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2014年9月11日 (木)
MNOIC実習セミナー 「センサ回路とシステム・シミュレータ実習」【TIA連携大学院サマー・オープン・フェスティバル2014】の実施
一般財団法人マイクロマシンセンター・MEMS協議会では、MEMS・マイクロナノ領域における産業推進の一環として独立行政法人・産業技術総合研究所・集積マイクロシステム研究センターの研究施設を用いた研究支援サービスであるMNOIC(マイクロナノ・オープンイノベーションセンター)事業を実施しています。その中で特に人材育成には力をいれ、MNOICで利用可能な最先端装置を用いた実習形式の「MNOIC実習セミナー」を開催し、好評を得て参りました。今回はその第三弾として、「センサ回路とシステム・シミュレータ実習」を2014年8月21・22日に実施致しました。
ご存知のようにMEMSやセンサはスマートホンやタブレットの機能を決めるキーデバイスであり、また社会インフラ等のモニタリングに必須のデバイスになってきました。しかしその有効活用には、センサ特有の回路や利用方法を習得する必要があります。センサ回路は基本的にアナログ回路のため、その習得は容易ではありません。本実習はセンサの検出理論を理解して、最適な回路を設計する手法を短時間で習得するとともに、SpiceやMemsONEの回路機能シミュレータを実際に使い、理解を深めていきます。またノイズ理論を基礎に短時間で世界最高感度のセンサを設計できるポイントの習得を目指しました。また最先端の技術習得として有限要素法を使うことなしに、比較的複雑な構造体の共振モードや共振周波数を含む機構シミュレーションが出来、かつMEMS-回路の混在シミュレーションが可能なMemsONEの回路機能シミュレータの学習や実習も行いました。
尚、この実習講座はTIA人材育成活動の一環として、「TIA連携大学院サマー・オープン・フェスティバル2014」して実施し、より実践的な取り組みを希望する多くの学生の方にもご参加頂きました。今回の参加者は企業から1名、研究所から2名、学生の方9名の計12名でした。
(1)センサ回路の理解とシミュレーション実習
最初のテーマは講師として私自身で行いました。私はデバイス、センサやセンサシステムの研究者でしたが、現役時代は「回路は専門家」に任せていた経緯があります。その反省から最近は、秋葉原のマイクロマシンセンター事務所に通いながら昼に夜に、秋葉原の部品街をさまよいながら、趣味として電子工作に打ち込んできました。特に私の興味は、回路技術で理論限界に近い雑音制御を行うことでセンサシステムの性能を飛躍的に向上させると言う手法です。今回はその理論と、より実践的な手法を交えて実習に取り入れました。実際には座学としてOPアンプを用いたセンサ回路の実際と、雑音の制御の手法を学習したあと、参加者のノートパソコンに事前導入して貰ったLTspiceを使っての実習でした。シミュレーションや理論だけでは、学習の効果が少ないと思い、試作した回路基板を用いてオシロスコープで波形観察することも、実習に取り入れました。更に皆様に興味を持って頂く為に、コイルの自己インピーダンスを計測することで金属探知を行うことが可能な、自作の磁場測定器を参加者の皆さんに披露させて頂きました。これはアルミ箔であれば数mm角、また金属の針が検出できます。理論的な計算では超伝導で用いたSQUIDにはとても敵いませんが、磁場センサとして地磁気の1万から10万分の1まで(計算上で)の計測が可能な性能を有しています。
(2)MemsONE(統合化MEMS設計・シミュレーションツール)によるMemSpiceシミュレーション
後半の実習は、NTTデータ・数理システムの望月氏に依頼して、MEMS機能シミュレータと、これを用いたカンチレバー型MEMSの構造解析、回路とMEMSの連携解析を行いました。通常のMEMSの構造解析は有限要素法を用いて構造体をメッシュに分割し、これを数万から数百万の連立方程式を用いて解いていくのが一般的ですが、この手法は当該構造体をSpiceで扱えるような線形モデルのパラメータを抽出して高速に状態を計算することが出来ます。更に、高次の解析を行うためにMEMS構造体を多数に分割して、等価回路モデルのように計算できます。例えばカンチレバーを10分割して計算すれば5次の固有振動状態を再現できると言ったイメージです。更にSpiceのモデルで扱えるので回路と簡単に組み合わせて、発振回路等のシミュレーションも行うことができます。今回の実習ではシリコンの片持ち構造のカンチレバーをこの方法で計算し、固有振動数、空気の粘弾性によるQ値の劣化、回路と組み合わせた発振状態の計算を行うことが出来ました。
最後に、今回の実習を振り返って皆様にアンケートの実施と、実習の感想をお聞きしました。全体的には大変好評で、センサ回路や雑音抑制、MemsONEの概要が理解できた、回路技術の有効性が良くわかった等のご意見がでました。特にセンサの研究者にとっては、現在は回路技術を深掘りする機会が殆どないことを実感致しました。最近はセンサICの中にセンサーアナログ回路、デジタルインターフェース回路が組み込まれて、誰が使っても同じ性能しか出せないものが増えています。そのICも海外製の物が多く、日本のアナログ技術が益々衰退するのではないかと危惧を抱いています。
最後に、第三回目のMNOIC実習講座をTIA連携大学院サマー・オープン・フェスティバル2014の活動の一環として開催し、沢山の学生の方を含む参加枠を超えた12名の参加者に来て頂きました。このような企画を今後も進めたいと思います。またMNOICの年間利用法人は1法人1名まで無料で御参加頂けます。来年度も実習講座を予定していますので、皆様も是非ご検討ください。(MEMS協議会 三原 孝士)
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2014年9月11日 (木) MNOIC/TIA | 固定リンク
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