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岡本法律事務所のブログ

岡山市北区にある岡本法律事務所のブログです。 1965年創立、現在2代めの岡本哲弁護士が所長をしています。 電話086-225-5881 月〜金 0930〜1700 電話が話中のときには3分くらいしてかけなおしください。

2022年08月

千種秀夫裁判長不当判決 配偶者控除に関する平成9年判決

もう少し議論に対応すべきと思われます。租税判例百選6版47事件

所得税更正処分取消等請求上告事件 租税判例百選7版 50事件 中里ほか第4版65頁

最高裁判所第3小法廷判決/平成8年(行ツ)第64号

平成9年9月9日

【判示事項】所得税法八三条及び八三条の二にいう「配偶者」の意義

【判決要旨】所得税法八三条及び八三条の二にいう「配偶者」は、納税義務者と法律上の婚姻関係にある者に限られると解するのが相当である。

【参照条文】所得税法83

所得税法83-2

所得税法85-3

【掲載誌】 訟務月報44巻6号1009頁

税務訴訟資料228号501頁

【評釈論文】訟務月報44巻6号1009頁

訟務月報44巻6号135頁

税務事例30巻10号14頁

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告人の上告理由について

【判示事項】所得税法八三条及び八三条の二にいう「配偶者」は、納税義務者と法律上の婚姻関係にある者に限られると解するのが相当であり、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、右と異なる見解に立って原審の右判断における法令解釈の誤りを論難するものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判官 千種秀夫 園部逸夫 大野正男 尾崎行信山口繁)

上告理由

一 憲法第八一条は裁判所に、「一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する」違憲審査権を与えており、上告人は一貫して本人の受けた「処分」自体における違法性(平等権侵害)の審査をもとめてきた。すなわち、事実上の配偶者について配偶者及び配偶者特別控除を認めないとした被上告人による所得税更正の「処分」の違法性を主張してきた。ここで問題となるのは、右所得控除の制度における「配偶者」から事実上の配偶者を、条文上の明文規定がないにもかかわらず排除した国家行為が、配偶者及び配偶者特別控除の制度目的に対してはたして必要であり合理的関連性を有するかということであるが、配偶者及び配偶者特別控除の制度趣旨から勘案するに事実上の配偶者についても右制度の適用を認めるのが社会的に妥当であり制度目的の達成にも実効をもたらすものである。また、上告人は自己の人格的存立にかかわる強い信条から、事実婚主義を採っていたが、これは、婚姻届を提出しないという不作為によってのみ表現可能であったものであるが、この精神的自由を必然的に侵害するというかたちでの財産権の侵害についても、憲法上の解釈は緻密に行わなければならない。

二 第二審裁判所は合理性の基準をあまりに広く認定し、憲法の解釈に誤りを生じているほか、上告人の右主張に審理を尽くしておらず、理由不備と考える。第二審裁判所は、第四 当裁判所の判断として、「民法が婚姻の方式として届出を要するとすることは、・・・・・・十分に合理性を有するものであって、所得税法がこれを前提として、・・・・・・事実上の配偶者やその者との間の子を有する者に右所得控除を認めないとしても、・・・・・・婚姻の方式に届出を要する制度をとった以上やむを得ない」と述べているが、ちなみに最高裁判所判決によれば、農林漁業団体職員共済組合法二四条一項の「配偶者」は「社会通念上夫婦としての共同生活を現実に営んでいた者」と解すべきである(最判昭五八・四・一四民集三七巻三号二七〇頁)としており、第二審裁判所が本件に関して示した「婚姻の方式に届出を要する制度をとった以上やむを得ない」との判断は裁判所の理由として採りえない。また、上告人は毎年の確定申告を通じ、妻及び第一子、第二子の扶養の事実を被上告人に知らしめてきたものであり、被上告人に対する公示の機能は全うできていたにもかかわらず、被上告人は不平等な取扱いである戸籍調査を行ってまで上告人を差別したものである。憲法第一四条に抵触するこのような手続き上の平等権侵害に関しても、原審は審理及び判断をしておらず、理由不備が認められる。以上

