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著作

  • 共著:「次世代センサハンドブック」培風館(2008)、「マイクロセンサ工学」技術評論社(2009.8)
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  • 単独著
    アナログ電子回路設計入門 (1994.12)、コロナ社: 実践アナログ回路設計・解析入門 (2005.1)、日刊工業: オペアンプ基礎回路再入門 (2005.7)、日刊工業: ダイオード・トランジスタ回路入門 (2005.12)、日刊工業: スイッチングコンバータ回路入門 (2006.9)、日刊工業: これならわかるアナログ電子回路基礎技術 (2007.6)

専門とする事項

  • 電源を含む精密アナログ電子回路の設計・開発、およびその教育、技術指導。センサ・アクチュエータシステムの構築。電子機器の不良解析指導および再発防止指導。解析主導型設計の推進と回路シミュレータの実践的活用指導。技術的側面からのプロジェクト管理指導。

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2011年5月

2011年5月31日 (火)

強制風冷

強制風冷は電子機器の発熱量が大きいとき、風速を上げて冷却効果を高める手法である。密閉容器・開放容器+放熱フィン・強制風冷・水冷の順に冷却能力は高くなる。重電の半導体では沸騰冷却も使用される。

強制風冷では、大別してダクトを使うものと使わない2種類がある。

ダクトを使う方法では、流路が明確であり、放熱フィンはダクトの内側に向けて設置しダクトの端部でファンにより空気流速を増し冷却効果を高める。これで自然空冷の数倍の冷却効果を期待できる。

強制空冷用のフィンでは風速と熱抵抗の関係がデーターシートにあるから、ファンの特性とフィンのデーターを参考に流速を推定し、冷却能力を予測することになる。

ダクトを使わない強制風冷では、空気流量は狭いところ(密集しているところ)ほど少なく、広いところでは多くなる。つまり、発熱密度の高い部分ほど冷却効果がでにくい。これを回避するため、必要に応じて邪魔板などを使い、なるべく発熱量の多いところに風が流れるように工夫する。

配置も問題だ。熱に敏感な回路部分は上流側に通常は配置する。風は揺らぐ。従って、低レベル電圧を扱う部分には風除けを設けることもある。まずい設計例としては、ファンの近くに空隙があり、ファンの近くで風が循環しているものも少なからず見受ける。そして、強制風冷では当然空気の流入口と出口が必要だ。

強制風冷に伴う課題は、ファンモータの停止あるいは故障時の保守である。最近のファンモータには風速センサが付いているものがあるから、センサ出力でアラームを出し、発熱量低減あるいはシャットダウンの施策をとる。

強制風冷のもう一つの課題は塵埃の付着である。付着すると著しく冷却効果が損なわれる。定期的に清掃する必要があり、怠ると異臭に繋がる。

強制風冷では、風速と熱伝達が命である。これを前提に高い発熱量を処理しているのだから、塵埃やファン停止時の温度上昇に対応できなければならない。高い発熱密度に対応した代償である。

保守されていない埃まみれの強制風冷機器は、その信頼性を疑わせる。

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2011年5月31日 (火) 電子回路 | 固定リンク | コメント (0)

2011年5月30日 (月)

メカニカルキー

最近の車は微弱無線を利用して、キーレスエントリーシステムになっている。従って、メカニカルキーを使う機会は稀である。以前テストのため使ったのは数年前だ。

キーレスエントリーシステムは送信側は鍵形状のもので、メカニカルキーも内蔵している。子の形状は複数社で採用しているが、異物で誤動作しやすい。T社のものでは、車から数m離れた時点で誤動作し解錠されることが幾度か生じた。

受信側は車のバッテリーで電源供給されている。先日、ルームランプSWの操作不注意で常点灯のまま忘れて車はバッテリー上がりと相成った。当然、受信機が動作しないから、リモコンキーは効かない。

そこで、メカニカルキーでの解錠を試みた。何度やっても空回り。ボンネットを開けるレバーは運転席にあるからこれもできない。

しかたなく、ディーラーを呼んで処置を依頼。ボンネットを特殊工具で開け、予備バッテリーを接続、電波キーを使って解錠、エンジンを掛ける。メカニカルキーは空回りのまま。もちかえって詳細点検を依頼。メカニカルキーと関連部品のリンク機構が甘かったらしい。

