2009年11月05日
マーク・ブキャナン「人は原子、世界は物理法則で動く―社会物理学で読み解く人間行動」
[フレーム]
マーク・ブキャナンの新刊が出ていたので早速読みました。
前作「複雑な世界・単純な法則」同様、複雑に見える現象ほど、単純な法則によって動いているというメッセージがこめられています。
人間を原子のごとく扱い、社会現象を物理の現象として扱えば、非常に難しく、複雑に見える物事も、全体のパターンとしてなら説明が可能で、うまくいけば予測も可能になると筆者は言います。
ここで言う、全体、またパターンという言葉には、個々の性質(原子、あるいは人間)を見ていたのでは現象の本質(自然現象や社会現象)を見抜くことができないという意味があります。
そういったパターンを理解するうえで重要なことは、適切なモデルを構築することだと筆者は言います。
また、筆者が紹介しているものは、人間の活動が生みだすパターンであるために、人間の本質に迫った描像に必要なると言います。
その本質とは、適応し、模倣し、協調する、ということです。
さらに詳しくは、訳者があとがきのなかで以下のようにまとめてくれています。
科学とは何かということを、社会科学者に熱く訴える一書であると共に、非常に身近な話題や多くの人が問題意識として持っているであろう事柄を、優れた訳で書かれた、一般の方も大いに楽しめる一書であると思います。
目次
第1章 人間ではなく、パターンを考える
第2章 世界が複雑なのは人間が複雑だから?
第3章 人間は本当に合理的なのか
第4章 適応する原子
第5章 模倣する原子
第6章 協調する原子
第7章 民族はなぜ憎しみあうのか
第8章 金持ちがさらに豊かになる理由
第9章 過去への前進
マーク・ブキャナンの新刊が出ていたので早速読みました。
前作「複雑な世界・単純な法則」同様、複雑に見える現象ほど、単純な法則によって動いているというメッセージがこめられています。
人間を原子のごとく扱い、社会現象を物理の現象として扱えば、非常に難しく、複雑に見える物事も、全体のパターンとしてなら説明が可能で、うまくいけば予測も可能になると筆者は言います。
ブラーエ、ケプラー、ニュートンは、三人あいまって正しい科学のためのレシピのようなものをはっきりと示した。つまりデータを集め、パターンを突き止め、パターンを説明するメカニズムを見出すというものである。パターンから明らかになる規則性を見れば、一見複雑そうに見えるものが実際にはかなり単純であることがわかる。さらに、こうしたパターンの背後にある自然法則のおかげで、予測が可能になる場合もしばしばである。p.48
ここで言う、全体、またパターンという言葉には、個々の性質(原子、あるいは人間)を見ていたのでは現象の本質(自然現象や社会現象)を見抜くことができないという意味があります。
そういったパターンを理解するうえで重要なことは、適切なモデルを構築することだと筆者は言います。
本物の科学の発展には、考え抜かれた適切な近似的扱いが不可欠である。対象が何であれ、「完璧な」モデルや「すべてを備えた」モデルなど、あるはずがない。構図のなかに含まれるいくつかの要素を無視してはじめて、われわれに重要な関わりをもつ疑問に答えを出すことが可能になる。p.156
極端なまでに単純化したモデルによって複雑な物事の核心に到達することの重要性と、実際に到達できる可能性があることがわかっていないのだ。単純なモデルにそのようなことが可能だというのは、科学の奇跡のように思われるかもしれない。おそらくは奇跡なのだろう。だが、こうした奇跡がなければ、そもそも科学など存在しなかっただろう。p.225
概念や考え方、さらには実践面での物理学の威力は、どれほど巧みに近似を行えるか―実際には問題にならない細部を無視して、問題になる事柄だけに焦点を当てることを習得する力量―にかかっている。
正直なところ、いくつかの例外はあるものの、私も含めて物理学者には、非常に単純化したモデルに依拠しながら、あれほど多くの事実を知ることができるほんとうの理由がわかっているとは思えない。だが、どうやら宇宙はわれわれにチャンスをくれているようだ―世界は想像しているよりも簡単な形に組み立てられているように思われるのである。p.226
重要なのは、過度なまでに単純化したモデルなら何でも役に立つということではなく、過度なまでに単純化したモデルが威力を発揮するのは、ほんとうに問題になるごく少数の細かな点を正しく捉えている場合に限られるということなのである。p.228
本物の科学は、いずれもこの普遍的な性質をもつ「奇跡」、つまり、問題になる重要なパターンが多数の要因に左右されるケースはまれで、ふつうはごく少数の決定的に重要な要因に左右されているという事実を拠りどころにしている。
だから科学では、現実を恐ろしいまでにどこまでも詳細に捉えようとした精密なモデルは必要がない。進むべき方向は正反対で、そのためには無視できるものはすべて無視して、できるだけ単純な理論を構築しなければならない。たとえモデルに人間が含まれていても、このことに変わりはない。p.228
また、筆者が紹介しているものは、人間の活動が生みだすパターンであるために、人間の本質に迫った描像に必要なると言います。
その本質とは、適応し、模倣し、協調する、ということです。
さらに詳しくは、訳者があとがきのなかで以下のようにまとめてくれています。
人間は一人一人が性格も考え方も経験もまったく異なる複雑さの極致のような存在であるといえ、共通するごく少数の特性を的確に捉えて理論なりモデルに組み込めば十分p.283
その特性とは、?@人間は本質的には理性による論理的思考が不得手で、むしろ直感に頼って思考し、判断を下すこと、?A他者との関わりあいのなかで学習し、適応していくこと、?B進んで人のまねをしようとすること、?C仲間との協調を志向する一方で、協調を目指す同じ論理に従って、よそ者に対しては盲目的な敵意を向ける傾向があること、である。p.284
科学とは何かということを、社会科学者に熱く訴える一書であると共に、非常に身近な話題や多くの人が問題意識として持っているであろう事柄を、優れた訳で書かれた、一般の方も大いに楽しめる一書であると思います。
目次
第1章 人間ではなく、パターンを考える
第2章 世界が複雑なのは人間が複雑だから?
第3章 人間は本当に合理的なのか
第4章 適応する原子
第5章 模倣する原子
第6章 協調する原子
第7章 民族はなぜ憎しみあうのか
第8章 金持ちがさらに豊かになる理由
第9章 過去への前進