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2013年12月 1日 (日)
欧州における農業のICT化に関する技術動向調査
2013年9月24日から26日までドイツ・フェヒタで開催された11th International Conference on "Construction, Technology and Environment in Farm Animal Husbandry"(BTU2013)に参加しました。フェヒタはドイツ北部に位置し、ブレーメンから電車で1時間ほど南西に行ったところにある小さな町です。BTU2013は農業機械、ICT牧場に関する数少ない学会です。参加者は畜産業のICT化に力をいれているヨーロッパからの参加者がほとんどでした。特にドイツからの参加者が多く、英語とドイツ語が公用語となっているような学会でした。開催地、主催者によっても学会の趣向が変わるそうで、まだ不安定な学会の用にも感じました。本学会では鶏、豚、牛に関する発表が満遍なくされており、畜舎内の環境管理や、排ガスなどの空調に関する発表も多かったです。
家畜の個体管理に関しては、基本的に畜舎内での管理を前提とした研究が多かったです。そのため、カメラによる行動観察や、RFIDを用いた位置情報、個体情報の管理に関する研究が主でした。畜舎外での個体情報の管理に関する研究では、アルプスにおける放牧牛の位置情報の管理を試みた研究が発表されていました。アルプスでは1日1回放牧牛を目視することが義務付けられており、広い放牧地で牛を見つけるのが大変だそうです。また、アルプスの高原には無線アンテナの基地局を設置することが法律で許可されていないそうです。そこでGPSによる放牧牛の測位を試みていました。しかし、GPSは消費電力が大きく、2週間程度しか電池が持たないということで問題を抱えておりました。地域によって法律などの規制が変わってくるので、その地域にあった方法でシステムを作り上げる必要があると実感しました。
また、本学会では豚の研究に一番力を入れているように感じました。ヨーロッパ各地の研究機関が協力した、「PigWise」というプロジェクトが行われていました。PigWiseでは給餌器と豚につけられたRFIDタグの通信とカメラでのモニタリングによってどの豚がどの程度食事をしているのかを把握し、その後の肥育や体調管理に応用しようという試みを行っていました。食事の間隔に異常のある豚は何か体調の異常が疑われるというものです。学会で発表された研究では、食事間隔が異様に長くなった豚は実際に骨折していたそうです。狭い畜舎の中で大量に肥育されている豚はお互いにぶつかり合うことで骨折してしまうこともあり、どの豚が骨折したかを早く確認することも大事だそうです。
家畜の健康管理では体温変化を測定することが大事だと言われています。大動物になると体表で測定される体温は外気温の影響を大きく受けるため、深部体温とは大きな差があります。そこで、家畜の体温測定は膣内の温度が測定されており、家畜にストレスの無い形で体温をモニタリングする方法が確立されておりません。そのため正確な体温のモニタリング方法に関する研究が進められていいと思いますが、本学会ではPigWiseも含めて体温測定に関する発表はほとんどありませんでした。体温は測定しないのかと質問すると、「体温測定はもちろん重要だが、それは難しいからやらない」との答えが返ってきました。このことから、技術的な問題解決よりも、今使える技術でどれだけ実用化できるかということに力を入れているように感じました。確かにそのような視点を持つことは大事ですが、体温の常時モニタリングは避けてはならないならない課題であると感じています。まずはこれを解決することで、畜産業界に衝撃を与えることができるだろうと思います。
本学会のテクニカルツアーではBig Dutchmanという豚と鶏用の農業機械メーカーを訪問しました。日本を含め世界各地に販売しており、世界シェアは50%もあるそうです。そのBig Dutchmanが販売している豚の個体管理システムでは、畜舎内に豚一頭が入れるような自動給餌システムが配置されており、そこで豚が餌を食べているときに、体温測定を行い、その給餌システムの出口は次のゲートにつながっており、そこでは妊娠診断を行ったり、体重測定によって出荷判定を行ったりするような人手のかからないシステムとなっていました。もちろんそれらの個体情報は畜舎内の環境管理と合わせてすべてICTで管理できるようになっています。妊娠診断は装置内に入った豚に機械式のアームが胴体に巻き付くように固定され、アームに内蔵された超音波診断装置により妊娠の診断をするシステムでした。Big Dutchmanの製品は人手のかからない生産システムで大量の豚を機械的に飼育管理することを実現できるものとなっており、その規模に感銘を受けました。技術的にはそれほど難しいことをしているわけではありませんが、そのような大規模な養豚の生産システムは日本では実現できないのではないかと思います。
図1 Big Dutchman
[画像:Photo]
図2 自動給餌器、豚が一頭ずつ給餌器内に入り、出口は妊娠診断装置や体重測定装置につなげることができる。
図3 自動妊娠診断装置、豚が中に入ると黒いアームが豚の腹に巻き付き超音波で妊娠診断を行う。
2013年12月 1日 (日) 産業・技術動向, Pj 社会センサ先導 | 固定リンク
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