処置の手際から見ると、この手のトラブルは過去に経験しているらしい。

そういえば、パワーウインドウの挟み込み動作防止機構の過剰作動や、コーナーセンサの高速走行中での誤動作、フロントサイドビューセンサの性能不足などもあった。

自動車メーカーは往々にしてこの種のトラブルに対し鈍感である。

弱点が判っていても直すことはまずない。無視する。

これが、日本の最大の輸出産業の一つの醜い姿だろう。小さなことにもきちんと対応できないようであれば、大きなシステムの安全運用はおぼつかないだろう。

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2011年5月30日 (月) 日記 | 固定リンク | コメント (1)

2011年5月26日 (木)

卒研でマルチバイブレータ

アナログ電子回路を新人に設計・製作させることは案外難しいし、時間も十分必要だ。回路構成と定数と部品を用意して数時間で実験させるのとは次元が違う。

某大学の卒研で2石CRマルチバイブレータ発振による白色ダイオードの点滅回路がテーマーになっていた例がインターネットでヒットしたことがある。参考文献のなかに私の著書も入っていたので検索で出てきた。

無安定CRマルチバイブレータはベース電位が電源電圧と絶対値がほぼ同じ負電圧からpn接合の順電圧まで変化するから、秒単位の時定数を得るには電解コンデンサが必要で、極性のある電解コンデンサに1V弱の逆電圧がかかる。アルミ電解コンデンサでは逆電圧を掛けるとすぐに損傷する訳ではないが、信頼性に影響するとされるので、量産規模の設計ではふつうやらない。タンタルコンデンサなら、1V程度の逆電圧を許容する品種があるので問題ない。コンデンサの選定も安直にはいかない。

ベース電位≒コンデンサの両端電圧は半周期ごとにほぼ電源電圧の絶対値に等しい負の値から、0Vへ一次遅れ系で電圧が変化する。この時、電源電圧が高いと単純に設計するとB-E接合の降伏が生じる。基本無安定回路では電源電圧をB-E間耐圧以下、具体的には5V程度の電源を使用する必要がある。

電源電圧を5Vとすると、白色ダイオード(順電圧3-3.5V)の電流制御も単純にはいかない。トランジスタのコレクタ側に接続すると、タイミングコンデンサの接続位置によっては、狙った周期にならない。

その結果、与えられた基本回路から少し工夫して部品をいくつか追加することになる。

白色ダイオードの電流が大きくなるとその順電圧も増大するので、自力でLEDの電流‐電圧特性を把握しておく必要もある。

こんな訳で、電子回路を一から設計してもらうには卒研期間程度の時間がかかるのだ。会社の新人教育でもかなりの時間がかかる。それも丁寧に動作を言葉で説明する解説を加えて指導しての話である。

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2011年5月25日 (水)

効率と寡占化

物つくりは生産規模が大きくなると、自動化の選択肢が高くなり低コスト化に繋がる。部品レベルでもモジュールレベルでもアセンブリの段階でも同様な傾向だろう。

設計者は自分の担当する製品の量産規模や所属する会社の生産設備を考えて、それに応じた物つくりを行う筈である。

自動化は設備保全の時間や段取りの時間がロット数にほぼ関係なくかかってくるから、規模の効果が大きいのである。同時に高度な自動化は、自動化設備のコストの上昇とともに、自動化設備の運転・保守要員や設備のチューニングには、単なる作業員で済まされないより高レベルの人材を必要とする。

アナログエンジニアは生産規模が0.5桁:3倍違うと、同じ土俵では競争は困難になってくると感じている。

生産規模の拡大を図ると、モジュールベースでの特化や共通化が生じる。その結果、生産拠点の集約集中や、メーカーの寡占化化が生じやすい。

このような物つくり環境下では、生産台数の少ない製品では、相対的に設計コストがより高い割合を占め、高コストになる。一品生産や特注品ではこの傾向が強く現れる。しかも、細かい部品類は自作する訳にいかないから、他の用途の部品のおすそ分け的に使うことになり、部品の改廃に神経を尖らすことになる。

今度の震災で明らかになったことは、一会社の一工場の被災で一つの産業分野の生産に支障が出てきていることだ。そんな産業分野がいくつもある。

効率を追い求めることは寡占化に繋がり、大規模生産あるいはビッグビジネス的になり、種々のリスクの増大を招く。

しかも、極論すると、必要とされる人材は自動化できない作業員か、高度なスキルをもつ人間に2極化せざるを得ない。中途半端な高学歴者は不要なのである。

大学はこの2極化に耐える教育をしているのだろうか。

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2011年5月25日 (水) 工学 | 固定リンク | コメント (2)

2011年5月24日 (火)

簡易容量測定

CR発振回路を使えば、その発振条件からRを既知としてCを逆算できる。

抵抗Rと未知の容量C一個で発振周波数が決まる回路の一例として、CMOSシュミットトリガ回路の出力と入力にRを、Cを入力とGNDの間に挿入するだけの簡単な弛緩発振回路がある。

