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2021年03月

大学歯学部学生のHIV感染情報と診療契約上の守秘義務

医事法判例百選 第2版 24

損害賠償請求事件

東京地方裁判所判決/平成9年(ワ)第8692号

平成11年2月17日

【判示事項】大学歯学部の学生が同大学医学部付属病院に受診中、右病院の医師が右歯学部教授に対して右学生のHIV感染症に関する情報を開示したことが診療契約上の守秘義務に違反しないとされた事例

【参照条文】民法415

【掲載誌】 判例時報1697号73頁

【評釈論文】判例評論503号22頁

主 文

一 原告の請求を棄却する。

二 訴訟費用は原告の負担とする。

理 由

第一 請求

一 被告は、原告に対し、金一〇〇〇万円及びこれに対する平成九年五月一五日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二 訴訟費用は被告の負担とする。

三 仮執行宣言。

第二 事案の概要

本件は、国立乙山大学歯学部に在籍中、HIV感染症の診断を受け、同大学医学部附属病院において受診していた原告が、右病院の医師がHIV感染症に係る原告の病状を原告の承諾なくカルテに基づき右歯学部教授に対して漏示したために、原告が医療機関に対する不信を抱き、東京の医療機関に転院せざるを得ず、また、HIV感染症の患者の人権や教育が保障されることは困難であるとして右大学を退学せざるを得なくなり、甚大な精神的損害を被った旨を主張して、右大学の設置者である被告に対し、診療契約上の守秘義務違反及びカルテの保管義務違反に基づく損害賠償として、慰藉料一〇〇〇万円の支払を求めている事案である。

一 争いのない事実等(証拠上明らかに認められる事実も含む。)

1原告は、昭和六二年四月、国立乙山大学(以下「被告大学」という。)の歯学部に入学し、平成八年六月三〇日、同大学を退学した者であり、被告は、被告大学の歯学部、医学部及び同学部附属病院を設置し、これを運営しているものである。

2原告は、平成五年一二月二七日、HIV感染症検査のため被告大学医学部附属病院第三内科(以下「第三内科」という。)において受診し、平成六年一月一〇日、HIV感染症との確定診断を受け、そのころ、被告との間で、HIV感染症の治療等を目的とする診療契約(以下「本件診療契約」という。)を締結した。以後、第三内科は、原告に対し、HIV感染症についての検査、投薬等の治療を行った。なお、原告は、右一月一〇日、被告大学の戊田歯学部長らに対し、HIVに感染しているという事実と学業を継続する意思のあることを伝えた。

3被告大学医学部附属病院検査部長の丙川松夫教授(以下「松夫教授」という。)は、平成七年六月八曰、被告大学歯学部丁原竹夫教授(以下「丁原教授」という。)から電話で原告のHIV感染症に係る症状についての問い合わせを受けた際、原告の承諾を得ることなく、丁原教授に対し、原告のカルテの記載に従って、「病状は全身倦怠感と、ときどき発熱があるようだ。検査データでは血糖値の上昇とリンパ球の軽度の減少がある。CD4とCD8との比はしろまる・五前後で横這い状態にあり、良くもなく悪くもない。大きな変化はない。」という内容の説明をした(以下、右に係る説明を「本件開示」という。)。

二 主たる争点

1(守秘義務違反及びカルテの保管義務違反とならない理由1として)

本件開示は正当な理由に基づくものといえるか。

2(守秘義務違反及びカルテの保管義務違反とならない理由2として)

本件開示について、原告の黙示的承諾があったといえるか。

3原告主張の損害と本件開示との間に因果関係があるか。

三 争点1(正当理由の有無)に対する当事者の主張

<被告>

1原告は、平成七年六月当時、進級判定にさえ合格すれば臨床実習へ進めるという状況にあった。歯学部学生の臨床実習は、指導教官のもとで実際に患者に接して診察や検査などを行うものであるが、その実習が観血的なものが多いことなどを考慮すると、原告が臨床実習をすることが可能かどうかの判定に当たっては、以下の観点から、歯学部教育担当責任者において原告の健康状態や免疫状態を把握しておく必要性が大きく、そのため、丁原教授は第三内科に対して原告の病状を問い合わせたのである(特に、CD4の値は、HIVキャリアーの免疫状態を知る簡便な指標となるとともに、キャリアーの体中のHIVウイルス量を直接うかがう指標ともなる。)。

(一)HIV感染者は感染後次第に免疫機能が低下し、CD4が二〇〇個から三〇〇個以下になると、HIVキャリアーの免疫機能は急激に低下し、日和見感染症など種々の感染に弱くなる。事実、原告は体がきついこと、下痢などの体調不良を主治医や歯学部の教授らに訴えて、度々試験や講義を休んだり、学内で昏迷状態のところを発見されたり(もっとも、これは精神安定剤の飲み過ぎによるものであることが後で判明した。)していた。その上、歯科医療行為にあっては、健康な歯科医であっても肝炎その他の感染の危険が高いので、実習現場における種々の感染症を持った歯科実習患者から、免疫低下状態の原告への感染を予防するために、原告の健康状態、又は免疫機能(CD4値等)を知り、それに応じて教育指導をする必要があった。

(二)肉体的に重労働である歯科実習に対する原告の参加内容を決定するためにも、原告の健康状態を把握する必要があった。

(三)歯科診療では、歯の切除、歯石除去、麻酔注射など観血的な処置が多いため、患者の歯肉、粘膜や歯科医自身の手指を損傷する危険性が常にあり、針刺し事故は熟練した歯科医でも起こりうる事柄であって、絶対に起きないという保証は存しない。特に、平成七年六月当時、米国では、キムバリーバーガリス事件(エイズ発症の歯科医から診療を受けた患者にHIVが感染した事件)が大きな話題となっていた。そのため、歯学部における学生相互実習の相手学生及び歯科実習患者への二次感染のリスクをあらゆる角度から調べておく必要性があった。

2次の四1記載の歯学部三者協議は、本件開示当時、日本においては、歯科医や歯科実習生の臨床歯科治療とHIV感染症との関係について何ら指針やマニュアルのない状態の中で、世界中から情報を集め、原告につき、原告とその両親、主治医団、保健管理センター教授らを交え、定期的に話合いを持ちながら、最良の方法を模索していたのであり、主治医団は歯学部三者協議の右努力を信頼して高く評価していた。そして、本件開示を受けた丁原教授は、歯科医師養成を使命としている教育機関の責任者の一人であり、歯学部における臨床実習を管理する立場にある歯学部感染対策委員長であり、原告の臨床実習の進め方を検討するとともに、原告の学業継続を正しい判断のもとに指導していく立場にある歯学部教育委員長でもあり、かつ、原告との応接にも直接当たる歯学部三者協議の一員であった。

3松夫教授は、本件開示当時、臨床検査医学講座教授及び医学部附属病院検査部長の職にあり、第三内科に所属はしていなかったが、HIV患者については、その疾病の特殊性、同疾病についての松夫教授の研究業績や診療実績等から、従前どおり同教授が引き続き第三内科治療班に加わり、その総元締めとして実際の診療、治療計画、医師に対する指導にも従事してきたものである。そして、原告に対する診療に関しては、松夫教授が開発した治験薬べスナリノンの原告への頻回の投与、検査データの分析による原告の症状観察及び治験薬の効果の判定を行うとともに、第三内科治療班の中心的な立場として、丙川梅夫医師(以下「梅夫医師」という。)からの連絡を受けながらその治療の相談にのるなどのコンサルテーションをし、主治医の一員としての役割を果たしていたものであった。