会社法判例百選第3版 11 共有株式の権利行使者の指定方法 最高裁平成9年1月28日 民集判例ではありません。解説は柴田和志法政大学教授です。

判例の結論だけおぼえておいてもたりるところでしょう。神田秀樹「会社法 第十八版」弘文堂・2016年・67頁・68頁。神田23版70頁

会社法判例百選4版 2021年 9

社員総会決議不存在確認請求事件

最高裁判所第3小法廷判決/平成5年(オ)第1939号

平成9年1月28日

【判示事項】有限会社法二二条、商法二〇三条二項にいう社員の権利を行使すべき者の指定方法

【判決要旨】有限会社の持分が数人の共有に属する場合、有限会社法二二条、商法二〇三条二項にいう社員の権利を行使すべき者は、その共有持分の価格に従い過半数をもって定める。

【参照条文】有限会社法22

商法203-2

民法252

民法264

【掲載誌】 最高裁判所裁判集民事181号83頁

裁判所時報1188号56頁

判例タイムズ936号212頁

金融・商事判例1019号20頁

判例時報1599号139頁

金融法務事情1489号29頁

【評釈論文】ジュリスト臨時増刊1135号101頁

ジュリスト1164号147頁

別冊ジュリスト149号190頁

判例タイムズ937号72頁

判例タイムズ臨時増刊975号33頁

判例タイムズ臨時増刊978号170頁

判例評論466号60頁

法律時報別冊私法判例リマークス17号104頁

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理 由

上告代理人田中俊充、同圓山司の上告理由について

有限会社の持分を相続により準共有するに至った共同相続人が、準共有社員としての地位に基づいて社員総会の決議不存在確認の訴えを提起するには、有限会社法二二条、商法二〇三条二項により、社員の権利を行使すべき者(以下「権利行使者」という)としての指定を受け、その旨を会社に通知することを要するのであり、この権利行使者の指定及び通知を欠くときは、特段の事情がない限り、右の訴えについて原告適格を有しないものというべきである(最高裁平成元年(オ)第五七三号同二年一二月四日第三小法廷判決・民集四四巻九号一一六五頁参照)。そして、この場合に、持分の準共有者間において権利行使者を定めるに当たっては、持分の価格に従いその過半数をもってこれを決することができるものと解するのが相当である。けだし、準共有者の全員が一致しなければ権利行使者を指定することができないとすると、準共有者のうちの一人でも反対すれば全員の社員権の行使が不可能となるのみならず、会社の運営にも支障を来すおそれがあり、会社の事務処理の便宜を考慮して設けられた右規定の趣旨にも反する結果となるからである。

記録によれば、亡新井重行は、被上告会社らの持分をすべて所有していたものであり、その法定相続人は、妻である上告人新井とよ子(法定相続分二分の一)と子である上告人新井久美子及び同新井千恵子(同各五分の一)の外、亡新井重行と新井幸子との間に生まれた新井吾一(同一〇分の一)の四名であるところ、上告人らは、新井吾一の法定代理人であった新井幸子が権利行使者を指定するための協議に応じないとして、権利行使者の指定及び通知をすることなく、被上告会社らの準共有社員としての地位に基づき、本件各社員総会決議不存在確認の訴えを提起するに至ったことが明らかである。

しかしながら、さきに説示したところからすれば、新井幸子ないし新井吾一が協議に応じないとしても、亡新井重行の相続人間において権利行使者を指定することが不可能ではないし、権利行使者を指定して届け出た場合に被上告会社らがその受理を拒絶したとしても、このことにより会社に対する権利行使は妨げられないものというべきであって、そもそも、有限会社法二二条、商法二〇三条二項による権利行使者の指定及び通知の手続を履践していない以上、上告人らに本件各訴えについて原告適格を認める余地はない。その他、本件において、右の権利行使者の指定及び通知を不要とすべき特段の事情を認めることもできない。

