(記事公開日:2024年8月8日)
データの安全性と可用性を確保するために、多くの企業がRAIDを導入しています。中でもコストパフォーマンスに優れ、広く普及しているのがRAID 5です。しかし、具体的な仕組みや特徴、RAID 6との違いがよく分からないという方もいるのではないでしょうか。
自社に適したRAIDを選ぶためには、正確な理解が必要です。そこで本記事では、RAID 5の基本原理やRAID 6との違いに焦点を当てて解説します。RAID 5の導入を検討している方や運用中の方は、ぜひ参考にしてください。
まずは、RAID 5の基本原理と仕組みを理解しましょう。メリットやデメリットについても紹介します。
RAID 5は、3台以上のハードディスクドライブ(HDD)を組み合わせて、データの冗長性を確保する技術です。データを分割して複数のHDDに保存し、さらにパリティと呼ばれる誤り訂正符号も分散して記録します。これにより、1台のHDDが故障しても、他のHDDに保存されたパリティ情報を使ってデータを復元できます。
ただし、2台以上のHDDが同時に故障するとデータの復元が難しくなります。また、パリティ情報を保存するために少し余分な容量も必要です。それでも、HDDを追加することで容量や処理速度を増やせるのが利点です。
RAID 5の大きなメリットはコストパフォーマンスの高さです。最低3台のHDDで冗長性を確保でき、1台のHDD分の容量をパリティデータ用に使用するだけで済むため、RAID 1のようにHDDを丸ごとミラーリングするよりも容量効率に優れています。
HDDを増設すれば、ストレージ容量と処理性能の両方を向上させることもできます。また、RAID 5は1台のHDD故障までなら耐えられるため、十分な耐障害性も備えています。コストを抑えつつ、大容量かつ信頼性の高いストレージを構築したいなら魅力的な選択肢だといえるでしょう。
RAID 5のデメリットは、パリティデータの計算と書き込みにオーバーヘッドが発生することです。これにより、書き込み速度が低下します。
さらに、2台以上のHDDが同時に故障すると、データの復旧が難しくなります。HDDの容量が大きくなるほど、リビルド(データの再構築)にかかる時間も長くなり、その間に別のHDDが故障するリスクも高まります。
また、RAID 5に限ったことではありませんが、定期的なバックアップとメンテナンスは欠かせません。パリティデータの整合性を確認し、故障したHDDを迅速に交換する手間も必要です。
ここでは、RAID 5のリビルドプロセス、ホットスペアとホットスワップの利点、そしてNAS選定時に考慮すべき容量とディスク本数について詳しく解説します。これらの情報をもとに、RAID 5の特性を理解し、最適なNAS構成を選びましょう。
RAID 5のリビルド(復旧)プロセスは、故障したHDDを交換すると自動的に開始されます。新しいHDDにデータを復元するため、残りのHDDからデータを読み出しながらパリティ情報を再計算しつつ書き込んでいきます。このため、リビルド中は通常の運用時よりもシステムのアクセス負荷が高くなります。
リビルドにかかる時間は、HDDの容量、台数、システムの負荷状況によって異なりますが、数時間から数日かかる場合もあります。例えば、4TBのHDDを4台使用したRAID 5では、リビルドに10時間以上かかることもあります。
ホットスペアとは、故障したHDDを即座に交換できるよう、予備のHDDをシステム内に待機させる仕組みです。例えば、4台のHDDでRAID 5を構成し、さらに1台のホットスペアHDDを追加しておくと、HDDが故障した際に自動でリビルドが始まります。
また、ホットスワップとは、システムを停止せずにHDDを交換できる機能のことです。これにより、運用中でもHDDの取り外しや取り付けが可能で、システムの影響を最小限にしつつ迅速に対応できます。
これらの機能を活用することで、RAID 5システムの信頼性と可用性が向上し、障害時のダウンタイムを最小限に抑えられます。
RAID 5構成のNASを選ぶ際には、必要な容量とディスク本数を慎重に考慮することが重要です。例えば、4TBのHDDを4台使用してRAID 5を構成した場合、実際に使用可能な容量は約12TBになります。これは、1台分のHDDがパリティ情報用に使用されるためです。
将来的な容量拡張を見据える場合、できるだけ多くのディスクスロットを備えたNASを選ぶか、拡張可能なシステムを選ぶことが望ましいです。全てのドライブをより大容量のものに交換することで、システム全体のストレージ容量を増やすことが可能です。