4以上の事情に照らせば、松夫教授が、丁原教授に対して原告の病状を開示したことには、正当な理由がある。

<原告>

1医師がその診療にかかわる患者がHIVに感染していることを知った場合に、患者の承諾なしに他にその情報を開示することが許されるのは、後天性免疫不全症候群の予防に関する法律(以下「エイズ予防法」という。)の秘密漏示に対する罰則規定(同法律一四条)に定める例外(正当な理由)を除いてはあり得ないところ、厚生省は、右罰則規定を受けて、「正当な理由」の該当事由として、「(一)法廷で証言する場合、(二)法の規定に基づき都道府県知事へ通報する場合、(三)医師が医療従事者の感染防止のため必要な指示を行う場合、(四)医療機関の職員等が診療報酬の請求のため病名を付した関係書類を関係機関に提出する場合、(五)医師が救急隊員等の感染防止のため消防機関に連絡する場合」を例示している。さらに、厚生省は平成三年四月に「HIV医療機関感染予防対策指針」を発表し、その中の「秘密の保持について」という項では、「(1)患者に対する指示、指導、連絡等は医師が直接本人に伝える。(2)患者本人以外の者からの電話等による患者に関する問い合わせには一切対応しない。(3)患者の病状等に係る証明書等の交付は、原則として患者本人以外の者に対しては行わない。」旨を指示している。

このように、厚生省は、HIV感染症の登場以来、繰り返し医療機関のHIV感染者のプライバシーの保護・守秘義務の徹底について指導してきた。被告大学医学部附属病院は、乙山県における指導的な医療機関であり、HIVの診療を実施してきたのであるから、厚生省の右指導内容については十分熟知していたものと思われる。しかるに、松夫教授が丁原教授からの電話での問い合わせに対して電話で本件開示をした行為は、厚生省の右指導に明白違反しており、形式上ですら正当な理由の要件を満たすものではない。

2(一)被告は、丁原教授が松夫教授に問い合わせた動機について、検査の結果次第では、原告が臨床実習に入ることになるので、その適否の参考資料とするために、原告がどの程度の健康状態にあるか知りたかった旨主張する。しかし、右問い合わせについて、他の教授、とりわけ歯学部三者協議のメンバーと事前に協議した形跡がないこと、したがって、右問い合わせは丁原教授の個人的行為として行われたこと、原告の実習への参加については厚生省から実施させるべきとの指導を受けていたことからすると、原告の参加を検討するに当たって原告の症状や通院状況の把握が必要とは考えられないことから、被告の右主張は合理性がない。またHIV感染症については、ごく初期にマスコミ等で感染力が過大に評価され、いたずらに恐れられたが、B型肝炎の二次感染防止の方法をとれば、その感染防止は十二分であることは、昭和五八年には世界的に知られていた。「キムバリーバーガリス事件」については、本件が問題となった平成七年当時、歯科医の故意によって引き起こされた犯罪ともいうべきものであることが既に解明され、通常の歯科治療からHIV感染が起こり得るものではないとするのが一般的見解であった。その意味でも原告の病状を把握する必要性は乏しかった。

(二)むしろ、実際は、厚生省や文部省、あるいは学会としてHIV感染をした学生を実習から排除すべき理由がないことは自明のこととされていたが、被告大学歯学部では、一部の教授の反対もあり、その方針を教授会で確認することに困難があったことから、反対する教授の説得のために、丁原教授としては個人的に原告の症状や通院状況を知る必要性を感じ、問い合わせをしたものと思われる。仮に、教授会や歯学部三者協議が必要としていたならば、正式に原告の承諾を得て行えば足りたのであり、そのことに格別困難はなかったはずである。しかし当時、原告の臨床実習への参加は、マスコミを含めて注目されており、原告自身も度々参加を可能とする旨の正式な表明を要望していた。したがって、歯学部として、原告に症状等の報告を求めるとすれば、その根拠を説明する際、実習を制限する場合のあることを説明しなければならず、そのことを原告に問題とされることを避けるために、あえて原告を通じて情報を入手することを避けたものと考えるほかない。

(三)あるいは、同年五月三一日にテレビ番組「TBSスペースJ」において、原告のことを扱った「実名公表、エイズ(HIV)感染者、ある歯学生の選択」が放映されたので、歯学部に対してマスコミ等の取材が殺到し、このマスコミ対策を進める上で必要と考えられたから、丁原教授は問い合わせを行ったのである。

3松夫教授は、原告の主治医ではなく、原告を診察したことは一度もない。松夫教授は、かつての経緯または原告の主治医である梅夫医師の実兄であったことから、第三内科の原告のカルテを勝手に見ようとすれば見られる立場にあり、本件開示においても、原告のカルテを勝手に持ち出して見たのである。

4以上によれば、原告の承諾なしに松夫教授が原告の病状を開示してよいとする正当な理由はない。

四 争点2(黙示的承諾の有無)に対する当事者の主張

<被告>

1原告からHIV感染症の検査結果が陽性であるとの報告を受けた被告大学歯学部は、戊田歯学部長、丁原教授及び同学部教授甲田春夫(以下「甲田教授」という。)の三名で対策班を組成して原告に対応することとし、右三名による対策班を「歯学部三者協議」と命名した。そして、右歯学部三者協議(以下「歯学部三者協議」という。)が中心となり原告の支援を行っていくこと、今後の原告の学生生活については、原告の両親を交えて協議するほか、第三内科の原告の主治医団とも情報交換等をして連携を図ることを基本とすることを決めた。

2平成六年三月八日、歯学部三者協議と原告及びその両親との面談が実施され、原告の学業継続の意思が確認されるとともに、原告らに対し、第三内科と連携をとることも含めた歯学部王者協議の対応の仕方である前記基本路線についての説明がされた。そして、その面談の場において、原告及びその両親の同意を得て、松夫教授から、原告の発症の時期、最新の検査結果、合併症、生活上の注意等についての説明がされた。

3原告は、その後、歯学部三者協議に自らの悩みごとの相談をしたり、歯学部三者協議、カウンセラー、主治医団との面談にも応じており、歯学部三者協議が原告を支援していくことには異存がなかった。

4同年一〇月二七日、歯学部三者協議と原告及びその両親との面談が再度実施され、歯学部三者協議の教授らから、原告の臨床実習の内容、方法について限定されることがあり得ることや、臨床実習の際に、病院の実習関係者及び患者の理解を得る必要があることなどが原告らに説明された。その際、原告の父親は、臨床実習でどうしてもできないことがあればやむを得ないが、できるところまで実習を受けさせて欲しい旨の要望を示した。また、原告も、臨床実習に進み、何とか卒業し、将来はカウンセラーとして活動したい旨の希望を述べた。

5このような原告やその両親の言動に照らせば、原告は、歯学部三者協議が各種関係者の協力のもとに原告を支援していく上で、また、歯学部として諸対策を検討していく上で、歯学部が原告の病状についての情報を医学部に対して求めることについて包括的に承諾していたというべきである。

<原告>

1被告の主張1の事実は否認する。第三内科が原告の歯学部での教育支援のために具体的に動いた事実はない。また、第三内科における原告の主治医は、第三内科の乙原教授及び梅夫医師であって、松夫教授は第三内科のメンバーではなく、原告を診療したことは一度もない。

2仮に、被告主張の「歯学部三者協議」なるものが存在し、原告の歯学部における教育を支援する意図があったとしても、その事実をもって、原告の包括的承諾を認める前提事実とすることはできない。

平成六年当時、HIV感染症に関する医学上、疫学上の知見は確立されており、その感染予防については、B型肝炎の感染予防に関するマニュアルを実践すれば足りることが、既に医学、歯学関係者だけではなく広く一般的にも知られていたものである。したがって、そもそも歯学部でのHIV感染学生の臨床実習を含む教育に当たって、本人の病状に関する情報は必要とざれないのであるから、原告において、「歯学部三者協議」が原告の病状について第三内科に問い合わせをすることを包括的に承諾していたということはあり得ない。

3原告(及びその両親)が、被告大学に対し、「学業の継続や臨床実習への参加」を希ったという事実はない。むしろ、被告大学や歯学部のHIV感染症に対する無知、偏見から、原告がHIV感染症であることが学業の継続に障害が生ずるおそれがあるのではないかと心配していたのであり、原告は、そのようなことにならぬよう自ら戊田教授らにHIV感染症であることを告知し、適切な対応を求めたのである。