本件各訴えを却下すべきものとした原審の判断は、以上と同旨をいうものとして是認することができる。原判決に所論の違法は認められず、論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものであって、採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官可部恒雄 裁判官園部逸夫 裁判官大野正男 裁判官千種秀夫 裁判官尾崎行信)

最高裁判所第3小法廷 平成5年(オ)第1939号 社員総会決議不存在確認請求事件 平成9年1月28日

憲法22条は外国人の日本入獄を保障しない 最高裁大法廷昭和32年

外国人登録令違反被告事件 芦部7版95頁 佐藤幸治2版161頁

最高裁判所大法廷判決/昭和29年(あ)第3594号

昭和32年6月19日

【判示事項】1、憲法第22条は外国人の日本国入国の自由を保障するか

2、外国人登録令第3条第12条の合憲性

【判決要旨】1、憲法第22条は外国人の日本国に入国することについてなにら規定していないものというべきである。(少数意見がある。)

2、外国人登録令第3条、第12条は憲法第22条に違反しない。

【参照条文】憲法22

【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集11巻6号1663頁

最高裁判所裁判集刑事119号509頁

裁判所時報234号100頁

判例時報124号24頁

【評釈論文】ジュリスト276の2号75頁

民商法雑誌38巻6号145頁

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人三浦徹の上告趣意第一点について。

所論は、憲法二二条は当然に外国人が日本国に入国する自由をも保障しているものと解すべきであるから、外国人登録令三条、一二条は、憲法二二条に違反する旨主張する。

よつて案ずるに、憲法二二条一項には、何人も公共の福祉に反しない限り居住・移転の自由を有する旨規定し、同条二項には、何人も外国に移住する自由を侵されない旨の規定を設けていることに徴すれば、憲法二二条の右の規定の保障するところは、居住・移転及び外国移住の自由のみに関するものであつて、それ以外に及ばず、しかもその居住・移転とは、外国移住と区別して規定されているところから見れば、日本国内におけるものを指す趣旨であることも明らかである。そしてこれらの憲法上の自由を享ける者は法文上日本国民に局限されていないのであるから、外国人であつても日本国に在つてその主権に服している者に限り及ぶものであることも、また論をまたない。されば、憲法二二条は外国人の日本国に入国することについてはなにら規定していないものというべきであつて、このことは、国際慣習法上、外国人の入国の許否は当該国家の自由裁量により決定し得るものであつて、特別の条約が存しない限り、国家は外国人の入国を許可する義務を負わないものであることと、その考えを同じくするものと解し得られる。従つて、所論の外国人登録令の規定の違憲を主張する論旨は、理由がないものといわなければならない。

同第二点について。

論旨は量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

記録を調べても、本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。

この裁判は、裁判官斎藤悠輔の補足意見並びに裁判官真野毅、同小林俊三、同入江俊郎、同垂水克己の意見がある外、裁判官全員一致の意見によるものである。

裁判官斎藤悠輔の上告趣意第一点についての補足意見は、次のとおりである。

所論は、原審で主張がなく、従つて、原判決はそれにつき何等の判断をも示していない。従つて、所論は、原判決に刑訴四〇五条一号後段にいわゆる憲法の解釈に誤があることを理由とするものということはできない。また、原判決は、事後審として単なる法令違反、量刑不当を理由とする控訴を棄却しただけで、所論外国人登録令の規定を適用したわけではないから、原判決に刑訴四〇五条一号前段にいわゆる憲法の違反があることを理由とする場合に当るものともいえない。されば、所論は、上告適法の理由として採用することはできない。

裁判官真野毅の上告趣意第一点に対する意見は次のとおりである。憲法二二条一項は、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転......の自由を有する」と定めている。この規定の保障を受ける者は、日本国民に限定されているわけではなく、「何人も」本条の保障を受けるのである。すなわち外国人もまた本条の保障をうける。ここまでの考え方は多数意見と同様である。

