草原との共生を目指して
モンゴルにおける牧草地の脆弱性評価
国立環境研究所「環境儀」第83号の刊行について
(筑波研究学園都市記者会、環境記者会、環境省記者クラブ同時配付)
国立研究開発法人国立環境研究所
編集分科会委員長 :江守 正多
〃 事務局(環境情報部情報企画室)
室長 :下前 雅義
担当 :白井 大智
「草原との共生を目指して モンゴルにおける牧草地の脆弱性評価」を刊行します。
国土の70%以上を草原が占めるモンゴルでは、乾燥・半乾燥地域に住む人々は草原の分布に合わせて居住地を移動しながら、その恵みを支えに暮らしています。しかし、都市や鉱山の開発が進み、土地の利用方法が変化することで草原を持続的に利用できない地域が出てきています。
さらに、モンゴルの草原はその下に広がる永久凍土によって維持されていますが、年平均気温が75年間で約2.8°C上昇しており、温暖化の影響で永久凍土の面積や深さが減少している傾向にあることがわかりました。一部の地帯を除き、将来的にその面積は現在の1/5程度に縮小することが予想されるなど、草原の砂漠化が問題になっています。
本号では、モンゴルの伝統的な放牧形態の紹介を通して、草原の生態系や水資源の重要性を解説するとともに、都市化や鉱山開発による過度な地下水汲み上げが周辺域の水循環に及ぼす影響や、モンゴル全土の地形や気候、市町村別の人口、産業、家畜頭数のデータから構築した4つの地域における牧養力や脆弱性などの経年変化を紹介します。
1 本号の内容
国立環境研究所では、温暖化影響早期観測ネットワークを構築して、温暖化による永久凍土の融解や環境資源への影響を解析し、さらにモンゴルの草原域を対象にしたCO2吸収量の監視・評価を行い人為的攪乱が水資源や牧草地に与える影響や脆弱性を明らかにしました。
本号では、これら一連の研究から得られた成果の一部を抜粋して紹介するほか、草原生態系の回復力強化のために実施している適応策の研究について紹介します。
○しろまるInterview研究者に聞く
「モンゴルの草原と人々の生活を守るために」
モンゴルで起きている過放牧の実態や都市化・鉱山開発など、人為的攪乱による草原への影響と、永久凍土の融解が草原生態系にもたらす影響を、研究者らがわかりやすく解説します。
また、遊牧民の「適地適種」の考え方をその歴史や慣習を交えて紹介するほか、自然とヒトの関係性を見出す指標を用いた、牧草地への放牧圧を定量化する方法について紹介します。
<研究担当者>
王 勤学(おう きんがく)
地域環境保全領域 主席研究員
中山 忠暢(なかやま ただのぶ)
地域環境保全領域(環境管理技術研究室)主幹研究員
岡寺 智大(おかでら ともひろ)
地域環境保全領域(環境管理技術研究室)主任研究員
○しろまるSummary
「気候変動および人為的攪乱による草原生態系への影響評価」
Summaryでは、調査・研究で明らかになった永久凍土の融解スピードや変動幅を詳しく解説するとともに、気温上昇や降水量の減少による干ばつが永久凍土の融解を加速させる可能性があることを、永久凍土分布のシナリオ予測図を用いて解説します。さらに、モンゴルの4つの対象地域における牧養力・放牧圧・脆弱性の経年変化をグラフを用いて解説します。
○しろまる研究をめぐって
「草原生態系の回復力強化および適応性向上に関する研究」
乾燥地社会・生態系システムの回復力強化と持続可能な開発に向けた世界的なワーキンググループの動向や草原生態系の崩壊と再生に関する国内の動向を紹介します。また、国立環境研究所が開発してきた草原域の牧養力および脆弱性の評価モデルを活用した、スマートな放牧に適した技術システムの構築について紹介します。
2 環境儀83号紹介動画
国立環境研究所YouTubeチャンネルで、環境儀83号の紹介動画を公開しています。
URL:https://youtu.be/idby7Diuluw【外部サイトに接続します】
3 国立環境研究所動画チャンネル
URL:https://www.youtube.com/user/nieschannel【外部サイトに接続します】
4 閲覧・入手についての問い合わせ先
-
本号掲載URL
-
既刊掲載URL
-
国立環境研究所 環境情報部情報企画室出版普及係
TEL: 029-850-2343、E-mail: pub(末尾に@nies.go.jpをつけてください)
関連新着情報
- 2025年2月28日更新情報「永久凍土は日本にも存在する?」記事を公開しました【国環研View LITE】
- 2025年1月22日更新情報「日高山脈で永久凍土を探す」記事を公開しました【国環研View DEEP】
-
2024年3月14日報道発表シナリオ分析によりモンゴルの草原の牧養力と放牧密度地域差を解明
-草原地域における気候変動適応計画策定への応用を可能に-(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付) -
2023年10月16日報道発表衛星が観測した植生クロロフィル蛍光データによる植生への干ばつ影響の検出
— GOSAT(「いぶき」)のデータから土壌乾燥が草本植生に与える影響を観測可能に —(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付) -
2023年3月28日報道発表大気中温室効果ガス計測の新展開
測定技術の進歩と観測研究の発展
国立環境研究所『環境儀』第87号の刊行について(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付) -
2022年12月27日報道発表ミニチュア大洋「日本海」が発する警告
海洋環境への地球温暖化の影響
国立環境研究所『環境儀』第86号の刊行について(筑波研究学園都市記者会、環境記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2022年10月7日報道発表住宅地に残る「空き地」、草原としての
歴史の長さと生物多様性の関係を解明(環境記者会、環境問題研究会、筑波研究学園都市記者会同時配布) - 2022年8月2日報道発表日本の永久凍土分布を気温条件から推定:将来大幅に消失することを予測(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、北海道教育庁記者クラブ、文部科学記者会、科学記者会同時配付)
-
2022年6月30日報道発表大気汚染と気候の複合問題への挑戦
数値シミュレーションを用いた高解像度予測の最前線
国立環境研究所『環境儀』第85号の刊行について(筑波研究学園都市記者会、環境記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2022年3月31日報道発表ユスリカからのメッセージ
顕微鏡下で識別する環境情報
国立環境研究所『環境儀』第84号の刊行について(筑波研究学園都市記者会、環境記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2022年3月31日報道発表「水資源量に基づく乾燥・半乾燥牧草地の利用可能量とその脆弱性の評価」(平成30〜令和2年度)
国立環境研究所研究プロジェクト報告の刊行について
(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付) -
2021年9月30日報道発表人が去ったそのあとに
人口減少下における里山の生態系変化とその管理に関する研究
