需給調整・系統運用
同時市場の検討・詳細設計
kWhとΔkWを同時に約定する仕組みの導入を目指して
近年、変動性再生可能エネルギー電源の増加や化石燃料の調達リスクの顕在化等を背景として、卸電力取引所や需給調整市場における売り入札不足・価格高騰、電力系統の需給バランス維持の困難化、系統混雑の発生・増加等様々な課題が生じています。また、これらの課題は、変動性再生可能エネルギー電源を今後大量に導入すると更に深刻化することが想定されます。
こうした中、電力と調整力の安定的な調達・配分や、電源の費用特性等を考慮した約定、将来の環境変化に対応しうる需給運用の仕組みの構築といった課題に対処しつつ、より安定的かつ効率的な電源運用を可能とする仕組みとして新たな市場(同時市場)の創設が検討されています。
同時市場とは、現在は卸電力取引所と需給調整市場のそれぞれで取引されている電力(kWh)と調整力(ΔkW)を、同時に取引し、約定させる市場です。各市場が個別に運用されていることによる電源の取り合い等の問題を解消するため、電源を電力と調整力に適切に配分する仕組みを導入し、売り入札不足を原因とする価格高騰の防止や、変動性再エネの増加に対応するための十分な調整力の確保を可能とします。また、入札時に発電機の費用特性(起動費、最低出力費用、増分費用)を登録し、市場約定における発電コストの効率化を可能とするとともに、系統制約を考慮し、約定電源および発電量を決定する仕組みを採用することで、変動性再エネが大量に導入された状況においても安定的かつ効率的な電源態勢に基づく運用が可能となります。
これまで、同時市場については、「同時市場の在り方等に関する検討会」(資源エネルギー庁および電力広域的運営推進機関が共同事務局)において、制度設計の議論が行われ、2025年10月15日には、公表された第二次中間取りまとめでは、検討中の同時市場の全体像が示されています。
今後は、同時市場の導入に向けて、実務的な観点を踏まえた市場制度の詳細設計と、同時市場の導入に必要な市場システムの開発に向けた要求定義を順次実施していくことが予定されています。
(資源エネルギー庁ウェブサイト)