五 争点3(損害及び因果関係の有無)に対する当事者の主張

<原告>

1平成七年ころ、歯学部教授会では、原告の学業の継続を肯定する見解と、これを疑問視する見解との対立があり、原告の学生としての地位は微妙な状況にあった。学業の継続を疑問視する見解は、原告の健康状態を不安とし、暗に自主退学を勧めるものであり、その意味で、原告の症状がどのようなものであるかは重要な意味を持っていた。また、歯学部の学生の間でも、原告について興味本位の噂が飛び交っていた。第三内科が原告の病状を説明した結果、原告は、歯学部内の教授から、「一度退学して、治ってから復学したらいいのではないか。」「学業より体調を心配しないといけない時期なのではないか。」などと言われ、半ばノイローゼ状態となり、やむなく被告大学を退学するに至った。

2原告は、松夫教授による本件開示の結果、被告大学附属病院に対する不信を抱き、乙山県内の医療機関におけるHIVの診療を断念して東京の医療機関に転院せざるを得なかった。また、原告は、被告大学歯学部においては、プライバシーの保護とHIV感染患者の人権や教育が保障されることは困難であるとして、被告大学を退学せざるを得なくなった。

3 1又は2の事実による原告の精神的被害は甚大であり、これを金銭によって慰謝するには少なくとも一〇〇〇万円は下らない。

<被告>

1原告主張の1及び2の各事実は否認する。

2歯学部教授会では、原告のHIV感染による学業継続の問題を審議したことはなく、ましてや、原告に対し暗に自主退学を勧めるのが相当であるというような話合いをしたこともない。原告が学業を継続するに当たり微妙な立場にあったのは、原告が五年次前期までに終了すべき授業科目について不合格であり、平成三年以降平成七年の時点でもなお不合格科目があって留年を重ねていたことによるものである。

3本件開示に係る原告の病状等の情報は、歯学部が原告を支援していく際に検討する基礎資料とされたものであって、それ以外の目的には使用されていない。

鎌野真敬裁判長不当判決 ムゲンエステート事件 東京地裁令和元年

消費税更正処分等取消請求事件(第1事件、第2事件)

東京地方裁判所判決/平成29年(行ウ)第590号、平成30年(行ウ)第2号

令和元年10月11日

【判示事項】1 販売目的で行った課税仕入れである建物の購入のうち,購入時にその全部又は一部が住宅用として賃貸されている建物に係るものについて,消費税法30条2項1号ロの「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に該当するとされた事例

2 販売目的で行った課税仕入れである建物の購入のうち,購入時にその全部又は一部が住宅用として賃貸されている建物に係るものにおける,消費税法30条1項の規定により控除する消費税額の計算の基礎となる課税売上割合に準ずる割合について,同条3項1号の「当該事業者の営む事業の種類又は当該事業に係る販売費,一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるもの」ということはできないとされた事例

【判決要旨】1 販売目的で行った課税仕入れである建物の購入のうち,購入時にその全部又は一部が住宅用として賃貸されている建物に係るものについて,課税仕入れの区分の判断については,当該課税仕入れが行われた日の状況に基づいてその取引が事業者において行う将来の多様な取引のうちどのような取引に要するものであるのかを客観的に判断すべきものと解するのが相当であり,当該建物は,当該課税仕入れが行われた日の状況において,販売に供されるとともに,一定の期間,住宅用の賃貸にも供されるものであったと認められるなど判示の事情の下では,当該課税仕入れは,消費税法30条2項1号ロの「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」に該当する。

2 販売目的で行った課税仕入れである建物の購入のうち,購入時にその全部又は一部が住宅用として賃貸されている建物に係るものにおける,消費税法30条1項の規定により控除する消費税額の計算の基礎となる課税売上割合に準ずる割合について,当該課税期間に譲渡した住宅用賃貸部分を含む建物に係る販売収入及びその仕入日から譲渡日までに生じた賃貸料収入によって計算する方法によることの合理性は明らかにされているとはいい難く,当該計算方法による割合は,同条3項1号の「当該事業者の営む事業の種類又は当該事業に係る販売費,一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるもの」ということはできない。

【掲載誌】 LLI/DB 判例秘書登載

主 文

1 原告の請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

1 第1事件

(1) 日本橋税務署長が原告に対し平成29年7月31日付けでした原告の平成25年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成25年12月課税期間」という。)分の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の更正処分(以下「平成25年12月課税期間更正処分」という。)のうち,消費税の還付金の額に相当する税額4152万7959円及び地方消費税の還付金の額に相当する税額1038万1989円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

(2) 日本橋税務署長が原告に対し平成29年7月31日付けでした原告の平成26年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成26年12月課税期間」という。)分の消費税等の更正処分(以下「平成26年12月課税期間更正処分」という。)のうち,消費税の還付金の額に相当する税額9120万5943円及び地方消費税の還付金の額に相当する税額2449万9345円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

(3) 日本橋税務署長が原告に対し平成29年7月31日付けでした原告の平成27年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成27年12月課税期間」といい,平成25年12月課税期間,平成26年12月課税期間と併せて「本件各課税期間」という。)分の消費税等の更正処分(以下「平成27年12月課税期間更正処分」といい,平成25年12月課税期間更正処分,平成26年12月課税期間更正処分と併せて「本件各更正処分」という。)のうち,消費税の還付金の額に相当する税額7849万7202円及び地方消費税の還付金の額に相当する税額2117万2577円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

2 第2事件

(1) 日本橋税務署長が原告に対し平成28年12月27日付けでした原告の課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請の却下処分を取り消す。

(2) 日本橋税務署長は,原告に対し,原告が平成28年11月15日付けでした課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請を承認せよ。

第2 事案の概要等

1 事案の概要

本件は,中古不動産の買取再販売を主な事業とする原告が,次の各請求をする事案である。

(1) 第1事件

原告が,本件各課税期間の消費税等について,販売目的で行った課税仕入れである建物の購入のうち,購入時にその全部又は一部が住宅用として賃貸されている建物(以下「本件各建物」といい,このような建物一般を「住宅用賃貸部分を含む建物」という。)に係るもの(以下「本件各課税仕入れ」といい,このような課税仕入れ一般を「本件課税仕入れ」という。)につき,消費税法30条2項1号イ所定の「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分されることを前提として,同条1項の課税標準額に対する消費税額から控除する課税仕入れに係る消費税額(控除対象仕入税額)を計算し,算出した納付すべき税額に基づき確定申告(以下「本件各確定申告」という。)をしたところ,日本橋税務署長から,本件各課税仕入れは,同条2項1号ロ所定の「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」(共通課税仕入れ)に区分されるとして,本件各更正処分及びこれらに伴う過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)を受けたことから,これらの取消しを求める事案である。

(2) 第2事件

原告が,仮に,本件課税仕入れが共通課税仕入れに区分される場合,控除対象仕入税額の計算に当たり,本件課税仕入れに係る消費税額に乗ずべき消費税法30条3項の課税売上割合に準ずる割合として,後記3(4)アの本件割合は合理的に算定されたものであると主張して,日本橋税務署長に対してその適用承認申請(以下「本件承認申請」という。)をしたところ,日本橋税務署長から,本件承認申請を却下する旨の処分(以下「本件却下処分」という。)を受けたことから,その取消しを求めるとともに,本件割合の適用承認の義務付けを求める事案である。

2 関連法令等の定め

本件に関連する法令等の定めは,別紙2のとおりである(なお,同別紙における略語は,本文においても用いることがある。)。

3 前提事実(証拠の引用等のない事実は当事者間に争いがない。)

(1) 原告

原告は,平成2年5月2日に設立された,不動産の買取再販売を主な事業とする株式会社である(甲3・4頁,乙2)。

(2) 本件各課税仕入れ

ア 原告は,本件各課税期間において,事業として,本件各建物(前記1(1)のとおり,いずれも購入時にその全部又は一部が住宅用として賃貸されている建物である。)を購入した(甲4の1〜3)。