ただし、ディスク数が増えるとリビルドに必要な時間も全体として長くなる可能性があるため、バランスは考慮しなければなりません。適切な計画と構成によって、データ保護とシステムの効率性を確保しましょう。
RAID 5とRAID 6は、データの冗長性と信頼性を確保するための主要なストレージ技術ですが、その特徴と性能には重要な違いがあります。ここでは、RAID 6の基本的な仕組みを説明し、RAID 5との冗長性・耐障害性の違い、さらにパフォーマンスと容量効率の観点から比較します。
RAID 6は、RAID 5の拡張版といえるストレージ技術です。RAID 5が1台のHDD故障までしか耐えられないのに対し、RAID 6は2台のHDDが同時に故障してもデータを保護できるのが特徴です。これは、RAID 6がRAID 5のパリティに加えて、もう1つのパリティを持つためです。そのため、RAID 6を構成するには最低でも4台のHDDが必要です。
RAID 5が1つのパリティ情報を使用してデータを保護するのに対し、RAID 6は2つのパリティ情報を使用します。2台のHDDが同時に故障してもデータを復元できる仕組みのため、RAID 6はRAID 5よりも高い耐障害性を持つといえます。
システムの信頼性が一層向上することから、クリティカルなデータを扱うシステムにおいて大きな役割を発揮できるでしょう。
RAID 5とRAID 6はパフォーマンスと容量効率において違いがあります。
【パフォーマンス】
【容量効率】
これらの特性から、RAID 6は高い耐障害性が求められる環境に適していますが、RAID 5はコストパフォーマンスと適度な信頼性を求める場合に適しています。各システムの要件に応じて、適切なRAIDタイプを選択することが重要です。
RAID 10は、RAID 1(ミラーリング:同一データの複製機能)とRAID 0(ストライピング:データの分散記録機能)をあわせ持つ構成です。データをミラーリングして高い冗長性を確保し、ストライピングによってパフォーマンスを向上させることができますが、最低4台のHDDが必要です。
また、RAID 50とは、RAID 5とRAID 0を組み合わせた構成です。RAID 5の冗長性とRAID 0のパフォーマンスを兼ね備えていますが、最低6台のHDDが必要です。
以下は、RAID 10、RAID 50、RAID 5のメリット・デメリットをまとめた比較表です。
| メリット | デメリット | |
|---|---|---|
| RAID 10 |
|
|
| RAID 50 |
|
|
| RAID 5 |
|
|
コスト重視の場合、RAID 5が最適でしょう。最低限のHDDで高い容量効率と冗長性を得られます。高パフォーマンスと高耐障害性を求めるなら、RAID 10が適しています。特に、ミッションクリティカルなアプリケーションやデータベースに向いています。
大規模なデータストレージでパフォーマンスと冗長性をバランス良く保ちたい場合は、RAID 50が有効です。大規模なファイルサーバやストレージシステムで効果を発揮します。
RAIDとは?目的別の組み方とデメリットを補う代替方法も解説
HDDやRAIDカードが故障した際には、正しい手順で対処しないとデータが失われるリスクがあります。ここでは、RAID 5の崩壊時に避けたほうがよい行為とその理由について解説します。慎重な対応が求められる状況での参考にしてください。
RAID 5構成のHDDに障害が発生した場合、故障したHDDを交換し、リビルド(復旧)処理を行う必要があります。この際、HDDの順番を入れ替えたり、適切でない手順で交換したりすると、データが失われる危険性があります。
RAID 5では、各HDDに分散されたデータとパリティ情報の整合性が重要なため、正しい手順で交換作業を進めなければなりません。もしHDDの順番を間違えたり、互換性のないHDDに交換したりすると、RAID 5ボリュームが認識できなくなる上、データを復旧できなくなる可能性もあります。
RAID 5ではデータとパリティ情報が複数のHDDに分散されて保存されているため、1台のHDDだけを取り出して使用すると、データの整合性が失われます。したがって、RAID 5構成のHDDを取り外して単体で電源を入れると、データが破損する可能性があります。
