人の行動をちょっとした工夫で変革「ナッジ理論」をビジュアル事例で見る
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「人間は必ずしも合理的な選択をしない」――。世の中には国家レベルの大問題から、身近な悩みまでさまざまな課題があるが、その解決には法令や補助金支給などの伝統的な政策手法だけでは限界がある。そこで期待されているのが、肘で軽く突くかのように賢い選択肢に導く「ナッジ」の活用だ。特集『最強の武器「経済学」』(全13回)の#6では、公共分野のナッジ活用の最前線を取材した。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
「小便器の飛散防止」から「年金問題」まで
公共政策で導入が進む「ナッジ」とは
「老後2000万円問題」や「激増する大腸がん」、「新型コロナウイルス感染症対策のアルコール消毒」に「男性トイレの小便器の飛散防止」――。世の中には国家レベルの大問題から、身近な悩みまでさまざまな課題があるが、その解決には法令や補助金支給などの伝統的な政策手法だけでは限界がある。そこで期待されているのが、「ナッジ」の活用だ。
ナッジ(nudge)とは、日本語では「肘でそっと押す」という意味。選択の自由を残しつつ、金銭的なインセンティブに頼らずに、人々がより賢明な行動を選ぶことを手助けする手法だ。お金をかけずに課題解決につながるのがミソで、ノーベル経済学賞を受賞した米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授とキャス・サンスティーン教授が発案して、世界各国で導入されている。
最も有名なのが、オランダのスキポール空港の男性トイレの小便器に描かれたハエだ。同空港のトイレは小便の飛散により清掃費が高騰していたが、男性が小便をするとき、このハエを目標にするようになってから、小便器周辺への飛散による汚れが80%も減少。たったこれだけで清掃費の20%削減に成功した。
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