原告の本件各課税期間ごとの本件各建物の購入価額(本件各課税仕入れの額。なお,同時に購入される敷地の購入価額を含まない。)は,次のとおりである(甲4の1〜4の3)。

(ア) 平成25年12月課税期間(79物件)24億7343万1009円

(消費税等を含む金額は,25億9710万2535円)

(イ) 平成26年12月課税期間(90物件)38億6764万5987円

(消費税等を含む金額は,41億5706万1487円)

(ウ) 平成27年12月課税期間(175物件)

64億5225万4987円

(消費税等を含む金額は,69億6843万5309円)

イ 原告による本件各建物の購入は,いずれも賃借権の負担付売買によるもので,買主である原告は,本件各建物の所有権を取得すると同時に,賃貸人としての地位を承継し(以下,かかる賃貸借契約に基づく貸付けを「本件各住宅貸付け」という。),本件各建物につき,引渡日以降の賃貸料を収受していた。

ウ 原告は,本件各建物の購入について,使用する会計システム上,本件各建物を取得した日付で棚卸資産である「販売用不動産(建物)」として入力し,その際,税区分について「課税売上げにのみ要する課税仕入れ」として入力していた。

(3) 本件各確定申告

原告は,本件各課税期間の消費税について,別表1〜3記載の各「確定申告」欄のとおり,本件各確定申告をした(甲8の1〜3)。

このとき,控除対象仕入税額については,いずれも個別対応方式によった上で,本件各課税仕入れは「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分されることを前提として計算された(甲8の1〜3,弁論の全趣旨)。

(4) 本件承認申請及び本件却下処分

ア 原告は,平成28年11月15日,日本橋税務署長に対し,原告の共通課税仕入れのうち,本件課税仕入れ(住宅用賃貸部分を含む建物の購入に係るもの)に係る控除対象仕入税額の計算における消費税法30条3項の課税売上割合に準ずる割合については,当該割合を適用する各課税期間に譲渡した住宅用賃貸部分を含む建物の譲渡対価の額(課税売上げ)及び当該譲渡した住宅用賃貸部分を含む建物の仕入日(当該割合を適用する各課税期間より前のものも含む。)から譲渡日までに生じた事業用貸付けに係る対価の額(課税売上げ)及び住宅用貸付けに係る対価の額(非課税売上げ)の合計額のうち,当該合計額から当該譲渡した住宅用賃貸部分を含む建物の住宅用貸付けに係る対価の額(非課税売上げ)を除いた額の占める割合(以下「本件割合」という。)によって計算するものとして,本件割合についての適用承認の申請(本件承認申請)をした(甲10)。

イ 日本橋税務署長は,同年12月27日,本件承認申請を却下し(本件却下処分),原告に通知した(甲13)。

(5) 本件各更正処分及び本件各賦課決定処分

日本橋税務署長は,平成29年7月31日,本件各課税仕入れは共通課税仕入れに区分されるべきであるとしたうえで,別表1〜3記載の各「更正処分」欄のとおり,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分をした(甲4の1〜3)。

(6) 本件訴訟に至る経緯

ア 本件却下処分について

原告は,平成29年4月4日,本件却下処分を不服として再調査請求をしたが,再調査審理庁は,同年6月26日,同請求を棄却する旨の決定をした(弁論の全趣旨)。

原告は,同年7月28日,本件却下処分を不服として審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成30年7月9日,同審査請求を棄却する旨の裁決をした(弁論の全趣旨)。

イ 本件各更正処分及び本件各賦課決定処分について

原告は,平成29年9月1日,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分を不服として審査請求をしたが(別表1〜3記載の各「審査請求」欄参照),国税不服審判所長は,平成30年7月9日,同審査請求を棄却する旨の裁決をした(甲45)。

ウ 本件訴訟の提起

原告は,平成29年12月27日,本件訴訟を提起した(顕著な事実)。

4 被告が主張する本件各更正処分に係る税額等

本件において被告が主張する本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に係る税額の算出根拠等は,別紙3記載のとおりである。

なお,本件において,原告の本件各課税期間における課税売上高は5億円を超えており,本件各課税期間における控除対象仕入税額が,個別対応方式によって計算されることについては,争いがない。

5 争点

(1) 住宅用賃貸部分を含む建物の購入が控除対象仕入税額の計算において共通課税仕入れに区分されるとした本件各更正処分は適法であるか。(争点1)

(2) 本件各更正処分が適法である場合,本件各確定申告における申告額が過少であったことにつき,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるか。(争点2)

(3) 本件割合は,原告が営む事業の種類又は当該事業に係る販売費,一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるものであるか。(争点3)

第3 争点に係る当事者の主張

1 争点1(住宅用賃貸部分を含む建物の購入が控除対象仕入税額の計算において共通課税仕入れに区分されるとした本件各更正処分は適法であるか)について

(被告の主張)

(1) 個別対応方式における用途区分の判定について

ア 個別対応方式は課税仕入れについて用途区分を要するところ,消費税法30条2項1号は,用途区分について「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」,「課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(括弧内省略)にのみ要するもの」及び「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」と規定し,いずれも「要したもの」とは規定していない。そして,仕入税額控除は,仕入れを行った日において,それが課税仕入れに該当するか否かを判断し,課税仕入れに該当する場合には,当該課税仕入れを行った日の属する課税期間において,課税資産の譲渡等に対応する部分を控除するものであることからすれば,課税資産の譲渡等に対応する部分の具体的な算出方法である用途区分も,当該課税仕入れを行った日の状況に基づき,その取引が事業者において行う将来の多様な取引のうちどのような取引に要するものであるのかを客観的に判断すべきである。

イ これに対して,原告は,個別対応方式における用途区分の判定は課税仕入れの最終的ないし主たる目的によって行うべきである旨主張し,これについて,課税の累積排除という仕入税額控除の趣旨を指摘する。しかし,個別対応方式における共通仕入控除税額は,共通課税仕入れに係る消費税額に各課税期間の課税売上割合を乗じて計算した金額に限られるものであり,控除されない金額すなわち非課税売上げに対応する部分として算定された金額について,課税の累積排除を考慮する必要がないことは,消費税法がもとより予定するところであって,課税仕入れの用途区分が当該課税仕入れの最終的ないし主たる目的により判断されるものではない。

(2) 本件各課税仕入れは共通課税仕入れに該当すること

ア 原告は,本件各建物について,仕入れを行った日に棚卸資産として計上し,また,平均して7か月程度で譲渡していたことが認められる。これらによると,原告は,本件各建物について転売を意図して仕入れたものと認められるから,本件各課税仕入れは,課税資産の譲渡等に要するものであるということができる。

一方,本件各建物は,仕入れを行った日において,いずれもその全部又は一部が住宅貸付け(本件各住宅貸付け)の対象とされており,本件各課税仕入れは賃借権付売買によるものであった。また,原告は,売主から本件各住宅貸付けにおける賃貸人としての権利義務を承継し,同日以降の賃貸料を現に収受し,当該賃貸料を原告の会計システムに「不動産賃貸収入」として入力しており,原告の決算説明資料でも「投資用不動産保有期間中の賃貸収入は安定収入として経営基盤を下支え」するものと説明されていた。これらのことからすると,原告は,仕入れを行った日において,賃貸料を収受することをも意図した上で,本件各課税仕入れをしたものと認められる。したがって,本件各課税仕入れは,仕入れを行った日において非課税取引である住宅貸付けにも要するものであり,その他の資産の譲渡等に要するものでもあるということができる。

したがって,本件各課税仕入れは,仕入れを行った日の状況に基づいて客観的に判断すれば,課税資産の譲渡等に要するとともにその他の資産の譲渡等に要するものでもあるから,共通課税仕入れに該当する。