そこで多数意見は、本条の保障は日本国内における居住・移転のみに限るとしているが、わたくしはその居住・移転という中には入国も当然含まれている趣旨であると解するを相当だと考える。旅行その他で海外に滞在していた日本国民が帰つて来て入国する場合及び海外にあつて日本の国籍を取得した日本国民が初めて入国する場合において、入国の自由は、本条によつて憲法上当然保障されているとするが相当であり、またそうしなければならぬ。けだし、国内だけの居住・移転の自由については憲法上の保障があるが、入国の自由については憲法上の保障がないとすることは、著しく物の均衡を害し条理に反することとなるからである。

右のように日本国民の入国について本条の保障があると解する以上、外国人の入国についても同様に本条の保障があるとしなければならぬことは、当初に述べたとおりである。かように憲法は、近代的な国際交通自由の原則の立場を採つたことを示している(世界人権宣言一三条参照)。しかし、同時に憲法は、公共の福祉を保つ見地から前記自由に適当の制限を立法上加えうることを定めている。そして所論の外国人登録令の規定は、公共の福祉を保つために設けられたものであつて、合憲性を有するものと解すべきである。それ故、違憲の論旨は採ることをえない。

裁判官小林俊三、同入江俊郎の意見は次のとおりである。

われわれは、上告趣意第一点に対する判断について多数意見と結論を同じくするものであるが、その理由の基くところを異にするので、ここに意見を述べる。

いずれの国の憲法も、その国の根本法規としての基盤となる基本的な理想又は原理というものを何らかの言葉で示しているのを常とする。かかる理想又は原理は、その国の憲法の条規を解釈するに当りまず立つべき前提であつて、これを離れることは許されないものと考えなければならない。わが国の憲法は、その成立過程についてとかくの論議はあるにしても、すでに根本法として存立する以上、その中に盛られた基本的な理想や原理は最大の尊重を払わなければならない。そこで通常わが憲法の基本的原理といわれる国民主権、恒久平和、基本的人権尊重の三つの理想に通じて根底に横わるものは、人類普遍の原理ということであり、またかくして国境を越え世界を通じて恒久平和を達成せんとする念願でもある。これらのことは憲法の前文によつて明らかであり、特に自ら「いづれの国家も自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」ことを宣言していることからも確認することができる。この趣旨から考えてみると、わが憲法は、外国人の権利義務についても、正常の国際関係に立つかぎり、わが国民としての地位と相容れないものを除くのほか、できるかぎりこれをひとしくしようとする原則に立つていると見なければならない。従つて憲法の条規中「何人も」とある場合は、常にこの趣旨を念頭に置いて解することを要するのである。