測定箇所はCの両端電圧波形と出力波形である。

Cの両端電圧から発振周期fと2つの閾値VTHとVTLが実測できる。通常この手のシュミットトリガは電源電圧の1/3と2/3付近に閾値が存在するものが多い。出力波形からは充電VH、放電電圧VLが求まる。

たとえば、上昇時間はVHの電源でRを介し、VTLからVTHまで充電するに必要な時間であるから時定数CRの関数として求まる。

この回路の特徴は、単電源なので有極性のコンデンサの容量も測定可能である。

Cの両端電圧の測定にはオシロスコープを使うが、入力容量の少ない1:10プローブを使うとよい。必要があれば高速バッファを介して波形観測する。

Rは時間測定のし易さとCMOSシュミットトリガの駆動能力を考慮して決める。大容量Cなら、ストップウォッチとデジタルマルチメータで必要なデータを取得することになる。

この方法で30pF〜1000μFくらいのCの測定が誤差数%で可能である。

事前にCの形状などから、容量のオーダーを推測し測りやすい波形が周波数となるようにRを決めることが重要である。

このように、発振周波数が明確に計算できるRC発振器を使えばCの測定となり得る。

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2011年5月24日 (火) 電子回路 | 固定リンク | コメント (0)

2011年5月23日 (月)

否定の証明

漏れないプラントは存在しない。漏れない情報もふつうない。アナログエンジニアはそう思っている。ある事象が起こりえないと断定するには無限の時間と実績がいる。あるいは、「想定」の枠内での断定となる。いずれにしても、組織内で嫌われる悲観的前提による膨大な検討が必要な割に報われることは少ない。

しかし、悲観的検討=嫌な「事象」を検討しておくことはリスクを大きく減らす技術的、工学的良心でもある。

多発する個人情報流出や福島第一原発事故も例外ではなかろう。

「村」世界になってしまった分野、組織では、進むことが前提となり、リスク回避の費用・労力には投資が少なくなる。そして、情報開示が積極的にされなくなる。

インターネットは今や個人にとってはブラックボックス化している。どこまで、自分の情報がアクセスの度取得されているか把握している個人は少ないだろう。判っていることは、プロの他者がかなりの部分まで、自分のPC内の情報を取得できる技術の存在だ。

原発事故の開示されている情報には、時系列的にも瞬間瞬間における内容にも不自然さを感じることは少なくない。

工学における否定の証明は前提をおき、その外挿により確率論的に行うのが普通だ。前提が間違っていれば否定の証明は崩れる。今、福島は「前提」あるいは「割り切り」が崩れた悲惨な見本である。事故の収束は建設するより難しい工学的課題となるだろう。

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2011年5月23日 (月) 工学 | 固定リンク | コメント (0)

2011年5月20日 (金)

SPICEの効用と限界

電子回路のシミュレータと言えば、SPICE系のシミュレータである。

回路シミュレータは他のシミュレータと同様、設計はしない。あくまでも、設計結果の回路定数を与えて、その結果を表示する手段である。

SPICEは1960年代後半にカリフォルニア大学バークレー校でアナログICの開発ツールとしてターンアラウンド期間を短縮する目的で原型が作られ、それを元にして各社からさまざまなSPICE系シミュレータが市販されている。

SPICEを使えば、各人の解析能力を超える複雑な回路も扱えるようになる。現物が存在しない回路の特性を事前に予想することもできる。しかし、その前提として、シミュレーションの前に、どこが課題か、予想されるプロービングポイントはどこか把握しておく必要がある。

事前にどこを測り、どのような特性が予想され、課題はどこか自力で予想できなければ、シミュレーションそのものが成立しない。黙ってPCの前で回路を打ち込めば結果が出てくる代物ではない。設計能力がない人には無用の長物である。とはいえ、SPICEは設計能力と事前検証を数倍以上に増強してくれるシステムである。

生まれがアナログIC向けなので、個別部品ではふつうに生じる自己加熱による素子特性の変化は扱わない。素子モデルに記述されていない特性は無視されると考えてよい。

SPICEを有効に使うためには、手解析による設計能力の向上が不可欠である。

個別部品でつくるアナログ回路では、解析対象/項目に関連するパラメータのみ妥当であれば目的を達成できる。特定の素子のSPICEパラメータを欲しがる方ほど、SPICEを使えない傾向があるのだ。

