフラ関連のセッションに分類されていない講演であっても社会インフラへの適用を想定しているものが多かった。検査手法に関しては、超音波関連のセッションで8件の講演があったが、その他のセッションでも超音波やAEといった弾性波を利用した技術に関する講演が多く見られた。今後、簡単な検査手法や高度な分析手法への発展が期待される有望な技術として注目されているものと思われる。
表1 セッション内訳
筆者の口頭発表(図2) では、"Effective Detection of Internal Cracks of RC Bridge Decks with Rain-induced Elastic Wave"と題して、降雨等による内在損傷検出手法を供試体および実橋梁に適用した結果について報告した。本手法では、AE計測により降雨時の雨滴が路面に衝突した位置と分布を解析し、本来の分布からの乱れを元に、内在する損傷を検出する。本技術を用いて、実際に内在損傷検出に成功した成果について紹介した。発表後は活発な質疑が行われ、本技術に興味を持っていただくとともに、成果をPRできたものと思われる。実際に雨や水滴を内在損傷検出に利用できていることが興味を引いたようで、雨が強すぎて雨滴を分離できない場合に処理できるのか、複数の雨滴が同時に当たった場合どう処理するのか、などについて詳細な質問を受けた。分析には個々の雨滴が分離できる必要があることや、解析に有効でない雨滴の信号を除くフィルタリング方法などについて回答した。また、適度な雨の条件でしか計測できないのか、との疑問も出たため、散水車等を利用することで、人工的に最適な弾性波を発生させて計測することも可能である旨を回答した。
図2 筆者の講演の様子
講演全体の傾向としては、参加者の所属によるところもあると思われるが、日本側の発表が橋梁等、道路インフラに関する講演が多かったのに対して、米国側からの発表では、3DプリンタによるAdditive Manufacturingや鉄道軌道に関する講演が目についた。
3Dプリンティング技術が普及、高度化してきており、従来にない構造の内部の欠陥検出は難しいようで、今後ニーズが広がっていくことが考えられる。鉄道に関しては、米国の広い国土を網羅する鉄道軌道を検査するには、環境変化に対応でき、効率に優れた検査技術が必要とされており、軌道の探傷を高度化する試みがいくつか見られた。
主な講演の概要について下記に紹介する。
"NDT and Additive Manufacturing: State of the Art, Opportunities, and the Path Forward", Ahmed Arabi Hassen(Oak Ridge National Laboratory)
積層タイプの3Dプリンティング技術であるAM(Additive Manufacturing)を用いることで、大型で複雑な形状の物を製造することが可能になってきている中、新たな非破壊検査技術が必要とされているとの話であった。検出したい欠陥には、層間の分離、空孔、マイクロクラック、マイクロボイドなどがあるが、従来の検査手法では、アクセスが困難であったり、表面形状の影響を受けたり、深いところにある100μm オーダーの欠陥の検出が非常に難しいなどで、品質の検査に十分対応できない。今後、損傷検出技術の新たな適用先として、市場が広がる可能性も考えられる。
"Phased Array NDE for Railroads", Troy Elbert (Herzog Servises, Inc.)
166, 000マイルに及ぶ米国の鉄道軌道を検査するための超音波フェーズドアレイ装置の開発について紹介された。使用環境により、レールが変形した場合など、従来の装置では本来の検出性能が出せなくなるのに対して、レーザースキャンにより変形を検出し、超音波の波面をそれに合わせて調整することで、精度を保ったまま効率良く点検できるように改良した。従来の装置でも47km/hの計測が可能であるが、少し計測するごとに調整が必要となり、これに時間を要するため効率的な検査ができなかった点が改善された。大量のインフラ等を検査するにあたって、移動しながら検査するにしても、我々のようにセンサを設置するにしても、計測の効率に加えて、計測に伴う付随作業の効率も非常に重要となることを再認識した。
(技術研究組合NMEMS技術研究機構 高峯英文)
2018年7月13日 (金) Pj RIMS研究開発 | 固定リンク
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