(記事公開日:2024年5月9日)
SSDやUSBメモリーなど、さまざまなストレージにNAND型フラッシュメモリーが使用されています。ストレージについて調べている際にNAND型フラッシュメモリーという用語を目にし、どのようなものか知りたいと感じた方もいるのではないでしょうか。
この記事では、NAND型フラッシュメモリーに関する技術的な情報と採用されている主な商品を紹介します。ストレージに関する理解を深め、商品を選ぶ際に生かしましょう。
NAND型フラッシュメモリーのNANDとは何を指すのか見てみましょう。NAND回路の仕組みとあわせて、データを記録・削除するときの動作についても解説します。普段使用しているストレージがどのように動作しているか理解を深めましょう。
NANDは「Not AND」の略で、電子回路における論理演算手法(論理ゲート)のひとつです。NANDゲートで2つの入力信号をそれぞれ「X」「Y」とした場合の出力信号を以下にまとめました。
| 入力信号X | 入力信号Y | 出力信号 |
|---|---|---|
| 1 | 1 | 0 |
| 0 | 1 | 1 |
| 1 | 0 | 1 |
| 0 | 0 | 1 |
上記の仕組みを記録メディアに応用したのがNAND型フラッシュメモリーです。
記録メディアに使われる論理ゲートの中には、入力信号がX=0、Y=0のときのみ1を出力し、他の入力信号では0を出力するNORゲートもあります。
ただし、NOR型フラッシュメモリーは大容量化しにくいデメリットがあるため、一般向けのストレージとして主に用いられるのはNAND型フラッシュメモリーです。
NAND型フラッシュメモリーは、シリコンでできた基板上に絶縁体で挟んだ電荷負荷膜を配置した構造です。さらに、電荷負荷膜の外側にコントロールゲートを実装し、コントロールゲートおよび基板の電圧を制御することでデータを記録・削除します。
具体的な動作は以下のとおりです。
電荷負荷膜内に電子があればメモリーセルに電流が流れ、電子がなければメモリーセルに電流は流れません。
この特性を活用してデータを読み込むのがNAND型フラッシュメモリーです。電荷負荷幕内の電子は電力を供給しない状態でも維持されるため、不揮発性フラッシュメモリーと呼ばれます。
NAND型フラッシュメモリーは、他の記録媒体と比較してメリットが大きいため、PCやスマホをはじめとしたさまざまなデバイスに使われています。この機会にNAND型フラッシュメモリーに対する理解を深めましょう。
NAND型フラッシュメモリーを磁気ディスクや光学ディスクといった別の記録媒体と比較すると、リード・ライト速度が速いという特徴があります。そのため、大量のデータを記録したり読み込んだりする用途に向いた記録媒体です。
ただし、実使用でどの程度のリード・ライト速度が出るかは、商品によって大きく異なります。購入する際は仕様表でリード・ライト速度を確認しましょう。
NAND型フラッシュメモリーを使用した記録媒体はメモリーセルに電子を格納してデータを保存する仕組み上、物理的な可動部分がありません。そのため、可動部分が故障してデータを読み書きできなくなるリスクがないのが大きなメリットです。
磁気ディスクや光学ディスクは、高速回転するディスクやデータを読み書きするためのヘッドがあり、可動部分が故障しやすいというデメリットがあります。可動部分をなくすことで信頼性を高めた記録媒体といえるでしょう。
チップや回路が小さく、小型かつ大容量の記録媒体を製造しやすいのもNAND型フラッシュメモリーの特徴です。既存の記録媒体は回転するディスクを使用することが多く、ディスクやヘッドを格納するためのスペースが求められます。
小型化しやすいNAND型フラッシュメモリーは、ノートPCやスマホ、カメラといった携帯して使用するデバイスに搭載できるのがメリットです。ウェアラブルデバイスやIoT機器など、小型化する必要があるデバイスの記録媒体としても幅広く使われています。
フラッシュメモリーにはNORゲートを使用したメモリーセルを並列に並べ、リード速度を速めたNOR型があります。NAND型はメモリーセルを直列に配置している分、NOR型よりアクセスに時間がかかり、リード速度が遅いのがデメリットです。
一方、NAND型はNOR型に比べると書き込み速度が速く、大容量化しやすいというメリットがあります。そのため、PC用のストレージのような大容量化が求められる用途に適したフラッシュメモリーです。
NOR型よりリード速度が遅いものの、磁気ディスクや光学ディスクよりは速く、速度が大きなボトルネックになることは少ないでしょう。
NAND型フラッシュメモリーに使われるメモリーセルにはいくつかの種類があります。2024年時点で代表的なメモリーセルの種類は以下のとおりです。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| SLC | ・1つのメモリーセルに1ビットのデータを記録する ・耐久性が高いが大容量化しにくく、高価である |
| MLC | ・1つのメモリーセルに2ビットのデータを記録する ・SLCより低価格で製造できる反面、耐久性や信頼性が劣る |
| TLC | ・1つのメモリーセルに3ビットのデータを記録する ・より低コストで大容量化しやすく、一般向けのSSDに幅広く用いられる |
| QLC | ・1つのメモリーセルに4ビットのデータを記録する ・メモリーセルの耐久性が大きく低下する |
| PLC | ・1つのメモリーセルに5ビットのデータを記録する ・2024年時点ではあまり普及していない |
1つのメモリーセルに記録できるデータの量で複数の種類に分類できます。記録できるデータの量が多くなるほど大容量化しやすい反面、耐久性が低下するのが特徴です。
多くの記録媒体に用いられるNAND型フラッシュメモリーには、2D-NANDと3D-NANDの2種類があります。2D-NANDはメモリーセルを水平方向に配置することで、大容量化を実現した構造です。
3D-NANDはメモリーセルを水平方向だけでなく垂直方向にも配置し、より大容量の記録媒体を製造しやすいという特徴があります。垂直方向の積層数が200を超えた商品もあり、限られたスペースに効率よくメモリーセルを配置していることが分かるでしょう。
安価で大容量化しやすいNAND型フラッシュメモリーは、さまざまな記録媒体に使用されています。それぞれの特徴を正しく理解し、用途に合ったものを選ぶことが大切です。
ここでは、PCやサーバー、ゲーム機、モバイルデバイスに幅広く用いられるNAND型フラッシュメモリーの代表的な使用例として「SSD」「USBメモリー」「eMMC」「SDカード」の4種類を紹介します。
SSDは「Solid State Drive」の略で、PCをはじめとしたさまざまなデバイスの記録媒体として用いられます。
リード・ライト速度が速く大容量のデータを扱いやすいため、OSをインストールするシステムドライブから大量のデータを保存するデータドライブまで広く使われる商品です。
2024年時点では、内蔵SSDはNVMe接続のM.2 SSD、外付けストレージはUSB接続のポータブルSSDやスティックSSDが主流です。
SSDとはどのようなもの?
