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大河「麒麟がくる」 政治ドラマとして見る楽しみ

[ 2020年10月3日 12:00 ]

NHK大河ドラマ「麒麟がくる」で、今後について話す(左から)織田信長(染谷将太)と明智光秀(長谷川博己)(C)NHK
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【牧 元一の孤人焦点】NHK大河「麒麟がくる」を政治ドラマとして楽しんでいる。

明智光秀(長谷川博己)に政治家を感じたのは、9月27日の放送で、織田信長(染谷将太)と会話する場面。美濃を平定した信長が「この先、どこへ向かって戦(いくさ)をしていけばいいのか?それが分からぬ」と本音を漏らすと、光秀は「上洛されてはいかがでしょう。新たな将軍に力を貸し、幕府を再興するのです」と指南する。

制作統括の落合将チーフ・プロデューサーはこの場面について「光秀はドラマの初回から『将軍を中心とした武家政権(室町幕府)の復活』を理想として追い求めている。理想の将軍だった足利義輝(向井理)の死をまだ受け入れられていないが、次は足利義昭(滝藤賢一)が将軍の器かどうか見極めて仕えていくかどうかで、この時点ではまだ一地方の大名にすぎない信長に仕える気はない。あくまでも朝倉義景(ユースケ・サンタマリア)や他の強大な大名とともに信長に幕府の再興を手伝ってもらいたいという心持ちのシーン」と説明する。

政治ドラマ色を強く感じたのは、上洛する気になった朝倉義景が光秀に胸の内を明かす場面。義景は「義昭さまは美しいみこしであられる。その美しきみこしを担ぐのはわれわれだ。そして、そのみこしは軽い方が良い」と断言する。ここで思い出したことがある。近代政治史で、首相を擁立する際に政治家が発したとされる「みこしは軽くてパーがいい」という言葉。義景のセリフは当時の将軍と近代の首相の類似性を感じさせた。

落合氏は「このドラマは信長と信長軍団の物語ではなく、『室町幕府の終焉(しゅうえん)』を時代のダイナミズムの中で描くもの。それを政治ドラマとしてとらえるかどうかは視聴者のご判断」とした上で「時代の移り変わりの中で、立場の違う、多くのキャラクターが一つの時代の終わりと始まりにどう立ち向かうかということを描いていく。そして、その中心に明智光秀がいる」と話す。

今後の展開で興味深いのは、光秀がどのような考えで信長に仕えるかということ。それは好き嫌いや損得による判断ではなく、自分が理想とする社会を実現させるための政治的判断になるはずだ。そして、その政治的判断の誤りを確信した時、本能寺の変へと向かってゆくに違いない。

だいやまーく牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

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