2014年10月23日 (木)

第28回先端技術交流会実施報告

10月16日(木)の午後からマイクロマシンセンター新テクノサロンで開かれたマイクロナノ先端技術交流会を開催しました。

今回のテーマは「原子時計の動向とチップスケールへの最新の取り組み」。同分野の最前線で活躍している産業技術総合研究所・計測標準研究部門時間周波数科時間標準研究室の高見澤昭文先[画像:Img1_2]生と首都大学東京大学院理工学研究科准教授の五箇先生を講師に迎え、原子時計の取り組みを中心に最新動向が紹介されました。原子時計とは数万年に1秒も狂わないという高精度なクロックです。このおかげで今日のGPS(グローバル・ポジショニング・システム)があり広く社会に貢献しています。

産総研・高見沢先生は「原子時計のしくみと産総研での取り組み」と題して、原子時計の定[画像:Img2]義から構造、原理とわかりやすく解説いただきました。1960年代中頃までは時間の定義は地球の時点や公転で定義されていましたが、現在では、セシウム(Cs133)原子に共鳴するマイクロ波の周波数で定義されています。そして、それを正確に測定するための方法について解説いただきました。



後半部では産総研での取り組みとして、原子のレーザ光によるトラップを行い原子の速度を落とし、原子を打ち上げて重力でもどってくる系を用いて、マイクロ波の線幅を細くする取り組みを紹介しておりました。

二番手の首都大学東京大学院・五箇先生からは、チップスケール原子時計の最新の動向[画像:Img3]を紹介いただきました。高見澤先生の方法はラムゼー共鳴というマイクロ波による共鳴を用いておりますが、チップスケールでは、CPT(コヒーレント・ポピュレーション・トラッピング)共鳴を用いております。
このCPT共鳴を用いることにより従来のような大型な共振器が不要なため非常にコンパクト(数センチサイズ)にできることが特徴になります。時間精度は従来の方法に比べると劣りますが、それでも千年に1秒以下のズレと従来のTCXOやOCXOに比べ高精度であり、アプリケーションがさらに拡がるのではと思います。携帯電話やセンサ端末等に使用される可能性も十分にあると思いました。

<産業交流部 今本浩史>

2014年10月23日 (木) 講習会・先端技術交流会 | 固定リンク | コメント (0)
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2014年10月20日 (月)

【平成26年10月の経済報告】

本稿は、マイクロマシン/MEMSを取り巻く経済・政策動向のトピックをいろいろな観点からとらえて発信しています。皆様の業務の一助になりましたら幸いです。

今回は仲秋の平成26年10月分の経済報告をお届けします。

図表を含めた詳細版を、以下のPDFファイルとしてありますのでご覧ください。

「2014.10.pdf」をダウンロード

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2014年10月15日 (水)

EWGAE2014参加報告

概要:
EWGAE(Conference of the European Working Group on Acoustic Emission)は、1972年に設立され、AEに関する技術的な情報交換の場として2年に一度開催されている代表的な国際会議である。AE法に関係する技術者、実務者、サービスプロバイダ等が一同に会し、AE技術の進展に関する議論が行われている。今回はドイツ非破壊検査協会(DGZfP)と、ドイツ連邦材料試験研究所(BAM)との共催で開催され、AEシステムの代表的なメーカーであるVallen社のH.Vallen氏が議長を務めた。 本会議において、AEセンサシステムに関するアプリケーションと、デジタル信号処理のAE応用についての情報収集を行った。
参加者は計119名、国別ではドイツ38名、ロシア10名、日本9名他、ヨーロッパを中心として22か国、業種別では大学43%、計測装置含むメーカー18%、研究機関16%、検査会社10%、第三者認証機関等含むその他12%という構成であり、幅広い分野からの参加が見られた。


セッション:
以下に本学会のセッションと各発表件数を紹介する。

-Modeling and Theory (4)
-Localisation and Tomography (4)                
-Metal Alloys (4)             
-Concrete I (4)     
-Signal Detection and Processing I (4)       
-Application I (5) 
-Fatigue (5)
-Various (4)
-Metal Alloys and Coatings (4)
-Geosciences (4)
-Signal Detection and Processing II (4)  
-Concrete II (4)
-Equipment (4)
-Standardisation and Basics (4)
-Civil Engineering (4)
-Applications II (4)
-Corrosion (4)
-Biological Applications (4)
-Localisation of Defects (4)
-Posters (19)