HDDとの違いや特徴を紹介
デバイスのUSBポートに接続し、データを記録するのがUSBメモリーです。メモリーセルを搭載した基板上にUSBポートを実装することで、ケーブル不要で直接PCに接続できます。
持ち運ぶデータを格納することを目的に、コンパクトで軽量な記録媒体を探している方におすすめです。搭載するUSBポートはUSB Type-AやUSB Type-Cがあるため、接続したいデバイスの形状に応じて選びましょう。
スティックSSDとUSBメモリーの違いとは?
eMMCは「embedded Multi Media Card」の略で、主にノートPCの記録媒体として使われる商品です。
NAND型フラッシュメモリーを使用したPC向けの記録媒体にはSSDがありますが、eMMCはSSDよりコンパクト化できる反面、リード・ライト速度が遅いという特徴があります。
SSDはマザーボード上の専用スロットに搭載するのが一般的ですが、eMMCはマザーボードに直接ハンダ付けして実装するのも違いです。eMMCは比較的安価なノートPCに広く使用されています。
SDカードは、カメラやスマホ、ドライブレコーダーといったコンパクト化が求められるデバイスの記録媒体として用いられます。スマホにはSDカードをより小型・薄型化したmicroSDカードを使用するのが一般的です。
SSDと比較すると、リード・ライト速度が遅く容量もそこまで多くありません。しかし、小型・軽量かつ薄型の記録媒体で、場所を取らず搭載しやすいのが魅力です。専用のスロットに挿すだけで認識するため、必要に応じて取り外して別のデバイスに移動できます。
規格や容量、スピードをチェック!SDメモリーカード総合サイト
NAND型フラッシュメモリーは、デジタルデバイス用の記録媒体として幅広く用いられています。アイ・オー・データでは、NAND型フラッシュメモリーを活用した商品のひとつとしてスティックSSDを販売しています。
高速でデータを読み書きできる外付けストレージを探している方は、ぜひアイ・オー・データのスティックSSDをご検討ください。
アイ・オー・データが販売するスティックSSD「SSPE-USCシリーズ」は、2種類のUSBポート(USB Type-AとUSB Type-C)を搭載しています。そのため、Windows PCやMacBook、スマホといったさまざまなデバイスにそのまま接続できるのが特徴です。
PC・スマホを問わず複数のデバイス間でデータを移動させる用途に向いています。ビジネスシーンで複数のユーザーが共有するデータを保存する用途でも使えるため、ぜひご検討ください。
SSPE-USCシリーズは、耐衝撃性を確認するためにMIL-STD-810Hに準拠した試験に合格しています。本試験は非動作状態で122cmの高さから26回落下させ、必要な耐久性を有することを確認するものです。
スティックSSDを持ち運ぶ場合、落下や衝突といった衝撃のリスクは避けられないため、試験で耐久性を確認していることは大きな強みといえます。重要なデータを守るために、耐衝撃性や信頼性を重視する方におすすめです。
USB-A&USB-C®コネクター搭載!写真・動画の移動におすすめなスティックSSD「SSPE-USCシリーズ」
SSDやUSBメモリー、SDカードに用いられるNAND型フラッシュメモリーは、磁気ディスクや光学ディスクより耐久性が高く、リード・ライト速度が速いのが魅力です。PCやスマホのようなデジタルデバイスを使う上で、欠かせない存在といえるでしょう。
アイ・オー・データでは、NAND型フラッシュメモリーを採用した商品のひとつとして、スティックSSDを販売しています。耐衝撃性に優れた商品やUSB Type-Cポートを備えた商品も取りそろえており、用途に応じて選べるのがメリットです。
データを持ち運んだり共有したりする機会が多い方は、ぜひアイ・オー・データのスティックSSDをご検討ください。
I-O Knowledgeコラム 編集部では、液晶ディスプレイとHDD&NASのストレージデバイスを中心に、IT業界に関わる基礎知識と最新トレンド情報を選りすぐりでお届けします。
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