2012年8月21日 (火)

ナノマイクロ関連展示会「NANO KOREA」参加報告(2012年8月16日〜18日)

8月16日〜18日にソウル市内のCOEXで開催されたナノマイクロ関連の展示会「NANO KOREA」(第10回)に参加しましたのでその内容を報告します。
展示機関は企業、大学等含めて全体で約340団体(日本から約20団体)、来場者は1万数千人と思われ、東京ビッグサイト4ホール分位のエリアを使って開催されました。
全体構成と対象分野は、ナノテク関連の「NANO KOREA」、マイクロ/MEMS関連の「Microtech World 」、レーザ関連の「Laser Korea 」、セラミック関連の「Advanced Ceramic 」、印刷法関連の「Printed Electronics 」の5つの展示会で構成され、NANO KOREAが全体の半分を占めました。
展示機関は大きく、企業、公的研究機関、大学に分類されますが、韓国では専門分野毎に多数の国立研究機関が設立されているのが特徴で、本展示会(ナノ/マイクロ分野)では30もの国立研究機関のブースが設けられました。それぞれの機関が最新鋭のインフラを保有し、企業との共同研究を積極的に進めており、国策としてマイクロ/ナノ関連の産業を育成しようとする強い姿勢が伺えました。
[画像:Coex_2]

NANO KOREAが開催されたCOEXモール

マイクロマシンセンターはMicrotech Worldの中にブースを設けて、来年のマイクロマシン/MEMS展のPRとMEMS協議会の活動の紹介を行いました。
韓国やイスラエルなどの企業が当ブースに来られて日本企業へのPRを要望されましたので、マイクロマシン展への出展や、MMCのブログ上で紹介する手段があることを説明しました。またMEMSの研究に携わる韓国の大学から情報交換と来年大学へ招待したい旨の要望もあり、他多くの機関と交流することができました。

Mmc マイクロマシンセンター展示ブース
展示内容の全体動向を紹介しますと、ナノテクエリアは評価分析装置、製造装置、ナノ材料が大半を占め、本展示会においてもこの分野は引き続き次世代のアプリケーションを目指した研究段階にあることがわかります。ナノ材料の中ではグラフェン等のナノカーボン材料、化合物半導体の量子ドット材料の展示が多くを占めました。ナノカーボン材料を応用したアプリケーションとして樹脂と複合化された導電シートや透明電極の試作品が展示されていました。
前述したように国立の研究機関では豊富なインフラを武器に企業と共同研究を進めており、研究機関のブースの中で赤外線センサやヘルスケア機器等、事業化に至った商品の展示が行われていました。これらの展示より研究成果が徐々に実を結び、ナノ/マイクロ分野で産業化の裾野が広がっている様子が伺えました。

Photo_3

展示会場ロビー
次世代デバイスを目指した研究テーマの中で最も多かったのはGaN系LEDです。狙いの用途は照明用途で、高輝度化、低コスト化、大面積化に向けた多くの研究テーマが展示されていました。例えば大面積ガラス基板上に低温でアレイ状に形成された大面積LEDデバイス、導電性基板上に形成されたLED他、多くのアプローチがなされていました。
ナノマテリアルの応用デバイスで多かったのはグラフェン応用デバイスです。例えばZnOナノ粒子にグラフェンをコーティングしたコアシェル構造ナノ粒子で白色LEDの機能を発揮させた展示は注目されてました。
Printed ElectronicsやLaser分野では製造装置の展示が主体で、超高精細インクジェットプリンタなどが注目されていました。Microtechでは研究機関でのデバイス開発やMEMSセンサ等、企業の新商品がPRされていました。
エレクトロニクス最大手企業のSamsung、LGは大きなブースを設けて、ナノ/マイクロ関連テーマへの取組みや高精細ディスプレイ等の新製品を紹介していました。
全体として、韓国は民生機器においてすでに世界最強の地位を固めつつあり、将来さらに優位性を高めるために、それを構成する材料技術や製造プロセス技術に関しても強化していこうという姿勢と国立研究機関のサポートの元でそれが徐々に花を開きつつあるという印象を受けました。

Nanokorea_2

展示会場 SAMSUNG、LGブース
注目された展示内容を以下に紹介します。
【国立研究機関】
だいやまーくKorea Advanced Nano Fab Center
・Vertical LED(導電性基板上に形成することによりキャリアが基板に垂直な方向に流れる)従来の横方向LEDと比較した利点:発光面積大、耐熱性大、光取出し効率大。
・Vertical LED製法
サファイア基板上GaN LED形成→導電性基板ボンディング→サファイア基板剥離(レーザリフトオフ)→GaN表面エッチング(凹凸化)→パッシベーション、上部電極形成
・Si基板上にGaNナノロッドを形成したNano DISC-LED、偏光発光、LCD向け
・上記LED技術を元にベンチャー立ち上げ。YNG Inc.
・主要製品は凹凸構造を持つサファイア基板を用いた高輝度LED
・ナノインプリントによる平面レンズをLEDチップにマウントしたレンズ一体型チップ
・2軸加速度と1軸ジャイロをWLPを応用して1チップ化した車載用モーションセンサ