国立環境研究所「環境儀」第82号の刊行について(筑波研究学園都市記者会、環境記者会、環境省記者クラブ同時配付) - 2021年7月30日報道発表北海道大雪山の永久凍土を維持する環境が将来大幅に減少する(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、北海道教育庁記者クラブ、文部科学記者会、科学記者会同時配付)
- 2019年9月27日更新情報環境儀73号「アオコの実像-シアノバクテリアの遺伝子解析からわかること」の紹介動画を公開しました。
- 2019年6月27日更新情報環境儀72号「うみの見張り番-植物プランクトンを使った海洋開発現場の水質監視」の紹介動画を公開しました。
- 2019年4月4日更新情報環境儀71号「人口分布と環境-コンパクトなまちづくり」の紹介動画を公開しました。
- 2018年9月13日更新情報環境儀69号「宇宙と地上から温室効果ガスを捉える-太陽光による高精度観測への挑戦-」の紹介動画を公開しました。
- 2018年7月12日更新情報環境儀68号「スモッグの正体を追いかける—VOCからエアロゾルまで—」の紹介動画を公開しました。
- 2018年2月15日更新情報環境儀67号「遺伝子から植物のストレスにせまる─オゾンに対する植物の応答機構の解明─」の紹介動画を公開しました
- 2017年11月16日更新情報環境儀66号「土壌は温暖化を加速するのか?ーアジアの森林土壌が握る膨大な炭素の将来」の紹介動画を公開しました
- 2017年9月26日更新情報地球環境研究センターニュース2017年10月号「永久凍土は地球温暖化で解けているのか? アラスカ調査レポート」発行
- 2017年8月25日更新情報環境儀65号「化学物質の正確なヒト健康への影響評価を目指して─新しい発達神経毒性試験法の開発」の紹介動画を公開しました
-
2016年4月14日報道発表「災害からの復興が未来の環境創造につながるまちづくりを目指して
〜福島発の社会システムイノベーション〜」
国立環境研究所「環境儀」第60号の刊行について
(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2016年1月8日報道発表「未来に続く健康をまもるために
〜環境化学物質の継世代影響とエピジェネティクス〜」
国立環境研究所「環境儀」第59号の刊行について
(お知らせ)
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2015年9月30日報道発表「被災地の環境再生をめざして
〜放射性物質による環境汚染からの回復研究〜」
国立環境研究所「環境儀」第58号の刊行について
(お知らせ)
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2014年7月4日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第53号
「サンゴ礁の過去・現在・未来〜環境変化との関わりから保全へ〜」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2014年5月9日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第52号
「アオコの有毒物質を探る〜構造解析と分析法の開発〜」
の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2014年2月14日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第51号
「旅客機を使って大気を測る-国際線で世界をカバー」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2013年11月8日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第50号
「環境多媒体モデル-大気・水・土壌をめぐる有害化学物質の可視化-」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) -
2013年7月19日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第49号
「東日本大震災-環境研究者はいかに取り組むか-」
の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) - 2013年5月10日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第48号 「環境スペシメンバンキング」の刊行について (お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付)
-
2013年2月8日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第47号
「化学物質の形から毒性を予測する−計算化学によるアプローチ」の刊行について
(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ同時配付) - 2012年11月8日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第46号「ナノ粒子・ナノマテリアルの生体への影響−分子サイズにまで小さくなった超微小粒子と生体との反応」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、 _環境省記者クラブ同時配付)
- 2012年8月9日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第45号「干潟の生き物のはたらきを探る−浅海域の環境変動が生物に及ぼす影響」の刊行について(お知らせ)
- 2012年5月15日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第44号「試験管内生命で環境汚染を視る−環境毒性の in vitro バイオアッセイ」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付 )
- 2012年2月7日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第43号 「藻類の系統保存−微細藻類と絶滅が危惧される藻類」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付 )
- 2011年11月8日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第42号 「環境研究 for Asia/in Asia/with Asia−持続可能なアジアに向けて」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付 )
- 2011年8月12日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第41号 「宇宙から地球の息吹を探る−炭素循環の解明を目指して」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付 )
- 2011年4月11日報道発表国立環境研究所の研究情報誌「環境儀」第40号「VOCと地球環境−大気中揮発性有機化合物の実態解明を目指して」の刊行について(お知らせ)(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時配付 )