イ 原告は,平成元年2月発行の「消費税一問一答集」(国税庁・部内限り。以下「平成元年発行一問一答集」という。)の「問434 『課税資産の譲渡等にのみ要する』ことの意味」の記載を踏まえ,消費税法の立法者は,課税仕入れの対価が「最終的に」課税資産の譲渡等のコストを構成するような課税仕入れをもって「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当するとの解釈を示していたといえると主張する。しかしながら,原告は,本件各住宅貸付けを行い,これに係る対価の額を収受しているのであるから,本件各課税仕入れに係る支払対価は,本件各住宅貸付けに係る原価をも構成しているのであって,原告の主張には理由がない。

また,原告は,平成元年9月発行の「回答実例 消費税質疑応答集」(前国税庁消費税課の職員が編者となっている。以下「平成元年発行質疑応答集」という。)において,販売目的で取得した土地を資材置場として利用している場合の造成費の用途区分については,最終的な目的が販売であることを理由として「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当すると判断されていると主張する。しかしながら,当該事例は,造成費の支出が行われた日には,その造成が行われた土地は,将来これを宅地として販売することのみが予定され,その後,一時的に資材置場としての使用が開始されたという事例であり,これを前提として,用途区分の判定は,飽くまで課税仕入れが行われた日の状況によって行われるものであり,その後の後発的事象(一時的に資材置場として使用を開始したこと)は,上記の用途区分の判定結果を覆すものではないという趣旨を説明したものであり,原告の主張には理由がない。

(3) 原告が本件各課税仕入れと同種又は関連すると指摘する事例について

原告は,税務当局は,別紙4に記載された複数の事例において,従前から,事業者の課税仕入れの最終的な目的によって用途区分の判定を行い,課税仕入れに伴い副次的に収受する対価をその判定において考慮していないと主張する。しかし,原告が指摘する事例は,いずれも,税務当局が,事業者の課税仕入れの最終的な目的によって個別対応方式における用途区分の判定を行う取扱いを従前から採用していることを示すものではなく,用途区分の判定に係る原告の主張する解釈を根拠付けるものではない。

ア 分譲マンション購入費用事例について

分譲マンション購入費用事例は,事業者が分譲用マンションを買い取り,その後当該分譲用マンションを分譲するまでの間,その一部を一時期賃貸することとした事例であり,本件とは,用途区分の判定時期である課税仕入れの日における対象となる物件の性質(住宅の賃貸の用に供されている部分の有無)が異なることから,原告の主張は前提を誤るものである。

イ 賃貸中マンション購入費用事例について

賃貸中マンション購入費用事例については,そもそも当該事例の存否が確認できず,また,仮にそのような質疑回答がされているとしても,結果的に誤ったと思われる個別事案が一つあることを意味するにすぎず,これをもって,その後に行われる課税処分で同様の判断又は処理をすべきことにはならない。

ウ 土地購入仲介手数料事例について

土地購入仲介手数料事例については,当該土地の所有権の取得が区分所有となる建物の販売(課税売上げ)と土地の販売(非課税売上げ)の両方に要するものとして,当該土地の所有権の取得に係る仲介手数料が共通課税仕入れに該当する旨の回答がされたものであって,当該土地につき,取得時に賃貸に供されており,賃貸収入があったとしても,このことは上記仲介手数料の用途区分の判定に影響を与えるものではなく,ましてや,事業者の課税仕入れの最終的な目的によって用途区分の判定を行った事例などということはできないことから,原告の主張する解釈の根拠となるものではない。

エ ガス管移設工事費事例について

ガス管移設工事費事例における他受工事補償金は,都市ガス供給業者が,下水道事業者又は地下鉄事業者等の求めに応じてガス管を移設する場合に,当該ガス管の移設工事のための費用の補てんとして交付を受けるもの(不課税取引)であって,事業者(都市ガス供給業者)がガス管の移設工事を行ったことに対する対価として交付されるものではなく,ガス管の移設工事のための費用の支出を行うことにより事業者において生じた経済的損害を補てんするために交付されるものである。したがって,同事例における他受工事補償金は,事業者が課税仕入れを経た上でその獲得を意図する不動産の転売益や賃料収入とは異なる性質のもので,用途区分の判定において考慮されないのは,課税仕入れの性質からして当然の帰結であることから,同事例は,原告の主張する解釈の根拠となるものではない。

オ 株式委託売買手数料事例について

株式委託売買手数料事例における株式取引の委託売買手数料は,一般的に,証券会社に株式などの売買を委託した投資家が,売買が成立した際に当該証券会社に対して支払う手数料であり,当該証券会社から役務の提供を受けたことに対して支払われるものにほかならず,本件各課税仕入れと同列に論じられるものではない。また,配当金の収受は,本件各住宅貸付けに係る賃貸料の収受とは異なり,株式の購入時に確実に予定されているものともいえないのであって,この点においても事案を異にするものであり,いずれにしても原告の主張する解釈の根拠となるものではない。

(4) 租税平等主義違反について

ア ある納税者が課税要件を充足するにもかかわらず,その充足がないものとして課税処分等が行われた場合には,当該課税処分等が租税平等主義に反して違法と評価される可能性があるが,課税要件を充足する納税者について課税処分等が行われることは,租税平等主義の観点に照らして,何ら違法と評価されるべきものではない。

イ 本件各課税仕入れは個別対応方式における用途区分において共通課税仕入れに該当し,消費税法30条2項1号の課税要件を充足するものであるから,本件各更正処分に何ら租税平等主義に反する違法がないことは明らかである。また,仮に平成23年4月に原告に対して実施された税務調査において,個別対応方式における用途区分についての指摘がされなかったとしても,そのことをもって,税務当局が本件課税仕入れにつき,「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当すると判断していたということはできない。

(5) 信義則違反について

土地購入仲介手数料事例及び株式委託売買手数料事例は,原告が主張するような個別対応方式における用途区分の判定を事業者の課税仕入れの最終的な目的により行い,課税仕入れに伴い副次的に収受する対価をその判定において考慮しないという取扱いを示したものではなく,また,住宅用賃貸部分を含む建物の仕入れを対象とした事例でもないことから,本件課税仕入れの用途区分の判定を示したものではない。

したがって,本件は,そもそも,信義則が適用されるための大前提である「税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示した」との要件を満たさないことから,その余について判断するまでもなく,租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存するとは到底認められず,本件各更正処分は信義則に反する違法処分でない。

(原告の主張)

(1) 個別対応方式における用途区分の判定は課税仕入れの最終的な目的によって行うべきであること

ア 個別対応方式における用途区分の判定は,課税仕入れの時点における事業者の目的によって行うべきであるところ,課税の累積排除という仕入税額控除の趣旨からすれば,事業者の目的が課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等の双方を含む場合には,事業者がその課税仕入れを行った最終的ないし主たる目的がいずれの取引を行うことにあるのかによって判定すべきであり,事業者が課税資産の譲渡等を最終的ないし主たる目的として行った課税仕入れについては,仮に付随的な目的としてその他の資産の譲渡等が含まれていたとしても,「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当すると解すべきである。

これをいい換えると,「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」とは,直接,間接を問わず,また,現実に譲渡等を行った時期を問わず,その対価の額が最終的に課税資産の譲渡等のコストを構成することが予定されている課税仕入れをいうのであり,より簡潔にいうと,課税仕入れの時点において当該課税仕入れの対価の額が課税資産の譲渡等の原価を最終的に構成することが予定されている課税仕入れをいうものと解すべきである。

イ 消費税法30条2項1号の用途区分の定めが,同条1項の「課税標準額に対する消費税額」に関する定めに比して非常に簡素であること,用途区分の判定は原則として課税仕入れの時点において行うこととされていること,個別対応方式による仕入税額控除は,昭和62年に国会に提出されて廃案となった売上税法案34条の仕組みをほとんどそのまま踏襲しているにもかかわらず,用途区分については,同法案で「政令で定めるところにより」とされていたのが削除されていることからすると,個別対応方式における用途区分の判定は,一定の割切りをもって捉えた事業者の課税仕入れの目的に基づき行うことが予定されているといえ,ここでいう目的とは,仕入税額控除による課税の累積排除の重要性からすると,事業者の課税仕入れの最終的な目的と解するのが合理的である。