だいやまーくNational Nano Fab Center
・CMOS、MEMS、ナノバイオ、6〜8インチラインを保有するデバイス開発センター
・180nmCMOS、MEMSスイッチ、ボロメータ赤外線センサ、可視スペクトルセンサ等を企業と共同で商品化。
・RFスイッチはGalaxyに搭載
・新ナノマテリアル応用デバイス開発:グラフェン電極赤外線センサ、BiTeナノワイヤ熱電素子、ナノメタルクラスタデバイス。

だいやまーくKorea Institute of Science & Technology
・ZnOナノ粒子にグラフェンをコートした量子ドットを用いた白色LED
・Agナノワイヤ、Cuナノワイヤを応用した高透過率、低抵抗透明電極

だいやまーくElectronics & Telecommunications Research Institute
・パッチ型心拍モニター
・タンパク質センサ

だいやまーくKorea Institute of Industrial Technology
・CNT、グラフェン混合電極を応用した透明性フレキシブル色素増感太陽電池

【民間企業】
だいやまーくSamsung
・リチウムイオン2次電池正極材料
2次電池はモバイル、自動車、住宅から公共設備まで巨大な市場が控えており、サムソンは材料開発を含めて積極的に2次電池の開発を進めています。

Photo_4

低コスト、高出力を目指して正極材料としてLiFePO4系、LiNiMnO系をベースに粉末合成や焼成プロセスを開発している。また新材料としてNiCoMn系、LiMnP系、LiNiMn系を開発している。
・ガラス基板LEDアレイ形成:大面積基板、照明用途
LEDは通常化合物半導体結晶基板、サファイア基板上に形成されるが、大面積、照明用途を目指して、アモルファスのガラス基板上に結晶GaNをアレイ状に成長させる技術を開発。キー技術は下地層に結晶性Ti薄膜、低温成長GaNを形成したことで、この上に単結晶GaNを成長させる。
・照明向け超高輝度LED
・12インチウェハ、20nmメモリデバイス パターニングプロセスへのナノインプリントの応用
・超高精細ディスプレイ及び制御用IC
・創薬向けバイオセルチップ
・ピコリッター制御 高精細インクジェットプリンタ

だいやまーくLG
ナノテクノロジを幅広く民生機器へ応用:ディスプレイ、モバイル機器、家電全般、省エネ照明、省エネ空調等。
ナノテクを用いた新事業として太陽電池、照明デバイス、医療/ヘルスケア、自動車用インバータ、パワー半導体等。
・グラフェン応用タッチスクリーン
・量子ドット応用ディスプレイ
・半導体デバイス製造プロセス:精密研磨、レーザパターニング、スパッタ、CVD
・Si太陽電池用銅コート銀ナノ粒子電極

だいやまーくAdvanced Materials & Nano Technology Co. (AMNT)
・フィルム基板にZnO圧電膜を形成→フレキシブルスピーカ、触覚ディスプレイ、フレキシブルエナージハーベスタ

だいやまーくCORECHIPS Co.
・ピエゾ膜形成カンチレバー技術を応用した振動発電。それを応用したワイヤレスセンサ。
・I-Tire 次世代センサ付タイヤ:従来の空気圧だけではなくせん断力を検知して横滑り開始を検出。

だいやまーくSIJ Technology Inc.(産総研村田先生が立ち上げたインクジェットプリンタベンチャー)
・微小液滴 0.1 fL – 10 pL を制御して1μmのライン&スペース形成を可能に
・使用可能インク材料:強誘電体、CNT、導電性ポリマー、バイオ材料、ナノメタル
・径5μm、高さ20μmのバンプ電極も形成可能
・高速乾燥によるファインパターン形成

【同時開催シンポジウム Microtech World Symposium】
全体テーマ:生物の構造/機能を模倣した人工生体材料及びデバイス

だいやまーく「マイクロ加工による超親水性表面形成と応用」 POHANG University of Science and Technology
表面のナノ構造によって親水、疏水を制御できることを示し、応用として液体金属を用いた加速度センサ、マイクロ流路、冷却用ジルコニアチューブ等で効果を確認。

だいやまーく「人工聴覚」 Korea Institute of Machinery & Materials
マイクロ圧電構造を人工内耳として耳に埋め込む。
圧電構造はフィルム基板にZnOナノワイヤを形成したもの、PVDFフィルムを用いたものを開発

だいやまーく「人工視覚」 Korea Advanced Institute of Science & Technology
動物の目の構造を模倣した人工視覚
ハニカム構造半球状のポリマーマイクロレンズアレイと導波路をCMOSイメージセンサ上に形成
ポリマーレンズの製法は、Si基板レンズアレイ形成→フィルム基板に転写→半球状に成形

だいやまーく「しわ状の表面構造形成とその光デバイスへの応用」 Korea Advanced Institute of Science & Technology
通常の凹凸構造に機械的な変形を加えて、さらにアスペクト比の高いしわ状構造を形成
光の透過、反射、散乱特性を制御、有機太陽電池表面に応用することによって効率向上確認

だいやまーく「マイクロフルイデクスを応用したナノ粒子の自己組織化とその応用」 Sogang University
ナノ粒子自己組織化のための流路の形状にテーパーを設けて自己組織の粒子間隔を制御

上記を含めNanoKoreaでの技術資料に関して詳細を知りたい等のご要望がありましたらマイクロマシンセンターまで問合せお願いします。
(阪井 淳)

2012年8月21日 (火) 国際交流, 産業・技術動向 | 固定リンク
Tweet

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /