トヨタ、ホンダ、日産が劇的円安・保護主義化でも「国内生産回帰」できない3つの理由
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超円高に悲鳴を上げていた国内自動車メーカーが、今度は「円安の泥沼」にはまりつつある。円安は自動車メーカーにもたらす意外なデメリットとは。特集『「円安」最強説の嘘』の#10では、円安と保護主義化にもかかわらず、自動車メーカーの"国内生産回帰"が難しい理由についても詳しく解説する。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)
円高憎しだった自動車メーカーが
「円安の泥沼」にはまる皮肉
10年ほど前には超円高に悲鳴を上げていた国内自動車メーカーが、一転して「円安の泥沼」に陥りつつある。
一般的には、円安は「輸出競争力のアップ」と「海外事業の売り上げの円換算での評価額」という二つのメリットにより、自動車メーカーの利益を押し上げるとされてきた。だが、この10 年で自動車メーカーのビジネスモデルは激変した。
一つ目のメリットである輸出競争力については、海外への生産シフトを進めている上昨今の半導体需要の逼迫で満足に完成車を作れないことから輸出を増やせる環境にない。そのため、円安で輸出数量が増加することで貿易収支が改善するという「Jカーブ効果」が薄れつつある。
二つ目の海外事業についてはどうか。円安になると、現地子会社などの海外事業で稼いだ利益の円換算額が増加する効果が得られる。だが近年、主要国政府の保護主義化(による外資規制)と海外市場の成長性を理由に、自動車メーカーは海外投資収益を現地に再投資する傾向が強まっている。増えた企業収益を日本に還流させて日本の設備投資や賃金アップにつなげるという構図が崩れているのだ。
実際に、自動車メーカーをはじめとする製造業の円安効果が薄まっている"予兆"がある。日本銀行の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が前四半期比で3ポイント低下し、7四半期ぶりの悪化となった。そのうち自動車業界のDIは同7ポイントも低下し落ち込みが激しい。自動車メーカーにとって、円安はむしろ素材高・資源高に響く悪材料として認識されつつある。
長らく、円高憎しだった自動車メーカーが「円安の泥沼」にはまるに至ったのはなぜなのか。
次ページでは、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の自動車3社の生産体制・サプライチェーン(部品供給網)の動きから、その転換点を探る。また、円安と世界の保護主義化が加速しているにもかかわらず、自動車生産の「日本回帰」が難しい三つの理由についても取り上げる。
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