例えば、RAID 5の3台構成で1台のHDDを取り外し、そのHDDをPCに接続しても、断片化されたデータしか見られません。また、そのHDDに書き込みを行うと、元のRAID 5ボリュームに戻した際にデータ不整合が発生し、最悪の場合、RAID 5が崩壊する恐れがあります。以上から、RAID 5のHDDを取り外す際は、RAIDコントローラーから切り離し、単体で電源を入れるのは避けましょう。
RAIDカードを交換する際にはデータ損失のリスクがあるため、慎重に作業を進める必要があります。例えば、RAID 5構成のサーバーでRAIDカードが故障した場合、安易に別のRAIDカードに交換すると、データが読み取れなくなる可能性があります。これはRAIDカードによってデータの格納方式が異なり、互換性のないRAIDカードに交換するとRAID 5ボリュームが認識できなくなるためです。
RAIDカードを交換する前には必ずデータのバックアップを取り、交換後には正しいRAIDカードドライバーをインストールする必要があります。また、RAIDカードの設定情報を移行できるかどうかも事前に確認しておきましょう。RAIDカード交換はRAID 5の崩壊リスクを伴う重大な作業なので、慎重に計画を立てて実施することが重要です。
RAID 5のレベルを変更することは、データ損失のリスクが非常に高いため、慎重に行う必要があります。例えば、RAID 5からRAID 6に変更する際にはデータの再構築が必要となり、その過程でデータが失われる可能性があります。また、RAID 5からRAID 0に変更するとパリティ情報が失われ、冗長性が消えてしまいます。
RAIDレベルを変更する必要がある場合は、事前にデータを別のストレージにバックアップし、変更後に十分なテストを行ってデータの整合性を確認することが重要です。
RAIDシステムの利用においては、データ消失や容量の制限といったリスクを考慮する必要があります。しかし、アイ・オー・データの「拡張ボリューム」機能を利用することで、これらの問題を効果的に軽減できます。
拡張ボリューム機能では、独自の技術を用いてデータ消失のリスクを低減し、HDDが故障した際の復旧を迅速に行うことができます。具体的には、2台のHDDをペアで運用し、それぞれの稼働時間に差をつけることで、同時故障のリスクを抑える仕組みを採用しています。
さらに、HDDの交換が必要になった場合でも、使用中の領域だけをリビルドするため、復旧にかかる時間を短縮できます。拡張性も高く、データを保持しながらストレージの実効容量を簡単に拡大できるため、運用の柔軟性が向上します。
RAIDが崩壊すると業務に多大な影響を及ぼします。場合によっては数時間や1日単位で復旧作業に追われることもあるでしょう。
そのようなリスクを軽減するため、アイ・オー・データではRAIDの先を行く「拡張ボリューム」を開発しました。拡張ボリュームでは、同一アレイ内のHDDが似たタイミングで故障するリスクを減らすため、読み込み時には片方のストレージのみを使用して稼働時間に差をつけます。データ保存時には、まずメインのストレージに記録し、その後もう一方のストレージに保存する仕組みです。これにより、HDDの劣化度合いをコントロールし、同時期に故障するリスクを低減します。
RAIDでHDDの故障が発生した場合、拡張ボリュームでは使用中の部分のみをリビルドできるため、全体をリビルドする場合に比べて復旧時間が大幅に短縮できます。
また、ストレージの使用中に保存データが増え、容量拡張が必要になる場合、同一アレイ内のストレージを順番に交換することで、データを保持したまま容量を増やすことが可能です。
法人向けストレージのデータ消失リスクを低減!RAIDにかわる冗長化技術とは
RAID 5はコストパフォーマンスに優れ、相応の冗長性も備える構成です。2台のHDDが同時に故障するリスクや、パリティ情報の保存にハードディスク1台分の容量が必要という注意点があります。
さまざまなリスクを鑑み、冗長性を確保するために、アイ・オー・データは独自技術の「拡張ボリューム」を開発しました。信頼性と柔軟性、メンテナンス性を兼ね備えた拡張ボリュームを、ぜひご活用ください。
I-O Knowledgeコラム 編集部では、液晶ディスプレイとHDD&NASのストレージデバイスを中心に、IT業界に関わる基礎知識と最新トレンド情報を選りすぐりでお届けします。
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