平成元年発行一問一答集の「問434 『課税資産の譲渡等にのみ要する』ことの意味」における記載を踏まえると,消費税法の立法者は,課税仕入れの対価が「最終的に」課税資産の譲渡等のコストを構成するような課税仕入れをもって「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当するとの解釈を示していたといえるところ,課税仕入れの時点である課税仕入れの対価が最終的に課税資産の譲渡等のコストを構成することになるか否かは,事業者がその課税仕入れを行った最終的な目的によって判断せざるを得ないから,個別対応方式における用途区分の判定は事業者の課税仕入れの最終的な目的によって行うべきであるという解釈が導き出されることになる。このような解釈は,平成元年発行質疑応答集において,販売目的で取得した土地を資材置場として利用している場合の造成費の用途区分について「販売の目的で取得した土地に行った造成費用ですから,一時的に自社の資材置場として使用しているとしても,『非課税資産の譲渡等にのみ要するもの』となります。」と記載され,「最終的な」という文言は用いられていないものの,最終的な目的が販売であることを理由として「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当すると判定していること,この解説を受けて作成されたと考えられる,平成2年4月発行の「消費税法取扱通達逐条解説」において「(注)販売用の目的で取得し,一時的に自社の資材置場として使用しているときは,最終的な使用目的が販売用であるので非課税用となる。」と記載され,この説明が現在の消費税法基本通達11-2-15の解説にも引き継がれていることからも明らかである。

ウ 仮に,課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等の双方を目的とする課税仕入れは共通課税仕入れに該当すると解するのが原則であるとしても,課税の累積排除という仕入税額控除の趣旨からすると,当該課税仕入れが課税資産の譲渡等を不可欠の目的とする場合であって,その他の資産の譲渡等の目的が付随的なものかどうか,当該課税仕入れに係る資産又は役務を用いた資産の譲渡等による売上げ全体に占める非課税売上げの割合,その他諸般の事情を考慮し,当該課税仕入れを「課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ」と実質的に同視することができるときは,当該課税仕入れは「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分することが認められるというべきである。このことは,消費税基本通達11-2-19の趣旨にも合致する。

(2) 本件各課税仕入れの最終的な目的は本件各建物の再販売であり,賃貸料の収受はこれに含まれないこと

ア 賃貸料の収受は本件各課税仕入れの目的に含まれないこと

原告は,不動産の買取再販売事業を主要な目的とする会社であるところ,本件各建物は,買取再販売のために購入されたもので,賃貸するために購入されたものではない。このことは,原告が,賃貸目的で購入した建物は固定資産に計上して減価償却をしているのに対し,本件各建物については棚卸資産に計上して減価償却をしていないことからも明らかである。

本件各課税仕入れによって,本件各住宅貸付けにおける賃貸人の地位は法律上当然に原告に承継されており,原告は,賃貸料の収受を認識しながら本件各課税仕入れを行い,実際に賃貸料を収受している。しかしながら,それは飽くまで賃貸人の地位を法律上当然に承継したことに伴う結果にすぎず,これを理由に,原告が賃貸料の収受を意図しており,本件各住宅貸付けが本件各課税仕入れの目的であるというのはおよそ無理があるといわざるを得ない。原告にとってみれば,販売目的で不動産を取得するに当たって,当該不動産が賃貸収入の発生しない住宅用不動産であるか,賃貸収入の発生する投資用不動産であるかは重要でなく,当該不動産の転売によってどれだけの利益を得ることができるかが決定的に重要なのであり,このような経営上の判断を経て取得した不動産の中に,たまたま投資用不動産が含まれている場合があるというのにすぎない。

被告の主張によると,現に賃貸されている不動産をそのまま取得した場合,常に賃料収入を得ることを意図し,又は目的として当該不動産を取得したと認定されることになるが,例えば,原告が販売用建物を取得した時点で既に転売先との売買契約が締結されているような場合において,転売先への売却完了までに収受する賃料はたまたま収受するものであることは明らかであって,上記認定が常識に照らして不合理であることは明らかである。

イ 仮に賃貸料の収受が本件各課税仕入れの目的に含まれるとしても,付随的なものにすぎないこと

本件では,1原告は本件各建物を棚卸資産として計上していること,2原告は,棚卸資産として計上した建物は,できる限り短期間で販売することを事業方針としており,本件各課税期間以前に販売した各建物に関する平均事業期間は7か月以下であること,3本件各住宅貸付けにおける賃貸人の地位は法律上当然に原告が承継せざるを得ないものであり,本件各課税仕入れは,本件各住宅貸付けそれ自体を意図し,又は目的として行われたものではないこと,4本件各建物のうち原告が実際に販売した建物から生じた売上げ全体に占める住宅貸付けに係る売上げの割合はほぼ10%にも満たないことからすれば,仮に本件各課税仕入れの目的に,販売目的だけでなく,本件各住宅貸付けの目的が含まれると考えるとしても,その最終的ないし主たる目的は課税資産の譲渡等である本件各建物の販売であり,本件各住宅貸付けは,飽くまで付随的なものにすぎないことが明らかである。

また,本件各課税仕入れの最終的ないし主たる目的は本件各建物の販売である以上,本件各建物は棚卸資産として認められ,減価償却をすることはできないのであるから,本件各課税仕入れの対価の額は,最終的に本件各建物の販売の原価を構成することが予定されているといえる。

したがって,仮に本件各課税仕入れの目的に本件各住宅貸付けの目的が含まれていると考えるとしても,本件各課税仕入れは「課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ」に該当するといえ,又は,仮に共通課税仕入れに該当するとしても,「課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ」と実質的に同視することができるというべきである。

菅野博之裁判長名判決 刑法207条の適用否定 最高裁令和2年

傷害,強盗,窃盗被告事件

最高裁判所第2小法廷決定/令和元年(あ)第1751号

令和2年9月30日

【判示事項】1 他の者が先行して被害者に暴行を加え,これと同一の機会に,後行者が途中から共謀加担したが,被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたとは認められない場合と刑法207条

2 他の者が先行して被害者に暴行を加え,これと同一の機会に,後行者が途中から共謀加担したが,被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたとは認められない場合において,後行者の加えた暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有しないときに,刑法207条を適用することの可否

【掲載誌】 裁判所時報1753号12頁

LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】捜査研究69巻12号2頁

主 文

本件上告を棄却する。

当審における未決勾留日数中230日を本刑に算入する。

理 由

弁護人永田光博,同浦亮一,同越智俊介の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,単なる法令違反,事実誤認,再審事由の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

なお,所論に鑑み,同時傷害の特例を定めた刑法207条の適用について,職権で判断する。

1 原判決の認定及び記録によれば,第1審判決判示第1の傷害に関する事実関係は,次のとおりである。

(1) A及びB(以下「Aら」という。)は,被害者に対し暴行を加えることを共謀した上,平成29年12月12日午後9時23分頃,被害者のいるマンションの部屋に突入し,被害者に対し,カッターナイフで右側頭部及び左頬部を切り付け,多数回にわたり,顔面,腹部等を拳で殴り,足で蹴るなどの暴行を加えた。

(2) 被告人は,Aら突入の約5分後,自らも同部屋に踏み込んだ。被告人は,被害者がAらから激しい暴行を受けて血まみれになっている状況を目にして,Aらに加勢しようと考え,台所にあった包丁を取り出し,その刃先を被害者の顔面に向けた。この時点で,被告人は被害者に暴行を加えることについてAらと暗黙のうちに共謀を遂げた。

その後,同月13日午前0時47分頃までの間に,同部屋において,被告人及びAは,脱出を試みて玄関に向かった被害者を2人がかりで取り押さえて引きずり,リビングルームに連れ戻し,こもごも,背部,腹部等を複数回蹴ったり踏み付けたりするなどの暴行を加えた。また,Aらは,被害者に対し,顔面を拳で殴り,たばこの火を複数回耳に突っ込み,革靴の底やガラス製灰皿等で頭部を殴り付け,はさみで右手小指を切り付けるなどの暴行を加え,Aが,千枚通しで被害者の左大腿部を複数回刺した。

