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2010年12月14日 (火)
PowerMEMS2010 参加報告
2010年11月30日〜12月3日にPowerMEMS 2010がベルギー(ルーベン)で開催されました。ホストはImecとルーベン大学で両研究機関ともPowerMEMS分野の代表的な研究機関です。PowerMEMSはエネルギー生成及び貯蔵に関わるMEMSデバイスの国際学会で、本年で第10回を迎えました。昨今の環境・エネルギー問題を受けて本分野の発表件数は年々伸びており、2006年に74件であったのが、本年は175件に増大しました。特に最近は振動、熱など身の回りのわずかなエネルギーから電力を取り出すエネルギー・ハーベスティング技術に注目が集まり、制御回路や応用デバイスを含めると105件が同分野に関するものでした。
国別の動向を見ると、日本からの積極的な参加が目立ちました。発表件数では米国の40件に次いで日本が20件と多く、また参加人数では全体で250人中、日本が39人で最も多く、次いで米国が35人、地元のベルギーが30人でした。
研究機関別でみると、特定の研究機関が複数の発表を行う傾向があり、代表はU.C. Berkely、Imec、東北大学、東京大学で、それぞれ5件以上の発表をされていました。招待講演として日本からただ一人東京大学の鈴木雄二先生がエレクトレット方式振動発電デバイスというテーマでご講演されました。
技術分野別ではエネルギー・ハーベスティングの中でも振動発電に関するものが最も多く、さらに振動発電の中でも圧電方式の発表が52件中25件と多く見られました。エネルギー・ハーベスティング以外では、マイクロ燃料電池、マイクロエンジン、マイクロバッテリー等の発表がありました。
実用化レベルかどうかという観点では、宇宙・航空用途を除いてほとんどが基礎的な研究段階の発表で、発表機関は約8割が大学又は公的研究機関による発表でした。エネルギー・ハーベスティングを例にとると、より高い出力を目指して様々なデバイス構造の提案がありました。また圧電方式やエレクトレット方式の出力はデバイス構造とともに材料物性に依るところが多く、材料組成や材料作製プロセスの開発に関する発表も多く見られました。
主な発表を取り上げると、圧電方式振動発電ではCNRS(仏)のGrが、高い出力を備える発電デバイスを発表しました。基本構造は一つのmassを4本のカンチレバーで支えて、PZT薄板(200μm)をカンチレバーに接着する構造を特徴とし、出力は0.1g、77Hzで3.2μW、0.2g、76Hzで13.9μWと低gでは最高レベルの出力を得ました。これまでの開発品と比較して、周波数特性がブロードである点もPRしました。
EPFL(仏)のGrは、c軸配向されたPZT薄膜をSiカンチレバー上に成長させる技術を応用して振動発電素子を作製し、パワー密度換算で世界最高レベルの出力(230Hz)を得ました。
一方、エレクトレット振動発電ではオムロンが高出力のデバイスを発表しました。電極構造に工夫を凝らし、寄生容量と出力の関係を明らかにして、最高100μW(0.15g、30Hz)の出力を得ました。
東大鈴木研究室は、ポリマーエレクトレット膜への荷電方法に減圧窒素雰囲気中で200nm以下の紫外光を照射する方法を開発し、荷電時間が1〜2秒で十分な荷電が得られることを見出しました。また同法による荷電は長期安定性を備えることも確認しました。
ベストポスター賞として東北大学桑野研究室の発表が選出されました。PZTで構成されたマイクロボックス中にフリーで動くボールを配し、振動によってボールが壁面に当たると発電するしくみです。3次元方向の振動を捉えられるのと、共振型と比較して周波数依存性が少ないことが特徴です。
以上のように現在は、新たなデバイス構造のアイデアや発電材料の開発によって、出力特性が急速に向上している段階です。対象とするアプリケーションによっては、既に必要な出力を満たしている発電デバイスもあり、本格的な実用化は、そう遠くは無いと感じられました。全体に共通する課題として、最高出力を得たことをPRするために、これまで開発されたデバイスとの特性比較を試みていますが、評価方法が一定でないため、最高であることの判断が難しい点があげられます。今後はデバイス開発とともに、評価方法の標準化も必要と考えられます。
2010年12月14日 (火) 産業・技術動向 | 固定リンク
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