2017年9月29日
土壌は温暖化を加速するのか?
アジアの森林土壌が握る膨大な炭素の将来
環境儀 No.66
現在、全地球の土壌中には植物由来の炭素が約3兆トン蓄積されています。これは、大気中の炭素の約4倍、陸域の植物体に含まれる炭素の5倍以上に相当します。さらに、年間840〜980億トンの炭素が土壌から大気中に放出(土壌呼吸)されていますが、そのうちの約7割は、微生物呼吸(土壌中の微生物が有機物を分解すること)によるものと考えられています。この微生物呼吸量は、人間が排出する二酸化炭素量の約10倍に相当します。また、これまでの研究から、土壌呼吸速度は短期的な温度変化に対して、指数関数的に応答することが分かっています。そのため、温暖化によりわずかでも温度が上がれば、有機物の分解が急速に進み、地球温暖化に拍車をかけるという悪循環が懸念されています。
しかしながら、特にアジア地域において、有機物分解に関わる観測データが圧倒的に不足しているため、全陸域炭素循環の推定値は不確実性が大きいことが課題となっています。そのため、アジア地域の気候変動に対する土壌呼吸の応答は、将来予測を行う上で非常に重要となります。
私たちは、自ら観測機器(チャンバーシステム、後述)を開発し、その観測機器を、日本をはじめとするアジア地域の森林を中心とした陸域生態系に設置し、世界規模で土壌呼吸の観測を行っています。本号では、土壌呼吸の温暖化への応答に関する研究について、観測手法や研究成果とともに紹介します。
[フレーム]
目次
- interview チャンバー観測システムで土壌呼吸に及ぼす温暖化の影響を探るInterview研究者に聞く
-
colum_1_s
森林生態系における炭素循環のプロセスと土壌呼吸
コラム1 - column2-S チャンバー法による森林生態系における炭素循環プロセスの測定コラム2
-
Column3-サムネイル
土壌生態系の温暖化操作実験
コラム3 - Column4-サムネイル チャンバーネットワークコラム4
- Summary アジア地域の森林を中心とした土壌呼吸の温暖化応答の把握Summary
- 研究をめぐって-s 温暖化や攪乱に対する土壌呼吸の観測研究の動向研究をめぐって
- 国立環境研究所における「温暖化への土壌炭素収支の応答に関する研究」のあゆみ
- マーク 過去の環境儀から
- No.66表紙 PDFファイル環境儀 NO.66 [5.91MB]
目次
関連新着情報
-
2025年10月15日new!報道発表—温室効果ガス削減を目指して—
大阪都市部のメタン排出を移動観測で詳細に調査(大阪科学・大学記者クラブ、文部科学記者会、科学記者会、筑波学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付) - 2025年9月25日更新情報「経験したことのない暑さが「日常」となる世界で働くには?」記事を公開しました【国環研View DEEP】
- 2025年9月8日更新情報「温室効果ガスの大きな排出源を宇宙からみつける?」記事を公開しました【国環研View LITE】
- 2025年8月20日報道発表地球温暖化が進むとアマゾン熱帯雨林の枯死が21世紀中に始まることを最先端モデルが高排出シナリオで予測(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会、文部科学記者会、科学記者会、大学記者会(東京大学)同時配付)
-
2025年7月29日報道発表「アジアにおける温室効果ガスインベントリ整備に関する
ワークショップ第22回会合(WGIA22)」の結果について(筑波研究学園都市記者会、環境記者会、環境省記者クラブ同時配付) - 2025年7月24日更新情報「2つのセンサを託してロケット打上げ GOSAT-GW、ついに宇宙へ」記事を公開しました【国環研View DEEP】
- 2025年6月30日更新情報「民間航空機が今日も世界の空でCO2を測っています」記事を公開しました【国環研View DEEP】
関連記事
- 2025年9月25日「経験したことのない暑さが「日常」となる世界で働くには?」記事を公開しました【国環研View DEEP】
- 2025年9月8日「温室効果ガスの大きな排出源を宇宙からみつける?」記事を公開しました【国環研View LITE】
- 2025年7月24日「2つのセンサを託してロケット打上げ GOSAT-GW、ついに宇宙へ」記事を公開しました【国環研View DEEP】
- 2025年6月30日「民間航空機が今日も世界の空でCO2を測っています」記事を公開しました【国環研View DEEP】
- 2025年2月28日「永久凍土は日本にも存在する?」記事を公開しました【国環研View LITE】
- 2025年1月22日「日高山脈で永久凍土を探す」記事を公開しました【国環研View DEEP】
- 2024年9月26日「地球観測衛星『GOSAT』の驚くべき力とは?」記事を公開しました【国環研View LITE】
関連研究報告書
- SR132表紙 2018年10月23日アジア地域におけるチャンバー観測ネットワークの活用による森林土壌CO2フラックスの定量的評価国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-132-2018
-
表紙
2017年2月2日地球温暖化研究プログラム(重点研究プログラム)
平成23〜27年度国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-112-2016 -
表紙
2015年10月29日MRI画像解析と同位体解析による栄養塩や温室効果ガスの底泥からのフラックス予測(分野横断型提案研究)
平成24〜26年度国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-110-2015 -
表紙
2011年12月28日地球温暖化研究プログラム(終了報告)
平成18〜22年度国立環境研究所特別研究報告 SR-96-2011 -
表紙
2008年12月26日地球温暖化研究プログラム(中間報告)
平成18〜19年度国立環境研究所特別研究報告 SR-82-2008 -
表紙
2003年9月30日大気汚染・温暖化関連物質監視のためのフーリエ変換赤外分光計測技術の開発に関する研究(革新的環境監視計測技術先導研究)
平成12〜14年度国立環境研究所特別研究報告 SR-52-2003