数式モデルで表わされた素子は破損することがない。これは、パワー回路の初期の設計効率を大幅に向上させる。

SPICEはオシロスコープや信号発生器と同様に、回路を扱う際のツール/測定器と同様な役割を担うべきであり、効用も限界も使用者の技量次第となる。

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2011年5月19日 (木)

LED蛍光灯

震災&原発事故後の節電が喧伝されるなか、LED照明が脚光を浴びている。しかし、LED照明は本当にエコなのか疑問を感じる。

白熱灯の代替なら、口金互換のものがある。直管形LED蛍光灯は必ずしも口金互換ではない。サークライン形は構造上作りにくい。

LED灯は電子回路:内部はAC-DCコンバータを用いての定電流制御回路をふつうとうさいしている。従って、直接AC100Vが入力される白熱灯互換形は回路的に問題ないが、安定器を介して口金でインターフェースをとる直管形蛍光灯はそのままで管だけLEDに置き換えるわけにはふつうできない。

LED蛍光灯は電子回路と一体になっているのが普通だ。下側にLEDを直並列にして並べ、点光源を面上に配列する。温度が上昇する上部に電解コンデンサを含む駆動回路が搭載される。光束は良くて下側180度にしか広がらない。

電子回路と一体ものであるから、LED直管形は器具毎の交換になる筈だ。そして、4万時間を目標に作られているとされる器具は蛍光灯に比べはるかに高価であり、寿命期間後は家電廃棄物となる。

しかも、LED蛍光灯には外国製の粗悪品も多くでまわっている。おおくの粗悪品では放熱構造が稚拙で、有寿命部品である電解コンデンサの選定に問題がある模様だ。

照明エコとは少なくとも同じ明るさで比べて、単位時間の電気代+器具の償却費で考えるべきだと思う。LED蛍光灯はこの観点では、通常型蛍光灯に対してエコでは今のところないだろう。

照明は、種々好みもある。現在のLED灯はそのニーズを現在は満たしていない。

照明エコの名のもとに、意外な無駄を生じてはいないか?

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2011年5月19日 (木) 工学 | 固定リンク | コメント (2)

2011年5月18日 (水)

接合電圧

pn接合の電圧-電流特性を測るには、測定電流Ijを幾桁も変えて測定して電流の対数と順電圧Vjを片対数グラフに描くと良い。

アナログエンジニアは幾種類かの抵抗と可変電圧源を用いて測定する。可変電圧源Vsから抵抗Rを介して供試品を直列に接続し、VsとVjを測定する。Ij=(Vs-Vj)/Rだから、抵抗を大きく変えれば広い電流範囲でグラフ化することができる。電圧測定にはデジタルテスタの方が負荷効果が少ない。通常のノイズ環境下で測定するなら、ダイオードまたはトランジスタに並列に1000pF〜0.1μFのセラミックコンデンサまたはフィルムコンデンサを接続する。測定は無風状態でなるべく手早く測定することがポイントだ。

0.1V程度以下の順電圧まで測定するには、接合形FET入力のOPアンプで利得1のバッファ(電圧フォロワ)を介して測定時の負荷効果を下げ得ておく必要がある。このような方法を常用する理由は、可変電圧源はふつうにあるが、広範囲可変電流源を準備しにくいからである。

シリコンダイオードの電流-電圧特性はIj=Is{exp(Vj/(mVT)-1} m:エミッション係数、VT:熱電圧=kT/q k:ボルツマン定数 T:絶対温度 q:素電荷 Is:飽和電流で表わされる。

-1を無視すれば、Vj=mVT・ln(Ij/Is)となるから、グラフ上での直線部の傾きから、例えば小信号ダイオードなら品種にも依存するがm≒2、とIsが求まる。ただし、グラフは常用対数を使っているので対数の底の変換が必要である。さらに、電流が1桁変化するとm=2のダイオードの場合常温で120mV変化する。

大電流領域では純pn接合の特性に直列抵抗成分が加わるので、片対数グラフ上で急激にVjが上昇する。この部分から等価直列抵抗Rsを定量化できる。

小信号用トランジスタでは、簡単にはC-Bを接続し、B-E間を測定するとm≒1の結果が得られる。この状態のトランジスタでは拡散電流が支配的なので、寄与するキャリアは1種類でmが1になるのである。

同時に、通常の方眼グラフにVj-Ij特性を描くのも意味がある。このグラフは決して放物線のようにはならず、現実のpn接合特性を体感する良い機会となる。

こんな初歩的だが重要な実験を自分自身でやっていれば、その後の回路理解に役立つのだと思うのだが、結構、模式図のための模式図になっている書物もあるのだ。

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2011年5月17日 (火)