 内容、所感:
本学会においてAEのデジタル信号処理技術と、アプリケーション、装置に関するセッションを中心に聴講を行った。そのうち、いくつかについて以下に紹介する。
 注目講演1(Session: SIGNAL DETECTION AND PROCESSING I):
Real-time Algorithm to Classify AE Events of Lamb Waves in CFRP                
(University of Granada, Spain)
CFRPなどの複合材において、現象を分類する信号処理アルゴリズムの提案である。CFRPは通常クラック→剥離→繊維破断で劣化が進行する。そこで周波数帯域ごとのRMS値による分類により、AE発生の要因が剥離であるか、クラックであるか、繊維破断であるかに分類する。周波数フィルタによって低域側(剥離)、中高域側に大別し、さらに中高域の中で、スペクトル比によって中帯域(クラッキング)と高帯域(繊維破断)に弁別することができるとのこと。
 注目講演2(Session: LOCALISATION AND TOMOGRAPHY):
Wavelet Based Approach to Acoustic Emission Phase Picking
(Togliatti State University, Russia)
ウェーブレット変換をベースにした波形抽出処理の提案である。従来AEヒットの判定に閾値を用いているが、低SN条件下では正しくヒットをカウントできない場合がある。ヒットの判定にウェーブレット変換を用いることで、振幅ではノイズに埋もれる条件下でも正確にヒットをカウントできるという手法。センサの共振周波数によって、AE波形の持つドミナントな周波数成分が概ね決まってくるため、特定のウェーブレットパターンを持つ信号を取り出すことができるとのこと。
注目講演3(Session: STANDARDISATION AND BASICS):
Localization of Acoustic Emission Sources in Geometrically Sparse Structures
Institute of Thermomechanics (Czech)
構造物ヘルスモニタリングにAEを適用する場合の位置標定技術に関する発表である。パイプで構成されたトラス構造の屋根をモチーフとしている。スパースな構造物に対してAE手法を適用するという点において、ユニークである。信号処理にはニューラルネットワークと、セグメント毎に分割して位置標定する独自のアルゴリズムを用い、負荷の上昇に伴いAEの活性が高いセグメントが変化する様子を捉えられるとのことであった。
   AEにおけるデジタル信号処理技術に関しては、1AE信号とノイズを弁別するノイズ処理、2発生源の位置を特定する位置標定、3AE信号の特徴を分類するクラスタリング、の3分野が主要である。大学や研究機関を中心に、ウェーブレット変換や、ニューラルネットワークを活用し、耐ノイズ性能や位置標定精度を向上した事例が多くみられた。一方で、実フィールドでの適用にはリアルタイム性や簡便性が求められる傾向があり、単純な閾値による信号判別が適用されているのが現実であるとの報告もあった。また質疑を中心に、センサ感度や環境変化に対するロバスト性に関する議論が多くなされていたのも印象的であった。AEにおける信号処理技術の中心となる理論に関しての理解を深め、現状のAE分野における最先端技術レベルと、AEを用いた劣化診断において重視すべき課題を確認することができた。

 次回開催:
次回は2016年9月にチェコ・プラハもしくはブルノにおける開催が予定されている。

<NMEMS組合 碓井 隆>

2014年10月15日 (水) 国際交流, Pj RIMS研究開発 | 固定リンク | コメント (0)
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国際標準化への貢献により、肥後矢吉氏(立命館大学客員教授、IEC/TC47/SC47Fエキスパート)IEC1906賞を受賞

10月14日に都市センターホテル(東京・永田町)において、経済産業省 岩井政務官ご臨席のもと平成26年度工業標準化事業表彰式が行われ、立命館大学客員教授の肥後矢吉氏が、IEC1906賞を受賞致しました。

[画像:Pa140152]

IEC1906賞は、1906年に発足したIECの創立100年にちなんで創設された記念行事のひとつであり、IECの活動に対して多大な貢献のあった個人を表彰することを目的に、2004年以降毎年行われています。

肥後氏は、長年にわたり、IEC/TC47/SC47Fにおける国際標準化開発のプロジェ[画像:Pa140153]クトリーダー及びエキスパートを務めてこられました。特に 、日本から提案し、IEC国際規格として発行された「IEC62047-18:薄膜曲げ試験方法」のプロジェクトリーダとして規格案作成・提案から標準化審議のフォローまで一貫してかかわってこられました。これらの功績が認められ今回の受賞となりました。

当日は工業標準化事業として、内閣総理大臣表彰、経済産業大臣表彰(個人、組織)、国際標準化貢献者表彰、国際標準化奨励者表彰、国際標準化功労者表彰が行われました。IEC1906賞は、日本工業標準調査会(JISC)の野間口有会長より手渡されました。(調査研究・標準部 内田和義)

2014年10月15日 (水) 国際標準化 | 固定リンク | コメント (0)
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2014年10月14日 (火)

MIGコンファレンス上海2014報告

米国MEMS Industry Group主催で、2014年9月11日・12日、中国上海にて開催されたMIG Conference Shanghaiに国際交流およびMEMS産業動向調査の一環として参加しました。
今回の開催は2014年4月に日本で開催されたMIG Conference Tokyoの開催と併せて、今年度アジアで2回目の開催となりました。また、今回中国での開催もはじめての試みです。
開催場所は上海市内の「ルネッサンス上海中山公園ホテル」で開催され、浦東空港から地下鉄で中山公園までつながっております。ただ、地下鉄だと1時間以上要するため、多くの人は空港からリニアモーターカを使って上海市内に来ています。私も始めて二リニアモーターカに乗りましたが、431km/hの表示速度ほどのスピードは感じることができず、また、振動も大きかったことに少し驚きました。

1
さて、Conferenceですが、参加者は欧米を中心に、120名程度の方が参加されていました。最も多いのが中国で約70名、次いで米国の14名、そしてドイツから12名の参加となっていました。日本からはオムロン株式会社マイクロデバイス事業本部長の関口氏と同事業部の堀池氏と筆者の3名の出席でした。中国から参加者は多いが、実際は現地の欧米企業からの参加者が多いようであった。中国市場に関する講演や、現地での欧米MEMS企業が多く集まることから、今後ますます中国でのMEMS市場が加速することが予感されました。 中国からの講演は上海にある研究機関SIMIT (Shanghai Institute of Microsystem and Information Technology)やファウンドリー企業のSMIC (Semiconductor Manufacturing International Corporation)から講演がありましたが、その他の講演は欧米企業や調査会社からのものでした。

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全体的な感想としては、モバイル市場は世界的には飽和しているが、まだまだ中国市場は伸びていくだろう、そして、そこに使用されるMEMSセンサ等は中国製がさらに増加してくるように感じた。また、講演会の最後はDinar Party。中華料理とワインでとても盛り上がっていました。
<産業交流部 今本浩史>

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