(3) 被告人が共謀加担した前後にわたる一連の前記暴行の結果,被害者は,全治まで約1か月間を要する右第六肋骨骨折,全治まで約2週間を要する右側頭部切創,左頬部切創,左大腿部刺創,右小指切創,上口唇切創の傷害を負った。これらの傷害のうち,右側頭部切創及び左頬部切創については,被告人の共謀加担前のAらの暴行により,左大腿部刺創及び右小指切創については,共謀成立後の暴行により生じたものであるが,右第六肋骨骨折及び上口唇切創については,いずれの段階の暴行により生じたのか不明である。なお,被告人が加えた暴行は,右第六肋骨骨折の傷害を生じさせ得る危険性があったと認められるが,上口唇切創の傷害を生じさせ得る危険性があったとは認められない。

2 原判決は,以上の事実関係を前提に,「先行者の暴行に途中から後行者が共謀の上加担したが,被害者の負った傷害が加担前の暴行によるものか加担後の共同暴行によるものか不明な場合においては,加担前の先行者による暴行と加担後の共同暴行を観念することができるから,この各暴行の間に同時傷害の特例を適用することは妨げられないというべきである」と説示し,被告人の共謀加担前のAらによる暴行と被告人の共謀加担後の共同暴行は,いずれも右第六肋骨骨折及び上口唇切創を生じさせ得る具体的危険性を有し,同一の機会に行われたものであるから,被告人は,左大腿部刺創及び右小指切創について傷害罪の共同正犯としての責任を負うだけでなく,刑法207条の適用により,右第六肋骨骨折及び上口唇切創についても傷害罪の責任を負うとの判断を示した。

3 所論は,先行者の暴行に途中から後行者が共謀の上加担したが,被害者の負った傷害が共謀加担前の先行者の暴行によるものか共謀加担後の共同暴行によるものか不明な場合には,先行者が当該傷害についての責任を負うから,後行者について刑法207条を適用することはできないという。

同時傷害の特例を定めた刑法207条は,二人以上が暴行を加えた事案においては,生じた傷害の原因となった暴行を特定することが困難な場合が多いことなどに鑑み,共犯関係が立証されない場合であっても,例外的に共犯の例によることとしている。同条の適用の前提として,検察官が,各暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するものであること及び各暴行が外形的には共同実行に等しいと評価できるような状況において行われたこと,すなわち,同一の機会に行われたものであることを証明した場合,各行為者は,自己の関与した暴行がその傷害を生じさせていないことを立証しない限り,傷害についての責任を免れない(最高裁平成27年(あ)第703号同28年3月24日第三小法廷決定・刑集70巻3号1頁参照)。

刑法207条適用の前提となる上記の事実関係が証明された場合,更に途中から行為者間に共謀が成立していた事実が認められるからといって,同条が適用できなくなるとする理由はなく,むしろ同条を適用しないとすれば,不合理であって,共謀関係が認められないときとの均衡も失するというべきである。したがって,他の者が先行して被害者に暴行を加え,これと同一の機会に,後行者が途中から共謀加担したが,被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたものとまでは認められない場合であっても,その傷害を生じさせた者を知ることができないときは,同条の適用により後行者は当該傷害についての責任を免れないと解するのが相当である。先行者に対し当該傷害についての責任を問い得ることは,同条の適用を妨げる事情とはならないというべきである。

また,刑法207条は,二人以上で暴行を加えて人を傷害した事案において,その傷害を生じさせ得る危険性を有する暴行を加えた者に対して適用される規定であること等に鑑みれば,上記の場合に同条の適用により後行者に対して当該傷害についての責任を問い得るのは,後行者の加えた暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するものであるときに限られると解するのが相当である。後行者の加えた暴行に上記危険性がないときには,その危険性のある暴行を加えた先行者との共謀が認められるからといって,同条を適用することはできないというべきである。

これを本件訴訟手続の流れに即していえば,本件は,検察官が先行者と後行者である被告人との間に当初から共謀が存在した旨主張し,被告人がその共謀の存在を否定したが,証拠上,途中からの共謀が認められるという事案であるところ,このような被告人について刑法207条を適用するに当たっては,先行者との関係で,その傷害を生じさせた者を知ることができないか否かが問題となり,検察官において,先行者及び被告人の各暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するものであること並びに各暴行が同一の機会に行われたものであることを証明した場合,被告人は,自己の加えた暴行がその傷害を生じさせていないことを立証しない限り,先行者の加えた暴行と被告人の加えた暴行のいずれにより傷害が生じたのかを知ることができないという意味で,「その傷害を生じさせた者を知ることができないとき」に当たり,当該傷害についての責任を免れないのである。

本件において,被告人が共謀加担した前後にわたる一連の前記暴行は,同一の機会に行われたものであるところ,被告人は,右第六肋骨骨折の傷害を生じさせ得る危険性のある暴行を加えており,刑法207条の適用により同傷害についての責任を免れない。これに対し,被告人は,上口唇切創の傷害を生じさせ得る危険性のある暴行を加えていないから,同条適用の前提を欠いている。

そうすると,原判決には,被告人が同傷害についても責任を負うと判断した点で,同条の解釈適用を誤った法令違反があるといわざるを得ないが,この違法は判決に影響を及ぼすものとはいえない。

よって,刑訴法414条,386条1項3号,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 菅野博之 裁判官 三浦 守 裁判官 草野耕一 裁判官 岡村和美

Rti 台湾国際放送 2021年3月31日

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[ニュース] 味全ドラゴンズ21年ぶりに回帰、「最大人数の始球式」に挑戦成功

Posted: 30 Mar 2021 06:55 AM PDT

https://jp.rti.org.tw/news/view/id/93464

21年ぶりに台湾プロ野球の一軍に戻った「味全ドラゴンズ」が26日、新たな本拠地である、台北市の天母球場でオープン戦を行い、30で「富邦ガーディアンズ」を負かし、幸先の良いスタートを切りました。味全ドラゴンズの葉君璋・監督は、「私にとって、天母は特別な意義がある。子供の頃から天母で育てられたから、特に懐かしく思っている。天母はいい所だ。自分の出身地で試合できてとても興奮している」と話しました。味全ドラゴンズのファンは、「2122年も待っていた。味全ドラゴンズがこの球場に戻れて本当に嬉しい。新参であろうと古参であろうと、ドラゴンズファン全員で味全ドラゴン......more

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[ニュース] 台中メトロ緑線、4/25開業に向け試験営業再開

Posted: 30 Mar 2021 06:45 AM PDT

https://jp.rti.org.tw/news/view/id/93463

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戸倉三郎裁判長名判決 固定資産税について納税者勝訴

最高裁平成31年4月9日

佐藤修二『租税と法の接点』大蔵財務協会・2020年・75頁

固定資産評価審査決定取消請求事件

【事件番号】最高裁判所第3小法廷判決/平成30年(行ヒ)第262号

【判決日付】平成31年4月9日

【判示事項】土地の固定資産評価について,当該土地が商業施設に係る開発行為に伴い調整池の用に供されその調整機能を保持することが開発行為の許可条件になっていることを理由に地目を宅地と認定するなどして算出された当該土地の登録価格を適法とした原審の判断に違法があるとされた事例

【判決要旨】固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格について、当該土地が商業施設に係る開発行為に伴い調整池の用に供され、その調整機能を保持することが上記開発行為の許可条件になっていることを理由に、面積の80%以上に常時水がたまっているなどの当該土地の現況等について十分に考慮することなく、当該土地は宅地である上記商業施設の敷地を維持するために必要な土地であるとして、地目を宅地と認定するなどして算出された上記価格が固定資産評価基準によって決定される価格を上回るものではないとした原審の判断には、固定資産の評価に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。