トランジスタの出力抵抗

バイポーラトランジスタの電流増幅率hFEはコレクタ-エミッタ間電圧VCEの影響を受け、電圧VCEの増加とともにhFEが増加する。この現象は電子的変化なので早い現象で、信号の変化とほぼ同時に起きる。

hFEのVCE依存性は、アーリー電圧VAの概念を用いると、広い電流範囲で次式のように簡単な式で表現できる。

hFE=hFE0・(1+VCE/VA) hFE0:VCE=0に外挿した電流増幅率

他の条件が同じなら、コレクタ電流ICの電圧変化は ΔIC/ΔVCE≒IC/VAとなる。

逆数を取れば、Z=ΔVCE/ΔIC≒VA/ICとなる。出力抵抗はコレクタ電流ICに反比例する。

現実的な数値をあてはめてみる。VA=100V、IC=1mAとすればZ=100kΩとなる。

1石エミッタ接地増幅器の場合、アーリー効果を考えない場合(アーリー効果なし)に対し、定電流源に並列にZが付加される形となるので、コレクタ負荷抵抗が5kΩなら、電圧増幅率の計算に対し、-5%の系統的誤差が付加される。

アーリー電圧VAはトランジスタの自己加熱が無視できる状態で複数のVCE-IC特性を取得すれば実測できるが、多くのデーターシートでは実験条件が明示されていないので、データーシートからだけではVAの値は明瞭でない。

エミッタ接地増幅器の電圧増幅率を誤差数%以下で予測するには、少なくともトランジスタの出力抵抗の影響を考慮しなければならない。

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2011年5月17日 (火) 電子回路 | 固定リンク | コメント (0)

2011年5月16日 (月)

ダイオードの定格

電子回路で使うダイオードには、大別して商用電源用ダイオード、ファーストリカバリダイオードとショットキバリアダイオードがある。これらのダイオードの違いを踏まえて最大定格の意味を学び、使い分けの目安を知っておくことは大切である。

どのダイオードも基本的に電力、電流、電圧、温度に対し最大定格が品種ごとに決まっている。

商用電源用ダイオードは逆回復時間が長いので、50/60Hz用以外にはふつう使えない。ON-OFF時に大きな電力損失があり、高周波の整流に使用すると発熱量が大きくなり、場合によっては熱的に破損する。

商用電源用ダイオードは主にコンデンサ平滑整流回路に使われるので、起動時に大きな突入電流が流れる。これに対応して、過渡熱抵抗やサージ順電流が時間の関数として規定されている。小型の例えばガラスダイオードでは、リード線および取り付けのプリント基板の銅箔パターンを放熱に使っているので、データシートでの条件をよく確認する必要がある。

逆電圧の定格はほとんどが1000V以下である。数Aを超えるダイオードは放熱フィンを使用する前提なので、接合‐ケース間の熱抵抗が開示されている。

ファーストリカバリダイオード(FRD)はSW電源やDC-DCコンバータなど高速動作を必要とする回路に使われる。電子回路用としては平均整流電流が100A近くのものがあり、耐電圧も商用電源整流用と同程度のものがある。

ショットキバリアダイオード(SBD)は最大順電圧が相対的に低く、低電圧を扱う際には効率を上げるには有利であるが、耐電圧がふつう50V以下のものしか得られない。品種や使い方にも依るが、高温使用などでは逆電流による電力損失も考慮する。

どのタイプの整流用ダイオードも高い電流密度で使うので、接合やバリヤで決まる電流の対数に比例する項と直列オーム性を考慮しなければならない。

どの段階で、半導体素子の定格を伝えるかは教授者の方針に依存するが、工学である以上アナログエンジニアは早い時期に入門者に伝えるべきであると考えている。

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2011年5月13日 (金)

部品の製作範囲限界

個別部品で組む回路は時としてその種の部品の製作範囲の上限や下限を使いたくなるケースに出会うことがある。

アナログエンジニアは製作範囲の限界を使うことには多少の抵抗感がある。一歩引いて、製作範囲限界より少し狭い領域で使おうとすることが多い。

製作限界は時代時代により変遷するが、部品メーカーがプロセス的種々の理由から製作範囲の上限と下限を決めているからである。

他に理由がなければ、製作範囲の上限、下限のほぼ中間辺りが作りやすく性能も出しやすいからである。

例えば、金属皮膜抵抗なら、蒸着膜の厚み、幅、長さ、材質、外形寸法などのプロセス条件があるが、相対的に高抵抗なら、蒸着膜を薄く、抵抗パターンは細く長く形成し、かつ蒸着膜の組成も高比抵抗になるだろう。これらの要因は経時変化や温度係数に影響しないとは考えにくい。部品の製作範囲の設定は、それぞれの部品メーカーの知恵の結集したものだと理解している。

