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電気は目に見えない。そこで回路を目に見えるように、たとえば簡単な機械に回路動作を模して説明する手段が初心者向けの本などではよく使われる。
オペアンプ反転増幅器では、テコの動作を使った説明がある。力点(入力電圧)、支点(仮想短絡)、荷重点(出力)で、力点と支点の距離がRi、支点と荷重点の距離がRfとすれば、出力変位は、-Rf/Riとなる。ここまでは、反転増幅器の入出力関係を示すが、Rf>Riなら、テコでは、荷重点(出力)は入力より弱い力しか出ない。この段階で、オペアンプ回路の基本的性質である出力が低インピーダンスになることと矛盾する。テコでは入力より弱い力しか出ないのだ。支点、力点、荷重点の順にすれば、変位(電圧利得)は、(Rf/Ri+1)の形となり、非反転増幅器の入出力関係と同一になるが、なぜ支点がその位置になるのか分らない。
比喩を用いた説明の多くは、一見やさしそうに見えるが、回路の種々の性質を同時に説明できることはできない。応用も利かない。場合によっては比喩そのものが分からない。
トランジスタの動作の比喩になると、もっと意味不明になることが多い。
アナログエンジニアはめったに比喩を使わない。その代り、高校数学と高校物理を前提に最初にトランジスタやオペアンプの基本的なモデルを丁寧に説明することにしている。
比喩の多い記述、説明は分かったようで、結局は理解を助けることにならない。
素子モデルを出発点にして、基本的事項・現象を説明し、その後モデルをより精密化していくことが、プロへの近道であろう。
ものつくりは絵解き・図解・比喩の範疇での説明では発展性がないが、「やわらかい本」に見えるので、意外にマーケットが多い。これで良いのか。
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kazimaさん おはようございます
コメントありがとうございます。私は半導体のエネルギー帯モデルからで、フェルミ-ディラック分布を少し独学でかじった程度です。工学系の教育での基礎教育は大学によってかなり異なると考えています。
極端な比喩はその後の考える種になりにくいと私は考えています。自分で著するときには、どこまでの素養を前提として書くか、いつも悩みます。批判しっぱなしでは何の解決にもならないので、いつも、自分ならどう説明するか考えていますが、実務書のこのような発展性のない比喩表現で良いのかとの疑問が絶えずあります。工学分野の特徴かもしれません。
投稿: 5513 | 2010年10月27日 (水) 03時48分
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電流を水流に例えて説明することがよくあります。
これも、水ならこうなる、という変な誤解を招きかねません。
基礎物理ではフェルミ・ディラック統計から固体電子論を考えますが、工学の教科書ではあまり見ません。
それを理解するよりもまずは使えるようになるのが先決なんでしょう。逆に、統計を理解していても1石回路ひとつ作れないではエンジニアになれないでしょう。
工学系の教育でどこまで学ぶかはよく知りませんが、要は自分自身が何にどこまで興味を持てるかということでは。
投稿: kazima | 2010年10月26日 (火) 19時00分