2021年12月28日
草原との共生を目指して
〜モンゴルにおける牧草地の脆弱性評価〜
環境儀 No.83
草原は、世界の陸地の約40%を占める乾燥・半乾燥地域の貴重な資源です。古くからこの地域の人々は草原の分布に合わせて居住地を移動する遊牧を行ってきました。しかし近年、農地、都市、鉱山開発による定住化が進み、草原が持続的に利用できない地域も出てきています。加えて、永久凍土の融解など、地球規模での気候変動の影響も顕在化しつつあります。そのため、草原の保全や持続可能な管理には、地球環境と地域環境の両者の変化による影響を定量的に評価することが必要となります。
私たちは、2006年からの5年間に中国やモンゴルの科学院の協力を得て、東アジア地域を対象に温暖化影響早期観測ネットワークを構築し、温暖化が永久凍土の融解や環境資源の劣化に及ぼす影響を解析しました。また、2012年からの3年間では、モンゴルの永久凍土地帯を対象に、永久凍土の融解が草原生態系に及ぼす影響を評価し、適応策の提言を行いました。さらに、2015年からはモンゴルの草原域を対象に、CO2吸収量の監視と評価を行い、また、2018年からは4つの代表的地域を対象に、気候変動に加え、人為的攪乱が水資源および牧草地の利用可能量とその脆弱性に及ぼす影響を評価しました。
本号では、これら一連の研究から一部を抜粋して、特に温暖化に伴う永久凍土の融解およびその影響評価、人為的攪乱による水循環への影響評価、さらに牧草地の牧養力および脆弱性への影響評価に関する研究成果を紹介します。
目次
- インタビューのバナー モンゴルの草原と人々の生活を守るためにInterview研究者に聞く
- コラム1のバナー 草原の恵みおよび伝統的な放牧による持続的な利用コラム1
- コラム2のバナー 急増する草原への攪乱 過放牧・都市化・鉱山開発コラム2
- コラム3のバナー 牧草地の牧養力およびその脆弱性の定量化コラム3
- サマリーのバナー 気候変動および人為的攪乱による草原生態系への影響評価Summary
-
研究をめぐってのバナー
草原生態系の回復力強化および
適応性向上に関する研究研究をめぐって - 国立環境研究所における 「草原生態系の脆弱性評価に関する研究」のあゆみ
- 過去の環境儀から
- No.83表紙 PDFファイル環境儀 NO.83 [18.6MB]
目次
関連新着情報
- 2025年9月25日更新情報「経験したことのない暑さが「日常」となる世界で働くには?」記事を公開しました【国環研View DEEP】
-
2025年9月17日報道発表流域の土地利用が湧水性魚類の分布に影響
—ホトケドジョウを指標に検証—(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付) -
2025年9月12日報道発表高齢化と気候変動が救急医療体制に及ぼす将来的影響を
日本で初めて統合的に予測・評価
〜長崎大学・東京大学・国立環境研究所の共同研究に
より、日本全国を対象に2099年までの救急搬送需要を推計〜
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、文部科学記者会、厚生労働記者会) -
2025年9月8日報道発表温暖化による春の早まりは
高山帯の紅葉の色づきを弱くする
—定点カメラ画像データに基づく将来予測—
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付) - 2025年9月8日更新情報「温室効果ガスの大きな排出源を宇宙からみつける?」記事を公開しました【国環研View LITE】
-
2025年8月26日報道発表森林と大気のガス交換を「渦」で捉える
—半世紀前に考案された理論を実用化—
(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、京都大学記者クラブ、文部科学記者会、科学記者会同時配布) - 2025年8月25日報道発表セミの大合唱から個別種を識別するAIを開発 —AIと音響シミュレーションで生物多様性モニタリングを効率化—(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付)
関連記事
- 2025年9月25日「経験したことのない暑さが「日常」となる世界で働くには?」記事を公開しました【国環研View DEEP】
- 2025年9月8日「温室効果ガスの大きな排出源を宇宙からみつける?」記事を公開しました【国環研View LITE】
- 2025年7月24日「2つのセンサを託してロケット打上げ GOSAT-GW、ついに宇宙へ」記事を公開しました【国環研View DEEP】
- 2025年7月9日「「今年、ヒバリはいつ鳴いた?」—"季節のズレ"を追う全国の観察者たちとは?」記事を公開しました【国環研View LITE】
- 2025年5月7日「生物季節モニタリング:気候変動と生物のリズムを見つめて」記事を公開しました【国環研View DEEP】
- 2025年2月28日「永久凍土は日本にも存在する?」記事を公開しました【国環研View LITE】
- 2025年1月22日「日高山脈で永久凍土を探す」記事を公開しました【国環研View DEEP】
関連研究報告書
- 表紙 2018年2月28日生物多様性と地域経済を考慮した亜熱帯島嶼環境保全策に関する研究国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-127-2017
-
表紙
2017年2月28日生物多様性研究プログラム(重点研究プログラム)
平成23〜27年度国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-116-2016 -
表紙
2017年2月2日地球温暖化研究プログラム(重点研究プログラム)
平成23〜27年度国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-112-2016 - 表紙 2010年6月19日国立環境研究所 公開シンポジウム2010 4つの目で見守る生物多様性−長い目、宙(そら)の目、ミクロの目、心の目− 国立環境研究所研究報告 R-204-2010
-
表紙
2006年12月28日生物多様性の減少機構の解明と保全プロジェクト(終了報告)
平成13〜17年度国立環境研究所特別研究報告 SR-72-2006 - 表紙 2004年3月31日ため池の評価と保全への取り組み国立環境研究所研究報告 R-183-2004
-
表紙
2003年11月28日生物多様性の減少機構の解明と保全プロジェクト(中間報告)
平成13〜14年度国立環境研究所特別研究報告 SR-57-2003