ユーザーである回路設計者は技術情報から自分の要求する信頼度、特性などが保たれているかある程度は判断するが、それでも、部品の製作範囲の上限や下限の定数を使うことには一抹のリスクを伴うと考えている。

1970年代の高度成長期には玉石混合の部品メーカーがあり、部品メーカーの選定をユーザー各社が社内試験で行っていたが、今では、ユーザーが部品試験できるサンプル数と時間で優劣が出るような低いレベルではないだろう。

精密アナログ回路設計は、部品の製作範囲や信頼性の影響を強く受ける。そして、今やそのことを自力で確かめることはよほどのことがない限り意味をなさない。

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2011年5月13日 (金) 電子回路 | 固定リンク | コメント (0)

2011年5月12日 (木)

増幅器の周波数特性

周波数特性の検討の際には、一度に多数のコンデンサを含めて計算しない方が見通しが良い。結果が複雑になりすぎるので、計算量が多く苦労する割に得るものが少ない。

1石バイポーラトランジスタによるエミッタ接地AC増幅器では、回路図中に入力結合コンデンサC1、エミッタ抵抗に並列に挿入するコンデンサC2、出力コンデンサC3が普通ある。これらはいずれも低域特性を定める。

3つの容量を1個づつ、そのインピーダンスを1/(jωCn)と置き、他のコンデンサは短絡として計算、最後にボード線図上で加算して全体特性を把握するとよい。計算時にC1、C3は、回路図に記載されていない信号源抵抗rを含めて考える必要がある。同時に3個の容量を考慮して文字式のまま計算するのは得策ではない。

1個づつなら、各コンデンサの効きかたを把握できる。

C1はトランジスタのB-E間の入力抵抗をRiとして、(Ri+r)C1の時定数に対応する低域カットオフ周波数が決まる。

C2は、コレクタ抵抗をRc、エミッタ抵抗をREとして、極低域での利得はRc/REとなり平坦である。最初の極はω1=hfe/(C2・(r+Ri)であり、第2の極は1/(C2RE)でこの間6dB/octで利得は上昇する。

C3は次段の負荷を考慮して解く必要がある。

高域特性は、トランジスタに寄生する容量はB-E間のCiおよびC-B間の帰還容量Cobで決まるが、エミッタ接地回路ではCobでほとんど決まる。現実的な数値を考慮して結果式を簡略化すると、Cob・rの時定数の電圧利得倍の時定数に対応する周波数に高域極が出来て、この極が支配的になる。Cobを含む計算過程は結構複雑であるが、どのような計算をしてもCobが電圧利得倍(絶対値)に見えるミラー容量として働くことが判る。

1石トランジスタ増幅器の周波数特性の予測ができれば、もっと複雑な差動増幅器などの周波数特性への足がかりとなる。

もっとも素子数の少ないエミッタ接地回路であるが、その周波数特性を解析的に計算過程を示した書籍は少数派である。自力で考えるには結構ハードルが高いのだ。

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2011年5月11日 (水)

同時ON

プッシュプルDC-DCコンバータやブリッジ形SW回路では主スイッチ素子の同時オンは許されない。大電流が流れ素子破壊がスイッチング時間と同程度の短時間で生じるからである。

例えば、プッシュプルコンバータでは1次側の2つの主スイッチ素子が同時オンすると、漏れインダクタンスと電圧で決まる電流上昇率で急速に2つのスイッチ素子の電流が増える。

通常このモード:クロスカレントコンダクションを避ける手段として、2相のタイミングパルスの重なりを避け、OFF-OFFの時間帯を意図的に挿入し、起動時やシャットダウンの過渡時にもOFF-OFF時間を確保するように作り込む。

パルス幅変調PWMを掛けているスイッチング回路だと、定常状態ではONデューティは絞られているのでタイミング余裕を観察することはできない。

同時ONを許さないことは、OFF-OFF期間の挙動を良く把握しておく必要がある。SW回路の多くはインダクタンス負荷なので、OFF-OFF期間にはSW素子に並列する逆接続の高速ダイオードでインダクタンス電流を循環または回生する例が多い。

駆動条件などの関係でバイポーラトランジスタやパワーFETではターンオフ時間が伸びやすい。この時間を含めて、詳細にタイミング設計を行うのだ。これができない方は、プッシュプル回路は不安定で実用にならないと言うらしい。