ところで多数意見は、本件について憲法二二条の保障するところを解して、居住、移転及び外国移住の自由のみに関するものであつて、それ以外には及ばず、そして居住、移転とは日本国内におけるものを指すといい、また同条は、外国人の日本国に入国することについてはなにら規定していないのであつて、このことは、国際慣習法上外国人の入国の許否は、その国家の自由裁量の事項であつて、国家は外国人の入国を許可する義務を負わないという考え方と趣旨を同じくすると判示している。しかしながら、まず居住、移転の保障を日本国内にのみ限るという解釈は、右同条がこれら二つを外国移住と区別して規定していることを主たる理由としているが、わが国民で海外に旅行し又は居住していた者が帰国することは、すなわち入国であつて、この自由が右同条の保障に含まれないと解することは、国民が一たん海外に出るときは帰国については憲法の保障を欠くこととなり著しき背理たるを免れない。このことは海外にあつて日本の国籍を取得した者が、わが国に入国する場合においても同様である。このような結論は多数意見もおそらく是認しないところであろう。しかし多数意見の判文が前記のように解されるのは、後段において外国人の入国の保障を否認する立場をとつたために、文理のみによつて「入国」そのものをことさらに無視した結果生じた表現であろう。本来入国ということは、条理の上からいつても、外国移住についてはもちろん、外国との関連において考えるかぎり、居住、移転についても、通常その観念の半面に存するものであつて、これを除外すべき特段の理由は認められない。特に世界各国民の交通が著しく頻繁容易となり、地球が狭少となつたといわれる現状において、「入国」という辞句のないことをもつて除外の理由とするのは、ことさらに条理を無視するのそしりを免れないであろう。このように前記法条が、当然「入国」を含むと解すべきものである以上、本件の問題はただ「何人も」の解釈によつて定まるものといわなければならない。そこで冒頭にくりかえし強調したわが憲法の基本的原理は、ここにおいても当然前提として考慮せらるべきものであつて、その結論はおのずから明らかであろう。すなわち本条の「何人も」のうちには外国人を含むと解してもわが国民の地位と相容れないものではないこというまでもなく、従つて外国人も入国についてわが国民と同じ保障を受ける地位に立つという原則をまず是認しなければならないのである。多数意見のように旧来の「国際慣習法上」という前提によりたやすく外国人の入国を憲法の保障外に置くことは、新しき理想を盛つたわが憲法の基本的原理を全く無視するものといわなければなるまい。しかしこれまでは原理であつて、かかる基本的考え方に立つた上、なお国家対立の現状にかんがみ、その後に生ずる第二次の問題はおのずから別である。すなわち各国民が各自国家を形成し、窮極の理想は別として第一段においては、それぞれまず自国民の福祉を保持することを先とする現実において、それぞれの憲法が公共の福祉を保持するため外国人の入国について特定の制限をすることは認めらるべきであつて、わが憲法ももとよりこの趣旨を除外するものではない。本件外国人登録令の規定は、右の趣旨に基き定められたものと認められるのであつて、単に外国人の入国を制限しているということだけで、その違憲をいうのは当らず、違憲の論旨の採用できないこと多数意見と結論を同じくする。ただわれわれの意見としては、多数意見が、無条件に外国人の入国は、本来わが国の自由に制限し得る事項であるという原則に立つ点において見解を異にするのであつて、現行憲法の解釈としては、いわゆる「国際慣習法上」なる前提に無批判に立脚することを、一たん脱却すべきものであると要請したいのである。

裁判官垂水克己の上告趣意第一点についての意見は次のとおりである。

憲法二二条は、出入国、居住、移転及び職業選択の自由については、日本国民に対しては公共の福祉に反しない限り広くこれを認め、また、外国人に対しても事柄の性質上当然日本国民と異る厳格な制約をつけうべきことを前提としつつ、しかも、公共の福祉に反しない限り僅かでもその自由を認める主義をとつたものと解せられる。この理由から、同条は在外日本国民には広い入国の自由を、また、国内日本国民並びに左留外国人には広い外国旅行、移住等出国の自由(及びわが国内に住所を有する外国人の外国旅行からの帰還の自由)を認めるものであつて、無制限にこれを拒否することはなく、また一般外国人の入国も全般的に永く禁止し鎖国するようなことはせず、ただ公共の福祉上暫定的にのみ禁止することができるとするもの、すなわち、外国人にも入国の自由を、どちらかといえば、認めるに傾いた主義をとつたもの、と考えられる。所論外国人登録令は、一定の台湾人、朝鮮人を同令の適用については当分の間これを外国人とみなす(一一条)とともに、外国人は、当分の間、本邦に入ることができないと定め(三条一項)その違反を処罰する(一二条)が、これらの規定は、わが史上空前の国内秩序の混乱、秩序維持力の弱体化、わが国と諸外国との国際関係の不安定、その他従前わが内地と深い関係のあつた外国地域に関係ある外国人等のわが国との取引往復の一般的要望その他占領下、終戦後の特殊事情に基き、相当程度国の平和秩序が回復するまでの間のために公共の福祉の必要から設けられた規定であると観られる。この理由から、所論の外国人登録令の規定は憲法二二条に違反せず、論旨は理由がないとせらるべきである。

昭和三二年六月一九日

最高裁判所大法廷

裁判長裁判官 田 中 耕 太 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 島 保

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 池 田 克

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 河 村 大 助

裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 奥 野 健 一

裁判官 高 橋 潔

8月31日の岡山市の予想気温は26度から33度。

野分つよし何やら思ひのこすこと 飯田蛇笏

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