(川瀬巴水「芝弁天池」一九二九(昭和四)年、後摺、茨城キリスト教大学蔵) 上掲の版画は、川瀬巴水「芝弁天池」(後摺)です。諸書・解説に指摘されるように、今の弁天池(現・東京都港区芝公園)は縮小されて往時の面影はまったくありません。昔は絵のように広大な蓮池であったようです。 この作品は、従来から人気の高い作品で、処処方方に咲く蓮の花に清楚な着物姿の女性が二人、蓮を見ながら話をしてい...

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(川瀬巴水「潮来乃初秋」初摺、1942(昭和17)年、茨城キリスト教大学蔵) 今回の本の表紙は「潮来の初秋」です。巴水の絵は、よく言われるように、雨、曇り、雪、明け方、夕方と、比較的暗い絵が多いのですが、この絵は巴水にしては明るい方の絵でしょう。ほぼ、同じ構図に「牛堀の夕暮」があります(タテ、ヨコの違いがあります)。こちらは同じ水辺で、同じように西欧ポプラを背景に、小舟が一艘川面をすべ...

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(関東大震災後の巴水スケッチ「深川高橋の朝」(『日本及び日本人』所収、大正14年1月)。巴水の作品をよく見ると、巴水が石垣にこだわったことがよく分かる。このスケッチもその一つ。左の石垣は震災で崩れたものであろうか。巴水は、その石の一つ一つを正確に写し取ったと思われる。とくに、水面に反射するその石垣の描写には、端正を越えていささか鬼気迫るものがある) 巴水の版画を室内で鑑賞するだけでなく...

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2022年08月 2022年10月