しかし、自励式磁気マルチバイブレータでは、SWの過渡状態が重なる。これは、2つのスイッチ素子の電流の変化が他方に正帰還されて自動的に安全な条件で遷移が行われる。

一般にはプッシュプルコンバータでは同時オンは許されないが、ONからOFF、OFFからONへの遷移が自律的に行われる例もあるのだ。

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2011年5月11日 (水) 電子回路 | 固定リンク | コメント (0)

2011年5月10日 (火)

電子回路の図記号

パワーFETなどでは現在では寄生ダイオードを積極的に使うが、回路図に寄生ダイオードを記載しない場合もある。

アナログエンジニアは寄生ダイオードを含めて図記号に表示するのが常である。

パワーFETをインダクタンス負荷ブリッジ形スイッチング回路で使う場合には、寄生ダイオードを明示しておかないと、その動作、特にSWのOFF-OFF期間の電流経路が判りにくくなる。

同様に、IC化ダーリントン・トランジスタの場合も2つのトランジスタと組み込み抵抗を含めて回路図に記載し、同時に1パッケージであることを示すために、囲みを入れるなどの処理を行う。IC化ダーリントンは単体トランジスタとは若干動作が異なる。例えば、5Vのリレーを動かす時など、飽和電圧が異なるため、不足駆動になる場合があるからだ。

回路動作に影響する寄生素子を図記号化して明示することは、自分の見落としの確率を下げる効果もある。

パワーFETのゲートクランプツェナーダイオードや、一部の品種でみられるOPアンプの入力クランプダイオードなども、社内用の回路図なら私は明示した方が良いと考えている。

考える上で便利なのは、回路図上に商用トランスの定格電流・電圧を記載することや、インダクタンス負荷のインダクタンス(リレー、ソレノイドなど)を記載しておくことだ。

回路屋は回路図を中心に回路を検討、チェックする。回路図に必要な情報をなるべく記載しておくことはミスの低減に繋がるものと考えている。

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2011年5月10日 (火) 電子回路 | 固定リンク | コメント (0)

2011年5月 9日 (月)

設計者の失敗と成功

開発にいつも成功する設計者がおれば、その一方でほとんどの開発に失敗する設計者がいる。なかには、成功しそうになったプロジェクトに後から参加し成果を自分のものとしたがる設計者も存在する。

開発の成否は属人性が強いのだ。

成功率の低い設計者は次第に設計の後方支援部隊になる。しかし、現在の経済環境では、膨大な後方支援部隊を抱える余裕のある企業は少なくなっている。企業の盛衰は1割にも満たない成功率の高い設計者に左右されるとも言えよう。

大学を出て研究者になる人の割合よりも、企業の設計者になる人の割合はかなり高い。しかし、企業の欲する人材は成功確率の高い設計者である。当然、研究者との訓練と設計者の訓練は違った次元のものとなる。そして、大卒なら設計、あるいは生産技術指導の立場に一旦は配属することになる。企業は多くの設計支援要員を抱えるには限界があるから、最初の段階で強く選別することになる。これが企業内での人材不足と就職難の実態の一端であろう。

理科離れは、小中高と7,5,3、とも言われる。高学年になるほど理科好みの生徒が3割まで低下が進行するという意味である。

鉱工業は国力の源泉であるが、一生を理系で過ごす方は少ない。むしろ、エンジニアとしてもっとも充実するとき以前に違った感性を必要とする管理職につくことが多い。それでは、文系の方が多い企画畑出身のほうが、連続性がある。

理系離れ、それは研究者養成を旨とする今の大学教育、技術を表に出さない現在のハイテク、処遇の問題が複雑に絡み合っている。

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2011年5月 9日 (月) 随想 | 固定リンク | コメント (0)

2011年5月 6日 (金)

回路動作を言葉で表現

小規模回路の解析をする前に、回路動作を自分なりの言葉で表現してみることは重要だ。また、回路が与えられるなら、その回路の機能が言葉で示されていると、主解析の目的が明白になる。

小規模回路なら、その動作をまず言葉で表現した後、表現された内容に従って式を立てる。そして、解析の目的である項目についての整理された式を得る。

この過程なくしては、公式丸暗記となってしまう。

小規模回路でも考える必要のある解析項目はいくつもある。増幅回路であれば、電圧利得や周波数特性、ダイナミックレンジなど多岐にわたる。動作可能となる前提条件も見落としてはならない。いくつかの項目の解析結果をもとに、定数を戦略的に決めていくことになるが、その過程の中では、部品の取りえる範囲と性能に係る知識も必要になる。