【参照条文】地方税法349-1

地方税法388-1

地方税法403-1

固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号)第1章第1節一

【掲載誌】 最高裁判所裁判集民事261号215頁

裁判所時報1721号1頁

判例タイムズ1461号12頁

判例時報2423号17頁

金融法務事情2125号70頁

LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】判例秘書ジャーナルHJ100061

ジュリスト1535号10頁

ジュリスト1546号103頁

税経通信75巻2号173頁

主 文

原判決を破棄する。

本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人萱垣建,同萱垣佑樹の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

1 本件は,三重県志摩市所在の2筆の土地に係る固定資産税の納税義務者である上告人が,上記の各土地につき,志摩市長により決定され土地課税台帳に登録された平成27年度の価格を不服として志摩市固定資産評価審査委員会に対し審査の申出をしたところ,これを棄却する旨の決定(以下「本件各決定」という。)を受けたため,被上告人を相手に,その取消しを求める事案である。

2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。

(1)ア 地方税法349条1項は,土地に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準を,当該土地の基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳又は土地補充課税台帳に登録されたもの(以下,これらの台帳に登録された価格を「登録価格」という。)とする旨規定し,同法403条1項は,市町村長は,同法388条1項の固定資産評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならない旨規定する。平成27年度は上記の基準年度であり,これに係る賦課期日は平成27年1月1日である。

イ 固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。以下「評価基準」という。)は,土地の評価は,次に掲げる土地の地目の別に,それぞれ,評価基準に定める評価の方法によって行うものとし,土地の地目として,田,畑,宅地,鉱泉地,池沼,山林,牧場,原野及び雑種地を掲げた上,この場合における土地の地目の認定に当たっては,当該土地の現況及び利用目的に重点を置き,部分的に僅少の差異の存するときであっても,土地全体としての状況を観察して認定するものとしている(第1章第1節一)。

そして,評価基準は,主として市街地的形態を形成する地域における宅地については,市街地宅地評価法によって各筆の宅地の評点数を付設し,これを評点1点当たりの価額に乗じて,各筆の宅地の価額を求めるものとしている。市街地宅地評価法は,1状況が相当に相違する地域ごとに,その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定し,2標準宅地について,売買実例価額から評定する適正な時価を求め,これに基づいて上記主要な街路の路線価を付設するなどし,3この路線価を基礎とし,画地計算法(評価基準別表第3)を適用して各筆の宅地の評点数を付設するというものである(第1章第3節)。

また,評価基準は,池沼の評価は,池沼の売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法によるものとし,ただし,市町村内に池沼の売買実例価額がない場合においては,池沼の位置,形状,利用状況等を考慮し,附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法によるものとしている(第1章第6節)。

(2)ア 株式会社ササヤマは,志摩市内の山林等を開発した土地上にショッピングセンター(以下「本件商業施設」という。)を開設することとし,平成8年5月24日,三重県知事に対し,都市計画法に基づく開発行為の許可申請をした。三重県においては,開発面積1ha以上かつ洪水調整容量500立方メートル以上の開発行為については,洪水調整の方法として,河川等の改修,調整池の設置又は排水ポンプの設置のいずれか又は複数の措置を講ずることが義務付けられているところ,本件商業施設に係る開発行為はこれに該当したことから,同社は,本件商業施設の敷地の東側に位置する第1審判決別紙物件目録記載1及び2の各土地(以下,順に「本件土地1」,「本件土地2」といい,併せて「本件各土地」という。)を当時の所有者から借り受け,本件各土地に洪水調整のための調整池を設けることとした。

三重県知事は,平成8年11月5日,「開発行為に伴って設けた調整池については,河川整備等排水調整の必要性が無くなるまで,調整機能を保持すること」を条件として,上記申請を許可した。

イ 本件各土地は,本件商業施設の開業以降,調整池の用に供されており,本件土地1は,その面積の80%以上に常時水がたまっている。また,本件土地2は,少なくともその面積の大半は調整池としての機能を有する平地であるが,平時は本件商業施設の従業員の駐車場として使用されている。

ウ 上告人は,平成18年4月16日,前記所有者から本件各土地を相続して,

その貸主の地位を承継した。

(3)ア 志摩市長は,本件各土地の平成27年1月1日における価格を次のとおり決定し,土地課税台帳に登録した(以下,これらの価格を併せて「本件各登録価格」という。)。

本件土地1 108万0450円

本件土地2 480万2400円

志摩市長は,本件各登録価格を決定するに際し,本件各土地の地目をいずれも宅地と認定した上,市街地宅地評価法により,本件各土地に沿接する街路の路線価を基礎とし,画地計算法を適用して,奥行価格補正率0.8及び不整形補正率0.87を乗じ,また,本件土地1については,これに加えて,常時水がたまっており利用形態が制限されること等を考慮し,雑種地における減額補正に準じた補正率0.3を乗じて,評点数を付設した。

イ 上告人は,平成27年1月1日当時,本件各土地の所有者であり,これらに係る固定資産税の納税義務者であったところ,本件各土地の現況及び利用目的に照らせば,その地目はいずれも池沼と認定されるべきであると主張して,同年6月29日,志摩市固定資産評価審査委員会に対し,本件各登録価格につき審査の申出をしたが,同委員会は,同年10月22日付けで,同申出を棄却する旨の本件各決定をした。

3 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。

本件商業施設に係る開発行為については調整池の設置等が義務付けられ,これによって本件各土地が調整池の用に供されることとなっており,開発許可を受けるに際しては,その調整機能を保持することが許可条件とされていることから,本件各土地は,本件商業施設が適法に開発許可を受け,同施設が有事のための洪水調整機能を維持して安全に運営を継続するために必要なものである。したがって,本件各土地は,宅地である本件商業施設の敷地を維持するために必要な土地と認められるから,本件各土地の地目をいずれも宅地と認定した上で決定された本件各登録価格は,評価基準によって決定される価格を上回るものではなく適法である。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1) 本件各決定は,本件各登録価格の決定に違法はないとして,これに係る上告人の審査の申出を棄却したものであるところ,土地の基準年度に係る賦課期日における登録価格が評価基準によって決定される価格を上回る場合には,同期日における当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るか否かにかかわらず,その登録価格の決定は違法となるものというべきである(最高裁平成24年(行ヒ)第79号同25年7月12日第二小法廷判決・民集67巻6号1255頁)。

(2) 評価基準は,土地の地目の別に評価の方法を定め,これに従って土地の評価をすべきこととし,上記地目は,当該土地の現況及び利用目的に重点を置き,土地全体としての状況を観察して認定することとしている。そして,上記地目のうち宅地とは,建物の敷地のほか,これを維持し,又はその効用を果たすために必要な土地をも含むものと解される。

(3) 本件各土地は,本件商業施設に係る開発行為に伴い調整池の用に供することとされ,排水調整の必要がなくなるまでその機能を保持することが上記開発行為の許可条件となっているというのであるが,開発許可に上記条件が付されていることは,本件各土地の用途が制限を受けることを意味するにとどまり,また,開発行為に伴う洪水調整の方法として設けられた調整池の機能は,一般的には,開発の対象となる地区への降水を一時的に貯留して下流域の洪水を防止することにあると考えられる。そうすると,上記条件に従って調整池の用に供されていることから直ちに,本件各土地が本件商業施設の敷地を維持し,又はその効用を果たすために必要な土地であると評価することはできないというべきである。

したがって,本件商業施設に係る開発行為に伴い本件各土地が調整池の用に供されており,その調整機能を保持することが上記開発行為の許可条件になっていることを理由に,本件土地1の面積の80%以上に常時水がたまっていることなど,本件各土地の現況等について十分に考慮することなく,本件各土地は宅地である本件商業施設の敷地を維持するために必要な土地であるとして,前記2(3)アのとおり算出された本件各登録価格が評価基準によって決定される本件各土地の価格を上回るものではないとした原審の判断には,固定資産の評価に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。

5 以上によれば,原審の上記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,本件各土地のそれぞれの現況,利用目的等に照らし,本件各登録価格が評価基準によって決定される本件各土地の価格を上回らないか否かについて更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

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