個別部品で作る回路は、部品の選択肢が広いがそれでも、取り得る定数の範囲の制約は生じる。集積回路となると、プロセスに強く依存するが、ダイオード・トランジスタは小面積で、抵抗は個別部品で作る回路に比べてはるかに狭い。コンデンサに至っては30pFでも、汎用OPアンプ回路チップの結構大きな面積を占める。

回路定数が決まったら、電力計算をして、部品の許容電力をチェックするルーティンワークが入る。

もっと大規模回路になれば、回路のブロック図で考えることも必要である。

私の場合、全く同じ条件での設計はほとんど経験したことがない。従って、「必要に応じて」必要な項目を解析することが重要となる。設計条件が異なれば制約事項も種々変化する。

受動的なものまね設計にはならない。

学校で習うのは通常、良くて解析方法の初歩だけである。あとは自分の感性に従って、大いに「ヤマ」を掛けて解析に挑戦し、設計情報を得ることになるのだ。

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2011年5月 6日 (金) 電子回路 | 固定リンク | コメント (0)

2011年5月 5日 (木)

インバーテッド・ダーリントン

npnトランジスタとpnpトランジスタを組み合わせて電流増幅率hFEの高い等価トランジスタを得る回路手段である。等価トランジスタの極性は初段トランジスタと同じ極性になる。

初段トランジスタのベースが入力端子となり、そのコレクタCは異極性の2段目のベースに接続される。2段目のエミッタEは等価トランジスタのコレクタ、初段トランジスタのエミッタと2段目トランジスタのコレクタは共通接続される。

この接続の利点は、等価トランジスタのVBEが単体トランジスタのVBEと同等で、飽和電圧も単体トランジスタと同等である。品種数の少ない個別パワートランジスタでは、選択肢の狭まるパワーpnpトランジスタを使うことなく、pnpパワートランジスタを得ることができる。

さらに、リニアプッシュプル回路を構成するとき、発熱量の大きい2段目の接合温度の影響を無視してバイアス回路の温度特性を決めることができる。個別トランジスタでは、接合‐ケース間熱抵抗を無視できないので、通常のダーリントン接続では、2段目の接合-ケースの熱抵抗に起因して、バイアス回路の温度特性を正確に、2つの接合温度の和に対応するバイアス回路の温度特性に一致させることは困難である。このため、バイアス回路の温度特性を負の強めの温度特性になるように設計せざるをえない。

しかし、常にインバーテッドダーリントンが有利かといえばそうではないだろう。経験的にインバーテッド・ダーリントン接続の方が発振しやすいと感じている。しかも、布線=パターン依存性がある。このため、アナログエンジニアはインバーテッド・ダーリントンを使う際には、発振止めのRやCを追加できるように、あらかじめ捨てパターンを作成しておくことが多い。

物事には光と影がある。インバーテッド・ダーリントンは便利な回路手段であるが、私は常には使うことはしない。

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2011年5月 5日 (木) 電子回路 | 固定リンク | コメント (0)

2011年5月 3日 (火)

小規模回路解析の薦め

極小規模や小規模アナログ回路は手解析でもシミュレーションでも種々の半導体パラメータの特性への影響を解析できる。

小規模であるからこそ、解析のレベルを単に教科書レベルの結果を追跡するだけではなく、より深く解析できる余地がある。また、条件を変えての解析と実験の比較も可能である。

例えば、1石トランジスタ増幅器において、信号源抵抗と周波数特性の関係は、ミラー効果によりC-B間接合容量に強く影響されるが、この様子を解析的にもシミュレーションでも再現でき、比較できる。

1石トランジスタ増幅器の電圧増幅率は、信号源抵抗が低ければほぼコレクタ抵抗に係る電圧と熱電圧VT(=kT/q k:ボルツマン定数、T:絶対温度 q:素電荷)できまる。種々の条件での計算結果と実測を比較してみればこのことを体感できるだろう。

さらに、信号源抵抗rが上昇すると、(r+VT/IB) IB:ベース電流 に反比例して電圧利得は低下する。高域周波数特性は信号源抵抗とミラー効果を考慮すれば、そこそこの予測と実際の対応を得ることができる。そのほかににも、大振幅動作時の波形歪みなどもきれいに説明できる。

実務におけるアナログ回路は、多くの大学教科書の張る世界と異なる世界での価値観で設計される。その第一歩が小規模回路の徹底解析である。小規模回路の実際を知ることは、より大規模、複雑な回路の挙動の予測に役立つ。

シミュレーションはさらに、モデルと実際との相違にも目を向けなければならない。また、素子パラメータの取得方法を考える際、手解析の良くできた回路があれば、実用上、自分にとって十分なモデルを得ることができるとアナログエンジニアは考えている。

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